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第17話 最高の思い出はまだ更新できる
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カウンターの上には、飲みかけのマグカップが並んでいた。
それぞれの中に、さっきまでの思い出話の余韻が、まだ少しだけ温度を残している。
「いやあ、なんか……みんな濃かったね」
凱理が、椅子の背にもたれながら、天井を見上げた。
「居酒屋に、ファミレスに、喫茶店に、ハンバーガー屋に、スポーツバーでしょ。
こうして並べて聞くと、よく全員この川沿いに流れ着いたなって感じがしますよ」
「たしかに、かなり巡り合わせが強引ですね」
璃音が、苦笑しながらマグを両手で包む。
「でも、どの店も、それぞれの『今』にちゃんとつながっているのが面白かったです」
「だろ?」
絵斗は、腕を組んで満足げにうなずいた。
「厨房出身組としては、もうちょっと包丁さばき自慢したかったけどな」
「そこは、また別の晩にどうぞ」
阿紗美が淡々と制し、花春が小さく笑った。
「ふふ。今夜だけで、お腹も胸もいっぱいですね」
カウンターの端に置いたノートが、視界の片隅で黒く光る。
表紙には、奏斗の手書きで「川べり文庫」とだけ書かれていた。
中ほどのページには、「君に恋する確率」という見出しがひっそりと挟まっている。
そこには、細かなメモと数字がびっしり書き込まれており、途中からペン先が迷った跡も残っていた。
ふと、そのノートを見つめていた花春が、ぽつりと言った。
「どの話も素敵でしたけど……」
全員の視線が、自然と彼女に集まる。
「最高の思い出って、ここで更新していけたらいいですね」
ささやかな一言だった。
でも、店内の空気が、すこしだけ形を変えて揺らぐ。
「……更新、か」
奏斗は、無意識にノートの表紙に手を伸ばしていた。
これまでの人生で、「最高の思い出」と呼べる夜はいくつかあった。
初めて厨房に立った夜。
閉店した居酒屋の最後の日。
この店で、初めて満席になった金曜日。
どれも大事な夜だ。
けれど、「これが一番だ」と言い切れる何かがあるかと問われると、はっきりしない。
(今の自分は、どこまで来ているんだろう)
そんなことを考えながら、ノートを開いた。
「君に恋する確率」のページをそっとめくる。
そこから先は、まだほとんど白紙だった。
「店長代行?」
璃音が、不思議そうな顔でのぞき込む。
「何を書こうとしているんですか」
「さあ……」
奏斗は、少し迷ってから、ペンを握った。
「自分でも、まだ分かりません」
ページの上部に、ゆっくりと文字を記す。
——「最高の思い出(仮)」
「仮って、すごく奏斗さんらしいですね」
璃音が、くすりと笑った。
「いきなり『決定』とは書けませんから」
「そこ、折り目正しさ出さなくても」
凱理が、横からちゃちゃを入れる。
「最高の思い出なんて、そのときの勢いで『これが一番!』って決めちゃえばいいじゃないですか」
「勢いで決めて、翌日後悔するのは避けたいので」
「元会社員の発想だなあ」
絵斗が肩をすくめる。
ノートの真っ白なページに、「最高の思い出(仮)」の文字だけがぽつんと浮かんでいる。
奏斗は、ペン先をその下に持っていき、しばらく止めたまま、ゆっくりと息を吐いた。
(何を書けば、いいんだろう)
過去の夜を思い出そうとしたが、どれも「仮」の呼び名を超えなかった。
誰かに救われた夜も、誰かを見送った夜も。
あたたかくて、大事で、でも「これ一つ」とは言い切れない。
「……書けません」
正直な言葉が、ふと口をついて出た。
「まだ、『最高』を一つに絞れないので」
「別に、一つに絞らなくてもいいのでは?」
璃音が、すぐに反応して首をかしげる。
「最高の思い出が、いくつあっても、誰も困りませんし」
「でも、このページのタイトルが『最高』なので……」
「タイトル変えます?」
真顔で言われて、奏斗はペンを握ったまま固まった。
凱理が笑い出す。
「さすが璃音さん、急にルール書き換えようとする」
「ルールではなく、仮の見出しなので、変更の余地はあると思います」
「そこ、気まぐれ発動ですね」
阿紗美が、どこか楽しそうに見守っている。
「私は、そのままでいいと思いますけど」
「そのまま?」
「ええ」
璃音は、ノートを指さした。
「そのページ、空欄のまま取っておきましょう」
「空欄のまま?」
「はい。
ここから先で、『今日が一番』って素直に思えた夜が来たら、そのときに埋めればいいんです」
あまりにもまっすぐな提案に、奏斗は返す言葉を探した。
「……まだ来ていないと、そう言われると、少し寂しい気もしますね」
「来ていない、とも違うと思います」
璃音は、静かに首を振る。
「今までの夜が全部、『ここに書く候補』なんですよ。
候補が多すぎて、決められないだけで」
「候補……」
「迷っているあいだは、全部大事ってことです。
だから、その迷いごと、このページに預けておきましょう」
予想外の言い回しに、花春が目を細めた。
「素敵ですね、それ」
「でしょ?」
凱理が、なぜか自分の手柄のような顔をする。
「いや、今のは璃音さんの言葉だからね?」
絵斗の冷静なツッコミに、笑いが起こる。
◇
「じゃあ、こうしましょうか」
奏斗は、ほんの少しだけ口元をほころばせた。
ペンを置き、ノートを閉じかけて——ふと思い直して、もう一度開く。
「最高の思い出(仮)」の下に、短く一行だけ書き込んだ。
『ここで働いているあいだに決めること』
それを見て、璃音が目を丸くする。
「宣言しましたね」
「自分への宿題です」
奏斗は、照れ隠しのように咳払いをした。
「この店が続くかどうか、何年ここにいられるかは分かりませんが……」
そこで一度言葉を切る。
「どこかの夜に、『今日を一番にしてもいいかもしれない』と思えたら、そのときこのページを埋めます」
「素敵です」
阿紗美が、すぐに肯定した。
「『最高』って、決めた瞬間に、そこまでの自分も救われますから」
「その日が来たら、ちゃんと報告してくださいね」
花春が、柔らかい笑みを向ける。
「報告……ですか」
「だって、みんなにも関係のある話でしょう?
ここは一人で回している店じゃないんですから」
「そういうところ、本当にブレないよね、花春さん」
凱理が肩をすくめた。
「でもまあ、『最高の思い出更新祝い』とかできそうで楽しそうだな」
「お祝い……?」
「その日、まかないをちょっと豪華にしてさ。
絵斗さんに、何か『これぞ』って一皿作ってもらいましょうよ」
「勝手に決めない」
絵斗は眉をひそめつつ、まんざらでもなさそうだった。
「でも、その日が来るまで腕を錆びさせるわけにはいかないな」
「私、その日のために、新しいコーヒーの挽き方試しておきます」
花春が、真面目な顔で小さく拳を握る。
「最高の思い出には、ちゃんと香りもつけてあげたいので」
「じゃあ俺、その日まで在庫の数え間違い減らします」
凱理が、胸を張る。
「間違い『ゼロ』にするとは言わないところが、リアルですね」
璃音の指摘に、再び笑いが起きた。
「私は……そうですね」
璃音は、少し考えてから言った。
「その日が来るまでに、きちんと『いま』をメモしておきたいです。
最高の一日って、いきなり訪れるというより、積み重ねの先にある気がするので」
「積み重ね、か」
奏斗は、その言葉を反芻するように繰り返した。
川の流れのように、毎日の仕込みと営業が続いていく。
その一つひとつの夜を、雑に扱っていないか。
「……気をつけます」
「いきなり完璧を目指さなくていいですよ」
璃音は、いたずらっぽく微笑んだ。
「折り目正しく『最高』を待つのも素敵ですけど、
たまに気まぐれに、『今日が一番かも』って思ってみるのも悪くないと思います」
「それは、だいぶ難易度が高いですね」
「難易度とか言ってる時点で、もう少し肩の力抜いていいと思います」
そんなやり取りに、店の空気がまた少しだけ柔らかくなる。
◇
気づけば、時計の針は日付をまたごうとしていた。
「そろそろ、閉めましょうか」
奏斗の一言で、片付けが再開される。
グラスを洗う音。
椅子を上げる音。
レジを締める小さな電子音。
さっきまでの思い出話は、だんだんと日常の作業音に溶け込んでいった。
ノートは、カウンターの端で静かに閉じられている。
表紙の中には、「君に恋する確率」と、「最高の思い出(仮)」のページ。
どちらも、まだ完全には埋まっていない。
窓の外では、川面に映る灯りが、先ほどよりも穏やかに揺れていた。
流れていく水の上に、今日という一日が静かに重なっていく。
(いつか、この中のどれかの夜が、「一番」になる日が来るのだろうか)
鍵を回しながら、奏斗は少しだけ胸の奥が温かくなるのを感じた。
まだ決められないままの「最高」。
けれど、それを「ここで決める」と心の中で約束できたことが、
今夜の小さな救いになっていた。
酒の流れる川のほとりで、
まだ更新されていない最高の思い出が、静かに順番待ちをしている。
それぞれの中に、さっきまでの思い出話の余韻が、まだ少しだけ温度を残している。
「いやあ、なんか……みんな濃かったね」
凱理が、椅子の背にもたれながら、天井を見上げた。
「居酒屋に、ファミレスに、喫茶店に、ハンバーガー屋に、スポーツバーでしょ。
こうして並べて聞くと、よく全員この川沿いに流れ着いたなって感じがしますよ」
「たしかに、かなり巡り合わせが強引ですね」
璃音が、苦笑しながらマグを両手で包む。
「でも、どの店も、それぞれの『今』にちゃんとつながっているのが面白かったです」
「だろ?」
絵斗は、腕を組んで満足げにうなずいた。
「厨房出身組としては、もうちょっと包丁さばき自慢したかったけどな」
「そこは、また別の晩にどうぞ」
阿紗美が淡々と制し、花春が小さく笑った。
「ふふ。今夜だけで、お腹も胸もいっぱいですね」
カウンターの端に置いたノートが、視界の片隅で黒く光る。
表紙には、奏斗の手書きで「川べり文庫」とだけ書かれていた。
中ほどのページには、「君に恋する確率」という見出しがひっそりと挟まっている。
そこには、細かなメモと数字がびっしり書き込まれており、途中からペン先が迷った跡も残っていた。
ふと、そのノートを見つめていた花春が、ぽつりと言った。
「どの話も素敵でしたけど……」
全員の視線が、自然と彼女に集まる。
「最高の思い出って、ここで更新していけたらいいですね」
ささやかな一言だった。
でも、店内の空気が、すこしだけ形を変えて揺らぐ。
「……更新、か」
奏斗は、無意識にノートの表紙に手を伸ばしていた。
これまでの人生で、「最高の思い出」と呼べる夜はいくつかあった。
初めて厨房に立った夜。
閉店した居酒屋の最後の日。
この店で、初めて満席になった金曜日。
どれも大事な夜だ。
けれど、「これが一番だ」と言い切れる何かがあるかと問われると、はっきりしない。
(今の自分は、どこまで来ているんだろう)
そんなことを考えながら、ノートを開いた。
「君に恋する確率」のページをそっとめくる。
そこから先は、まだほとんど白紙だった。
「店長代行?」
璃音が、不思議そうな顔でのぞき込む。
「何を書こうとしているんですか」
「さあ……」
奏斗は、少し迷ってから、ペンを握った。
「自分でも、まだ分かりません」
ページの上部に、ゆっくりと文字を記す。
——「最高の思い出(仮)」
「仮って、すごく奏斗さんらしいですね」
璃音が、くすりと笑った。
「いきなり『決定』とは書けませんから」
「そこ、折り目正しさ出さなくても」
凱理が、横からちゃちゃを入れる。
「最高の思い出なんて、そのときの勢いで『これが一番!』って決めちゃえばいいじゃないですか」
「勢いで決めて、翌日後悔するのは避けたいので」
「元会社員の発想だなあ」
絵斗が肩をすくめる。
ノートの真っ白なページに、「最高の思い出(仮)」の文字だけがぽつんと浮かんでいる。
奏斗は、ペン先をその下に持っていき、しばらく止めたまま、ゆっくりと息を吐いた。
(何を書けば、いいんだろう)
過去の夜を思い出そうとしたが、どれも「仮」の呼び名を超えなかった。
誰かに救われた夜も、誰かを見送った夜も。
あたたかくて、大事で、でも「これ一つ」とは言い切れない。
「……書けません」
正直な言葉が、ふと口をついて出た。
「まだ、『最高』を一つに絞れないので」
「別に、一つに絞らなくてもいいのでは?」
璃音が、すぐに反応して首をかしげる。
「最高の思い出が、いくつあっても、誰も困りませんし」
「でも、このページのタイトルが『最高』なので……」
「タイトル変えます?」
真顔で言われて、奏斗はペンを握ったまま固まった。
凱理が笑い出す。
「さすが璃音さん、急にルール書き換えようとする」
「ルールではなく、仮の見出しなので、変更の余地はあると思います」
「そこ、気まぐれ発動ですね」
阿紗美が、どこか楽しそうに見守っている。
「私は、そのままでいいと思いますけど」
「そのまま?」
「ええ」
璃音は、ノートを指さした。
「そのページ、空欄のまま取っておきましょう」
「空欄のまま?」
「はい。
ここから先で、『今日が一番』って素直に思えた夜が来たら、そのときに埋めればいいんです」
あまりにもまっすぐな提案に、奏斗は返す言葉を探した。
「……まだ来ていないと、そう言われると、少し寂しい気もしますね」
「来ていない、とも違うと思います」
璃音は、静かに首を振る。
「今までの夜が全部、『ここに書く候補』なんですよ。
候補が多すぎて、決められないだけで」
「候補……」
「迷っているあいだは、全部大事ってことです。
だから、その迷いごと、このページに預けておきましょう」
予想外の言い回しに、花春が目を細めた。
「素敵ですね、それ」
「でしょ?」
凱理が、なぜか自分の手柄のような顔をする。
「いや、今のは璃音さんの言葉だからね?」
絵斗の冷静なツッコミに、笑いが起こる。
◇
「じゃあ、こうしましょうか」
奏斗は、ほんの少しだけ口元をほころばせた。
ペンを置き、ノートを閉じかけて——ふと思い直して、もう一度開く。
「最高の思い出(仮)」の下に、短く一行だけ書き込んだ。
『ここで働いているあいだに決めること』
それを見て、璃音が目を丸くする。
「宣言しましたね」
「自分への宿題です」
奏斗は、照れ隠しのように咳払いをした。
「この店が続くかどうか、何年ここにいられるかは分かりませんが……」
そこで一度言葉を切る。
「どこかの夜に、『今日を一番にしてもいいかもしれない』と思えたら、そのときこのページを埋めます」
「素敵です」
阿紗美が、すぐに肯定した。
「『最高』って、決めた瞬間に、そこまでの自分も救われますから」
「その日が来たら、ちゃんと報告してくださいね」
花春が、柔らかい笑みを向ける。
「報告……ですか」
「だって、みんなにも関係のある話でしょう?
ここは一人で回している店じゃないんですから」
「そういうところ、本当にブレないよね、花春さん」
凱理が肩をすくめた。
「でもまあ、『最高の思い出更新祝い』とかできそうで楽しそうだな」
「お祝い……?」
「その日、まかないをちょっと豪華にしてさ。
絵斗さんに、何か『これぞ』って一皿作ってもらいましょうよ」
「勝手に決めない」
絵斗は眉をひそめつつ、まんざらでもなさそうだった。
「でも、その日が来るまで腕を錆びさせるわけにはいかないな」
「私、その日のために、新しいコーヒーの挽き方試しておきます」
花春が、真面目な顔で小さく拳を握る。
「最高の思い出には、ちゃんと香りもつけてあげたいので」
「じゃあ俺、その日まで在庫の数え間違い減らします」
凱理が、胸を張る。
「間違い『ゼロ』にするとは言わないところが、リアルですね」
璃音の指摘に、再び笑いが起きた。
「私は……そうですね」
璃音は、少し考えてから言った。
「その日が来るまでに、きちんと『いま』をメモしておきたいです。
最高の一日って、いきなり訪れるというより、積み重ねの先にある気がするので」
「積み重ね、か」
奏斗は、その言葉を反芻するように繰り返した。
川の流れのように、毎日の仕込みと営業が続いていく。
その一つひとつの夜を、雑に扱っていないか。
「……気をつけます」
「いきなり完璧を目指さなくていいですよ」
璃音は、いたずらっぽく微笑んだ。
「折り目正しく『最高』を待つのも素敵ですけど、
たまに気まぐれに、『今日が一番かも』って思ってみるのも悪くないと思います」
「それは、だいぶ難易度が高いですね」
「難易度とか言ってる時点で、もう少し肩の力抜いていいと思います」
そんなやり取りに、店の空気がまた少しだけ柔らかくなる。
◇
気づけば、時計の針は日付をまたごうとしていた。
「そろそろ、閉めましょうか」
奏斗の一言で、片付けが再開される。
グラスを洗う音。
椅子を上げる音。
レジを締める小さな電子音。
さっきまでの思い出話は、だんだんと日常の作業音に溶け込んでいった。
ノートは、カウンターの端で静かに閉じられている。
表紙の中には、「君に恋する確率」と、「最高の思い出(仮)」のページ。
どちらも、まだ完全には埋まっていない。
窓の外では、川面に映る灯りが、先ほどよりも穏やかに揺れていた。
流れていく水の上に、今日という一日が静かに重なっていく。
(いつか、この中のどれかの夜が、「一番」になる日が来るのだろうか)
鍵を回しながら、奏斗は少しだけ胸の奥が温かくなるのを感じた。
まだ決められないままの「最高」。
けれど、それを「ここで決める」と心の中で約束できたことが、
今夜の小さな救いになっていた。
酒の流れる川のほとりで、
まだ更新されていない最高の思い出が、静かに順番待ちをしている。
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