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第11話 飲食店スタッフとして働いていた時の思い出・奏斗
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火曜日の夜、「川べり文庫」はめずらしく静かだった。
ラストオーダーを終え、最後の客を見送ったあと、店内にはスタッフの足音だけが残っている。
川沿いの提灯はまだ灯っているけれど、その灯りもどこか遠く、窓ガラス越しに淡く揺れているだけだ。
「……よし」
花春が、ホールの照明を一段階落とした。
さっきまでお客が座っていたテーブルには、まかない用の皿が並び始めている。
「今日は、ちゃんと座って食べられそうだね」
絵斗が、スープの鍋を持って出てくる。
湯気の向こうに、少し誇らしげな顔があった。
「これ、何スープですか?」
璃音が椅子を引きながら尋ねる。
「野菜と鶏のスープ。冷蔵庫の半端なやつ全部入れたけど、ちゃんとおいしくしたから安心して」
「『半端なやつ』って言わないでください」
阿紗美が笑いながら、パンを籠ごとテーブルに置いた。
「でも、間違いなく栄養はありますね」
凱理は、スプーンを持つ前から椅子に深く座り込んでいる。
「いただきます、って言う前に魂だけ食べ終わりそうなんですけど」
「じゃあ、早めに始めよっか」
花春が両手を合わせた。
「今日も一日、お疲れさまでした。——いただきます」
全員の声が重なり、スプーンが皿に当たる音がテーブルの上に広がる。
◇
しばらくは、ただ食べる音が続いた。
温かいスープが喉を通り、固くなっていた肩がゆるんでいく。
「……こうして落ち着いて座ると、なんか変な感じですね」
璃音が、パンをちぎりながら言った。
「いつもは、お客さんが帰るまで立ってるから」
「いいじゃない。たまには『閉店後の喫茶店』みたいな空気、楽しもうよ」
花春が、マグカップを両手で包む。
「そういえば、この前言ってたでしょ。『飲食店スタッフとして働いていた時の思い出』、いつか話そうって」
「ああ」
奏斗は、カウンターの内側からその言葉を聞きながら、空いたグラスをまとめていた。
「今日くらいの静けさなら、話す時間もありますね」
「でしょ?」
花春は、くるりと椅子を回してカウンターの方を見る。
「せっかくだから、誰か一人ずつ話していかない? 最初に働いた店のこととか、忘れられない夜のこととか」
「それ、絶対おもしろい」
凱理が、スプーンをくるくる回しながら乗ってくる。
「俺、前の店の黒歴史めっちゃありますよ。ドリンク十杯分こぼした話とか」
「それは、心の準備ができた時に聞くね」
絵斗が苦笑する。
「順番、どうします?」
璃音が周りを見回す。
「こういうのって、だいたい『話したい人から』ってなるけど……」
「『話したくないけど、聞いてほしいことがある人』から始めるのはどう?」
花春が、カウンターの方をちらりと見た。
「奏斗さん、とか」
視線が一斉に集まる。
奏斗は、手に持っていたグラスを一度布巾に戻し、ゆっくりと息を吐いた。
「……僕ですか」
「はい」
花春は、にこりと笑う。
「いつも『数字』とか『原価』とか言ってる人が、最初にどんな店で働いてたのか、純粋に気になります」
「私も聞いてみたいです」
璃音が、スープのカップを両手で持ったまま頷いた。
「最初からそんなに折り目正しかったのか、それともどこかの店でそうなったのか」
「失礼な前提ですね」
そう言いながらも、奏斗はカウンターから出てきて、空いている椅子に腰を下ろした。
エプロンの紐を少し緩める。
「……では、少しだけ」
そう前置きしてから、カウンターの明かりを一段階落とした。
窓の外の川の灯りが、ほんの少しだけ近くなる。
◇
「最初に飲食店で働いたのは、大学二年のときでした」
奏斗は、手元のマグカップを一度回してから、遠くを見るように目を細めた。
「駅前のファミリーレストランです。郊外によくある、駐車場付きの、どこにでもあるチェーン店」
「ありそう」
凱理が、さっそく頷く。
「メニューの写真が大きいとこですね?」
「そうです。制服のポロシャツとエプロンをもらって、最初の仕事は『水を運ぶこと』でした」
大学の講義を終え、夕方の電車でその店に向かっていたころの景色が、頭の中に鮮明によみがえる。
駅から伸びるバイパス沿い。
ガソリンスタンドとドラッグストアとクリーニング店に挟まれた、そのレストランは、夜になると看板のネオンだけがやたら眩しかった。
「最初の一週間は、ひたすら『いらっしゃいませ』『お待たせいたしました』の練習でした。
テーブル番号と席の位置、ドリンクバーの説明の仕方、クレジットカードの通し方。全部マニュアル化されていて」
「チェーン店っぽいですね」
璃音が、どこか懐かしそうに笑う。
「僕は、そういう『決まりごと』が嫌いではありませんでした。
やるべきことが全部書いてあって、その通りに動けば、店がきれいに回る。数字も、ちゃんとついてくる」
「数字?」
「毎日の売上です」
奏斗は、カウンターの帳簿を軽く指で叩いた。
「レジ締めを手伝うようになってから、売上グラフをつけるのが密かな楽しみになりました。
月曜から日曜までの推移、雨の日と晴れの日の違い、クーポンを出した日の伸び方。全部、線になって見えてくる」
「うわ、出た。今と同じことしてる」
凱理が、スプーンで机をとんとん叩く。
「その頃から、数字オタクだったんですね」
「オタクと言われると少し心外ですが」
奏斗は、少しだけ口元を緩めた。
「でも、正直に言うと——、その店はあまり『居心地のいい場所』ではありませんでした」
少しだけ声のトーンが落ちる。
「シフトが足りなければ、当然のように連勤になる。客席がどれだけ埋まっていても、『もっと回せるだろう』と言われる。
売上が前月比を下回ると、エリアマネージャーが来て、ホールとキッチンを『チェック』していく」
そのときの空気の重さが、今でも身体のどこかに残っている。
「だからこそ、数字を整えることに必死だったのかもしれません。
シフト表と売上実績を見比べて、『この時間帯に何人いれば、何分で料理が出せるか』を計算して。
『これだけやっている』と言える根拠がほしかったんだと思います」
「それ、今でもやってますね」
花春が、苦笑しながら相槌を打つ。
「『この人数でこの売上なら悪くない』って、よく言ってる」
「はい。その癖は多分、そこからです」
奏斗は認めるように頷いた。
「ただ、その店で一つだけ、数字にできなかったものがあります」
「何ですか?」
璃音の問いに、少しだけ間を置く。
「——『ありがとう』です」
◇
その人は、いつも同じ時間に来る客だった。
平日の夜九時。
ディナータイムのピークが落ち着き、テーブルの皿が一斉に片付けられていく時間帯。
レジ横の扉が静かに開き、少し古びたコートを着た女性が入ってくる。
肩までの髪を後ろでまとめ、手には厚手の紙袋。
「いらっしゃいませ」
練習通りに声を出すと、その女性はいつも、少しだけほっとしたような表情を浮かべた。
「おひとりさまですか」
「ええ、いつもの席空いてる?」
そう言うと、店の奥の窓際をちらりと見る。
そこは、駐車場の向こうにコンビニの看板が見えるだけの席だった。
特別な景色があるわけではない。けれど、その人はいつも、そこを選んだ。
「空いています。ご案内しますね」
その女性——佐江子さんは、必ず同じものを注文した。
ドリンクバーと、サラダと、ハンバーグのセット。
ドリンクバーでは、最初にホットコーヒーを一杯だけ入れ、あとはほとんど手をつけない。
代わりに、サラダをゆっくり時間をかけて食べ、ハンバーグを半分だけ残す。
残りは、いつも「明日の朝に食べるの」と言って持ち帰りにしていた。
「もったいないからじゃなくてね」
ある日、奏斗がこっそり理由を聞いたとき、佐江子さんは笑って答えた。
「明日の朝、これ温めて食べると、『昨日はちゃんとご飯食べて帰ったな』って思い出せるから」
「はあ……」
当時の奏斗には、その感覚がいまいち分からなかった。
ご飯はその場で食べるもので、翌朝に持ち越すものではないと思っていたからだ。
「でもさ、ここに来る前は、コンビニのおにぎりだけで済ませちゃう日も多かったのよ」
佐江子さんは、フォークを皿に置きながら続けた。
「家帰るとぐったりしちゃってね。誰かに『お疲れさま』って言われる前に布団に倒れ込んじゃうこともあって。
だから、ここに寄るようになったの」
「うちに、ですか」
「ええ。ここに来ると、『いらっしゃいませ』って言ってもらえるでしょ」
それは、あまりにも当たり前の台詞だった。
「それから、『ありがとうございました』って言ってもらえる。
たまに『今日は遅い時間ですね』って言われたり、『いつもありがとうございます』って言われたり」
佐江子さんは、ドリンクバーのカップを両手で包んだ。
「お金払ってるのは私なんだけどね。不思議と、『ここに来ると、今日一日頑張ったって認めてもらえた気がする』のよ」
その言葉は、当時の奏斗には、少しだけ重たかった。
レジの数字や、客数のグラフのどこにも、その「認められた感じ」は記録されていない。
シフト表にも、店長の報告書にも、「今日、一人の客が『頑張った気がした』」なんて項目はなかった。
「……そう言っていただけるのは、光栄です」
マニュアルにない言葉を探して、なんとかそう返した。
「こちらこそ、いつもありがとうございます」
それは、その場しのぎの台詞のつもりだった。
けれど、そのあとも佐江子さんは何度も通い、そのたびに、少しずつ「ありがとう」の使い方が変わっていくのを見ていた。
「席空けておいてくれてありがとう」
「この時間まで開けてくれてありがとう」
「黙ってゆっくりさせてくれてありがとう」
どれも、売上には乗らない「ありがとう」だった。
◇
そのファミリーレストランが閉店すると決まったのは、大学四年の春だった。
郊外の大型ショッピングモールの開業で、駅前の店が軒並み苦戦していた時期だ。
エリアマネージャーは会議のたびに「効率」「収益」「回転率」という言葉を繰り返し、最後に一枚の紙を出した。
「この店は、今月末で営業終了です」
発表は、それだけだった。
閉店までの一ヶ月、店の空気はどこか浮いていた。
売上が上がろうが下がろうが、もう関係ない。
備品の在庫も、最小限に抑えられる。
「最後の一週間だけでも、客数の記録を更新したい」
店長はそう言っていたが、その目には疲れが滲んでいた。
閉店前日。
その日も、佐江子さんはいつも通り九時に来店した。
「いらっしゃいませ」
奏斗は、いつも通りの声で迎える。
「今日は、いつもの席あいてる?」
そう聞かれて、どきりとした。
「……はい。あいています」
その席には、「閉店のお知らせ」が貼られている。
窓際のテーブルにも、テーブルごとに小さなカードが立ててあり、そこには「長年のご愛顧ありがとうございました」の文字。
佐江子さんは、席に座る前にそのカードをじっと見つめた。
「……そうなのね」
それだけ言って、いつものように腰を下ろす。
「ご注文、お決まりですか」
「いつものセットちょうだい」
メニューも見ないまま、そう言った。
キッチンでオーダーを通しながら、奏斗は胸の奥に、何か小さな棘が刺さるような感覚を覚えていた。
閉店のことは、もっと早く伝えるべきだったのかもしれない。
でも、「伝えたところで何が変わる」と思ってしまった自分もいる。
ハンバーグの皿とサラダを運び、テーブルに置く。
「……ありがとうございます」
佐江子さんは、いつものようにサラダから一口食べた。
しばらく沈黙が続いたあと、彼女はぽつりと言った。
「最後の週に来られて、よかった」
「……はい」
「本当はね、閉店の知らせ見た瞬間、ちょっと腹が立ったのよ」
フォークの先で、サラダの葉を摘まみながら続ける。
「『なんで先に教えてくれなかったの』って。
でも、ここに座ってみたら、やっぱりいつもの席で、いつもの店員さんがいて、『いらっしゃいませ』って言ってくれて」
視線が、奏斗に向けられる。
「それだけで、『ここがあるうちに間に合ってよかった』って気持ちの方が大きくなっちゃった」
「……」
「今さら、文句言ってもしょうがないものね。ここで食べたご飯は、私の体のどこかになってるし」
佐江子さんは、いつものようにハンバーグを半分だけ食べた。
「明日の朝も、温めて食べるの?」
つい、そんなことを聞いてしまう。
「当たり前でしょ」
彼女は、笑った。
「『昨日まで通ってた店、ちゃんと最後まで開いててくれたな』って思い出すために」
その言葉に、胸の奥の棘が、少しだけ場所を変えた。
「……ありがとうございます」
マニュアルには載っていない言い方で、もう一度頭を下げる。
「長いこと、ご利用いただきまして」
「こちらこそ、長いこと、毎晩の『お疲れさま』をありがとうございました」
佐江子さんがそう言った瞬間、レジ横の「閉店のお知らせ」が、急にぼやけて見えた。
その夜の売上は、特別高かったわけではない。
数字だけ見れば、「平日の平均」から少し上がった程度。
でも、レジ締めをしながら、奏斗は初めて、「今日の売上」を帳簿に書き込む手を止めた。
そして、空いている欄の片隅に、小さくこう書き込んだ。
「今日、『最後まで開けていてくれてありがとう』と言われた」
その一行だけは、どんなグラフにも反映されない。
けれど、その夜以来、彼の中で「数字の横に書き込むメモ」が増えていった。
◇
「それが、最初に『数字では測れないありがとう』を意識した夜です」
そこまで話して、奏斗はマグカップを一口飲んだ。
冷めかけたお茶の渋みが、少しだけ現実に引き戻してくる。
「閉店の日、店長が最後のレジ締めをしている横で、僕は帳簿の余白に、今まで書きためた『ありがとう』のメモを全部読み返しました」
花春たちは、息を飲むように静かに聞いていた。
「『席空けておいてくれてありがとう』
『遅い時間まで開けてくれてありがとう』
『新人さんに優しくしてくれてありがとう』」
「そんなにたくさん……」
璃音が、目を丸くする。
「売上としては、たぶん『成功した店』ではなかったと思います。
でも、その余白のメモだけは、『ここで働いていた時間は無駄ではなかった』と思わせてくれました」
奏斗は、テーブルの木目を指でなぞる。
「閉店してからしばらくして、『次の店はどうする』と聞かれたとき、僕は『もう一度、数字を整えられる店で働きたい』と思いました。
同時に、『余白に書き込める店でなければ意味がない』とも」
「それで、『川べり文庫』に?」
花春が尋ねる。
「はい」
奏斗は、少しだけ照れくさそうに笑った。
「ここなら、レシピも帳簿も整えつつ、余白を広くとれそうだったので」
「余白、たしかに多いですね」
凱理が、自分のまかないの皿を指差す。
「今日のスープのレシピなんて、絶対どこにも残ってないですし」
「そこは、もう少し整えてほしいところですが」
奏斗は、いつもの調子で絵斗に視線を向けた。
「でも、そのおかげで『今日のまかない、おいしかった』というメモは、ちゃんと増えています」
「メモってるんですか、それも」
「頭の中の帳簿に」
そう言って、少しだけ視線を璃音に向ける。
カウンターの向こうには、黒い表紙のノートが置かれていた。
そこには、「君に恋する確率」と書かれている。
数字の横に、また新しい余白が生まれつつあることを、自分自身が一番よく分かっていた。
◇
「……というわけで」
奏斗は、少しだけ居心地悪そうに咳払いをした。
「これが、『飲食店スタッフとして働いていた時の思い出』のうち、一つです」
「一つってことは、まだあるんですね」
璃音が、興味深そうに首をかしげる。
「続きは、また今度で」
「じゃあ、次は誰にします?」
花春が、テーブルを見回す。
「せっかくだから、『マニュアルの海』を経験してきた人の話とか聞きたいなあ」
「マニュアルの海……」
その言い方に、璃音が苦笑した。
「たぶん、それ、私ですね」
視線が、再び一斉に集まる。
窓の外では、川面に映る灯りがゆっくりと流れている。
酒の流れる川のほとりで、閉店後の小さなテーブルは、次の思い出話を待っていた。
ラストオーダーを終え、最後の客を見送ったあと、店内にはスタッフの足音だけが残っている。
川沿いの提灯はまだ灯っているけれど、その灯りもどこか遠く、窓ガラス越しに淡く揺れているだけだ。
「……よし」
花春が、ホールの照明を一段階落とした。
さっきまでお客が座っていたテーブルには、まかない用の皿が並び始めている。
「今日は、ちゃんと座って食べられそうだね」
絵斗が、スープの鍋を持って出てくる。
湯気の向こうに、少し誇らしげな顔があった。
「これ、何スープですか?」
璃音が椅子を引きながら尋ねる。
「野菜と鶏のスープ。冷蔵庫の半端なやつ全部入れたけど、ちゃんとおいしくしたから安心して」
「『半端なやつ』って言わないでください」
阿紗美が笑いながら、パンを籠ごとテーブルに置いた。
「でも、間違いなく栄養はありますね」
凱理は、スプーンを持つ前から椅子に深く座り込んでいる。
「いただきます、って言う前に魂だけ食べ終わりそうなんですけど」
「じゃあ、早めに始めよっか」
花春が両手を合わせた。
「今日も一日、お疲れさまでした。——いただきます」
全員の声が重なり、スプーンが皿に当たる音がテーブルの上に広がる。
◇
しばらくは、ただ食べる音が続いた。
温かいスープが喉を通り、固くなっていた肩がゆるんでいく。
「……こうして落ち着いて座ると、なんか変な感じですね」
璃音が、パンをちぎりながら言った。
「いつもは、お客さんが帰るまで立ってるから」
「いいじゃない。たまには『閉店後の喫茶店』みたいな空気、楽しもうよ」
花春が、マグカップを両手で包む。
「そういえば、この前言ってたでしょ。『飲食店スタッフとして働いていた時の思い出』、いつか話そうって」
「ああ」
奏斗は、カウンターの内側からその言葉を聞きながら、空いたグラスをまとめていた。
「今日くらいの静けさなら、話す時間もありますね」
「でしょ?」
花春は、くるりと椅子を回してカウンターの方を見る。
「せっかくだから、誰か一人ずつ話していかない? 最初に働いた店のこととか、忘れられない夜のこととか」
「それ、絶対おもしろい」
凱理が、スプーンをくるくる回しながら乗ってくる。
「俺、前の店の黒歴史めっちゃありますよ。ドリンク十杯分こぼした話とか」
「それは、心の準備ができた時に聞くね」
絵斗が苦笑する。
「順番、どうします?」
璃音が周りを見回す。
「こういうのって、だいたい『話したい人から』ってなるけど……」
「『話したくないけど、聞いてほしいことがある人』から始めるのはどう?」
花春が、カウンターの方をちらりと見た。
「奏斗さん、とか」
視線が一斉に集まる。
奏斗は、手に持っていたグラスを一度布巾に戻し、ゆっくりと息を吐いた。
「……僕ですか」
「はい」
花春は、にこりと笑う。
「いつも『数字』とか『原価』とか言ってる人が、最初にどんな店で働いてたのか、純粋に気になります」
「私も聞いてみたいです」
璃音が、スープのカップを両手で持ったまま頷いた。
「最初からそんなに折り目正しかったのか、それともどこかの店でそうなったのか」
「失礼な前提ですね」
そう言いながらも、奏斗はカウンターから出てきて、空いている椅子に腰を下ろした。
エプロンの紐を少し緩める。
「……では、少しだけ」
そう前置きしてから、カウンターの明かりを一段階落とした。
窓の外の川の灯りが、ほんの少しだけ近くなる。
◇
「最初に飲食店で働いたのは、大学二年のときでした」
奏斗は、手元のマグカップを一度回してから、遠くを見るように目を細めた。
「駅前のファミリーレストランです。郊外によくある、駐車場付きの、どこにでもあるチェーン店」
「ありそう」
凱理が、さっそく頷く。
「メニューの写真が大きいとこですね?」
「そうです。制服のポロシャツとエプロンをもらって、最初の仕事は『水を運ぶこと』でした」
大学の講義を終え、夕方の電車でその店に向かっていたころの景色が、頭の中に鮮明によみがえる。
駅から伸びるバイパス沿い。
ガソリンスタンドとドラッグストアとクリーニング店に挟まれた、そのレストランは、夜になると看板のネオンだけがやたら眩しかった。
「最初の一週間は、ひたすら『いらっしゃいませ』『お待たせいたしました』の練習でした。
テーブル番号と席の位置、ドリンクバーの説明の仕方、クレジットカードの通し方。全部マニュアル化されていて」
「チェーン店っぽいですね」
璃音が、どこか懐かしそうに笑う。
「僕は、そういう『決まりごと』が嫌いではありませんでした。
やるべきことが全部書いてあって、その通りに動けば、店がきれいに回る。数字も、ちゃんとついてくる」
「数字?」
「毎日の売上です」
奏斗は、カウンターの帳簿を軽く指で叩いた。
「レジ締めを手伝うようになってから、売上グラフをつけるのが密かな楽しみになりました。
月曜から日曜までの推移、雨の日と晴れの日の違い、クーポンを出した日の伸び方。全部、線になって見えてくる」
「うわ、出た。今と同じことしてる」
凱理が、スプーンで机をとんとん叩く。
「その頃から、数字オタクだったんですね」
「オタクと言われると少し心外ですが」
奏斗は、少しだけ口元を緩めた。
「でも、正直に言うと——、その店はあまり『居心地のいい場所』ではありませんでした」
少しだけ声のトーンが落ちる。
「シフトが足りなければ、当然のように連勤になる。客席がどれだけ埋まっていても、『もっと回せるだろう』と言われる。
売上が前月比を下回ると、エリアマネージャーが来て、ホールとキッチンを『チェック』していく」
そのときの空気の重さが、今でも身体のどこかに残っている。
「だからこそ、数字を整えることに必死だったのかもしれません。
シフト表と売上実績を見比べて、『この時間帯に何人いれば、何分で料理が出せるか』を計算して。
『これだけやっている』と言える根拠がほしかったんだと思います」
「それ、今でもやってますね」
花春が、苦笑しながら相槌を打つ。
「『この人数でこの売上なら悪くない』って、よく言ってる」
「はい。その癖は多分、そこからです」
奏斗は認めるように頷いた。
「ただ、その店で一つだけ、数字にできなかったものがあります」
「何ですか?」
璃音の問いに、少しだけ間を置く。
「——『ありがとう』です」
◇
その人は、いつも同じ時間に来る客だった。
平日の夜九時。
ディナータイムのピークが落ち着き、テーブルの皿が一斉に片付けられていく時間帯。
レジ横の扉が静かに開き、少し古びたコートを着た女性が入ってくる。
肩までの髪を後ろでまとめ、手には厚手の紙袋。
「いらっしゃいませ」
練習通りに声を出すと、その女性はいつも、少しだけほっとしたような表情を浮かべた。
「おひとりさまですか」
「ええ、いつもの席空いてる?」
そう言うと、店の奥の窓際をちらりと見る。
そこは、駐車場の向こうにコンビニの看板が見えるだけの席だった。
特別な景色があるわけではない。けれど、その人はいつも、そこを選んだ。
「空いています。ご案内しますね」
その女性——佐江子さんは、必ず同じものを注文した。
ドリンクバーと、サラダと、ハンバーグのセット。
ドリンクバーでは、最初にホットコーヒーを一杯だけ入れ、あとはほとんど手をつけない。
代わりに、サラダをゆっくり時間をかけて食べ、ハンバーグを半分だけ残す。
残りは、いつも「明日の朝に食べるの」と言って持ち帰りにしていた。
「もったいないからじゃなくてね」
ある日、奏斗がこっそり理由を聞いたとき、佐江子さんは笑って答えた。
「明日の朝、これ温めて食べると、『昨日はちゃんとご飯食べて帰ったな』って思い出せるから」
「はあ……」
当時の奏斗には、その感覚がいまいち分からなかった。
ご飯はその場で食べるもので、翌朝に持ち越すものではないと思っていたからだ。
「でもさ、ここに来る前は、コンビニのおにぎりだけで済ませちゃう日も多かったのよ」
佐江子さんは、フォークを皿に置きながら続けた。
「家帰るとぐったりしちゃってね。誰かに『お疲れさま』って言われる前に布団に倒れ込んじゃうこともあって。
だから、ここに寄るようになったの」
「うちに、ですか」
「ええ。ここに来ると、『いらっしゃいませ』って言ってもらえるでしょ」
それは、あまりにも当たり前の台詞だった。
「それから、『ありがとうございました』って言ってもらえる。
たまに『今日は遅い時間ですね』って言われたり、『いつもありがとうございます』って言われたり」
佐江子さんは、ドリンクバーのカップを両手で包んだ。
「お金払ってるのは私なんだけどね。不思議と、『ここに来ると、今日一日頑張ったって認めてもらえた気がする』のよ」
その言葉は、当時の奏斗には、少しだけ重たかった。
レジの数字や、客数のグラフのどこにも、その「認められた感じ」は記録されていない。
シフト表にも、店長の報告書にも、「今日、一人の客が『頑張った気がした』」なんて項目はなかった。
「……そう言っていただけるのは、光栄です」
マニュアルにない言葉を探して、なんとかそう返した。
「こちらこそ、いつもありがとうございます」
それは、その場しのぎの台詞のつもりだった。
けれど、そのあとも佐江子さんは何度も通い、そのたびに、少しずつ「ありがとう」の使い方が変わっていくのを見ていた。
「席空けておいてくれてありがとう」
「この時間まで開けてくれてありがとう」
「黙ってゆっくりさせてくれてありがとう」
どれも、売上には乗らない「ありがとう」だった。
◇
そのファミリーレストランが閉店すると決まったのは、大学四年の春だった。
郊外の大型ショッピングモールの開業で、駅前の店が軒並み苦戦していた時期だ。
エリアマネージャーは会議のたびに「効率」「収益」「回転率」という言葉を繰り返し、最後に一枚の紙を出した。
「この店は、今月末で営業終了です」
発表は、それだけだった。
閉店までの一ヶ月、店の空気はどこか浮いていた。
売上が上がろうが下がろうが、もう関係ない。
備品の在庫も、最小限に抑えられる。
「最後の一週間だけでも、客数の記録を更新したい」
店長はそう言っていたが、その目には疲れが滲んでいた。
閉店前日。
その日も、佐江子さんはいつも通り九時に来店した。
「いらっしゃいませ」
奏斗は、いつも通りの声で迎える。
「今日は、いつもの席あいてる?」
そう聞かれて、どきりとした。
「……はい。あいています」
その席には、「閉店のお知らせ」が貼られている。
窓際のテーブルにも、テーブルごとに小さなカードが立ててあり、そこには「長年のご愛顧ありがとうございました」の文字。
佐江子さんは、席に座る前にそのカードをじっと見つめた。
「……そうなのね」
それだけ言って、いつものように腰を下ろす。
「ご注文、お決まりですか」
「いつものセットちょうだい」
メニューも見ないまま、そう言った。
キッチンでオーダーを通しながら、奏斗は胸の奥に、何か小さな棘が刺さるような感覚を覚えていた。
閉店のことは、もっと早く伝えるべきだったのかもしれない。
でも、「伝えたところで何が変わる」と思ってしまった自分もいる。
ハンバーグの皿とサラダを運び、テーブルに置く。
「……ありがとうございます」
佐江子さんは、いつものようにサラダから一口食べた。
しばらく沈黙が続いたあと、彼女はぽつりと言った。
「最後の週に来られて、よかった」
「……はい」
「本当はね、閉店の知らせ見た瞬間、ちょっと腹が立ったのよ」
フォークの先で、サラダの葉を摘まみながら続ける。
「『なんで先に教えてくれなかったの』って。
でも、ここに座ってみたら、やっぱりいつもの席で、いつもの店員さんがいて、『いらっしゃいませ』って言ってくれて」
視線が、奏斗に向けられる。
「それだけで、『ここがあるうちに間に合ってよかった』って気持ちの方が大きくなっちゃった」
「……」
「今さら、文句言ってもしょうがないものね。ここで食べたご飯は、私の体のどこかになってるし」
佐江子さんは、いつものようにハンバーグを半分だけ食べた。
「明日の朝も、温めて食べるの?」
つい、そんなことを聞いてしまう。
「当たり前でしょ」
彼女は、笑った。
「『昨日まで通ってた店、ちゃんと最後まで開いててくれたな』って思い出すために」
その言葉に、胸の奥の棘が、少しだけ場所を変えた。
「……ありがとうございます」
マニュアルには載っていない言い方で、もう一度頭を下げる。
「長いこと、ご利用いただきまして」
「こちらこそ、長いこと、毎晩の『お疲れさま』をありがとうございました」
佐江子さんがそう言った瞬間、レジ横の「閉店のお知らせ」が、急にぼやけて見えた。
その夜の売上は、特別高かったわけではない。
数字だけ見れば、「平日の平均」から少し上がった程度。
でも、レジ締めをしながら、奏斗は初めて、「今日の売上」を帳簿に書き込む手を止めた。
そして、空いている欄の片隅に、小さくこう書き込んだ。
「今日、『最後まで開けていてくれてありがとう』と言われた」
その一行だけは、どんなグラフにも反映されない。
けれど、その夜以来、彼の中で「数字の横に書き込むメモ」が増えていった。
◇
「それが、最初に『数字では測れないありがとう』を意識した夜です」
そこまで話して、奏斗はマグカップを一口飲んだ。
冷めかけたお茶の渋みが、少しだけ現実に引き戻してくる。
「閉店の日、店長が最後のレジ締めをしている横で、僕は帳簿の余白に、今まで書きためた『ありがとう』のメモを全部読み返しました」
花春たちは、息を飲むように静かに聞いていた。
「『席空けておいてくれてありがとう』
『遅い時間まで開けてくれてありがとう』
『新人さんに優しくしてくれてありがとう』」
「そんなにたくさん……」
璃音が、目を丸くする。
「売上としては、たぶん『成功した店』ではなかったと思います。
でも、その余白のメモだけは、『ここで働いていた時間は無駄ではなかった』と思わせてくれました」
奏斗は、テーブルの木目を指でなぞる。
「閉店してからしばらくして、『次の店はどうする』と聞かれたとき、僕は『もう一度、数字を整えられる店で働きたい』と思いました。
同時に、『余白に書き込める店でなければ意味がない』とも」
「それで、『川べり文庫』に?」
花春が尋ねる。
「はい」
奏斗は、少しだけ照れくさそうに笑った。
「ここなら、レシピも帳簿も整えつつ、余白を広くとれそうだったので」
「余白、たしかに多いですね」
凱理が、自分のまかないの皿を指差す。
「今日のスープのレシピなんて、絶対どこにも残ってないですし」
「そこは、もう少し整えてほしいところですが」
奏斗は、いつもの調子で絵斗に視線を向けた。
「でも、そのおかげで『今日のまかない、おいしかった』というメモは、ちゃんと増えています」
「メモってるんですか、それも」
「頭の中の帳簿に」
そう言って、少しだけ視線を璃音に向ける。
カウンターの向こうには、黒い表紙のノートが置かれていた。
そこには、「君に恋する確率」と書かれている。
数字の横に、また新しい余白が生まれつつあることを、自分自身が一番よく分かっていた。
◇
「……というわけで」
奏斗は、少しだけ居心地悪そうに咳払いをした。
「これが、『飲食店スタッフとして働いていた時の思い出』のうち、一つです」
「一つってことは、まだあるんですね」
璃音が、興味深そうに首をかしげる。
「続きは、また今度で」
「じゃあ、次は誰にします?」
花春が、テーブルを見回す。
「せっかくだから、『マニュアルの海』を経験してきた人の話とか聞きたいなあ」
「マニュアルの海……」
その言い方に、璃音が苦笑した。
「たぶん、それ、私ですね」
視線が、再び一斉に集まる。
窓の外では、川面に映る灯りがゆっくりと流れている。
酒の流れる川のほとりで、閉店後の小さなテーブルは、次の思い出話を待っていた。
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