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第二十一話「議事録という舞台、結月の正面突破」
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十二月五日、江の島水族館ホール。午前十時。
「海辺の未来フォーラム」プレイベントとして、市民・報道関係者向けの記者会見が開催された。
壇上に設けられた横長の机の中央には、白い紙を整然と並べたノートパソコン。そして、その背後に立つのは、結月。
緊張はしている。でも、怖くはなかった。
目の前に座るのは、地元紙、教育専門誌、海洋研究の広報担当、そして市議会の関係者。
かつての彼女なら「裏方に回りたい」と身を引いていた。
けれど――今日は違った。
「本日はお忙しい中、お集まりいただき、誠にありがとうございます。潮風高校・海辺研究会、広報・進行担当の藤野結月です」
自分の名前を名乗った瞬間、背筋がすうっと伸びるのを感じた。
「本日は、本校生徒による研究発表と地域連携活動について、概要をご報告させていただきます」
彼女の目線は、手元の議事録案と質疑応答想定集、そしてノートパソコンに並べられたタイムチャートを交互に見つめていた。
各説明者の持ち時間、次の資料提示タイミング、報道対応の優先順――すべて、頭に入っている。
ひとつ目の質問が上がった。
「今回のフォーラムは、学生主体での開催とのことですが、外部機関との連携はどのような形ですか?」
即座にメモを取りつつ、口を開く。
「はい、主に三つございます。一つは鎌倉市環境政策課との潮流データ提供協力。二つ目は江の島水族館様の施設利用及び展示協力。そして三つ目が、地域住民ボランティアとの共同運営となっております」
質問者がうなずき、次の手を挙げる。
「海洋環境問題における高校生の視点、という点で、伝えたいことは?」
「はい、今回の発表では“知識の深さ”より、“行動の持続性”に重点を置いております。参加者一人ひとりが『自分の暮らしと海がつながっている』と気づけるように、体験型ブースや、実測データの共有を準備中です」
メンバーが後方から見守るなか、結月は次々と質問に答え続ける。
そのたびに、ペンを走らせ、時にはマイクを他の部員へと回し、話題の重みを分配する。
発言の主役ではなく、調整の主軸。
それが、自分の“表に出る”方法だ。
全ての質疑が終わり、静かな拍手が湧いた。
最後の締めに、結月は一つだけ、壇上で自分の言葉を加えた。
「……潮風高校海辺研究会は、“仲間の挑戦を称え合う場所”として設立されました」
「そして今回、その理念が、このフォーラムを通じて社会とつながります」
「主役は、一人ではありません。どんな立場からでも、未来に手を伸ばせる。それを、私たちは証明します」
一瞬、沈黙。
だがその後、ゆっくりと、今度は確信のある拍手がホールを満たしていった。
舞台袖に戻った結月は、ほっと息をつき、ノートを閉じる。
陽太が小声で笑った。
「……あれ? 主役じゃん、今日は」
「ちがうよ。私はただ、みんなを“正面に連れてくる”係」
そう言って、彼女は満足げに頷いた。
議事録という舞台で、“名脇役”は、自分らしく光った。
「海辺の未来フォーラム」プレイベントとして、市民・報道関係者向けの記者会見が開催された。
壇上に設けられた横長の机の中央には、白い紙を整然と並べたノートパソコン。そして、その背後に立つのは、結月。
緊張はしている。でも、怖くはなかった。
目の前に座るのは、地元紙、教育専門誌、海洋研究の広報担当、そして市議会の関係者。
かつての彼女なら「裏方に回りたい」と身を引いていた。
けれど――今日は違った。
「本日はお忙しい中、お集まりいただき、誠にありがとうございます。潮風高校・海辺研究会、広報・進行担当の藤野結月です」
自分の名前を名乗った瞬間、背筋がすうっと伸びるのを感じた。
「本日は、本校生徒による研究発表と地域連携活動について、概要をご報告させていただきます」
彼女の目線は、手元の議事録案と質疑応答想定集、そしてノートパソコンに並べられたタイムチャートを交互に見つめていた。
各説明者の持ち時間、次の資料提示タイミング、報道対応の優先順――すべて、頭に入っている。
ひとつ目の質問が上がった。
「今回のフォーラムは、学生主体での開催とのことですが、外部機関との連携はどのような形ですか?」
即座にメモを取りつつ、口を開く。
「はい、主に三つございます。一つは鎌倉市環境政策課との潮流データ提供協力。二つ目は江の島水族館様の施設利用及び展示協力。そして三つ目が、地域住民ボランティアとの共同運営となっております」
質問者がうなずき、次の手を挙げる。
「海洋環境問題における高校生の視点、という点で、伝えたいことは?」
「はい、今回の発表では“知識の深さ”より、“行動の持続性”に重点を置いております。参加者一人ひとりが『自分の暮らしと海がつながっている』と気づけるように、体験型ブースや、実測データの共有を準備中です」
メンバーが後方から見守るなか、結月は次々と質問に答え続ける。
そのたびに、ペンを走らせ、時にはマイクを他の部員へと回し、話題の重みを分配する。
発言の主役ではなく、調整の主軸。
それが、自分の“表に出る”方法だ。
全ての質疑が終わり、静かな拍手が湧いた。
最後の締めに、結月は一つだけ、壇上で自分の言葉を加えた。
「……潮風高校海辺研究会は、“仲間の挑戦を称え合う場所”として設立されました」
「そして今回、その理念が、このフォーラムを通じて社会とつながります」
「主役は、一人ではありません。どんな立場からでも、未来に手を伸ばせる。それを、私たちは証明します」
一瞬、沈黙。
だがその後、ゆっくりと、今度は確信のある拍手がホールを満たしていった。
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「……あれ? 主役じゃん、今日は」
「ちがうよ。私はただ、みんなを“正面に連れてくる”係」
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