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第26話 問題を回避できない夜
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人気投票が始まって三日目の夜、川沿いの提灯は、いつもより少しだけ早く灯り始めていた。
「川べり文庫」の店内では、開店前からわずかな緊張が漂っている。
「本日、夜七時に四名さまが二組、八時に三名さまが一組……っと」
カウンターで予約ノートを確認しているのは凱理だ。
ボールペンのキャップを歯で軽く噛みながら、丸数字を書き込んでいく。
「凱理さん、噛まない」
レジ横で釣り銭を揃えていた奏斗が、視線だけ横に送る。
「インクが出なくなったら、また買わないといけません」
「はいはい。大事な計算機ですもんね」
凱理は、ペンを口から離し、ノートをぱたんと閉じた。
「でも、今夜もそこそこ埋まってる感じですね。
さすが人気投票期間」
「『そこそこ』で済むといいけどな」
厨房から顔を出した絵斗が、オーブンのタイマーをちらりと見る。
「昨日みたいに、一気に『君に恋する確率』が押し寄せたら、
またプリンが悲鳴あげるぞ」
「今日はちゃんと二段階仕込みしてあります」
璃音が、冷蔵庫を指さしながら胸を張る。
「前半戦と後半戦で分けてあるので、
いきなり『ごまかしきれない域』の人が増えても大丈夫です」
「域って言うな」
阿紗美が、笑いながらもホールを一周見渡した。
「通路、もう少し広げておきましょう。
予約が多い日は、急な席替えが入りやすいので」
「そうやって先に備えておけば、きっと大丈夫ですよ」
花春が、入口のベルの位置を確認しながら言う。
「……たぶん」
小さく付け足された一言を、誰も深追いはしなかった。
◇
七時少し前。
最初の予約客がやって来た。
「いらっしゃいませ。四名さまでお伺いしておりました」
花春が笑顔で迎え、奥のテーブル席へ案内する。
女子会らしい賑やかな声が、店内にふわりと広がった。
続いて、ふらりと立ち寄った一人客がカウンターに座り、
少し遅れて二人組が川沿いの窓際に腰を下ろす。
いい具合に席が埋まり始めた頃——。
「すみません、予約していた田嶋ですが」
入口でスーツ姿の男性が声をかけてきた。
後ろには、同じくスーツの男性たちが三人と、女性が一人。
凱理は、すぐにノートを開いた。
「田嶋さまですね。四名さまでしたよね?」
「いえ、六名です」
男性は、少し不思議そうに首をかしげる。
「電話で『六名でお願いします』って伝えたと思うんですが」
「六名……?」
ノートには、たしかに「田嶋/4名/19:00」と書かれている。
凱理は、ペン先でその数字を見つめた。
(あれ?)
胸の奥に、嫌な予感がじわりと広がる。
「すぐに確認いたします。
申し訳ありませんが、少々お待ちいただけますか」
そう言って頭を下げると、その瞬間——。
「すみませーん、『七時に六名で予約した、ミズホでーす』」
今度は明るい声が飛び込んできた。
振り向くと、入口には私服の男女が六人。
さきほど入店した四人組の友人たちだろうか、
笑い声と香水の匂いが一気に押し寄せてくる。
「えっと……」
凱理は、思わずノートと入口を何度も見比べた。
ノートの別のページには、こう書かれている。
『ミズホ/6名/19:00/サイト予約』
つまり——。
電話予約の「田嶋/6名」が、ノートに書く段階で「4名」に変わり。
同じ時間帯に、サイト経由の「ミズホ/6名」が入っている。
十九時。
六名と六名。
席数は、テーブルとカウンターを合わせても、残りは八席。
計算は、すぐに頭の中で終わった。
そして、結果はどうやっても「足りない」。
(やば……)
普段なら、ここで「なんとかなるっしょ」と言って、
厨房の様子を見に行くふりをしながら、少し時間を稼ぐところだ。
けれど、今日は——。
ノートの端に書かれた、阿紗美の言葉がふと頭をよぎる。
『やり過ぎないでやり切る』
(逃げ道探す前に、ちゃんと頭下げないと)
喉がきゅっと狭くなる感覚に、凱理は自分で息を押し込んだ。
「奏斗さん」
カウンターの中でグラスを拭いていた奏斗の方へ、真っ直ぐに近づく。
「予約、完全に僕のミスです。
十九時に六名と六名、席が足りません」
店内の時間が、わずかに止まったように感じた。
◇
状況を聞いた奏斗は、ノートを一目見て、すぐに現状を確認に動いた。
奥の四人席には、すでに女子会の一組目。
窓際の二人席には、先ほど来店したカップル。
カウンターは三席空いているが、
六人組をそのまま座らせられるようなスペースはない。
「……完全な、こちらのミスですね」
奏斗は淡々と現実を口にした。
「はい」
凱理は、ごまかさずに頷く。
「電話で『六名』って聞いてたのに、僕が四って書き間違えました。
サイトの六名も、確認したときにちゃんと重ねて考えなかったです」
「原因の把握は後でいい」
奏斗は、ノートを閉じた。
「今は、どうすれば全員に納得してもらえるかを考えましょう」
「……逃げないでいいんですか」
思わず出た本音に、奏斗が目を瞬く。
「逃げる、とは?」
「いや、こういうとき、
『本日は満席でして』って片方だけお断りする店もあるじゃないですか。
予約したのはしてるけど、こっちのミスって言わずに、
『手違いがありまして』とか……」
口に出しながら、自分でもうんざりする。
今まで自分が目をそらしてきた選択肢が、
この場面でいかに居心地の悪いものか、ようやく分かる気がした。
「それは、『回避』ではなく『放棄』です」
奏斗の声は、静かだった。
「問題から目をそらすのは簡単ですが、
今日ここで断られた人の『せっかく来たのに』という気持ちは、
きっとどこかに残ります」
「……ですよね」
胃のあたりが、じわじわと重くなる。
「凱理さん」
「はい」
「今日の予約の窓口を担当していたのは?」
「僕です」
「では、最初に頭を下げるのも、あなたです」
覚悟は、思っていたよりも短い言葉で渡された。
逃げ場は、もうない。
でも、不思議と足は動いた。
「行ってきます」
凱理は、深呼吸を一つして入口の方へ向かった。
◇
先に入店していた田嶋たち六人組は、
まだ店の外で待っている。
「お待たせして申し訳ありません」
凱理は、いつになく深い角度で頭を下げた。
「ご予約の件ですが、私のミスで席の数の調整に不備がありました。
本来六名さまで承っていたところを、
四名さま分としてノートに記入してしまいまして……」
そこまで言ったところで、田嶋が目を丸くした。
「えっと、それって——」
「はい。
同じ時間に六名さまのご予約がもう一組ありまして、
店内が満席に近い現在、すぐに全員分の席をご用意することができません」
言いながら、自分の声が少し震えているのが分かる。
いつもなら、笑いでごまかすところだ。
「すみません、人気者で」などと軽口を叩いて、
場の空気をごまかす方を選んでいたかもしれない。
けれど、今日は違う。
「完全にこちらの不手際です。
本当に申し訳ありません」
頭の位置を、さっきよりも少しだけ深くした。
しばしの沈黙。
やがて、田嶋がぽりぽりと頬をかいた。
「正直に言ってくれたのは、ありがたいです」
「……はい?」
「こういうのって、『システムの不具合で』とか言われがちじゃないですか。
最初から『自分のミスです』って言われると、
そんなに怒る気になれないというか」
周りのメンバーも顔を見合わせ、苦笑いを浮かべた。
「俺らも、急ぎの会議ってわけじゃないしな」
「腹は減ってるけど」
「そこで、もしよろしければのご相談なのですが」
凱理は、用意してきた提案を一息で口にした。
「すぐに四名さま分の席はご用意できます。
残り二名さまは、三十分ほどお時間をいただければ、
テーブルを組み替えてお席をお作りします。
その間、『今日の一歩ケーキ』とソフトドリンクを、
先に少しお出しさせてください。
もちろん、その分のお会計は、
こちらの不手際ということで頂きません」
「三十分かあ……」
田嶋が腕時計を見る。
同僚たちが顔を見合わせ、ひそひそと話し合う。
「どうする? 向かいの店も混んでそうだしな」
「せっかくここまで来たし、待つか」
やがて、田嶋がこちらを向いた。
「分かりました。
じゃあ、先発隊四人と、後発隊二人で分けます」
「ありがとうございます」
凱理の肩から、少しだけ力が抜ける。
「ただ、一つだけ条件いいですか」
「条件?」
「待ってる二人にも、ちゃんとケーキ出してください。
『遅れてきた罰ゲーム』とかじゃなくて」
その言い方に、凱理は思わず笑ってしまった。
「もちろんです。
むしろ、遅れてきた方の方が、少し大きめに切るかもしれません」
「そう来なくちゃ」
空気が、少しだけ柔らかくなった。
◇
次は、ミズホたち六人組だ。
彼らはすでに店内に足を踏み入れ、
メニューを手にしながらわいわいと騒いでいる。
「ねえ、本当にここ?
『君に恋する確率セット』って書いてあるよ」
「ほら、サイトの写真の店内と同じだし」
楽しげな会話の隙間を縫って、凱理は近づいた。
「ご予約のミズホさまですね。
先ほどからお待たせしてしまい、申し訳ありません」
「はーい、ミズホでーす」
明るい声の女性が、手を挙げる。
「予約の件で、お詫びとご相談があります」
先ほどと同じように、ミスの内容を正直に話す。
ミズホたちは、一瞬きょとんとした顔になったあと、
すぐに互いの顔を見合わせて笑い出した。
「やらかしてるー」
「逆に好感持てるやつ」
「どうする? 席足りないんでしょ?」
「はい。
全員分のテーブルをすぐにご用意するのは難しい状況です」
凱理は、提案の二つ目を切り出した。
「もしよろしければ、
最初の三十分だけ、向かいの居酒屋さんで過ごしていただくことはできますか。
あちらの店主には事情を話してあります。
『川べり文庫』からの紹介ということで、
最初の一杯だけ少しお得にしてくださるそうです。
三十分後、こちらで席を整えてお待ちします」
「他の店に回されるパターンって初めて聞いた」
ミズホが目を丸くする。
「普通、自分の店だけでなんとかしようとしません?」
「本当はそうしたいところなんですが、
物理的な席の数だけは、どう頑張っても増やせなくて」
凱理は、言葉を選びながら続けた。
「この通り全体で、『酒の流れる川』として動いているので。
もしよろしければ、向かいの店の雰囲気も含めて、
今夜の思い出にしていただけたらと思いまして」
ミズホたちは、しばし考え込む。
「ねえ、それってさ」
一人が、楽しそうに言った。
「一次会と二次会が、川を挟まずに完結するってことじゃない?」
「たしかに」
「移動時間ゼロの二次会」
笑い声のあと、ミズホがこちらに向き直った。
「分かりました。
じゃあ三十分、向かいのお店行ってきます。
その代わり、戻ってきたときは——」
「はい」
「『君に恋する確率セット』、全員分頼むので、
ちゃんと診断付きでお願いしますね」
その条件に、凱理は大きく頷いた。
「喜んで。
診断結果、紙に書いてお渡しします」
「よーし、覚悟決めるか」
ミズホたちは笑いながら、店を出ていった。
扉のベルが鳴り、少しだけ静けさが戻る。
カウンターの向こうから、奏斗がこちらを見ていた。
目が合うと、彼はごく小さく、しかしはっきりと頷いた。
◇
そのあとの一時間は、ほとんど走りっぱなしだった。
四人先に座った田嶋グループに、
「今日の一歩ケーキ」とノンアルドリンクを運び。
向かいの居酒屋から、ミズホたちが戻ってくる時刻に合わせて、
テーブルを組み替え、椅子の位置を調整する。
「阿紗美さん、この通路、まだ狭いですか」
「あと五センチだけ。
人がすれ違える幅を確保しましょう」
阿紗美の指示に従い、テーブルを少しずつ動かす。
「花春さん、診断シートのペン、もう一本入口側に置いて」
「はい!」
花春は、笑顔を崩さないまま、
奥の席と入り口側のカウンターを行き来する。
璃音は、カウンターの奥で、
「君に恋する確率セット」のドリンクをいつもより小刻みに作り続けていた。
「測定不能、じわじわ上昇中、ごまかしきれない……」
グラスの色を確認しながら、
目の前の予約席の数を頭の中で組み合わせていく。
「……大丈夫、行ける」
小さく呟いた声は、
厨房の音にかき消されつつも、どこか確かなものだった。
◇
やがて、ミズホたちが戻ってきた。
「ただいまー」
扉が開くなり、元気な声が店内に飛び込む。
「席、ちゃんと用意されてる?」
「もちろんです」
凱理は、胸を張ってテーブルへ案内した。
椅子がきちんと六つ並び、
本棚の横には、「君に恋する確率セット」のメニューがさりげなく立てかけてある。
「うわ、いい感じ」
「本棚が近いの、落ち着くね」
彼女たちの表情を見て、
凱理の胸の奥に、ようやくじんわりとした安堵が広がった。
一方、田嶋のテーブルでは——。
「遅れてすみません」
後発隊の二人が、少し息を切らしながら席に着いた。
「遅れてきた罰ゲームのケーキは?」
同僚の冗談に、凱理はすかさず乗る。
「罰ゲームではなく、『よく来てくれましたケーキ』をご用意しました」
通常より少しだけ大きく切られた「今日の一歩ケーキ」が、
テーブルの中央に置かれる。
「おお、ほんとにでかい」
「そういうところ、好きだわ」
笑い声が、今度は本当に楽しそうに弾けた。
◇
閉店後。
椅子を上げ終えた店内で、
凱理は、予約ノートと向き合っていた。
七時のページには、「6」と書き直された数字と、
ミスの内容を走り書きしたメモ。
「今日の予約、最初から見直したら?」
絵斗が、グラスを片付けながら言う。
「同じ間違い、二度やらないようにさ」
「そうします」
凱理は、ペンを取り出し、
翌日の予約ページを一行ずつ目で追っていく。
その様子を、カウンターの向こうから奏斗が静かに見守っていた。
「……さっきは、ありがとうございました」
ひと区切りついたところで、
凱理がノートを閉じて頭を下げた。
「怒られる覚悟してたんですけど、
『行ってきなさい』って言われたの、
妙に背中押されました」
「怒るのは簡単です」
奏斗は、棚にノートを戻しながら言った。
「でも、その場で誰かを責めても、
今日来てくださったお客様には何の意味もありません」
「はい」
「自分のミスだと認めて、
自分の口で頭を下げに行ったのは、あなたです。
そこは、きちんと評価しておきます」
その言葉に、凱理は思わず視線をそらした。
「……逃げたら、絶対あとから後悔する気がしたんですよね」
照れ隠しのように笑いながら、続ける。
「『問題を回避する』って、
僕の中では今まで『得意技』みたいなものだったんですけど。
今日ばかりは、
逃げたら一晩中モヤモヤして眠れないのが目に浮かんで」
「問題を回避できない夜、でしたね」
阿紗美が、片付けを終えて近づきながら言った。
「でも、『回避できなかった』からこそ見えたものも、
きっとあったんじゃないですか」
「はい」
凱理は、ゆっくりと頷いた。
「ちゃんと向き合ってみたら、
思ってたより全然、話が通じるんだなって。
こっちが正直にミス認めて、
どうしたいかちゃんと説明したら、
意外とみんな、聞いてくれるんだって」
その実感は、
今日一日の疲れよりも、はっきりと心に残っている。
「……あの田嶋さん、帰りに投票用紙出してくれましたよ」
花春が、青い紙の束を持ってきた。
「さっきちらっと見たら、こう書いてあって」
上から二枚目の紙を取り出し、
コメント欄を指さす。
『予約の手違いがあったけれど、
最後まで誠実に対応してくれました。
また来たいと思いました。』
「うわあ……」
凱理は、思わず頭を抱えた。
「これ、なんか、
『ちゃんと見られてたんだな』って気になりますね」
「見られていましたよ」
璃音が、静かに笑う。
「厨房からも、ずっと見てました。
逃げずにしゃべってる背中、
いつもよりちょっとだけ大きく見えました」
「それ、褒めてます?」
「褒めてます」
即答されて、
凱理はようやく、照れくさそうに「ありがとうございます」と言った。
◇
川沿いの通りには、まだいくつかの灯りが残っている。
向かいの居酒屋の前では、
先ほどのミズホたちが、最後の一服をしているようだった。
その背中をガラス越しに見ながら、
凱理は心の中でそっと頭を下げる。
(今日は、逃げないでよかった)
酒の流れる川のほとりで過ごした、
問題を回避できない夜。
その夜が、確かに一つ、
凱理の中の「君に恋する確率」を——
いや、「自分を少しだけ認められる確率」を、
ほんの少しだけ上げていた。
「川べり文庫」の店内では、開店前からわずかな緊張が漂っている。
「本日、夜七時に四名さまが二組、八時に三名さまが一組……っと」
カウンターで予約ノートを確認しているのは凱理だ。
ボールペンのキャップを歯で軽く噛みながら、丸数字を書き込んでいく。
「凱理さん、噛まない」
レジ横で釣り銭を揃えていた奏斗が、視線だけ横に送る。
「インクが出なくなったら、また買わないといけません」
「はいはい。大事な計算機ですもんね」
凱理は、ペンを口から離し、ノートをぱたんと閉じた。
「でも、今夜もそこそこ埋まってる感じですね。
さすが人気投票期間」
「『そこそこ』で済むといいけどな」
厨房から顔を出した絵斗が、オーブンのタイマーをちらりと見る。
「昨日みたいに、一気に『君に恋する確率』が押し寄せたら、
またプリンが悲鳴あげるぞ」
「今日はちゃんと二段階仕込みしてあります」
璃音が、冷蔵庫を指さしながら胸を張る。
「前半戦と後半戦で分けてあるので、
いきなり『ごまかしきれない域』の人が増えても大丈夫です」
「域って言うな」
阿紗美が、笑いながらもホールを一周見渡した。
「通路、もう少し広げておきましょう。
予約が多い日は、急な席替えが入りやすいので」
「そうやって先に備えておけば、きっと大丈夫ですよ」
花春が、入口のベルの位置を確認しながら言う。
「……たぶん」
小さく付け足された一言を、誰も深追いはしなかった。
◇
七時少し前。
最初の予約客がやって来た。
「いらっしゃいませ。四名さまでお伺いしておりました」
花春が笑顔で迎え、奥のテーブル席へ案内する。
女子会らしい賑やかな声が、店内にふわりと広がった。
続いて、ふらりと立ち寄った一人客がカウンターに座り、
少し遅れて二人組が川沿いの窓際に腰を下ろす。
いい具合に席が埋まり始めた頃——。
「すみません、予約していた田嶋ですが」
入口でスーツ姿の男性が声をかけてきた。
後ろには、同じくスーツの男性たちが三人と、女性が一人。
凱理は、すぐにノートを開いた。
「田嶋さまですね。四名さまでしたよね?」
「いえ、六名です」
男性は、少し不思議そうに首をかしげる。
「電話で『六名でお願いします』って伝えたと思うんですが」
「六名……?」
ノートには、たしかに「田嶋/4名/19:00」と書かれている。
凱理は、ペン先でその数字を見つめた。
(あれ?)
胸の奥に、嫌な予感がじわりと広がる。
「すぐに確認いたします。
申し訳ありませんが、少々お待ちいただけますか」
そう言って頭を下げると、その瞬間——。
「すみませーん、『七時に六名で予約した、ミズホでーす』」
今度は明るい声が飛び込んできた。
振り向くと、入口には私服の男女が六人。
さきほど入店した四人組の友人たちだろうか、
笑い声と香水の匂いが一気に押し寄せてくる。
「えっと……」
凱理は、思わずノートと入口を何度も見比べた。
ノートの別のページには、こう書かれている。
『ミズホ/6名/19:00/サイト予約』
つまり——。
電話予約の「田嶋/6名」が、ノートに書く段階で「4名」に変わり。
同じ時間帯に、サイト経由の「ミズホ/6名」が入っている。
十九時。
六名と六名。
席数は、テーブルとカウンターを合わせても、残りは八席。
計算は、すぐに頭の中で終わった。
そして、結果はどうやっても「足りない」。
(やば……)
普段なら、ここで「なんとかなるっしょ」と言って、
厨房の様子を見に行くふりをしながら、少し時間を稼ぐところだ。
けれど、今日は——。
ノートの端に書かれた、阿紗美の言葉がふと頭をよぎる。
『やり過ぎないでやり切る』
(逃げ道探す前に、ちゃんと頭下げないと)
喉がきゅっと狭くなる感覚に、凱理は自分で息を押し込んだ。
「奏斗さん」
カウンターの中でグラスを拭いていた奏斗の方へ、真っ直ぐに近づく。
「予約、完全に僕のミスです。
十九時に六名と六名、席が足りません」
店内の時間が、わずかに止まったように感じた。
◇
状況を聞いた奏斗は、ノートを一目見て、すぐに現状を確認に動いた。
奥の四人席には、すでに女子会の一組目。
窓際の二人席には、先ほど来店したカップル。
カウンターは三席空いているが、
六人組をそのまま座らせられるようなスペースはない。
「……完全な、こちらのミスですね」
奏斗は淡々と現実を口にした。
「はい」
凱理は、ごまかさずに頷く。
「電話で『六名』って聞いてたのに、僕が四って書き間違えました。
サイトの六名も、確認したときにちゃんと重ねて考えなかったです」
「原因の把握は後でいい」
奏斗は、ノートを閉じた。
「今は、どうすれば全員に納得してもらえるかを考えましょう」
「……逃げないでいいんですか」
思わず出た本音に、奏斗が目を瞬く。
「逃げる、とは?」
「いや、こういうとき、
『本日は満席でして』って片方だけお断りする店もあるじゃないですか。
予約したのはしてるけど、こっちのミスって言わずに、
『手違いがありまして』とか……」
口に出しながら、自分でもうんざりする。
今まで自分が目をそらしてきた選択肢が、
この場面でいかに居心地の悪いものか、ようやく分かる気がした。
「それは、『回避』ではなく『放棄』です」
奏斗の声は、静かだった。
「問題から目をそらすのは簡単ですが、
今日ここで断られた人の『せっかく来たのに』という気持ちは、
きっとどこかに残ります」
「……ですよね」
胃のあたりが、じわじわと重くなる。
「凱理さん」
「はい」
「今日の予約の窓口を担当していたのは?」
「僕です」
「では、最初に頭を下げるのも、あなたです」
覚悟は、思っていたよりも短い言葉で渡された。
逃げ場は、もうない。
でも、不思議と足は動いた。
「行ってきます」
凱理は、深呼吸を一つして入口の方へ向かった。
◇
先に入店していた田嶋たち六人組は、
まだ店の外で待っている。
「お待たせして申し訳ありません」
凱理は、いつになく深い角度で頭を下げた。
「ご予約の件ですが、私のミスで席の数の調整に不備がありました。
本来六名さまで承っていたところを、
四名さま分としてノートに記入してしまいまして……」
そこまで言ったところで、田嶋が目を丸くした。
「えっと、それって——」
「はい。
同じ時間に六名さまのご予約がもう一組ありまして、
店内が満席に近い現在、すぐに全員分の席をご用意することができません」
言いながら、自分の声が少し震えているのが分かる。
いつもなら、笑いでごまかすところだ。
「すみません、人気者で」などと軽口を叩いて、
場の空気をごまかす方を選んでいたかもしれない。
けれど、今日は違う。
「完全にこちらの不手際です。
本当に申し訳ありません」
頭の位置を、さっきよりも少しだけ深くした。
しばしの沈黙。
やがて、田嶋がぽりぽりと頬をかいた。
「正直に言ってくれたのは、ありがたいです」
「……はい?」
「こういうのって、『システムの不具合で』とか言われがちじゃないですか。
最初から『自分のミスです』って言われると、
そんなに怒る気になれないというか」
周りのメンバーも顔を見合わせ、苦笑いを浮かべた。
「俺らも、急ぎの会議ってわけじゃないしな」
「腹は減ってるけど」
「そこで、もしよろしければのご相談なのですが」
凱理は、用意してきた提案を一息で口にした。
「すぐに四名さま分の席はご用意できます。
残り二名さまは、三十分ほどお時間をいただければ、
テーブルを組み替えてお席をお作りします。
その間、『今日の一歩ケーキ』とソフトドリンクを、
先に少しお出しさせてください。
もちろん、その分のお会計は、
こちらの不手際ということで頂きません」
「三十分かあ……」
田嶋が腕時計を見る。
同僚たちが顔を見合わせ、ひそひそと話し合う。
「どうする? 向かいの店も混んでそうだしな」
「せっかくここまで来たし、待つか」
やがて、田嶋がこちらを向いた。
「分かりました。
じゃあ、先発隊四人と、後発隊二人で分けます」
「ありがとうございます」
凱理の肩から、少しだけ力が抜ける。
「ただ、一つだけ条件いいですか」
「条件?」
「待ってる二人にも、ちゃんとケーキ出してください。
『遅れてきた罰ゲーム』とかじゃなくて」
その言い方に、凱理は思わず笑ってしまった。
「もちろんです。
むしろ、遅れてきた方の方が、少し大きめに切るかもしれません」
「そう来なくちゃ」
空気が、少しだけ柔らかくなった。
◇
次は、ミズホたち六人組だ。
彼らはすでに店内に足を踏み入れ、
メニューを手にしながらわいわいと騒いでいる。
「ねえ、本当にここ?
『君に恋する確率セット』って書いてあるよ」
「ほら、サイトの写真の店内と同じだし」
楽しげな会話の隙間を縫って、凱理は近づいた。
「ご予約のミズホさまですね。
先ほどからお待たせしてしまい、申し訳ありません」
「はーい、ミズホでーす」
明るい声の女性が、手を挙げる。
「予約の件で、お詫びとご相談があります」
先ほどと同じように、ミスの内容を正直に話す。
ミズホたちは、一瞬きょとんとした顔になったあと、
すぐに互いの顔を見合わせて笑い出した。
「やらかしてるー」
「逆に好感持てるやつ」
「どうする? 席足りないんでしょ?」
「はい。
全員分のテーブルをすぐにご用意するのは難しい状況です」
凱理は、提案の二つ目を切り出した。
「もしよろしければ、
最初の三十分だけ、向かいの居酒屋さんで過ごしていただくことはできますか。
あちらの店主には事情を話してあります。
『川べり文庫』からの紹介ということで、
最初の一杯だけ少しお得にしてくださるそうです。
三十分後、こちらで席を整えてお待ちします」
「他の店に回されるパターンって初めて聞いた」
ミズホが目を丸くする。
「普通、自分の店だけでなんとかしようとしません?」
「本当はそうしたいところなんですが、
物理的な席の数だけは、どう頑張っても増やせなくて」
凱理は、言葉を選びながら続けた。
「この通り全体で、『酒の流れる川』として動いているので。
もしよろしければ、向かいの店の雰囲気も含めて、
今夜の思い出にしていただけたらと思いまして」
ミズホたちは、しばし考え込む。
「ねえ、それってさ」
一人が、楽しそうに言った。
「一次会と二次会が、川を挟まずに完結するってことじゃない?」
「たしかに」
「移動時間ゼロの二次会」
笑い声のあと、ミズホがこちらに向き直った。
「分かりました。
じゃあ三十分、向かいのお店行ってきます。
その代わり、戻ってきたときは——」
「はい」
「『君に恋する確率セット』、全員分頼むので、
ちゃんと診断付きでお願いしますね」
その条件に、凱理は大きく頷いた。
「喜んで。
診断結果、紙に書いてお渡しします」
「よーし、覚悟決めるか」
ミズホたちは笑いながら、店を出ていった。
扉のベルが鳴り、少しだけ静けさが戻る。
カウンターの向こうから、奏斗がこちらを見ていた。
目が合うと、彼はごく小さく、しかしはっきりと頷いた。
◇
そのあとの一時間は、ほとんど走りっぱなしだった。
四人先に座った田嶋グループに、
「今日の一歩ケーキ」とノンアルドリンクを運び。
向かいの居酒屋から、ミズホたちが戻ってくる時刻に合わせて、
テーブルを組み替え、椅子の位置を調整する。
「阿紗美さん、この通路、まだ狭いですか」
「あと五センチだけ。
人がすれ違える幅を確保しましょう」
阿紗美の指示に従い、テーブルを少しずつ動かす。
「花春さん、診断シートのペン、もう一本入口側に置いて」
「はい!」
花春は、笑顔を崩さないまま、
奥の席と入り口側のカウンターを行き来する。
璃音は、カウンターの奥で、
「君に恋する確率セット」のドリンクをいつもより小刻みに作り続けていた。
「測定不能、じわじわ上昇中、ごまかしきれない……」
グラスの色を確認しながら、
目の前の予約席の数を頭の中で組み合わせていく。
「……大丈夫、行ける」
小さく呟いた声は、
厨房の音にかき消されつつも、どこか確かなものだった。
◇
やがて、ミズホたちが戻ってきた。
「ただいまー」
扉が開くなり、元気な声が店内に飛び込む。
「席、ちゃんと用意されてる?」
「もちろんです」
凱理は、胸を張ってテーブルへ案内した。
椅子がきちんと六つ並び、
本棚の横には、「君に恋する確率セット」のメニューがさりげなく立てかけてある。
「うわ、いい感じ」
「本棚が近いの、落ち着くね」
彼女たちの表情を見て、
凱理の胸の奥に、ようやくじんわりとした安堵が広がった。
一方、田嶋のテーブルでは——。
「遅れてすみません」
後発隊の二人が、少し息を切らしながら席に着いた。
「遅れてきた罰ゲームのケーキは?」
同僚の冗談に、凱理はすかさず乗る。
「罰ゲームではなく、『よく来てくれましたケーキ』をご用意しました」
通常より少しだけ大きく切られた「今日の一歩ケーキ」が、
テーブルの中央に置かれる。
「おお、ほんとにでかい」
「そういうところ、好きだわ」
笑い声が、今度は本当に楽しそうに弾けた。
◇
閉店後。
椅子を上げ終えた店内で、
凱理は、予約ノートと向き合っていた。
七時のページには、「6」と書き直された数字と、
ミスの内容を走り書きしたメモ。
「今日の予約、最初から見直したら?」
絵斗が、グラスを片付けながら言う。
「同じ間違い、二度やらないようにさ」
「そうします」
凱理は、ペンを取り出し、
翌日の予約ページを一行ずつ目で追っていく。
その様子を、カウンターの向こうから奏斗が静かに見守っていた。
「……さっきは、ありがとうございました」
ひと区切りついたところで、
凱理がノートを閉じて頭を下げた。
「怒られる覚悟してたんですけど、
『行ってきなさい』って言われたの、
妙に背中押されました」
「怒るのは簡単です」
奏斗は、棚にノートを戻しながら言った。
「でも、その場で誰かを責めても、
今日来てくださったお客様には何の意味もありません」
「はい」
「自分のミスだと認めて、
自分の口で頭を下げに行ったのは、あなたです。
そこは、きちんと評価しておきます」
その言葉に、凱理は思わず視線をそらした。
「……逃げたら、絶対あとから後悔する気がしたんですよね」
照れ隠しのように笑いながら、続ける。
「『問題を回避する』って、
僕の中では今まで『得意技』みたいなものだったんですけど。
今日ばかりは、
逃げたら一晩中モヤモヤして眠れないのが目に浮かんで」
「問題を回避できない夜、でしたね」
阿紗美が、片付けを終えて近づきながら言った。
「でも、『回避できなかった』からこそ見えたものも、
きっとあったんじゃないですか」
「はい」
凱理は、ゆっくりと頷いた。
「ちゃんと向き合ってみたら、
思ってたより全然、話が通じるんだなって。
こっちが正直にミス認めて、
どうしたいかちゃんと説明したら、
意外とみんな、聞いてくれるんだって」
その実感は、
今日一日の疲れよりも、はっきりと心に残っている。
「……あの田嶋さん、帰りに投票用紙出してくれましたよ」
花春が、青い紙の束を持ってきた。
「さっきちらっと見たら、こう書いてあって」
上から二枚目の紙を取り出し、
コメント欄を指さす。
『予約の手違いがあったけれど、
最後まで誠実に対応してくれました。
また来たいと思いました。』
「うわあ……」
凱理は、思わず頭を抱えた。
「これ、なんか、
『ちゃんと見られてたんだな』って気になりますね」
「見られていましたよ」
璃音が、静かに笑う。
「厨房からも、ずっと見てました。
逃げずにしゃべってる背中、
いつもよりちょっとだけ大きく見えました」
「それ、褒めてます?」
「褒めてます」
即答されて、
凱理はようやく、照れくさそうに「ありがとうございます」と言った。
◇
川沿いの通りには、まだいくつかの灯りが残っている。
向かいの居酒屋の前では、
先ほどのミズホたちが、最後の一服をしているようだった。
その背中をガラス越しに見ながら、
凱理は心の中でそっと頭を下げる。
(今日は、逃げないでよかった)
酒の流れる川のほとりで過ごした、
問題を回避できない夜。
その夜が、確かに一つ、
凱理の中の「君に恋する確率」を——
いや、「自分を少しだけ認められる確率」を、
ほんの少しだけ上げていた。
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