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第7章「謎の手紙と体育倉庫の鍵」
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「この封筒……誰か落とした?」
朝の登校途中、菜緒が見つけたのは、校庭の端にぽつんと落ちていた一通の古びた茶封筒だった。紙は少し黄ばみ、端がちょっと焼け焦げている。なにより、そこには黒インクで手書きの文字が。
『失われた時は、花に聞け』
「……また花かい!!」
思わず叫びかけたのを飲み込んだ。
(いや、でも……これ、どこかで……)
記憶が掘り起こされる。そうだ。あれは図書室で、悠里が持ち出してきた、例のメモ。
『失われた時は、花に聞け』
完全一致である。
「うわ、これ絶対“つながってる”やつ……!やばいやつ……!でもちょっとテンション上がってきた……!」
封筒の中をそっと開けてみると、中には一枚の紙と、古びた金属製の鍵がひとつ。
紙には、なぜか座標のような数字と、学校の見取り図っぽいスケッチ。
「……これ、絶対学校のどっかだよね……」
すぐに放課後、調査チーム(自称)を召集。
放課後、屋上。
「いや、なんで会議場所がここ?」
「風が気持ちいいから」
「あと“意味ありげ”な雰囲気出るから」
「今のところ意味は一個もない!」
菜緒は封筒と中身をみんなに見せながら、慎重に説明を始めた。
「見て。座標っぽい数字と、地図。たぶん、これ“学校内のある場所”を示してるんだと思う」
「そしてこの鍵。どこかの扉を開けるためのやつだよな」
「古いし、たぶん今はもう使われてない部屋……?」
全員が顔を見合わせる。
「で、どこだと思う?」
拓毅が一瞬で答えた。
「体育倉庫だな」
「え、早っ!」
「スケッチがこれ。ほら、グラウンドの隅の、旧体育倉庫。いまは使われてないほう」
「そんなとこあったっけ……?」
「ちゃんとある。鍵も形状的に“旧タイプの南京錠”に合うやつだ」
「いや拓毅、情報処理速すぎ!もはや人じゃない!」
「ありがとう、人ではないって言われたのは初めて」
「褒めてないからね!?」
数時間後――
夕暮れのグラウンドに集まった一行は、旧体育倉庫の前に立っていた。
「これ、絶対入っちゃダメな雰囲気じゃん……」
「逆に言えば、“だからこそ入るべき”ってことだよ」
「この前から疑問だったけど、お前その“フラグをわざと立てる”スタイルいつ身につけたの?」
「読んでる少年マンガ全部そうだった」
「フィクション脳!!」
拓毅が鍵を手にして、慎重に錠前に差し込む。
「……」
カチャ。
「開いた」
「開くのかよ!!」
ギイィィ……という音と共に開いた扉の向こうは、完全な暗闇だった。
「おーい、懐中電灯ー!」
「ちょっと待って、花の着ぐるみの中にしまってた!」
「なぜそこに!?」
中に入ると、そこは――
「うわ、ホコリがすご……くしゃみ出そう……へくしっ!!」
「オレのYOで空気清浄できないかな……?」
「無理だよ。むしろYOが埃舞い上げてるよ!」
旧倉庫は、古いマットや跳び箱、なぜか使い込まれた竹刀や“タイヤ”の山など、体育的に説明のつかない物であふれていた。
「で、どこ調べるの?」
「とりあえず“明らかに物語進みそうな箱”を探そう」
「そういう感覚は正しいの!?」
しばらく探索を続けていると――
「……あった」
哲哉が見つけたのは、奥の棚の上にぽつんと置かれた、小さな金属箱。
「これはもう絶対“開けてくれ”って顔してる……!」
「でも、“開けたら鳴き声する系”だったらどうする!?」
「それはもはやペットボトルロケット的なアレだよね」
慎重に開けると、中には――
「手紙?と……何これ、古いフィルム?」
「これ……“観察記録”みたい」
フィルムには、ぼんやりとした人影と、花の映像らしきもの。そして、何かの装置のような物体。
「これ……学校内で何か、実験されてた……?」
「“花を観察するための装置”とか?」
「なにその花専用ハイテクカメラ!最新AI搭載です!みたいな……」
「高校でそんな研究予算あるか!!」
「でも、だとしたら……」
菜緒がそっと手紙を開く。
中には、手書きの文字で、こう綴られていた。
『この花には、過去が見える。
だから、見てはいけない記憶も、時々写る。
鍵は、咲いたときに動く。』
「……え?」
全員が一瞬固まった。
「動く?」
「何が?」
「鍵が……咲いたときに……?」
「“鍵が咲く”の!?え、鍵って咲くの!?」
「鍵って概念だったの!?」
「なんで急に詩的になるの!?」
情報は多いようでいて、さっぱり核心が見えてこない。
でも、一つだけはっきりしていることがあった。
「やっぱ、花だな」
「全部、あの花が中心にあるんだよ」
「じゃあ……この調査、長期戦になるかも」
「おっしゃ!“本格調査チーム”ここに結成だな!!」
「いや、もうチームとして動いてるでしょ」
「でも名前なかったじゃん。チーム名必要でしょ?」
「急に!?今このタイミングで!?」
「“フラワー・オブ・ザ・トゥルース”とかどう?」
「語感が悪い!!」
「“花咲き探偵団”とか?」
「それもうジャンル違くない!?」
「“花咲YO戦隊”とか……」
「それだけは絶対やめろおおお!!」
笑い声とともに、夕暮れの倉庫をあとにする彼らの背中は、ほんの少しだけ――冒険者っぽくなっていた。
夜。学校の近くのファミレス。
「……というわけで、“鍵が咲く”という謎の情報を手に入れた我々は……」
「まずハンバーグを注文した」
「この唐揚げ、サクサクしててうまっ……」
ファミレスで打ち合わせ(という名の夕食会)を開いていた調査チーム。妙に豪勢なテーブルには、哲哉、菜緒、栄徳、悠里、苑夏、麗真、華也子、拓毅のいつものメンバーが揃っていた。
「とりあえず、今日わかったこと整理しよっか」
菜緒がノートを開く。
「はい、“突然届いた封筒に謎の手紙と座標”、それが旧体育倉庫を示していて、中には過去の記録っぽいものと“鍵”。」
「そして、“その鍵は、咲いたときに動く”……という謎ワード」
「ねえ、これ何回読んでも“ポエム”なんだよね」
「鍵が咲いたら、どうなるんだよ……キーケースに花が咲くのかよ……」
「“カギザクラ”みたいな新種植物かも……」
「お前ら、雑学と妄想の使い方が雑すぎる!」
哲哉が、静かに口を開く。
「でも、“咲く”っていう表現をそのまま使ってるなら、やっぱ“花”と関係あるよな」
「じゃあ、“鍵”っていうのは比喩で、“咲いた瞬間、何かが開く”ってこと……?」
「例えば、異空間へのポータルとか……!」
「中学生の自由研究じゃないんだから!」
「でもさ。花が咲いた“瞬間”をどうやって見る?」
「え?」
「普通、咲いてるのしか見ないでしょ。“咲く瞬間”って、意外と誰も見てない」
「あー……言われてみれば」
「つまり、“その瞬間”に鍵が動くなら、見逃してる可能性高いってこと」
「じゃあ、次の花の“咲く瞬間”を、張り込んで見張るってこと?」
「見張るって……24時間!?交代制!?夜中も!?」
「夜中に花張ってる高校生、めっちゃ不審者だよね……」
「というか、寝よう!?一回寝よう!!」
全員が頭を抱える中、悠里がふとつぶやいた。
「……監視カメラ、つければよくね?」
「おぉー!」
「めっちゃ現代的解決法!」
「それ、なんなら最初からやるべきだったやつ!」
「でも校内に設置していいのかな……?」
「俺、技術部の先輩に相談してみる!」
「華也子、そういうのいけるの!?」
「うん。“演出の一環”って言えば、わりとなんでも通る」
「演劇部の権力の使い方、完全におかしい」
数日後――
花の前に、超小型カメラが設置された。
「“自然観察用”って名目で通った」
「さすが演出部、抜かりがない」
「しかもこのカメラ、動きがあったときだけ録画する高性能!」
「文明すげぇ……!」
そして、翌朝。
拓毅がカメラを確認して叫んだ。
「花が、“動いた瞬間”撮れてる!!」
「え!?マジで!?」
みんながカメラの映像に食いつく。
映像には、夜中の校庭。風もなく、静まり返ったその中で――
白い花が、ふわりと膨らみ、ゆっくりと咲いていく様子が映っていた。
そして――
その瞬間、花の根元が、かすかに“光った”。
「……これ、なに?」
「“咲いたときに鍵が動く”って、もしかして“場所が開く”ってことかも……?」
「じゃあ、花の下、掘ってみる!?」
「いやいやいや、いきなり“校庭掘る”って不審すぎるから!!」
「ちょ、ちょっと落ち着いて……!」
そのとき――
「……なにしてんの、君たち」
背後から、司書の先生(無言で恐いタイプ)が声をかけてきた。
「えーと、えっと……植物観察です!」
「花を掘ろうとしてましたね?」
「観察の一環で!!掘る系の観察で!!」
「花の気持ちに“深く”入ろうとして!!」
「みんな言い訳が雑すぎる!」
なんとか退場命令は回避したものの、やはり校庭を勝手に掘るのは無理と判明した。
「じゃあどうするよ……」
「待つしかない。あの“光”の意味がわかるまで」
「花がもう一度“咲く瞬間”を見せてくれるまで……」
そのとき。
「……また、咲く気がする」
菜緒がぽつりと呟いた。
「どうして?」
「わかんない。……でも、この花、今度は“呼んでる”気がするの」
全員が花に目を向ける。
揺れていない。風もない。
でも――
花の周囲にだけ、ほんのわずかに、空気が震えているように見えた。
「……やっぱ、来てるぞ。物語が」
「やめろ、締めのセリフっぽいこと言うの!」
「もうこれ、最終回直前みたいになってるじゃん!」
「ていうか、“花の動き”に心揺さぶられる高校生活、想定してなかった!」
「でも、なんか……嫌いじゃないよね」
「うん、わかる。なんか変なのに、ちょっと誇らしい」
みんなの視線の先で、白い花は今日も静かに、咲いていた。
まだ“鍵”は動かない。
でも、確かに花は、次の“言葉”を待っている気がした。
【章終】
朝の登校途中、菜緒が見つけたのは、校庭の端にぽつんと落ちていた一通の古びた茶封筒だった。紙は少し黄ばみ、端がちょっと焼け焦げている。なにより、そこには黒インクで手書きの文字が。
『失われた時は、花に聞け』
「……また花かい!!」
思わず叫びかけたのを飲み込んだ。
(いや、でも……これ、どこかで……)
記憶が掘り起こされる。そうだ。あれは図書室で、悠里が持ち出してきた、例のメモ。
『失われた時は、花に聞け』
完全一致である。
「うわ、これ絶対“つながってる”やつ……!やばいやつ……!でもちょっとテンション上がってきた……!」
封筒の中をそっと開けてみると、中には一枚の紙と、古びた金属製の鍵がひとつ。
紙には、なぜか座標のような数字と、学校の見取り図っぽいスケッチ。
「……これ、絶対学校のどっかだよね……」
すぐに放課後、調査チーム(自称)を召集。
放課後、屋上。
「いや、なんで会議場所がここ?」
「風が気持ちいいから」
「あと“意味ありげ”な雰囲気出るから」
「今のところ意味は一個もない!」
菜緒は封筒と中身をみんなに見せながら、慎重に説明を始めた。
「見て。座標っぽい数字と、地図。たぶん、これ“学校内のある場所”を示してるんだと思う」
「そしてこの鍵。どこかの扉を開けるためのやつだよな」
「古いし、たぶん今はもう使われてない部屋……?」
全員が顔を見合わせる。
「で、どこだと思う?」
拓毅が一瞬で答えた。
「体育倉庫だな」
「え、早っ!」
「スケッチがこれ。ほら、グラウンドの隅の、旧体育倉庫。いまは使われてないほう」
「そんなとこあったっけ……?」
「ちゃんとある。鍵も形状的に“旧タイプの南京錠”に合うやつだ」
「いや拓毅、情報処理速すぎ!もはや人じゃない!」
「ありがとう、人ではないって言われたのは初めて」
「褒めてないからね!?」
数時間後――
夕暮れのグラウンドに集まった一行は、旧体育倉庫の前に立っていた。
「これ、絶対入っちゃダメな雰囲気じゃん……」
「逆に言えば、“だからこそ入るべき”ってことだよ」
「この前から疑問だったけど、お前その“フラグをわざと立てる”スタイルいつ身につけたの?」
「読んでる少年マンガ全部そうだった」
「フィクション脳!!」
拓毅が鍵を手にして、慎重に錠前に差し込む。
「……」
カチャ。
「開いた」
「開くのかよ!!」
ギイィィ……という音と共に開いた扉の向こうは、完全な暗闇だった。
「おーい、懐中電灯ー!」
「ちょっと待って、花の着ぐるみの中にしまってた!」
「なぜそこに!?」
中に入ると、そこは――
「うわ、ホコリがすご……くしゃみ出そう……へくしっ!!」
「オレのYOで空気清浄できないかな……?」
「無理だよ。むしろYOが埃舞い上げてるよ!」
旧倉庫は、古いマットや跳び箱、なぜか使い込まれた竹刀や“タイヤ”の山など、体育的に説明のつかない物であふれていた。
「で、どこ調べるの?」
「とりあえず“明らかに物語進みそうな箱”を探そう」
「そういう感覚は正しいの!?」
しばらく探索を続けていると――
「……あった」
哲哉が見つけたのは、奥の棚の上にぽつんと置かれた、小さな金属箱。
「これはもう絶対“開けてくれ”って顔してる……!」
「でも、“開けたら鳴き声する系”だったらどうする!?」
「それはもはやペットボトルロケット的なアレだよね」
慎重に開けると、中には――
「手紙?と……何これ、古いフィルム?」
「これ……“観察記録”みたい」
フィルムには、ぼんやりとした人影と、花の映像らしきもの。そして、何かの装置のような物体。
「これ……学校内で何か、実験されてた……?」
「“花を観察するための装置”とか?」
「なにその花専用ハイテクカメラ!最新AI搭載です!みたいな……」
「高校でそんな研究予算あるか!!」
「でも、だとしたら……」
菜緒がそっと手紙を開く。
中には、手書きの文字で、こう綴られていた。
『この花には、過去が見える。
だから、見てはいけない記憶も、時々写る。
鍵は、咲いたときに動く。』
「……え?」
全員が一瞬固まった。
「動く?」
「何が?」
「鍵が……咲いたときに……?」
「“鍵が咲く”の!?え、鍵って咲くの!?」
「鍵って概念だったの!?」
「なんで急に詩的になるの!?」
情報は多いようでいて、さっぱり核心が見えてこない。
でも、一つだけはっきりしていることがあった。
「やっぱ、花だな」
「全部、あの花が中心にあるんだよ」
「じゃあ……この調査、長期戦になるかも」
「おっしゃ!“本格調査チーム”ここに結成だな!!」
「いや、もうチームとして動いてるでしょ」
「でも名前なかったじゃん。チーム名必要でしょ?」
「急に!?今このタイミングで!?」
「“フラワー・オブ・ザ・トゥルース”とかどう?」
「語感が悪い!!」
「“花咲き探偵団”とか?」
「それもうジャンル違くない!?」
「“花咲YO戦隊”とか……」
「それだけは絶対やめろおおお!!」
笑い声とともに、夕暮れの倉庫をあとにする彼らの背中は、ほんの少しだけ――冒険者っぽくなっていた。
夜。学校の近くのファミレス。
「……というわけで、“鍵が咲く”という謎の情報を手に入れた我々は……」
「まずハンバーグを注文した」
「この唐揚げ、サクサクしててうまっ……」
ファミレスで打ち合わせ(という名の夕食会)を開いていた調査チーム。妙に豪勢なテーブルには、哲哉、菜緒、栄徳、悠里、苑夏、麗真、華也子、拓毅のいつものメンバーが揃っていた。
「とりあえず、今日わかったこと整理しよっか」
菜緒がノートを開く。
「はい、“突然届いた封筒に謎の手紙と座標”、それが旧体育倉庫を示していて、中には過去の記録っぽいものと“鍵”。」
「そして、“その鍵は、咲いたときに動く”……という謎ワード」
「ねえ、これ何回読んでも“ポエム”なんだよね」
「鍵が咲いたら、どうなるんだよ……キーケースに花が咲くのかよ……」
「“カギザクラ”みたいな新種植物かも……」
「お前ら、雑学と妄想の使い方が雑すぎる!」
哲哉が、静かに口を開く。
「でも、“咲く”っていう表現をそのまま使ってるなら、やっぱ“花”と関係あるよな」
「じゃあ、“鍵”っていうのは比喩で、“咲いた瞬間、何かが開く”ってこと……?」
「例えば、異空間へのポータルとか……!」
「中学生の自由研究じゃないんだから!」
「でもさ。花が咲いた“瞬間”をどうやって見る?」
「え?」
「普通、咲いてるのしか見ないでしょ。“咲く瞬間”って、意外と誰も見てない」
「あー……言われてみれば」
「つまり、“その瞬間”に鍵が動くなら、見逃してる可能性高いってこと」
「じゃあ、次の花の“咲く瞬間”を、張り込んで見張るってこと?」
「見張るって……24時間!?交代制!?夜中も!?」
「夜中に花張ってる高校生、めっちゃ不審者だよね……」
「というか、寝よう!?一回寝よう!!」
全員が頭を抱える中、悠里がふとつぶやいた。
「……監視カメラ、つければよくね?」
「おぉー!」
「めっちゃ現代的解決法!」
「それ、なんなら最初からやるべきだったやつ!」
「でも校内に設置していいのかな……?」
「俺、技術部の先輩に相談してみる!」
「華也子、そういうのいけるの!?」
「うん。“演出の一環”って言えば、わりとなんでも通る」
「演劇部の権力の使い方、完全におかしい」
数日後――
花の前に、超小型カメラが設置された。
「“自然観察用”って名目で通った」
「さすが演出部、抜かりがない」
「しかもこのカメラ、動きがあったときだけ録画する高性能!」
「文明すげぇ……!」
そして、翌朝。
拓毅がカメラを確認して叫んだ。
「花が、“動いた瞬間”撮れてる!!」
「え!?マジで!?」
みんながカメラの映像に食いつく。
映像には、夜中の校庭。風もなく、静まり返ったその中で――
白い花が、ふわりと膨らみ、ゆっくりと咲いていく様子が映っていた。
そして――
その瞬間、花の根元が、かすかに“光った”。
「……これ、なに?」
「“咲いたときに鍵が動く”って、もしかして“場所が開く”ってことかも……?」
「じゃあ、花の下、掘ってみる!?」
「いやいやいや、いきなり“校庭掘る”って不審すぎるから!!」
「ちょ、ちょっと落ち着いて……!」
そのとき――
「……なにしてんの、君たち」
背後から、司書の先生(無言で恐いタイプ)が声をかけてきた。
「えーと、えっと……植物観察です!」
「花を掘ろうとしてましたね?」
「観察の一環で!!掘る系の観察で!!」
「花の気持ちに“深く”入ろうとして!!」
「みんな言い訳が雑すぎる!」
なんとか退場命令は回避したものの、やはり校庭を勝手に掘るのは無理と判明した。
「じゃあどうするよ……」
「待つしかない。あの“光”の意味がわかるまで」
「花がもう一度“咲く瞬間”を見せてくれるまで……」
そのとき。
「……また、咲く気がする」
菜緒がぽつりと呟いた。
「どうして?」
「わかんない。……でも、この花、今度は“呼んでる”気がするの」
全員が花に目を向ける。
揺れていない。風もない。
でも――
花の周囲にだけ、ほんのわずかに、空気が震えているように見えた。
「……やっぱ、来てるぞ。物語が」
「やめろ、締めのセリフっぽいこと言うの!」
「もうこれ、最終回直前みたいになってるじゃん!」
「ていうか、“花の動き”に心揺さぶられる高校生活、想定してなかった!」
「でも、なんか……嫌いじゃないよね」
「うん、わかる。なんか変なのに、ちょっと誇らしい」
みんなの視線の先で、白い花は今日も静かに、咲いていた。
まだ“鍵”は動かない。
でも、確かに花は、次の“言葉”を待っている気がした。
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