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第17章「帰還とフェスティバル」
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文化祭当日――午前8時。
校門前、異常なテンションの集団がいた。
「チュロス火口確認よし!点火班、待機!」
「ラップ隊、準備運動開始だYO!」
「精霊演劇班、花の着ぐるみ着脱チェック!」
「拠点前、強風による花びら飛散の懸念アリ!」
「風の想いも演出に取り込めー!!」
「うるせぇ!静かにしろぉぉおお!!!」
最終準備中の現場責任者・華也子の怒号が校庭にこだました。
「なんでこんなに朝から修羅場!?このクラスだけ文化祭じゃなくて軍事演習みたいになってない!?!?」
「いやこれがうちの“フェススタイル”だろ?」
「うん、もう誰も“演劇部”とか“謎解き部門”って言わなくなったね。
全部まとめて“異次元プロジェクト”って言ってるからね」
「むしろ“記憶の花”が主催で我々が出演者、って感じすらある」
「ちょっと待って、花に乗っ取られてるのうちだけ!?他クラス“クレープ”とか“射的”やってるよ!?こっち世界観だけで胃もたれしてるよ!?」
【フェス演目:記憶の花と語られなかった物語】
その構成はこうだ。
① 校舎内に仕掛けられた“謎解きミッション”
② 体育館での“演劇パート”
③ ラストは“観客の拍手”でエンディングが変わるマルチエンディング式
④ チュロス完売で隠し演出が解放される(予定)
「なにそのアイドルのライブ方式みたいな仕様!?」
「企画会議で『観客の感情で分岐させよう!』ってなった結果がこれだよ」
「拍手が足りなかったら演劇終わらず“無限ループ”に突入するぞ!」
「チュロスの売上で世界が救われるとか、聞いたことない世界線!」
「大丈夫!シナリオに『最終回:咲けYOエンド』ってのも用意してるから!」
「やめてほんとにそのルートだけは回避してくれYO!」
リハーサルを終え、開演5分前。
控室では、みんなが一斉におかしなテンションになっていた。
「……なんか、これ、もしかしてやばいこと始めちゃった?」
「うん。たぶん学校の歴史に残る」
「悪い意味で?」
「善悪超えて“記憶に刻まれる系”」
「いや、ほんとに“記憶の花”になっちゃうじゃん!」
菜緒がふと、窓の外を見ながら呟いた。
「……でも、咲いたよね。ちゃんと」
「うん。今朝、校庭の花、ふわっと咲いてた」
「しかも、他の生徒が“あれってなんの演出?”って言ってた!」
「“リアル自然現象”を“舞台装置”と思わせるってレベル高っ!」
「もう“自然の中の照明スタッフ”だよあれ!!」
「花のくせにプロ根性見せてくるなよ!」
開演アナウンスが流れる。
「ただいまより、三年C組による演目――
『記憶の花と語られなかった物語』を開演いたします」
舞台袖で全員が深呼吸する。
「……いこうか」
「うん。“自分たちの記憶”を咲かせに」
「ラップいきますYO」
「まずは静かにしてくれYO!!」
体育館の照明が落ち、
静寂と、わずかな緊張が空間を包みこむ。
――ドン。
太鼓のような低音が鳴り、舞台に“あの花”が浮かび上がる。
「……昔々、この場所には、一輪の花が咲いていた」
語り手は麗真。着ぐるみの中から。
「ちょっと……暑い……!思考が……精霊と混線する……!」
「それ演技なの!?本気で具合悪いの!?判断むずい!!」
舞台上では、菜緒が静かに登場。
「花よ……あなたは誰かの記憶を、見てきたの?」
そこに現れるラップ男・悠里。
「YO!オレは花の声の翻訳係、通称“咲き語(さきがた)リリック”!!」
「役名ぃぃ!!ダジャレ系だったぁぁ!!」
観客(1年生):「えっ……マジで始まった……?」
観客(2年生):「チュロス片手にラップ見てるの意味わかんない……」
観客(教員):「……これ脚本誰が……?」
脚本担当の拓毅(袖でガッツポーズ):「俺です(誇らしげ)」
物語は続く。
“記憶を失った少女(佐々木)”が、過去の断片を探して歩く。
ステージには小道具の“開かずの辞書”、“魔導書の棚”、“チュロス台(本物)”が並ぶ。
そしてクライマックス。
哲哉の台詞が響く。
「大切なのは、想いが届くこと。
たとえそれが花のように、言葉にならなくても――」
菜緒が花を見つめ、そっと手を伸ばす。
「咲いて……私たちの想いが、誰かに届くように」
そして、舞台中央でLED花がパアァッと開く。
ブワァァァアアアア(謎の音響)
観客「うおっ!?」「なに今の!?」
「花、爆発した!?」「本物!?CG!?本物じゃね!?」
ここで、舞台上から全員が出てきて――
「あなたの記憶にも、きっと花は咲いていた」
「だから、もしよければ――」
「この花に、拍手をください!」
体育館、沈黙。
「……シーンってするのやばくない?フェスで一番静かな瞬間じゃない?」
「もしかして、伝わってない……?」
「このまま“バッドエンド:無拍手の章”いくの!?え!?やばない!?」
そのとき――
パチッ……パチッ……パチパチパチ……!!!
一人が、二人が、全員が拍手を始めた。
バァアァァン!
――花、再び光る。
舞台後方、スポットライトの中、花が真っ白に咲き誇る。
「……咲いた」
「え、なに?今、ガチ泣きしていいタイミング?」
「てか、感動した瞬間にチュロス食べてるやついるの尊敬する!」
終演後。
拍手はしばらく止まらなかった。
「いやー、よかったよ!」
「最後の花、マジで本物っぽかった!」
「てか、ラップの人が一周回って良かった」
「花が咲くラップって初めて見たわ!」
「チュロス買って正解だった!」
「チュロスは舞台と一切関係ないけどな!」
ステージ裏。
全員が、息を吐いて笑い合っていた。
「……やったな」
「うん、咲いたな。ちゃんと、あの花が」
「そしてチュロス、まさかの完売……!」
「“花とチュロスの奇跡”って呼ばれてるよ今」
「なにその現代民話!?」
花は、すべてを見ていた。
誰かの想いが、舞台の上で語られ、拍手となって返ってきたことを。
そして、彼らが本気で“咲かせた”ことを。
無風の中、また――
ふわりと、揺れていた。
【章終】
校門前、異常なテンションの集団がいた。
「チュロス火口確認よし!点火班、待機!」
「ラップ隊、準備運動開始だYO!」
「精霊演劇班、花の着ぐるみ着脱チェック!」
「拠点前、強風による花びら飛散の懸念アリ!」
「風の想いも演出に取り込めー!!」
「うるせぇ!静かにしろぉぉおお!!!」
最終準備中の現場責任者・華也子の怒号が校庭にこだました。
「なんでこんなに朝から修羅場!?このクラスだけ文化祭じゃなくて軍事演習みたいになってない!?!?」
「いやこれがうちの“フェススタイル”だろ?」
「うん、もう誰も“演劇部”とか“謎解き部門”って言わなくなったね。
全部まとめて“異次元プロジェクト”って言ってるからね」
「むしろ“記憶の花”が主催で我々が出演者、って感じすらある」
「ちょっと待って、花に乗っ取られてるのうちだけ!?他クラス“クレープ”とか“射的”やってるよ!?こっち世界観だけで胃もたれしてるよ!?」
【フェス演目:記憶の花と語られなかった物語】
その構成はこうだ。
① 校舎内に仕掛けられた“謎解きミッション”
② 体育館での“演劇パート”
③ ラストは“観客の拍手”でエンディングが変わるマルチエンディング式
④ チュロス完売で隠し演出が解放される(予定)
「なにそのアイドルのライブ方式みたいな仕様!?」
「企画会議で『観客の感情で分岐させよう!』ってなった結果がこれだよ」
「拍手が足りなかったら演劇終わらず“無限ループ”に突入するぞ!」
「チュロスの売上で世界が救われるとか、聞いたことない世界線!」
「大丈夫!シナリオに『最終回:咲けYOエンド』ってのも用意してるから!」
「やめてほんとにそのルートだけは回避してくれYO!」
リハーサルを終え、開演5分前。
控室では、みんなが一斉におかしなテンションになっていた。
「……なんか、これ、もしかしてやばいこと始めちゃった?」
「うん。たぶん学校の歴史に残る」
「悪い意味で?」
「善悪超えて“記憶に刻まれる系”」
「いや、ほんとに“記憶の花”になっちゃうじゃん!」
菜緒がふと、窓の外を見ながら呟いた。
「……でも、咲いたよね。ちゃんと」
「うん。今朝、校庭の花、ふわっと咲いてた」
「しかも、他の生徒が“あれってなんの演出?”って言ってた!」
「“リアル自然現象”を“舞台装置”と思わせるってレベル高っ!」
「もう“自然の中の照明スタッフ”だよあれ!!」
「花のくせにプロ根性見せてくるなよ!」
開演アナウンスが流れる。
「ただいまより、三年C組による演目――
『記憶の花と語られなかった物語』を開演いたします」
舞台袖で全員が深呼吸する。
「……いこうか」
「うん。“自分たちの記憶”を咲かせに」
「ラップいきますYO」
「まずは静かにしてくれYO!!」
体育館の照明が落ち、
静寂と、わずかな緊張が空間を包みこむ。
――ドン。
太鼓のような低音が鳴り、舞台に“あの花”が浮かび上がる。
「……昔々、この場所には、一輪の花が咲いていた」
語り手は麗真。着ぐるみの中から。
「ちょっと……暑い……!思考が……精霊と混線する……!」
「それ演技なの!?本気で具合悪いの!?判断むずい!!」
舞台上では、菜緒が静かに登場。
「花よ……あなたは誰かの記憶を、見てきたの?」
そこに現れるラップ男・悠里。
「YO!オレは花の声の翻訳係、通称“咲き語(さきがた)リリック”!!」
「役名ぃぃ!!ダジャレ系だったぁぁ!!」
観客(1年生):「えっ……マジで始まった……?」
観客(2年生):「チュロス片手にラップ見てるの意味わかんない……」
観客(教員):「……これ脚本誰が……?」
脚本担当の拓毅(袖でガッツポーズ):「俺です(誇らしげ)」
物語は続く。
“記憶を失った少女(佐々木)”が、過去の断片を探して歩く。
ステージには小道具の“開かずの辞書”、“魔導書の棚”、“チュロス台(本物)”が並ぶ。
そしてクライマックス。
哲哉の台詞が響く。
「大切なのは、想いが届くこと。
たとえそれが花のように、言葉にならなくても――」
菜緒が花を見つめ、そっと手を伸ばす。
「咲いて……私たちの想いが、誰かに届くように」
そして、舞台中央でLED花がパアァッと開く。
ブワァァァアアアア(謎の音響)
観客「うおっ!?」「なに今の!?」
「花、爆発した!?」「本物!?CG!?本物じゃね!?」
ここで、舞台上から全員が出てきて――
「あなたの記憶にも、きっと花は咲いていた」
「だから、もしよければ――」
「この花に、拍手をください!」
体育館、沈黙。
「……シーンってするのやばくない?フェスで一番静かな瞬間じゃない?」
「もしかして、伝わってない……?」
「このまま“バッドエンド:無拍手の章”いくの!?え!?やばない!?」
そのとき――
パチッ……パチッ……パチパチパチ……!!!
一人が、二人が、全員が拍手を始めた。
バァアァァン!
――花、再び光る。
舞台後方、スポットライトの中、花が真っ白に咲き誇る。
「……咲いた」
「え、なに?今、ガチ泣きしていいタイミング?」
「てか、感動した瞬間にチュロス食べてるやついるの尊敬する!」
終演後。
拍手はしばらく止まらなかった。
「いやー、よかったよ!」
「最後の花、マジで本物っぽかった!」
「てか、ラップの人が一周回って良かった」
「花が咲くラップって初めて見たわ!」
「チュロス買って正解だった!」
「チュロスは舞台と一切関係ないけどな!」
ステージ裏。
全員が、息を吐いて笑い合っていた。
「……やったな」
「うん、咲いたな。ちゃんと、あの花が」
「そしてチュロス、まさかの完売……!」
「“花とチュロスの奇跡”って呼ばれてるよ今」
「なにその現代民話!?」
花は、すべてを見ていた。
誰かの想いが、舞台の上で語られ、拍手となって返ってきたことを。
そして、彼らが本気で“咲かせた”ことを。
無風の中、また――
ふわりと、揺れていた。
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