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第3話 冷静な彼女は気まぐれに
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その日の夜、「川べり文庫」の窓ガラスには、通りの灯りが細かく映り込んでいた。
川沿いの提灯が風に揺れ、そのたびに店内の壁にも、淡い赤と金色の影が跳ねる。
ホール奥のテーブルでは、璃音がトレイを片手に、花春の動きをじっと目で追っていた。
「まず、席にご案内して、ジャケットとか荷物を預かるかどうか確認します」
花春は、お客がいないテーブルに向かって、実際の動きをなぞる。
椅子を少し引き、見えない誰かに「どうぞ」と微笑みかける。その横で、璃音はメモ帳を開いたまま動かない。
「そのあと、おしぼりをお出しして、すぐにお水。メニューをお渡しするときに、一言」
「一言……?」
「はい、『本日おすすめはこちらです』でも、『川沿いのお席、少し冷えるのでブランケットあります』でも。その場で必要そうなことを、短く添えてください」
璃音は、小さく頷く。
「状況を見て、必要そうな一言、ですね」
「そうそう。璃音ちゃん、飲食経験長いから、たぶんすぐ慣れると思う。……あ、でも」
花春は、ぴょこんと人差し指を立てた。
「ホールは、料理を落とさず運べるだけじゃ仕事にならないんですよ」
「はい」
「運んだあと、その人がどんな顔して食べるかも見る。それが、この店では大事です」
璃音は、テーブルの上にトレイを置き、しばらく黙って考え込んだ。
「食べる前と、食べたあと、両方の顔……ですね」
「そう。で、顔を見て、『あ、次はこっちだな』って、順番をちょっと入れ替えたりもする」
花春がそう言ったとき、カウンターの中から奏斗の視線がこちらに向いた。
「ホールで、提供順を変えるときは、必ず一声かけてください」
彼は、グラスを拭きながら静かに口を挟む。
「厨房、バタつきますから」
「了解でーす」
花春が明るく返事をし、璃音も「気をつけます」とメモ帳に一行書き込む。
そのとき、入口のベルが鳴った。
「いらっしゃいませ!」
花春がすぐさま入口へ向かう。
璃音も慌ててトレイを手に取り、その背中を追いかけた。
入ってきたのは、スーツ姿の四人組。会社帰りらしい、少し疲れの残るような顔つきだ。
「ご予約いただいている、田代様でしょうか」
花春が確認すると、先頭の男性が「あ、はい」と頷く。
その声のトーンを聞いた瞬間、璃音はメモ帳を閉じた。
(声が低い……今日は、あまり長居しないつもりの顔)
表情と歩き方から、そう感じ取る。
花春が席に案内している間に、璃音はすでに水のグラスを四つ用意していた。
トレイの上でグラスが触れ合わないよう、少し間隔を空ける。
「おしぼり失礼します」
テーブルに滑るようにグラスを置き、彼らのタイミングと呼吸を合わせるように、短い言葉を添える。
「本日、お仕事お疲れさまでした」
その一言に、四人の肩の力が、ほんの少しだけ抜けたように見えた。
「……ここ、前にも来たとこだっけ?」
「うん、取引先連れてきたときに」
そんな会話が耳に入る。
璃音は、メニューを渡しながら、さりげなく壁際のコートハンガーの位置を示した。
「こちらのお席、少し通路側が冷えるので、もし寒かったらひざ掛けお持ちしますね」
客のひとりが「助かります」と笑った。
その笑顔を横目で確認しながら、璃音は注文を取りに戻るタイミングを計る。
——順調。
研修初日の夜にしては、静かな滑り出しだった。
◇
夜も深まりかけた頃、花春がレジ脇の予約表に目をやり、ふっと表情を変えた。
「あ、次の予約、カップルさんだ」
「カップル?」
凱理が、会計のレシートを揃えながら顔を上げる。
「『記念日のディナーで利用』って書いてあります。メモに、『デザートにメッセージ希望』……あ、これ、私書きました。電話取った」
「花春さん、『記念日』って、どの種類ですか」
璃音が、予約票を覗き込む。
「えっと……付き合って五年、って言ってた気がする。たぶん、誕生日とかじゃなくて、二人の記念日」
「五年」
璃音は、その数字を頭の中でころがした。
五年分の仕事帰り、五年分の電話、五年分の「おはよう」と「おやすみ」。
それが、今日の川沿いの夜に積み重なっている。
「璃音さん」
奏斗の声が、カウンターから飛んだ。
「記念日のテーブル、担当してもらえますか。僕と花春がフォローに入ります」
「はい」
璃音は、胸の前で両手を合わせるように小さく息を整えた。
しばらくして、入口のベルが鳴る。
入ってきたのは、落ち着いた色のワンピースを着た女性と、その隣に立つ男性だった。
二人の間には、それなりの距離があった。手をつなぐでもなく、逆に背中を向け合うわけでもない、微妙な空気。
「いらっしゃいませ。本日はご予約ありがとうございます」
璃音は、普段より少し柔らかい声で迎えた。
「ご予約の佐伯様でしょうか」
「はい」
男性が答える前に、女性の方が小さく頷く。
「こちらのお席へどうぞ。川がよく見える席をご用意しています」
窓際の二人掛けテーブル。
川面には、対岸の灯りと、さっきまでより少し強くなった風が作る波紋が揺れている。
席に案内しながら、璃音は二人の表情をさりげなく観察した。
女性は、窓の外を見ようとしながら、ちらりと男性の顔色をうかがう。
男性は、メニューを開きかけては指を止め、何か言い出せずにいる。
(……ちょっと、ぎこちない)
そう感じたところで、花春が後ろからそっと近づいてきた。
「メニュー、お決まりになりましたらお呼びください。ゆっくりで大丈夫ですからね」
花春の一言に、女性が小さく微笑む。
璃音は、二人にお水とおしぼりを置いたあとで、厨房の方へ戻った。
「カップルさん、どう?」
絵斗が、まな板の上のレモンを切りながら尋ねる。
「ちょっと緊張しているみたいです」
「そりゃ記念日だしな。こっちはコース料理、もう段取り組んでるから」
絵斗は、ホワイトボードに書かれたオーダー表を顎で指した。
「前菜の盛り合わせ、スープ、魚、肉、デザート。いつもの記念日コース」
その順番を見た瞬間、璃音の中で、ひとつのイメージが浮かんだ。
——デザートまで、間が持つだろうか。
先ほど見た、二人のぎこちない空気。
それをそのまま最後まで引きずったまま、ようやく甘い皿にたどり着く想像が、頭の中でぼんやり広がる。
「絵斗さん」
「ん?」
「デザート……少しだけ、先に出せますか」
包丁の動きが止まる。
「は?」
厨房の空気が、わずかに張り詰めた。
コンロの火の音だけが、しばらく続く。
「どういうこと?」
「全部ではなくて、ほんの一口だけ。たとえば、小さなグラスに入れたプリンとか。『本日のご挨拶』として、最初のドリンクと一緒に出すのはどうでしょう」
絵斗が、まばたきを忘れたまま璃音の顔を見る。
「普通、デザートは最後だろ。締めだろ。そこ動かされたら、段取り全部崩れるんだけど」
「全部のテーブルでそうするわけではありません。あの席だけ、です」
璃音は、淡々と続ける。
「あの二人、少し会話に困っているように見えました。甘いものが間に入ると、話題がひとつ増えます」
「話題?」
「『これ、おいしいね』でも、『前に二人で食べたデザートに似てるね』でも。言葉のきっかけが、ほんの少し増えるだけで、空気が変わるかもしれません」
絵斗は眉間にしわを寄せ、「うーん」と唸った。
「そういうのは、ホール側の仕事じゃないの? 俺の皿、勝手にいじらないでほしいんだけど」
「勝手にはいじりません。だから、相談しています」
璃音は、一歩も引かない口調で言う。
「コース自体は、いつも通り最後にデザートを出してください。その前に、『前菜の前の前菜』として、一口だけ。内容は、絵斗さんにお任せします」
「お任せって……簡単に言うなよ」
絵斗が頭をかく。その横で、花春がそっと割って入った。
「ちょっとだけ聞いてもいい?」
「なに」
「璃音ちゃん、その二人の顔見て、『あ、今ちょっと間に何か欲しいな』って思ったんだよね」
「はい」
「じゃあ、多分それ、必要だと思う」
花春は、そう言って笑った。
「私たちホールの仕事って、そういう『間』を拾うことだから。厨房には、そのための準備、ちょこっとだけ協力してもらえたら嬉しいなあって」
「俺、リーダーなんだけど、この厨房の」
「リーダーが一番柔軟だと、かっこいいです」
凱理が、なぜか皿を拭きながら口を挟む。
「黙ってグラス拭いてて」
絵斗は、タオルを振り回すふりをして凱理を追い払う。
それから、もう一度オーダーボードを見上げた。
前菜、スープ、魚、肉、デザート。
いつもはきっちり守られるはずの順番の前に、自分が作れる「一口」が介入してくるイメージが、じわじわと形になっていく。
「……プリンは、今すぐ冷やせるやつがない」
ぽつりと絵斗が呟いた。
「でも、レモンのシャーベットなら、少し柔らかめにして、グラスに小さく盛れる。上に、ミントの葉を一枚」
「さすがです」
璃音が自然にそう言うと、絵斗はむずがゆそうに横を向いた。
「ただし。提供のタイミングは、必ず俺か奏斗さんの許可を取れ。勝手に走り出すな」
「わかりました」
璃音は深く頭を下げる。
その横で、花春が「前菜の前の前菜」とメモ用紙に書き込みながら、くすくす笑っていた。
◇
しばらくして、カップルのテーブルから「すみません」と声がかかった。
璃音はすぐに向かう。
「ご注文、お決まりでしょうか」
「はい。あの、コースをお願いしたいんですが」
男性が、予約メモを見ながら言う。
「佐伯様ご予約の記念日コースでよろしいでしょうか。本日は、おふたりの大切な日ですね」
その一言で、女性の肩がぴくりと揺れた。
「……はい。五年、です」
その「五年」という言い方に、少しだけ迷いが混じっていた。
璃音は、それ以上踏み込まずに注文を繰り返す。
「前菜の盛り合わせ、スープ、お魚料理、お肉料理、デザート。アレルギーなどはございませんか」
「大丈夫です」
「ちなみに、甘いものはお好きですか」
璃音の問いに、女性は「好きです」と即答し、男性は一瞬迷ってから「まあ、普通かな」と答えた。
「承知しました。では、最初のお飲み物とご一緒に、こちらから少しだけ、甘いご挨拶をお届けいたしますね」
「甘い、ご挨拶……?」
女性が首をかしげる。
「お楽しみにしていてください」
璃音は、それ以上詳しくは言わず、オーダーを通しに厨房へ戻った。
「お待たせしました」
伝票を見た絵斗は、小さく頷く。
「じゃ、シャーベット出すタイミング、合図して。スパークリングがテーブルに届いた頃な」
「はい」
璃音がホールに戻ると、奏斗がカウンターの内側から様子を見ていた。
「順番を変える以上、戻せないことは意識しておいてください」
「はい。この一回だけにします」
「一回で十分です」
奏斗は、さりげなくグラスの位置を整えながら、窓際の席に視線を向ける。
カップルは、メニューを閉じたまま、まだ何か言い出せずにいる。
それでも、女性の目は、メニューの端に描かれた小さなイラスト——「酒の流れる川」を模した線に、時々吸い寄せられていた。
◇
ほどなくして、スパークリングワインが二つのグラスに注がれ、璃音は、その横に小さなグラスをそっと置いた。
「本日、記念日でご利用とのことでしたので、前菜の前に、ささやかなご挨拶をご用意しました」
透明なグラスの中で、薄いレモン色のシャーベットが、柔らかく光を反射する。
上には、小さなミントの葉が一枚。
「川沿いの夜は、時々、少し考え事をしすぎてしまうので」
璃音は、静かに続けた。
「一度、頭の中をリセットしていただけるように、すっきりしたものを。おふたりの五年分の思い出に、もうひとつ新しい味が加わりますように」
女性が、目を丸くする。
「すごい……綺麗」
男性は、グラスを手に取りながら、少し戸惑いを浮かべた。
「こういうの、初めてだな」
「溶けやすいので、よろしければ先にお召し上がりください。そのあと、ゆっくりコースを楽しんでいただければと思います」
璃音は、頭を下げてテーブルを離れた。
カウンターの影から、その様子を見ていた花春が、小声で囁く。
「いいじゃん、いいじゃん。なんか、映画みたい」
「映画かどうかは、分かりませんが」
奏斗は、腕を組んだまま川の方をちらりと見る。
「……あの二人の顔がどう変わるか。そこまで見てから、判断しましょう」
璃音は、注文票を持ったまま、窓際の席の様子を何度か遠目に確認した。
シャーベットを口に運んだ女性の表情が、ふわりとほどけていく。
氷の冷たさとレモンの酸味が、何かを吹き飛ばしたように見えた。
「おいしい……!」
彼女の一言に、男性もスプーンを伸ばす。
「あ、本当にすっきりするな。なんか、今日ずっと考えてたこと、ちょっとどうでもよくなってきた」
「それ、ちょっとは考えててよ」
女性が笑いながら突っ込む。
「いや、もちろん考えてるけどさ……なんか、五年ってあっという間だったな、とか。これからどうするかとか」
「うん」
「でも、こうやって川見ながら、同じシャーベット食べてるだけで、なんか十分な気もしてきた」
その会話が聞こえたわけではない。
それでも、グラス越しの二人の表情が、先ほどより柔らかくなっているのは、ホールからでも分かった。
璃音は、トレイを持つ手に力を込めず、静かに息を吐く。
(……よかった。少なくとも、最初の一口分は、うまくいった)
そのあと、前菜、スープ、魚、肉と料理が運ばれていく間、二人の会話は途切れなかった。
ときどき笑い声が川の音に混ざり、グラスの触れ合う音が、店内のBGMに小さなリズムを足していく。
締めくくりのデザートは、予約時に希望されていたメッセージ付きのプレートだった。
白い皿の上に、小さなケーキとフルーツが並び、その横に、チョコレートで一行。
「Five years, and more to come.」
英語で書かれたその言葉を見て、女性は思わず口元を押さえた。
「……こういうの、好きだと思って」
男性が、照れくさそうに視線をそらす。
「うん。大好き」
その答えを聞いた瞬間、璃音は、厨房の方をそっと振り返った。
絵斗が、遠くから親指を立てている。
カウンターの内側では、奏斗がノートの端に何かを書き込んでいた。
——記念日カップル、シャーベット作戦、成功。
そんな言葉が浮かんでいそうな筆致だった。
◇
閉店後。
椅子を上げ、床をモップで拭き終えた頃、花春がレジ周りに集まったメンバーを見回した。
「今日の反省会、簡単にやりましょうか。まず、田代さんたち四人組。帰り際、『また来ます』いただきました」
「よかった」
「で、記念日の佐伯さんカップル。お会計のときにね——」
花春は、レシートの裏に書かれた小さな文字を見せる。
「『最高の思い出になりました。また六年目に来ます』って」
紙には、丸い字でそう書かれていた。
凱理が「うわ、こういう手書きコメント、エモ……いや、なんでもないです」と言いかけて口をつぐむ。
「六年目、ちゃんとお店が続いてるように、僕らが働かないとですね」
花春が笑うと、絵斗も「シャーベット考えた俺、もっと褒められていいと思う」と胸を張る。
「絵斗さん、あれ本当においしかったです」
璃音が素直に言うと、絵斗はごまかすように鍋を片付け始めた。
「まあな。俺が本気出せば、前菜の前の前菜くらい余裕だし」
その様子を見ながら、奏斗はレジの中の小銭を揃えている。
「璃音さん」
「はい」
「今日、提供順を変えた件ですが」
璃音の背筋が、少しだけ伸びた。
「はい」
「きちんと理由を持って、厨房と共有した上で動いていたので、問題ありません」
奏斗は、レジを閉める音とともにそう言った。
「ただし、成功したからといって、毎回やっていいという意味ではありません」
「はい。一回限りのつもりでした」
「一回限り、ですか」
「記念日に、たまたま空気が固まっていたときにだけ、です」
璃音は、自分のエプロンの紐を解きながら、静かに続けた。
「でも、もしまた似たような空気を感じたら、そのときは、そのときの『一口』を考えるかもしれません」
「……気まぐれですね」
奏斗が、思わずぽつりと口にする。
「はい、自覚はあります」
璃音は、淡々と答えた。
「ただ、勝手に動く気はありません。ちゃんと、ここにいる人たちの顔を見てから決めます」
その言葉に、花春が「いいな、それ」と嬉しそうに笑う。
「璃音ちゃんのそういうとこ、私は好きだなあ。冷静に場を見てるのに、ときどき、思い切りハンドル切るみたいな」
「急ハンドルは危ないです」
奏斗が、即座に返した。
「でも、今日のは……」
そこで言葉を切り、窓の外の川に目を向ける。
夜の川には、まだいくつかの灯りが揺れていた。
今日ここで生まれた「最高の思い出」のひとつが、その揺れに紛れて流れていくような気がする。
「悪くない急カーブでした」
奏斗は、そう付け加えた。
璃音は、その一言に小さく目を見開き、それからふっと笑う。
「……ありがとうございます」
川の音と、グラスを片付ける小さな音だけが残る店内で、
冷静に流れを読む彼女の、少し気まぐれな一歩が、静かに夜の記憶に加わっていった。
川沿いの提灯が風に揺れ、そのたびに店内の壁にも、淡い赤と金色の影が跳ねる。
ホール奥のテーブルでは、璃音がトレイを片手に、花春の動きをじっと目で追っていた。
「まず、席にご案内して、ジャケットとか荷物を預かるかどうか確認します」
花春は、お客がいないテーブルに向かって、実際の動きをなぞる。
椅子を少し引き、見えない誰かに「どうぞ」と微笑みかける。その横で、璃音はメモ帳を開いたまま動かない。
「そのあと、おしぼりをお出しして、すぐにお水。メニューをお渡しするときに、一言」
「一言……?」
「はい、『本日おすすめはこちらです』でも、『川沿いのお席、少し冷えるのでブランケットあります』でも。その場で必要そうなことを、短く添えてください」
璃音は、小さく頷く。
「状況を見て、必要そうな一言、ですね」
「そうそう。璃音ちゃん、飲食経験長いから、たぶんすぐ慣れると思う。……あ、でも」
花春は、ぴょこんと人差し指を立てた。
「ホールは、料理を落とさず運べるだけじゃ仕事にならないんですよ」
「はい」
「運んだあと、その人がどんな顔して食べるかも見る。それが、この店では大事です」
璃音は、テーブルの上にトレイを置き、しばらく黙って考え込んだ。
「食べる前と、食べたあと、両方の顔……ですね」
「そう。で、顔を見て、『あ、次はこっちだな』って、順番をちょっと入れ替えたりもする」
花春がそう言ったとき、カウンターの中から奏斗の視線がこちらに向いた。
「ホールで、提供順を変えるときは、必ず一声かけてください」
彼は、グラスを拭きながら静かに口を挟む。
「厨房、バタつきますから」
「了解でーす」
花春が明るく返事をし、璃音も「気をつけます」とメモ帳に一行書き込む。
そのとき、入口のベルが鳴った。
「いらっしゃいませ!」
花春がすぐさま入口へ向かう。
璃音も慌ててトレイを手に取り、その背中を追いかけた。
入ってきたのは、スーツ姿の四人組。会社帰りらしい、少し疲れの残るような顔つきだ。
「ご予約いただいている、田代様でしょうか」
花春が確認すると、先頭の男性が「あ、はい」と頷く。
その声のトーンを聞いた瞬間、璃音はメモ帳を閉じた。
(声が低い……今日は、あまり長居しないつもりの顔)
表情と歩き方から、そう感じ取る。
花春が席に案内している間に、璃音はすでに水のグラスを四つ用意していた。
トレイの上でグラスが触れ合わないよう、少し間隔を空ける。
「おしぼり失礼します」
テーブルに滑るようにグラスを置き、彼らのタイミングと呼吸を合わせるように、短い言葉を添える。
「本日、お仕事お疲れさまでした」
その一言に、四人の肩の力が、ほんの少しだけ抜けたように見えた。
「……ここ、前にも来たとこだっけ?」
「うん、取引先連れてきたときに」
そんな会話が耳に入る。
璃音は、メニューを渡しながら、さりげなく壁際のコートハンガーの位置を示した。
「こちらのお席、少し通路側が冷えるので、もし寒かったらひざ掛けお持ちしますね」
客のひとりが「助かります」と笑った。
その笑顔を横目で確認しながら、璃音は注文を取りに戻るタイミングを計る。
——順調。
研修初日の夜にしては、静かな滑り出しだった。
◇
夜も深まりかけた頃、花春がレジ脇の予約表に目をやり、ふっと表情を変えた。
「あ、次の予約、カップルさんだ」
「カップル?」
凱理が、会計のレシートを揃えながら顔を上げる。
「『記念日のディナーで利用』って書いてあります。メモに、『デザートにメッセージ希望』……あ、これ、私書きました。電話取った」
「花春さん、『記念日』って、どの種類ですか」
璃音が、予約票を覗き込む。
「えっと……付き合って五年、って言ってた気がする。たぶん、誕生日とかじゃなくて、二人の記念日」
「五年」
璃音は、その数字を頭の中でころがした。
五年分の仕事帰り、五年分の電話、五年分の「おはよう」と「おやすみ」。
それが、今日の川沿いの夜に積み重なっている。
「璃音さん」
奏斗の声が、カウンターから飛んだ。
「記念日のテーブル、担当してもらえますか。僕と花春がフォローに入ります」
「はい」
璃音は、胸の前で両手を合わせるように小さく息を整えた。
しばらくして、入口のベルが鳴る。
入ってきたのは、落ち着いた色のワンピースを着た女性と、その隣に立つ男性だった。
二人の間には、それなりの距離があった。手をつなぐでもなく、逆に背中を向け合うわけでもない、微妙な空気。
「いらっしゃいませ。本日はご予約ありがとうございます」
璃音は、普段より少し柔らかい声で迎えた。
「ご予約の佐伯様でしょうか」
「はい」
男性が答える前に、女性の方が小さく頷く。
「こちらのお席へどうぞ。川がよく見える席をご用意しています」
窓際の二人掛けテーブル。
川面には、対岸の灯りと、さっきまでより少し強くなった風が作る波紋が揺れている。
席に案内しながら、璃音は二人の表情をさりげなく観察した。
女性は、窓の外を見ようとしながら、ちらりと男性の顔色をうかがう。
男性は、メニューを開きかけては指を止め、何か言い出せずにいる。
(……ちょっと、ぎこちない)
そう感じたところで、花春が後ろからそっと近づいてきた。
「メニュー、お決まりになりましたらお呼びください。ゆっくりで大丈夫ですからね」
花春の一言に、女性が小さく微笑む。
璃音は、二人にお水とおしぼりを置いたあとで、厨房の方へ戻った。
「カップルさん、どう?」
絵斗が、まな板の上のレモンを切りながら尋ねる。
「ちょっと緊張しているみたいです」
「そりゃ記念日だしな。こっちはコース料理、もう段取り組んでるから」
絵斗は、ホワイトボードに書かれたオーダー表を顎で指した。
「前菜の盛り合わせ、スープ、魚、肉、デザート。いつもの記念日コース」
その順番を見た瞬間、璃音の中で、ひとつのイメージが浮かんだ。
——デザートまで、間が持つだろうか。
先ほど見た、二人のぎこちない空気。
それをそのまま最後まで引きずったまま、ようやく甘い皿にたどり着く想像が、頭の中でぼんやり広がる。
「絵斗さん」
「ん?」
「デザート……少しだけ、先に出せますか」
包丁の動きが止まる。
「は?」
厨房の空気が、わずかに張り詰めた。
コンロの火の音だけが、しばらく続く。
「どういうこと?」
「全部ではなくて、ほんの一口だけ。たとえば、小さなグラスに入れたプリンとか。『本日のご挨拶』として、最初のドリンクと一緒に出すのはどうでしょう」
絵斗が、まばたきを忘れたまま璃音の顔を見る。
「普通、デザートは最後だろ。締めだろ。そこ動かされたら、段取り全部崩れるんだけど」
「全部のテーブルでそうするわけではありません。あの席だけ、です」
璃音は、淡々と続ける。
「あの二人、少し会話に困っているように見えました。甘いものが間に入ると、話題がひとつ増えます」
「話題?」
「『これ、おいしいね』でも、『前に二人で食べたデザートに似てるね』でも。言葉のきっかけが、ほんの少し増えるだけで、空気が変わるかもしれません」
絵斗は眉間にしわを寄せ、「うーん」と唸った。
「そういうのは、ホール側の仕事じゃないの? 俺の皿、勝手にいじらないでほしいんだけど」
「勝手にはいじりません。だから、相談しています」
璃音は、一歩も引かない口調で言う。
「コース自体は、いつも通り最後にデザートを出してください。その前に、『前菜の前の前菜』として、一口だけ。内容は、絵斗さんにお任せします」
「お任せって……簡単に言うなよ」
絵斗が頭をかく。その横で、花春がそっと割って入った。
「ちょっとだけ聞いてもいい?」
「なに」
「璃音ちゃん、その二人の顔見て、『あ、今ちょっと間に何か欲しいな』って思ったんだよね」
「はい」
「じゃあ、多分それ、必要だと思う」
花春は、そう言って笑った。
「私たちホールの仕事って、そういう『間』を拾うことだから。厨房には、そのための準備、ちょこっとだけ協力してもらえたら嬉しいなあって」
「俺、リーダーなんだけど、この厨房の」
「リーダーが一番柔軟だと、かっこいいです」
凱理が、なぜか皿を拭きながら口を挟む。
「黙ってグラス拭いてて」
絵斗は、タオルを振り回すふりをして凱理を追い払う。
それから、もう一度オーダーボードを見上げた。
前菜、スープ、魚、肉、デザート。
いつもはきっちり守られるはずの順番の前に、自分が作れる「一口」が介入してくるイメージが、じわじわと形になっていく。
「……プリンは、今すぐ冷やせるやつがない」
ぽつりと絵斗が呟いた。
「でも、レモンのシャーベットなら、少し柔らかめにして、グラスに小さく盛れる。上に、ミントの葉を一枚」
「さすがです」
璃音が自然にそう言うと、絵斗はむずがゆそうに横を向いた。
「ただし。提供のタイミングは、必ず俺か奏斗さんの許可を取れ。勝手に走り出すな」
「わかりました」
璃音は深く頭を下げる。
その横で、花春が「前菜の前の前菜」とメモ用紙に書き込みながら、くすくす笑っていた。
◇
しばらくして、カップルのテーブルから「すみません」と声がかかった。
璃音はすぐに向かう。
「ご注文、お決まりでしょうか」
「はい。あの、コースをお願いしたいんですが」
男性が、予約メモを見ながら言う。
「佐伯様ご予約の記念日コースでよろしいでしょうか。本日は、おふたりの大切な日ですね」
その一言で、女性の肩がぴくりと揺れた。
「……はい。五年、です」
その「五年」という言い方に、少しだけ迷いが混じっていた。
璃音は、それ以上踏み込まずに注文を繰り返す。
「前菜の盛り合わせ、スープ、お魚料理、お肉料理、デザート。アレルギーなどはございませんか」
「大丈夫です」
「ちなみに、甘いものはお好きですか」
璃音の問いに、女性は「好きです」と即答し、男性は一瞬迷ってから「まあ、普通かな」と答えた。
「承知しました。では、最初のお飲み物とご一緒に、こちらから少しだけ、甘いご挨拶をお届けいたしますね」
「甘い、ご挨拶……?」
女性が首をかしげる。
「お楽しみにしていてください」
璃音は、それ以上詳しくは言わず、オーダーを通しに厨房へ戻った。
「お待たせしました」
伝票を見た絵斗は、小さく頷く。
「じゃ、シャーベット出すタイミング、合図して。スパークリングがテーブルに届いた頃な」
「はい」
璃音がホールに戻ると、奏斗がカウンターの内側から様子を見ていた。
「順番を変える以上、戻せないことは意識しておいてください」
「はい。この一回だけにします」
「一回で十分です」
奏斗は、さりげなくグラスの位置を整えながら、窓際の席に視線を向ける。
カップルは、メニューを閉じたまま、まだ何か言い出せずにいる。
それでも、女性の目は、メニューの端に描かれた小さなイラスト——「酒の流れる川」を模した線に、時々吸い寄せられていた。
◇
ほどなくして、スパークリングワインが二つのグラスに注がれ、璃音は、その横に小さなグラスをそっと置いた。
「本日、記念日でご利用とのことでしたので、前菜の前に、ささやかなご挨拶をご用意しました」
透明なグラスの中で、薄いレモン色のシャーベットが、柔らかく光を反射する。
上には、小さなミントの葉が一枚。
「川沿いの夜は、時々、少し考え事をしすぎてしまうので」
璃音は、静かに続けた。
「一度、頭の中をリセットしていただけるように、すっきりしたものを。おふたりの五年分の思い出に、もうひとつ新しい味が加わりますように」
女性が、目を丸くする。
「すごい……綺麗」
男性は、グラスを手に取りながら、少し戸惑いを浮かべた。
「こういうの、初めてだな」
「溶けやすいので、よろしければ先にお召し上がりください。そのあと、ゆっくりコースを楽しんでいただければと思います」
璃音は、頭を下げてテーブルを離れた。
カウンターの影から、その様子を見ていた花春が、小声で囁く。
「いいじゃん、いいじゃん。なんか、映画みたい」
「映画かどうかは、分かりませんが」
奏斗は、腕を組んだまま川の方をちらりと見る。
「……あの二人の顔がどう変わるか。そこまで見てから、判断しましょう」
璃音は、注文票を持ったまま、窓際の席の様子を何度か遠目に確認した。
シャーベットを口に運んだ女性の表情が、ふわりとほどけていく。
氷の冷たさとレモンの酸味が、何かを吹き飛ばしたように見えた。
「おいしい……!」
彼女の一言に、男性もスプーンを伸ばす。
「あ、本当にすっきりするな。なんか、今日ずっと考えてたこと、ちょっとどうでもよくなってきた」
「それ、ちょっとは考えててよ」
女性が笑いながら突っ込む。
「いや、もちろん考えてるけどさ……なんか、五年ってあっという間だったな、とか。これからどうするかとか」
「うん」
「でも、こうやって川見ながら、同じシャーベット食べてるだけで、なんか十分な気もしてきた」
その会話が聞こえたわけではない。
それでも、グラス越しの二人の表情が、先ほどより柔らかくなっているのは、ホールからでも分かった。
璃音は、トレイを持つ手に力を込めず、静かに息を吐く。
(……よかった。少なくとも、最初の一口分は、うまくいった)
そのあと、前菜、スープ、魚、肉と料理が運ばれていく間、二人の会話は途切れなかった。
ときどき笑い声が川の音に混ざり、グラスの触れ合う音が、店内のBGMに小さなリズムを足していく。
締めくくりのデザートは、予約時に希望されていたメッセージ付きのプレートだった。
白い皿の上に、小さなケーキとフルーツが並び、その横に、チョコレートで一行。
「Five years, and more to come.」
英語で書かれたその言葉を見て、女性は思わず口元を押さえた。
「……こういうの、好きだと思って」
男性が、照れくさそうに視線をそらす。
「うん。大好き」
その答えを聞いた瞬間、璃音は、厨房の方をそっと振り返った。
絵斗が、遠くから親指を立てている。
カウンターの内側では、奏斗がノートの端に何かを書き込んでいた。
——記念日カップル、シャーベット作戦、成功。
そんな言葉が浮かんでいそうな筆致だった。
◇
閉店後。
椅子を上げ、床をモップで拭き終えた頃、花春がレジ周りに集まったメンバーを見回した。
「今日の反省会、簡単にやりましょうか。まず、田代さんたち四人組。帰り際、『また来ます』いただきました」
「よかった」
「で、記念日の佐伯さんカップル。お会計のときにね——」
花春は、レシートの裏に書かれた小さな文字を見せる。
「『最高の思い出になりました。また六年目に来ます』って」
紙には、丸い字でそう書かれていた。
凱理が「うわ、こういう手書きコメント、エモ……いや、なんでもないです」と言いかけて口をつぐむ。
「六年目、ちゃんとお店が続いてるように、僕らが働かないとですね」
花春が笑うと、絵斗も「シャーベット考えた俺、もっと褒められていいと思う」と胸を張る。
「絵斗さん、あれ本当においしかったです」
璃音が素直に言うと、絵斗はごまかすように鍋を片付け始めた。
「まあな。俺が本気出せば、前菜の前の前菜くらい余裕だし」
その様子を見ながら、奏斗はレジの中の小銭を揃えている。
「璃音さん」
「はい」
「今日、提供順を変えた件ですが」
璃音の背筋が、少しだけ伸びた。
「はい」
「きちんと理由を持って、厨房と共有した上で動いていたので、問題ありません」
奏斗は、レジを閉める音とともにそう言った。
「ただし、成功したからといって、毎回やっていいという意味ではありません」
「はい。一回限りのつもりでした」
「一回限り、ですか」
「記念日に、たまたま空気が固まっていたときにだけ、です」
璃音は、自分のエプロンの紐を解きながら、静かに続けた。
「でも、もしまた似たような空気を感じたら、そのときは、そのときの『一口』を考えるかもしれません」
「……気まぐれですね」
奏斗が、思わずぽつりと口にする。
「はい、自覚はあります」
璃音は、淡々と答えた。
「ただ、勝手に動く気はありません。ちゃんと、ここにいる人たちの顔を見てから決めます」
その言葉に、花春が「いいな、それ」と嬉しそうに笑う。
「璃音ちゃんのそういうとこ、私は好きだなあ。冷静に場を見てるのに、ときどき、思い切りハンドル切るみたいな」
「急ハンドルは危ないです」
奏斗が、即座に返した。
「でも、今日のは……」
そこで言葉を切り、窓の外の川に目を向ける。
夜の川には、まだいくつかの灯りが揺れていた。
今日ここで生まれた「最高の思い出」のひとつが、その揺れに紛れて流れていくような気がする。
「悪くない急カーブでした」
奏斗は、そう付け加えた。
璃音は、その一言に小さく目を見開き、それからふっと笑う。
「……ありがとうございます」
川の音と、グラスを片付ける小さな音だけが残る店内で、
冷静に流れを読む彼女の、少し気まぐれな一歩が、静かに夜の記憶に加わっていった。
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