潮風高校“海辺研究会”へようこそ!拍手でつなぐ僕らの青春航路

乾為天女

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第二十二話「フォーラム本番と、壇上の涙」

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 十二月十九日、江の島水族館ホール。
 午前十時、開場。
 舞台袖の時計が、針を一秒ずつ刻んでいた。
 海辺研究会のメンバーは、全員ネームタグをつけ、マイクと資料の確認を繰り返していた。
 「タイムキーパー、位置につきます!」
 紗織が秒単位でプログラム台本を読み上げ、無線で司会進行の結月と連携を取る。
 「ステージ左、次スライド係スタンバイ完了です!」
 「前方席、報道関係者案内済み!」
 観客席には、子ども連れの家族から、専門家らしき白衣の大人まで、さまざまな人が座っている。
 最前列には、校長先生もいた。
 午前十時十五分。
 開演の合図。
 開会の辞に続き、結月が登壇。昨日と同じ、けれどどこか誇らしげな口調だった。
 「ただいまより、潮風高校海辺研究会による“海辺の未来フォーラム”を開会いたします」
 スポットライトが次々と壇上に当たっていく。
 第一部は「研究発表編」。
 トップバッターは、裕之。
 スライドが切り替わると、静かに立ち上がり、指示棒でグラフを示す。
 「今回、我々が採取した三地点のプランクトン群集において……この新種に近い微小種の検出数値は、昨年比で約一・三倍でした」
 新種――という言葉に、会場がざわついた。
 豊が控え席で静かにパソコンを操り、資料の精度を補佐。
 「同定はまだ途中段階ですが、相模湾南西部に特有の潮流条件が影響していると考えられます」
 報道陣のシャッター音がいくつも響いた。
 いつも無口な彼が、壇上でこの注目を浴びている。
 「……以上です」
 そう言って、短く一礼すると、会場から小さな拍手。
 結月がすぐにマイクを引き継ぎ、次の進行に移った。
 第二部「体験展示の意図と工夫」。
 紗織は、時間通りにすべてのパートをつなぎながら、後方スクリーンの切り替えを秒単位で操作していく。
 展示ブース紹介では、悠介と絢香がステージ端から観客席に手を振り、模型を掲げる。
 「海の音って、実はこうやって“録れる”んです!」
 観客の子どもたちが「へぇー!」と声を上げると、笑顔がホールに広がった。
 そして、いよいよ最後の「活動理念のまとめ」。
 壇上に上がったのは、陽太。
 いつも通りの笑顔――に見えたが、彼の手元がわずかに震えていた。
 「……僕たちは、この研究会で、ずっと“拍手で祝う”ってことを大事にしてきました」
 「最初は、小さな成功を褒め合うってことが、何になるのか分からなかった。でも……」
 彼は、背後のスクリーンに写真を映す。
 海岸で笑う仲間たち。灯台で観察機材を囲む姿。看病を交代しながら眠る絢香と結月。
 「“誰かの挑戦を、みんなで祝う”。それって、進路や成績やスキルとは、関係ないんです」
 「誰かの“今”を見つけて、すごいねって言えること。それが、次の一歩につながるってことを……僕たちは、知りました」
 その瞬間だった。
 陽太の目から、一滴、涙が落ちた。
 彼は、すぐに袖で拭いもせず、言葉を続けた。
 「今日、ここに立てたのも、全部――みんなのおかげです」
 会場に、一瞬の静寂。
 次に起きたのは、拍手だった。
 一人、二人、十人、そして全員――
 ホールに、割れんばかりの拍手が響いた。
 仲間たちも皆、立ち上がって手を叩いていた。
 涙は恥じゃない。喜びの証明だった。
 壇上の陽太は、ゆっくりと深く一礼をし、しばらくそのまま立ち尽くしていた。
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