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第24話 失敗だらけの初日と小さな成功
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「酒の流れる川ウィーク」初日の朝、川べり文庫の厨房は、いつも以上に熱気でむんむんしていた。
オーブンの前では絵斗が、トングを片手に天板を出したり入れたりしている。
焼き上がったばかりのキッシュと、まだ半熟のグラタン。
その横では、璃音が「君に恋する確率」用のグラスを真剣な顔で並べていた。
「診断シート、全部で何枚印刷しましたっけ」
ホールのカウンター前で、花春が束になった紙を数えながら尋ねる。
「とりあえず百枚」
奏斗が、レジ横の棚に紙を揃えながら答えた。
「そんなに来ますかね」
凱理が、エプロンの紐を結びながら、やや不安そうな声を出す。
「来なかった場合、そのまま来月の分になります」
「それもそれで寂しいんですけど」
「今日は、来る前提で動きましょう」
奏斗は、淡々とした口調のまま言葉を添えた。
「『失敗してもいいから、やれることをやる』日です」
「店長代行、朝から覚悟決めてますね」
絵斗が、天板を置きながら笑う。
「じゃあ俺は、『失敗してもいいけど、焦がさない』を目標にするわ」
「そこは絶対失敗しないでください」
璃音が、慌ててツッコミを入れる。
阿紗美は、そんなやり取りを聞きながら、ホールを一周見渡した。
椅子の位置。
メニュー表の角度。
診断シートとペンの予備。
「通路、少し広めにとっておきましょう」
彼女は、いくつかの椅子をさりげなく下げた。
「今日みたいな日は、絶対に走り回りますから。
ぶつかってこぼしたら、恋の確率どころじゃないです」
「それは困る」
奏斗が、目だけで頷いた。
「走るのは心の中だけにしておきます」
◇
開店時間。
いつもなら、最初の客が来るまでに少し余裕があるはずだった。
ところが、この日に限っては違った。
扉の鍵を開けて看板を出した瞬間、
まるで合図を待っていたかのように、数人の客が川沿いの道からこちらに歩いてきた。
「いらっしゃいませ」
花春が、慌てて微笑む。
「『酒の流れる川ウィーク』って、ここですよね」
最初に入ってきたのは、三人組の女性だった。
会社帰りのような服装で、それぞれ紙袋を下げている。
「はい。当店も参加しています」
花春が、チラシを指し示す。
「限定メニュー、『君に恋する確率』って書いてある」
女性の一人が、メニュー表をのぞき込みながら声を上げた。
「これ、気になって来たんですよ。
昨日、隣の立ち飲みのおじさんに教えてもらって」
「向かいの店の店主さんですよね」
凱理が、思わず顔をほころばせる。
「『川沿いの変な名前の店が何か始めるらしい』って、
ずっとお客様に話してくださってたそうで」
「変な名前って言われてるのか」
絵斗の小声のぼやきに、厨房から小さな笑いがもれる。
女性たちは、迷わずこう注文した。
「じゃあ、その『君に恋する確率セット』を三つ。
診断とかあるんですよね?」
「はい。こちらのシートに、○か△を付けていただいて……」
花春が、説明しながら診断シートを三枚配る。
女性たちは、椅子に腰掛けるなり顔を寄せ合って紙を覗き込んだ。
「ちょっと、これすごいね」
「Q2、『その人に話しかけるタイミングを探している』……。
こんなん、全部○に決まってるじゃん」
「全部○にしたら、確率爆発するんじゃない?」
楽しそうな笑い声が、さっそく店内に広がる。
「いい感じのスタートですね」
花春が小声でつぶやいた、そのとき。
扉の鈴が、再び鳴った。
次の客。
その次の客。
気付けば、開店から三十分も経たないうちに、
テーブル席のほとんどが埋まっていた。
「……ちょっと待って」
注文票を抱えた凱理が、カウンター前で足を止める。
「『君に恋する確率セット』、一気に八つ入りました」
「八つ!?」
璃音が、思わず声を上げる。
「診断シート、全員分ちゃんと説明しましたか?」
「しました。
『結果にゼロパーセントはありません』ってところで、みんな笑ってました」
「そこ笑ってもらえるのは嬉しいけど……」
璃音は、グラスとシロップとシェーカーを前に、早くも軽く目が回りそうになった。
「まず、『測定不能』組から出しましょう」
阿紗美が、落ち着いた声で提案する。
「ノンアルコールなので、時間が経っても味が大きく変わりません。
次に、バランス型。最後にビターな方」
「了解です」
奏斗が、注文票をざっと確認しながら順番を組み立てる。
「璃音さん、診断結果別に三つずつまとめてください。
絵斗さんは、それに合わせてデザートを出せますか」
「やるしかないだろ」
絵斗は、オーブンの前で手を叩いた。
「『測定不能』はフルーツタルト、『じわじわ上昇中』はキャラメルプリン、
『ごまかしきれない域』はビターケーキ。
……って、こんなに一気に『ごまかしきれない』人いるの?」
「いました。
みなさん、笑いながら○を付けてました」
凱理の報告に、厨房がざわつく。
「酒の流れる川、恋の気配も流れが速いな」
「そんな場合じゃありません。
とにかく、落ち着いて順番に出しましょう」
阿紗美が、ホールと厨房のあいだに立ち、目で合図を送る。
「深呼吸して。
最初の一杯が出るまでが一番バタバタしますから」
◇
——その予想は、半分だけ当たっていた。
最初の一杯が出るまで、たしかにバタバタした。
問題は、そのあともずっとバタバタが止まらなかったことだ。
「『測定不能』三つ、出ます!」
「了解! フルーツタルト三つ、今出せる!」
「『じわじわ上昇中』二つ、続きます!」
「プリン、あと一人分しかかかってない!」
「えっ」
厨房の叫びが交錯する。
予定では、プリンは余裕を持って仕込んでいたはずだった。
しかし、まさか初日からここまで注文が集中するとは誰も読んでいなかった。
「追加で焼く時間は?」
「今からだと、冷えるまでに一時間はかかる」
絵斗が、オーブンの前で計算する。
「『じわじわ上昇中』の人に、ビターケーキ出したら怒るかな」
「怒りはしないと思いますけど……」
璃音が、困ったように眉を寄せる。
「でも、気持ちの段階が違いますからね。
いきなり苦味を押し付けるの、ちょっとどうかと」
「じゃあ、『測定不能』側に寄せる?」
「それも違います」
答えに窮していたそのとき、
「すみません!」
ホールから、花春のあわてた声が飛び込んできた。
「カウンターの二番のお客様、『診断結果変えてもいいですか』って……」
「変える!?」
全員が、一瞬動きを止めた。
「どういうことですか」
「えっと……
さっき『じわじわ上昇中』に○つけたんですけど、
友達に『それ、もうごまかしきれてないでしょ』って言われたらしくて」
花春は、状況を説明しながら苦笑いを浮かべる。
「『やっぱりこっちだったかも』って、チェックを移してました」
厨房の空気が一瞬だけ止まり、それからどっと笑いが起こった。
「自覚が追いついた」
絵斗が、天板を持ちながら肩を揺らす。
「じゃあその人、『ごまかしきれない域』に移動で」
「よかったですね、プリン一人分空きました」
璃音が、ほっと息を吐く。
「恋心の自己申告が、まさかオペレーション調整に役立つとは」
「恋って偉大だな」
凱理が、トレーを抱えながらしみじみ言い、
阿紗美に「持ちながら立ち止まらない」と軽く叱られた。
◇
混乱は、そこからが本番だった。
注文票の書き方を間違えた凱理が、
「測定不能」のお客様にビターケーキを運びかけ、慌てて引き返したり。
「ごまかしきれない域」の結果を見た女性客が、
顔を真っ赤にして紙を伏せたまま、「さっぱりしたやつに変更できますか」とお願いしてきたり。
「もちろんです。
気分はいつでも変えて大丈夫ですから」
璃音は、その都度柔らかく笑って対応する。
しかし、ホールと厨房の動線は、次第に渋滞し始めていた。
「花春さん、注文の通し方、一回整理しましょう」
阿紗美が、ホールの中央で動きを止める。
「いったん深呼吸。
『診断シート回収』と『注文票に書く』を同時にやろうとすると、絶対混ざります」
「はい……!」
花春は、額の汗を手の甲で拭いながら頷く。
「まず、診断シートを預かって、結果のところに丸をつけて……」
「そして、同じ番号を注文票に写す。
料理名じゃなくて、『結果の種類』でまとめましょう」
阿紗美は、ペン先で簡単な記号を書いてみせた。
「Mが測定不能、Jがじわじわ、Gがごまかしきれない。
これなら、厨房側も一目で分かります」
「なるほど……!」
その場でやり方を修正すると、
さっきまでごちゃごちゃしていた注文の流れが、少しずつ整っていった。
「阿紗美さん、さすが元ランナー」
凱理が、トレーを持ちながら感心する。
「走る順番決めるの、得意ですね」
「順番を間違えると、最後で息切れしますから」
阿紗美は、涼しい顔で答えた。
「それは仕事も同じです」
◇
それでも、完璧からは程遠かった。
プリンのカラメルをひっくり返して皿を一枚ダメにしたり、
デザートスプーンを切らして、慌てて引き出しをひっくり返したり。
極めつけは、カウンター席の小さなミスだった。
「カウンター三番、『君に恋する確率』ですね」
凱理が、いつもの調子でグラスを置いた瞬間、客の男性が首をかしげた。
「あれ?
さっき頼んだの、『今日の一歩ケーキ』セットだけだったと思うんですが」
「えっ」
注文票を見返して、凱理の顔から血の気が引いた。
「すみません、完全に僕の思い込みです」
すぐに頭を下げる。
「『確率』の方を頼む方が多かったので、
てっきりそちらだと……」
「いえいえ。
どちらも気になってたので、見られて得した気分です」
男性は、グラスをじっと見つめてから、続けた。
「でも、今日はこれを別の人に譲ってもらってもいいですか」
「別の人……?」
凱理がきょろきょろと周りを見渡すと、
少し離れた席で診断シートを前にうつむいている女性客の姿が目に入った。
「さっき、診断シートの書き方が分からなそうにしていた方がいたので」
男性は、静かに笑った。
「その人がもし、これを頼んでいたなら——
そっちを優先してあげてください」
そのやり取りを、たまたま近くにいた花春が聞いていた。
「……分かりました」
彼女は、胸の奥がじんわり温かくなるのを感じながら、軽く頭を下げた。
「では、『今日の一歩ケーキ』の方を、いつもより少し豪華にしてお持ちします」
「そんな、気を遣わせてしまって」
「いえ。
『誰かのために一杯譲ってくれた人用』の特別仕様です」
そう言って微笑むと、男性は照れくさそうに笑った。
◇
夕方から夜にかけて、店内はずっと賑やかだった。
各席では、「診断結果」を話の種にした会話が尽きることなく続いている。
「私、『測定不能』だった」
「私は『じわじわ上昇中』。
でも、たぶん自分でごまかしてるだけだと思う」
「『ごまかしきれない域』って書かれた紙、鞄に入れて持ち帰っていいですか?」
そんな声が、あちこちから聞こえてきた。
途中途中で小さなミスはありつつも、
誰一人、怒鳴るような客はいなかった。
むしろ、注文が遅れたときに限って、
「忙しそうですね。
ゆっくりで大丈夫ですよ」
と、先回りして声をかけてくる人が多かった。
酒の流れる川沿いの小さな店で、
初日の夜は、慌ただしくも不思議と温かな空気に包まれていた。
◇
閉店時間を過ぎ、最後の客を見送ったあと。
スタッフたちは、ほとんど同時に椅子に崩れ落ちた。
「……疲れた」
凱理が、テーブルに突っ伏す。
「今日、一日で一週間分しゃべった気がします」
「それは言い過ぎです」
奏斗は、額の汗をタオルで拭きながらも、いつもの調子で答えた。
ただ、肩の上下は明らかにいつもより激しい。
「オペレーションの崩壊具合、なかなかでしたね」
絵斗が、厨房から出てきて椅子に腰掛ける。
「プリン、途中でなくなったし、
ケーキの切り分けも何回かやり直したし」
「ごめんなさい、スプーンの補充も遅れました」
花春が、申し訳なさそうに頭を下げる。
「診断シートと注文票、最初混ざりまくってて……」
「それは僕もです」
凱理が、突っ伏したまま手を挙げた。
「カウンターのお客様に、違う結果のケーキ持っていきかけましたし」
「私も、ビターの人にフルーツ持っていきそうになりました」
璃音も、苦笑いを浮かべる。
「『ごまかしきれない』って言われているのに、
やたら優しい甘さを出してしまうところでした」
「でも」
そこで、阿紗美が口を開いた。
「誰も帰るときに怒ってはいませんでした」
その言葉に、全員が顔を上げる。
「むしろ、『楽しかった』って言ってくださる方が多かったです。
『今日は失敗も多かったけど、それも含めていい夜だった』って」
思い返せば、たしかにそうだった。
注文が遅れてしまったテーブルにも、
「この診断シート、お土産でもらっていいですか」と笑って言ってくれた客がいた。
「帰り際、『また来ます』って言ってくれた人、何人かいましたよ」
花春が、ふっと微笑む。
「診断結果を二つ折りにして、大事そうに鞄にしまっている人もいましたし」
「……そうですね」
奏斗は、静かに頷いた。
「失敗は多かった。
オペレーション面での課題も山ほど見つかりました」
そう前置きしてから、テーブルの中央に黒いノートを置く。
表紙には、「君に恋する確率」と白い文字が書かれている。
「それでも、今日この店で過ごした時間が、
誰かにとって『悪くなかった一日』になった可能性は高い」
ノートを開き、新しいページの上にペンを走らせる。
『酒の流れる川ウィーク初日。
オペレーションは予定通りにはいかなかった。
限定メニューの提供順は乱れ、注文のミスも多発。
それでも、診断シートを前に笑う声があった。
結果の丸を付け直しながら、照れくさそうに話す横顔があった。
失敗だらけの一日だったけれど、
「悪くない初日だった」と言えるだけの何かが、
この店の空気に確かに残っている。』
書き終えると、ページの端に小さく数字を書く。
『君に恋する確率:——
この店に恋してくれる人の確率も、
少しだけ上がった気がする。』
「……いいですね」
ノートを覗き込んだ璃音が、静かに笑った。
「今日の『失敗』も、ちゃんとここに入れておけるなら、
ちょっと救われる気がします」
「失敗を全部なかったことにしようとすると、
たぶん明日も同じことを繰り返しますから」
奏斗は、ノートを閉じて棚に戻した。
「明日は、今日より少しだけうまく回せばいい。
確率の話と同じです」
「ゼロから百を目指さないってことですね」
阿紗美が、椅子の背にもたれながら言う。
「今日が四十点なら、明日は四十五点くらいを目標にしましょう」
「そのくらいなら、頑張れそうです」
花春が、ほっとしたように笑う。
「じゃあ明日は、『診断シート回収係』と『注文票記入係』を分けましょうか。
少なくとも、今日より紙は迷子にならないはずです」
「厨房も、デザートの仕込みを二段階に分けるか」
絵斗が、明日の段取りを考え始める。
「最初から全員分一気に仕込もうとするから、途中で足りなくなる。
前半戦と後半戦に分けて焼こう」
「ホール側は、入口で『混雑時はお時間いただきます』って
一言伝えるようにします」
凱理も、小さく拳を握った。
「待つ覚悟を持って入ってきてもらえれば、
こっちも焦り過ぎずに済みますし」
◇
「……なんだかんだ言って」
片付けがひと段落したころ、璃音がぽつりと言った。
「今日、けっこう楽しかったです」
「楽しかった?」
奏斗が、少しだけ意外そうに尋ねる。
「はい。
大変だったし、何度も頭が真っ白になりかけましたけど」
璃音は、自分の手のひらを見下ろした。
「診断シートを渡したときとか、
結果を見て照れているお客様の顔とか。
『君に恋する確率』って、
やっぱりこの店に似合う言葉だなって、何度も思いました」
「……それなら、やってよかった」
奏斗の声は、いつもより少しだけ柔らかかった。
「失敗だらけの初日でしたが」
「でも、『失敗だらけ』って言いながら、
ちゃんと『初日』って言い切れること自体が、なんだか嬉しいです」
璃音は、そう言って笑う。
「明日も、その次の日もあるってことですから」
酒の流れる川のほとりで、
ぐったりとした笑い声が、ゆっくりと夜に溶けていく。
失敗の数だけ、確率を少しずつ上げていく一週間の幕は、
こうして賑やかに上がった。
オーブンの前では絵斗が、トングを片手に天板を出したり入れたりしている。
焼き上がったばかりのキッシュと、まだ半熟のグラタン。
その横では、璃音が「君に恋する確率」用のグラスを真剣な顔で並べていた。
「診断シート、全部で何枚印刷しましたっけ」
ホールのカウンター前で、花春が束になった紙を数えながら尋ねる。
「とりあえず百枚」
奏斗が、レジ横の棚に紙を揃えながら答えた。
「そんなに来ますかね」
凱理が、エプロンの紐を結びながら、やや不安そうな声を出す。
「来なかった場合、そのまま来月の分になります」
「それもそれで寂しいんですけど」
「今日は、来る前提で動きましょう」
奏斗は、淡々とした口調のまま言葉を添えた。
「『失敗してもいいから、やれることをやる』日です」
「店長代行、朝から覚悟決めてますね」
絵斗が、天板を置きながら笑う。
「じゃあ俺は、『失敗してもいいけど、焦がさない』を目標にするわ」
「そこは絶対失敗しないでください」
璃音が、慌ててツッコミを入れる。
阿紗美は、そんなやり取りを聞きながら、ホールを一周見渡した。
椅子の位置。
メニュー表の角度。
診断シートとペンの予備。
「通路、少し広めにとっておきましょう」
彼女は、いくつかの椅子をさりげなく下げた。
「今日みたいな日は、絶対に走り回りますから。
ぶつかってこぼしたら、恋の確率どころじゃないです」
「それは困る」
奏斗が、目だけで頷いた。
「走るのは心の中だけにしておきます」
◇
開店時間。
いつもなら、最初の客が来るまでに少し余裕があるはずだった。
ところが、この日に限っては違った。
扉の鍵を開けて看板を出した瞬間、
まるで合図を待っていたかのように、数人の客が川沿いの道からこちらに歩いてきた。
「いらっしゃいませ」
花春が、慌てて微笑む。
「『酒の流れる川ウィーク』って、ここですよね」
最初に入ってきたのは、三人組の女性だった。
会社帰りのような服装で、それぞれ紙袋を下げている。
「はい。当店も参加しています」
花春が、チラシを指し示す。
「限定メニュー、『君に恋する確率』って書いてある」
女性の一人が、メニュー表をのぞき込みながら声を上げた。
「これ、気になって来たんですよ。
昨日、隣の立ち飲みのおじさんに教えてもらって」
「向かいの店の店主さんですよね」
凱理が、思わず顔をほころばせる。
「『川沿いの変な名前の店が何か始めるらしい』って、
ずっとお客様に話してくださってたそうで」
「変な名前って言われてるのか」
絵斗の小声のぼやきに、厨房から小さな笑いがもれる。
女性たちは、迷わずこう注文した。
「じゃあ、その『君に恋する確率セット』を三つ。
診断とかあるんですよね?」
「はい。こちらのシートに、○か△を付けていただいて……」
花春が、説明しながら診断シートを三枚配る。
女性たちは、椅子に腰掛けるなり顔を寄せ合って紙を覗き込んだ。
「ちょっと、これすごいね」
「Q2、『その人に話しかけるタイミングを探している』……。
こんなん、全部○に決まってるじゃん」
「全部○にしたら、確率爆発するんじゃない?」
楽しそうな笑い声が、さっそく店内に広がる。
「いい感じのスタートですね」
花春が小声でつぶやいた、そのとき。
扉の鈴が、再び鳴った。
次の客。
その次の客。
気付けば、開店から三十分も経たないうちに、
テーブル席のほとんどが埋まっていた。
「……ちょっと待って」
注文票を抱えた凱理が、カウンター前で足を止める。
「『君に恋する確率セット』、一気に八つ入りました」
「八つ!?」
璃音が、思わず声を上げる。
「診断シート、全員分ちゃんと説明しましたか?」
「しました。
『結果にゼロパーセントはありません』ってところで、みんな笑ってました」
「そこ笑ってもらえるのは嬉しいけど……」
璃音は、グラスとシロップとシェーカーを前に、早くも軽く目が回りそうになった。
「まず、『測定不能』組から出しましょう」
阿紗美が、落ち着いた声で提案する。
「ノンアルコールなので、時間が経っても味が大きく変わりません。
次に、バランス型。最後にビターな方」
「了解です」
奏斗が、注文票をざっと確認しながら順番を組み立てる。
「璃音さん、診断結果別に三つずつまとめてください。
絵斗さんは、それに合わせてデザートを出せますか」
「やるしかないだろ」
絵斗は、オーブンの前で手を叩いた。
「『測定不能』はフルーツタルト、『じわじわ上昇中』はキャラメルプリン、
『ごまかしきれない域』はビターケーキ。
……って、こんなに一気に『ごまかしきれない』人いるの?」
「いました。
みなさん、笑いながら○を付けてました」
凱理の報告に、厨房がざわつく。
「酒の流れる川、恋の気配も流れが速いな」
「そんな場合じゃありません。
とにかく、落ち着いて順番に出しましょう」
阿紗美が、ホールと厨房のあいだに立ち、目で合図を送る。
「深呼吸して。
最初の一杯が出るまでが一番バタバタしますから」
◇
——その予想は、半分だけ当たっていた。
最初の一杯が出るまで、たしかにバタバタした。
問題は、そのあともずっとバタバタが止まらなかったことだ。
「『測定不能』三つ、出ます!」
「了解! フルーツタルト三つ、今出せる!」
「『じわじわ上昇中』二つ、続きます!」
「プリン、あと一人分しかかかってない!」
「えっ」
厨房の叫びが交錯する。
予定では、プリンは余裕を持って仕込んでいたはずだった。
しかし、まさか初日からここまで注文が集中するとは誰も読んでいなかった。
「追加で焼く時間は?」
「今からだと、冷えるまでに一時間はかかる」
絵斗が、オーブンの前で計算する。
「『じわじわ上昇中』の人に、ビターケーキ出したら怒るかな」
「怒りはしないと思いますけど……」
璃音が、困ったように眉を寄せる。
「でも、気持ちの段階が違いますからね。
いきなり苦味を押し付けるの、ちょっとどうかと」
「じゃあ、『測定不能』側に寄せる?」
「それも違います」
答えに窮していたそのとき、
「すみません!」
ホールから、花春のあわてた声が飛び込んできた。
「カウンターの二番のお客様、『診断結果変えてもいいですか』って……」
「変える!?」
全員が、一瞬動きを止めた。
「どういうことですか」
「えっと……
さっき『じわじわ上昇中』に○つけたんですけど、
友達に『それ、もうごまかしきれてないでしょ』って言われたらしくて」
花春は、状況を説明しながら苦笑いを浮かべる。
「『やっぱりこっちだったかも』って、チェックを移してました」
厨房の空気が一瞬だけ止まり、それからどっと笑いが起こった。
「自覚が追いついた」
絵斗が、天板を持ちながら肩を揺らす。
「じゃあその人、『ごまかしきれない域』に移動で」
「よかったですね、プリン一人分空きました」
璃音が、ほっと息を吐く。
「恋心の自己申告が、まさかオペレーション調整に役立つとは」
「恋って偉大だな」
凱理が、トレーを抱えながらしみじみ言い、
阿紗美に「持ちながら立ち止まらない」と軽く叱られた。
◇
混乱は、そこからが本番だった。
注文票の書き方を間違えた凱理が、
「測定不能」のお客様にビターケーキを運びかけ、慌てて引き返したり。
「ごまかしきれない域」の結果を見た女性客が、
顔を真っ赤にして紙を伏せたまま、「さっぱりしたやつに変更できますか」とお願いしてきたり。
「もちろんです。
気分はいつでも変えて大丈夫ですから」
璃音は、その都度柔らかく笑って対応する。
しかし、ホールと厨房の動線は、次第に渋滞し始めていた。
「花春さん、注文の通し方、一回整理しましょう」
阿紗美が、ホールの中央で動きを止める。
「いったん深呼吸。
『診断シート回収』と『注文票に書く』を同時にやろうとすると、絶対混ざります」
「はい……!」
花春は、額の汗を手の甲で拭いながら頷く。
「まず、診断シートを預かって、結果のところに丸をつけて……」
「そして、同じ番号を注文票に写す。
料理名じゃなくて、『結果の種類』でまとめましょう」
阿紗美は、ペン先で簡単な記号を書いてみせた。
「Mが測定不能、Jがじわじわ、Gがごまかしきれない。
これなら、厨房側も一目で分かります」
「なるほど……!」
その場でやり方を修正すると、
さっきまでごちゃごちゃしていた注文の流れが、少しずつ整っていった。
「阿紗美さん、さすが元ランナー」
凱理が、トレーを持ちながら感心する。
「走る順番決めるの、得意ですね」
「順番を間違えると、最後で息切れしますから」
阿紗美は、涼しい顔で答えた。
「それは仕事も同じです」
◇
それでも、完璧からは程遠かった。
プリンのカラメルをひっくり返して皿を一枚ダメにしたり、
デザートスプーンを切らして、慌てて引き出しをひっくり返したり。
極めつけは、カウンター席の小さなミスだった。
「カウンター三番、『君に恋する確率』ですね」
凱理が、いつもの調子でグラスを置いた瞬間、客の男性が首をかしげた。
「あれ?
さっき頼んだの、『今日の一歩ケーキ』セットだけだったと思うんですが」
「えっ」
注文票を見返して、凱理の顔から血の気が引いた。
「すみません、完全に僕の思い込みです」
すぐに頭を下げる。
「『確率』の方を頼む方が多かったので、
てっきりそちらだと……」
「いえいえ。
どちらも気になってたので、見られて得した気分です」
男性は、グラスをじっと見つめてから、続けた。
「でも、今日はこれを別の人に譲ってもらってもいいですか」
「別の人……?」
凱理がきょろきょろと周りを見渡すと、
少し離れた席で診断シートを前にうつむいている女性客の姿が目に入った。
「さっき、診断シートの書き方が分からなそうにしていた方がいたので」
男性は、静かに笑った。
「その人がもし、これを頼んでいたなら——
そっちを優先してあげてください」
そのやり取りを、たまたま近くにいた花春が聞いていた。
「……分かりました」
彼女は、胸の奥がじんわり温かくなるのを感じながら、軽く頭を下げた。
「では、『今日の一歩ケーキ』の方を、いつもより少し豪華にしてお持ちします」
「そんな、気を遣わせてしまって」
「いえ。
『誰かのために一杯譲ってくれた人用』の特別仕様です」
そう言って微笑むと、男性は照れくさそうに笑った。
◇
夕方から夜にかけて、店内はずっと賑やかだった。
各席では、「診断結果」を話の種にした会話が尽きることなく続いている。
「私、『測定不能』だった」
「私は『じわじわ上昇中』。
でも、たぶん自分でごまかしてるだけだと思う」
「『ごまかしきれない域』って書かれた紙、鞄に入れて持ち帰っていいですか?」
そんな声が、あちこちから聞こえてきた。
途中途中で小さなミスはありつつも、
誰一人、怒鳴るような客はいなかった。
むしろ、注文が遅れたときに限って、
「忙しそうですね。
ゆっくりで大丈夫ですよ」
と、先回りして声をかけてくる人が多かった。
酒の流れる川沿いの小さな店で、
初日の夜は、慌ただしくも不思議と温かな空気に包まれていた。
◇
閉店時間を過ぎ、最後の客を見送ったあと。
スタッフたちは、ほとんど同時に椅子に崩れ落ちた。
「……疲れた」
凱理が、テーブルに突っ伏す。
「今日、一日で一週間分しゃべった気がします」
「それは言い過ぎです」
奏斗は、額の汗をタオルで拭きながらも、いつもの調子で答えた。
ただ、肩の上下は明らかにいつもより激しい。
「オペレーションの崩壊具合、なかなかでしたね」
絵斗が、厨房から出てきて椅子に腰掛ける。
「プリン、途中でなくなったし、
ケーキの切り分けも何回かやり直したし」
「ごめんなさい、スプーンの補充も遅れました」
花春が、申し訳なさそうに頭を下げる。
「診断シートと注文票、最初混ざりまくってて……」
「それは僕もです」
凱理が、突っ伏したまま手を挙げた。
「カウンターのお客様に、違う結果のケーキ持っていきかけましたし」
「私も、ビターの人にフルーツ持っていきそうになりました」
璃音も、苦笑いを浮かべる。
「『ごまかしきれない』って言われているのに、
やたら優しい甘さを出してしまうところでした」
「でも」
そこで、阿紗美が口を開いた。
「誰も帰るときに怒ってはいませんでした」
その言葉に、全員が顔を上げる。
「むしろ、『楽しかった』って言ってくださる方が多かったです。
『今日は失敗も多かったけど、それも含めていい夜だった』って」
思い返せば、たしかにそうだった。
注文が遅れてしまったテーブルにも、
「この診断シート、お土産でもらっていいですか」と笑って言ってくれた客がいた。
「帰り際、『また来ます』って言ってくれた人、何人かいましたよ」
花春が、ふっと微笑む。
「診断結果を二つ折りにして、大事そうに鞄にしまっている人もいましたし」
「……そうですね」
奏斗は、静かに頷いた。
「失敗は多かった。
オペレーション面での課題も山ほど見つかりました」
そう前置きしてから、テーブルの中央に黒いノートを置く。
表紙には、「君に恋する確率」と白い文字が書かれている。
「それでも、今日この店で過ごした時間が、
誰かにとって『悪くなかった一日』になった可能性は高い」
ノートを開き、新しいページの上にペンを走らせる。
『酒の流れる川ウィーク初日。
オペレーションは予定通りにはいかなかった。
限定メニューの提供順は乱れ、注文のミスも多発。
それでも、診断シートを前に笑う声があった。
結果の丸を付け直しながら、照れくさそうに話す横顔があった。
失敗だらけの一日だったけれど、
「悪くない初日だった」と言えるだけの何かが、
この店の空気に確かに残っている。』
書き終えると、ページの端に小さく数字を書く。
『君に恋する確率:——
この店に恋してくれる人の確率も、
少しだけ上がった気がする。』
「……いいですね」
ノートを覗き込んだ璃音が、静かに笑った。
「今日の『失敗』も、ちゃんとここに入れておけるなら、
ちょっと救われる気がします」
「失敗を全部なかったことにしようとすると、
たぶん明日も同じことを繰り返しますから」
奏斗は、ノートを閉じて棚に戻した。
「明日は、今日より少しだけうまく回せばいい。
確率の話と同じです」
「ゼロから百を目指さないってことですね」
阿紗美が、椅子の背にもたれながら言う。
「今日が四十点なら、明日は四十五点くらいを目標にしましょう」
「そのくらいなら、頑張れそうです」
花春が、ほっとしたように笑う。
「じゃあ明日は、『診断シート回収係』と『注文票記入係』を分けましょうか。
少なくとも、今日より紙は迷子にならないはずです」
「厨房も、デザートの仕込みを二段階に分けるか」
絵斗が、明日の段取りを考え始める。
「最初から全員分一気に仕込もうとするから、途中で足りなくなる。
前半戦と後半戦に分けて焼こう」
「ホール側は、入口で『混雑時はお時間いただきます』って
一言伝えるようにします」
凱理も、小さく拳を握った。
「待つ覚悟を持って入ってきてもらえれば、
こっちも焦り過ぎずに済みますし」
◇
「……なんだかんだ言って」
片付けがひと段落したころ、璃音がぽつりと言った。
「今日、けっこう楽しかったです」
「楽しかった?」
奏斗が、少しだけ意外そうに尋ねる。
「はい。
大変だったし、何度も頭が真っ白になりかけましたけど」
璃音は、自分の手のひらを見下ろした。
「診断シートを渡したときとか、
結果を見て照れているお客様の顔とか。
『君に恋する確率』って、
やっぱりこの店に似合う言葉だなって、何度も思いました」
「……それなら、やってよかった」
奏斗の声は、いつもより少しだけ柔らかかった。
「失敗だらけの初日でしたが」
「でも、『失敗だらけ』って言いながら、
ちゃんと『初日』って言い切れること自体が、なんだか嬉しいです」
璃音は、そう言って笑う。
「明日も、その次の日もあるってことですから」
酒の流れる川のほとりで、
ぐったりとした笑い声が、ゆっくりと夜に溶けていく。
失敗の数だけ、確率を少しずつ上げていく一週間の幕は、
こうして賑やかに上がった。
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