潮風高校“海辺研究会”へようこそ!拍手でつなぐ僕らの青春航路

乾為天女

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第二十話「成果写真と拍手の壁」

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 十一月二十日、放課後。潮風高校・生物準備室。
 窓の外では風が唸り、冬の気配がじわじわと忍び寄っていた。
 部活動の時間。けれど、海辺研究会の部室に集まったメンバーの表情は、重たかった。
 文化祭、地域フェス――怒涛のイベントラッシュを終えた疲労と、三年生組の進路発表を控えた静かな緊張感が、空気を押し下げていた。
 陽太は、その空気に何かを言い出せず、壁にもたれていた。
 絢香は頬杖をつきながら、いつもよりノートに書き込む手が遅い。
 紗織はスケジュール表の修正に集中しているふりをしながら、ペンの動きが止まっている。
 悠介は、つい先日推薦入試の一次通過を逃した。
 豊も、最近は口数がさらに減っていた。
 誰も責めるわけじゃない。でも、祝うムードもどこかへ行ってしまっていた。
 ふいに――カシャ、という音がした。
 陽太がスマホを操作し、ノートパソコンにつないでいた。
 「ねぇ、これ、ちょっと……見てくれる?」
 プロジェクターが起動し、壁に一枚の写真が映し出される。
 七月。クラゲ観察ブースで、子どもとハイタッチする絢香。
 続いて、海岸清掃イベントで試料を手に誇らしげに立つ紗織。
 夜の灯台で、懐中電灯を持つ結月と、資料を読み込む裕之。
 由比ガ浜の波打ち際で、全員が水しぶきに笑いながら立つ――。
 陽太は、それぞれの“成果の瞬間”を写真で切り取っていた。
 「これ……いつ撮ったの?」
 結月が思わず聞いた。
 「全部、僕が“祝いたいな”って思った瞬間だよ」
 陽太は、少しだけ照れながら笑った。
 「見てるとね、なんか……元気になるんだ」
 「……これ、全部、うちら?」
 悠介が思わず立ち上がり、壁に近づく。
 「見てよ、この顔。疲れてるけど、めっちゃ楽しそうじゃん」
 「ちょっと、私、こんな顔してたんだ……」
 紗織が苦笑しながら写真を見上げた。
 「このとき、みんな拍手してたよ」
 陽太が、ポケットから折りたたんだプリントを取り出した。
 《“祝福文化”推進活動報告書(仮)》というタイトル。
 「最後のイベントに向けて、まとめ資料を作ろうと思ってて。これ、“今”の写真で、壁いっぱいにしたいんだ」
 「え、これ全部……?」
 「うん。ここから三カ月で、みんなの“今”をもう一回、讃えたい。……できるかな?」
 しばらくの沈黙のあと。
 パチン、と拍手が一つ。
 結月だった。
 その音をきっかけに、紗織も、裕之も、手を叩いた。
 「……また、やってみよう」
 「いいよ。今度は私がその“瞬間”を撮る側になる」
 「俺は展示の改善点、もうちょい詰める」
 「道具、また再設計するか……時間ないけど、いける」
 静かに、小さく、でも確かに――拍手の輪が広がっていく。
 陽太はその中心で、何も言わず、深くうなずいた。
 “拍手でつながる”。それは、誰かを“主役”にする魔法だ。
 そしてその魔法は、今この瞬間、ふたたび動き出していた。
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