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第一章:札幌市 〜雪灯籠に眠る心臓〜
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雪の静寂が街を包み込む夜だった。空から降る白い結晶が、大通公園の雪像に柔らかな輪郭を描き、あたりは光と氷が織りなす幻想的な世界へと変貌していた。その中心に佇む巨大な雪灯籠。その中には、伝説とされる「雪灯籠の心臓」が収められていると語られてきた。だが、その伝承はあくまで祭りの一節にすぎず、信じる者は少なかった。……その晩までは。
「なまら寒いだべさ……」恵里が吐いた白い息は、彼女の不安をそのまま形にしたかのように揺らいでいた。彼女は暖大たちの前でうずくまり、手をすり合わせていた。「こんな夜に、なんでこんな胸騒ぎするのさ……」
「それは、ただの寒さじゃない」暖大が静かに答えた。彼の眼差しは夜空の彼方を見つめていたが、視線の先にあるのは闇の中に潜む異変の気配だった。
「またか……」司が口を開いた。彼は手元のジンギスカン鍋から視線を上げ、外へ目を向けた。「何かが近づいてる。あの雪像、今夜は違うように見える」
彼らは、司が営むジンギスカン小屋『北の蒼火』に集まっていた。赤々とした炭火の上で、香ばしいジンギスカンが焼けていた。店の中には、客の笑い声とともに、温かなスープカレーの香りも漂っていた。はなは、小さな声で「……ねぇ、ほんとに外、大丈夫なの?」と呟いた。
その瞬間、遠くから鋭く乾いた音が響いた。雪が崩れる音ではない。まるで、氷が弾けるような破砕音。それは大通公園の方角からだった。
暖大が立ち上がった。「行こう。あの雪灯籠に、何かが起きた」
「バカ言うなって!外、凍えるほど寒いんだわ!こんな夜に出たら——」恵里の声は途中で震えた。だが、はなが立ち上がった。
「……あたしも、行く。理由はわかんないけど……胸の奥で、誰かが呼んでる気がするの」
司と恵里も続いた。理性よりも、本能が先に彼らの足を動かしていた。
大通公園は、すでに異変に包まれていた。雪像の一つが粉々に砕け、氷の残骸があたりに散らばっていた。地面には霜が走り、まるで凍りついた蛇が這ったような跡が幾筋も残っている。
そして中心にあったはずの、雪灯籠が——消えていた。
「そんな……」はなが震える声で呟いた。「雪灯籠、まるごと……無くなってる……」
「いや、違う。奪われたんだ」暖大の声は低く、確信に満ちていた。「氷霊の仕業だ。『雪灯籠の心臓』を狙って来た」
その言葉に、司の表情が変わった。「それ、本気で言ってるのか?都市伝説みたいな話だぞ」
「けど、今見た現実は?」暖大が雪像の残骸を指さす。「あれは、自然には起こらない。見ろ、雪の結晶が反転してる。これは氷霊にしかできない現象だ」
司はしばらく黙っていたが、やがてポケットから古びたメモを取り出した。「実は、数日前から気になってたことがある。藻岩山の麓で、地元の職人が奇妙なものを見たって。『凍結の魔眼』って呼んでた」
「凍結の魔眼……」暖大が眉をひそめた。「それが氷霊の本拠地を示すものなら、まずはそこを調べるしかない」
「じゃあ決まりだべさ!」恵里が声を張り上げたが、すぐに自分の声に驚いたように口を押さえた。「あ、ごめん……こ、怖くて……でも、放っておけないよ」
彼らはスープカレー屋で身体を温め、準備を整えることにした。札幌味噌ラーメンも頼み、ラードの膜が張る熱々のスープに、はなが思わず「これ食べたら、どんな氷霊でも戦える気がしてくる……」と苦笑した。
外では、雪が強さを増していた。川面に映る時計台も、どこか寂しげに滲んで見える。だがその灯りは、確かに彼らの心に「まだ街は生きている」と伝えていた。
——その夜、雪の精たちが囁き合っていた。「火の神ペッカが眠る藻岩山が目覚める時、雪に覆われた真実が顔を出す」と。
物語は、ゆっくりと、しかし確実に動き始めていた。
夜明け前の札幌は、灰色の帳に包まれていた。空気は重く、街全体が呼吸を止めているかのようだった。藻岩山の頂へと続くロープウェイは、まだ始発前で沈黙を保っていたが、暖大たちは麓の林道を歩いていた。足元は深い雪に覆われ、ブーツが沈むたびに、ぎゅっ、ぎゅっと冷たい音が鳴った。
「……ほんとに、登るの?ロープウェイ、動いてないんだよ?」はなが呟く。彼女の頬は赤く染まり、吐く息が白い綿のように空に溶けていった。「夜が明けてもこの寒さって、普通じゃない気がする」
「いや、異常だな。藻岩山の雪はこんなに硬くないはずだ」司が雪を掴んで手のひらで押し潰すが、それは氷の塊のように跳ね返った。「氷霊の影響が、もう山にまで来てる」
「でも、登るしかないんだわ」恵里が俯きながらも、しっかりと前を見ていた。「雪灯籠の心臓がなかったら……あの雪まつりも、夜の光も、全部消えちまう。なまら寂しいよ」
その言葉に、はなは小さくうなずいた。雪まつり——あの幻想的な雪像たちが光に包まれ、訪れる人々の心をあたためる景色。彼女の中にも、かつてそこで見た小さな灯りが、記憶の中で揺れていた。
「目指すのは山頂の奥、旧観測所跡地だ。あそこには今、誰も近づかない。なぜかって?……凍結の魔眼が、夜な夜な、誰かを見ているって噂が絶えないからさ」
司の言葉に、誰も冗談だとは思えなかった。四人の表情は真剣だった。
木々の枝には、まるで細工のように美しい氷の花が咲いていた。風が吹くたびに、氷の結晶が擦れ合って、鈴の音にも似た微かな響きがした。その音に耳を澄ませながら、彼らは黙々と登り続けた。
途中、道の脇に、古びた木製の鳥居が現れた。「札幌護国神社の分祠か?」暖大がつぶやく。「ここに、何かの痕跡が……」
鳥居の下には、真新しい足跡が一対。しかも、人間のものとは思えない細く尖った形をしていた。まるで、氷の爪で地面を引き裂いたような跡。
「誰か……いや、“何か”が先回りしてる」司が低く警告するように言った。
「こんなとこで引き返せないってば!」恵里が声を震わせながらも叫ぶ。「心臓がなくなった雪灯籠、昨日までピカピカ光ってたのに……今朝のニュースで、全部、ただの雪の塊になったって。まるで、命が吸い取られたみたいだわ」
はなが震える手で、自分の胸元を握った。「あたし……ずっと怖い。でも、逃げても、もっと怖くなる気がして……だから、一緒に来たの。今、引き返したら、自分を嫌いになっちゃうから」
暖大はその言葉を聞き、ゆっくりと振り返ってはなを見た。「ありがとう。はなの気持ち、ちゃんと届いてるよ」
その瞬間、空気が急に変わった。ふわり、と雪の粒が浮き上がる。風が止まったのに、雪だけが上へ、渦を巻くように舞い上がる。そして——。
「来るぞ!」司が叫んだ。
雪の渦の中心から、透き通った人影が現れた。それは人の形をしていたが、実体はない。氷のように冷たく、霧のように曖昧な存在——氷霊だった。
「こいつが……!」暖大が構える。だが、その瞬間、氷霊が放った冷気が周囲を凍てつかせた。木の枝が音を立てて砕け、地面の雪がガラスのようにひび割れた。
「逃げられない……!」恵里が叫ぶ。
「いいえ、逃げない!」はなが両手を広げ、氷霊の前に立つ。「あたしたち、札幌を守るために来たの!だから——あんたが何をしても、絶対に心は凍らない!」
その声に、一瞬だけ氷霊がたじろいだように見えた。次の瞬間、空から光が射した。夜が明けはじめ、藻岩山の木々の間から金色の光が差し込んだのだ。氷霊はそれを嫌うように、身をよじる。
「今だ!」暖大が叫び、司が持っていた小瓶を取り出す。それはジンギスカンの脂で作られた火起こし油だった。雪を焼き、熱をもって、氷霊の体を削る。
「あったまれ!」司が叫び、瓶を投げつける。燃え上がる一筋の炎が、氷霊の胸を貫き、彼の体が音もなく崩れ落ちる。霧のように淡く消えていった。
静けさが戻った。雪は降り続いているが、空はほんのりと明るくなっていた。
「……やった、のか?」はなが小さく呟く。
「まだだ。これは、ただの尖兵だ」暖大は眉間に皺を寄せていた。「本体は山頂だ。そこに、“凍結の魔眼”がある」
「なら、行こう」司が頷いた。「俺たちで、終わらせるんだ」
「うん……行こう」恵里も静かに言った。「怖いけど、もう……何も見えなくなるのはイヤだわ」
四人は再び歩き出した。凍てつく風の中、彼らの背中はまっすぐだった。遠くから、ソーラン節の調べのような、民謡の旋律が風に乗って聞こえた気がした。
それはまるで、次なる出会いを予感させる、精霊たちの歌声のようだった。
山の中腹を越えるころ、空はようやく青みを帯びはじめていた。だが、それは暖かさを告げる兆しではなく、逆に空気はさらに冷え、風は鋭さを増していた。四人の唇は乾き、手袋の中の指先は感覚を失いつつあった。
「この風、凍みる……なまら骨にくる風だわ」恵里が震える声で言った。彼女のまぶたには細かい霜が張りつき、声も震えていたが、目は強く前を見ていた。
「おい、あれ……」司が指差した先、道のわきに、古い山小屋がぽつんと建っていた。壁には積もった雪が貼りつき、屋根の上には氷柱が垂れている。だが、その中からは煙突の煙が細く立ち上り、かすかに音楽のような声が漏れていた。
「誰かいるのか?」暖大が扉を軽くノックすると、少し間をおいてから、内側から鍵が外れる音がした。
「おう、旅人か。……珍しいのう、この雪の中に」
現れたのは、白髪の老職人だった。顔には深い皺が刻まれていたが、目は鋭く澄んでいた。背中には厚手の織物を羽織り、手には糸巻きと針のような細工道具を持っている。木彫りか織物か、判断できないほど多種多様な道具が所狭しと小屋に並べられていた。
「お名前、聞いても?」はなが遠慮がちに尋ねる。
「わしは巽(たつみ)といってな。この山で長いこと雪細工を作っておる。雪まつりの時期には、ここの節を聞いて、雪たちも踊るんじゃ」
「節……って、今、何か歌ってましたよね?」恵里が顔を上げた。「あれ、もしかして……」
「おう、ソーラン節よ。だが、ただの唄じゃない」巽はふと真顔になり、小屋の隅から一冊の手帳を取り出した。「こやつはな、アイヌの祈りと漁師の節を合わせてできた封印歌なんじゃ」
「封印歌……!」
「氷霊が現れたってことは、あれの封印が弱まってきとる証拠じゃ。昔、この山にも一度、氷の呪いが広がった。その時、わしの爺様が、この唄を捧げて封じたと聞いとる。じゃが今、その節回しを正しく知る者は、もう……」
「教えてください!」はなが立ち上がった。「その節がないと、あたしたち、このままじゃ街を守れない!」
巽はしばらく黙っていたが、やがてため息をつき、奥の押し入れから古びた三味線を取り出した。その胴には、氷でできたような透明な彫りがあり、ふたたび風が小屋を打つと、まるでその音が共鳴するように響いた。
「耳を澄ませ。……これは、魂を凍らせぬための節じゃ」
そう言って彼が奏でた旋律は、単なる民謡ではなかった。太く、湿った空気の中でも芯をもって響く旋律は、どこか海の底のような重みをたたえていた。巽の声がそれに重なる。
「ヤーレン ソーラン ソーラン ソーラン……」
ふと、はなの身体が熱を帯びた。彼女の胸に染みこんでいくように、その旋律は鳴り続け、知らぬ間に涙が頬を伝っていた。
「……これが、ソーラン節の……本当の意味なんだね……」と、はなが嗚咽交じりに言った。「悲しみも、寒さも、全部包み込んで、凍らせないように……あっためる唄なんだ」
「それを唄い、魔眼の前で祈るんじゃ。そうすれば、封印の鍵が浮かび上がる」
巽は、彼らに小さな札を手渡した。紙ではなく、薄い氷板に彫られた文字が浮かんでいる。
「それは“ペッカの祝詞”に繋がる印じゃ。札幌護国神社の本殿で一度清めれば、雪灯籠の心臓を呼び戻せるだろう」
「ありがとう……!」四人は深く頭を下げた。
巽は笑った。「札幌の若いもんがここまで来てくれるとは思わんかった。……ほれ、持って行きな。『白い恋人』の試作品だ。凍える旅には、少し甘みが必要じゃろう」
受け取った包みの中には、雪の形をしたホワイトチョコの菓子があった。はなはそれを一つ口に含み、目を細める。「……甘くて、ちょっと涙出そう……」
暖大はそんな彼女の肩を、静かに叩いた。「さあ、行こう。山頂へ」
外へ出ると、さっきまでの猛吹雪が嘘のように静まっていた。雲の切れ間から、一筋の光が差し込んでいる。その先に、凍結の魔眼が待つ山頂があった。
彼らは歩き出す。ソーラン節の旋律を胸に抱き、目の前の闇を照らす光のように。
藻岩山の頂上が目前に迫るころ、道は完全に凍てついた氷の階段と化していた。足を置いた瞬間、靴底がきしむ。冷気が地面から伝い、骨を通り越して内臓まで凍らせるような錯覚に襲われる。風は止んでいた。だがそれは嵐の前の静けさであると、四人は本能で悟っていた。
「……ここが、凍結の魔眼の……」はなが呟いた先には、山頂にぽっかりと空いた円形の広場があった。そこに立っていたのは、直径三メートルほどの透明な氷の瞳。空を映す鏡のようなその表面に、四人の姿が歪んで映っていた。
「見られてる、わたしたち……」恵里が肩を抱きしめるように身を縮こませる。
「違う、試されてるんだ」暖大の声が静かに響いた。「これは、俺たちの心の深さを測ってる。真実だけを見ようとしてる」
「ってことは……下手なこと考えたら、魂まで凍らされるってことか?」司の言葉に、誰も冗談で返せなかった。氷の瞳はまるで生きているかのように瞬きし、その表面に凍りついたような顔が一瞬、浮かび上がっては消えた。それは、今までに飲み込まれてきた心たちの断片だったのかもしれない。
「巽さんが言ってた……唄を捧げれば、鍵が浮かび上がるって」はながそっと胸元の氷板の札を取り出した。
風が吹く。ふとした瞬間に空が晴れた。太陽が氷の瞳を照らし、その中心に細くて美しい傷のようなものが浮かび上がる。それは、ちょうど氷板に刻まれた印と一致していた。
はなは、手がかじかんで動かぬまま、震える唇で小さく口を開いた。
「……ヤーレン……ソーラン……ソーラン……」
最初は小さな声だった。だが、一歩踏み出すごとに、その声は芯を持ち、力を帯びていく。司がリズムをとり、恵里が合いの手をかぶせる。暖大は目を閉じ、地面に掌をつけ、唱えるように続いた。
「……ドッコイショ……ドッコイショ……」
その瞬間、氷の瞳が脈動した。空気が震える。まるで、凍りついた心臓に血が通い始めたような変化が起こる。
「今だ、祝詞を!」暖大が叫ぶ。
はなは札を掲げ、はっきりとした声で読み上げた。
「——ペッカよ、火の神よ。我らの灯火を、再び凍らせぬよう。雪を灯し、闇を照らす、春の兆しを呼び覚ませ——」
空が割れた。雪が舞い上がり、氷の瞳の中心から眩い赤い光が放たれた。その光の中から、一つの小さな灯りが現れた。それはまさしく——“雪灯籠の心臓”だった。
だがその瞬間、地面が震え、空中に現れた白い霧が急激に集まり始める。氷霊の本体——その中心核が姿を現したのだ。まるで巨人のように大きく、腕は雪でできた鍬のように鋭く伸びている。その身体には、過去に奪われた“心”が無数に埋め込まれていた。
「うわぁ……やっぱり来たかよ……」司が呟いた。
「でも、もう逃げない。だって——取り戻すって、決めたから」恵里が一歩、前へ。
「恐れてもいい。でも、踏み出せるのが私たちだって、証明したいの」はなが、震える足を前に出した。
暖大が手を上げる。「いくぞ。全力で、心を守るんだ。あの光を、札幌に取り戻す」
四人の身体から、温かな気配が立ち上った。それは巽から受け取った雪像の願い、スープカレー屋で交わした想い、ジンギスカンのあの炭の匂い、白い恋人の優しい甘み——札幌の記憶そのものだった。
氷霊が吠えた。その声は、雪山すべてを震わせた。だが、彼らは止まらなかった。
はなが唄う。司が前線を切り裂く。恵里が後方から援護の言葉を叫ぶ。暖大が氷霊の中心に祝詞を放つ。
氷霊の身体にひびが走った。内部から、春の光のような金の光が漏れ出し、ついに——大きく崩れた。
静寂。
四人は膝をつき、氷の塵が空に舞う中、手のひらに雪灯籠の心臓が落ちてきた。それは赤く、ほんのりと熱を帯びていた。
「……これが……札幌の心臓……」はなが涙を浮かべた目で、それを見つめた。
暖大が頷いた。「これで……大通公園の雪像たちも、また灯りを取り戻せる」
遠くで、雪の像が一体、ゆっくりと空へ浮かび上がっていくのが見えた。氷の羽を広げるように、光を放ちながら舞い上がるその姿に、四人はただ、静かに見入っていた。
札幌の空に、春の兆しが差し込む。
――そして、彼らの手には、“札幌市の輝”と呼ばれる宝玉が残されていた。
雪灯籠の心臓の中核から生まれたそれは、小さな輝きだったが、どんな雪にも消されぬほど強く、温かく、確かに光っていた。
(終)
【アイテム:札幌市の輝】入手
「なまら寒いだべさ……」恵里が吐いた白い息は、彼女の不安をそのまま形にしたかのように揺らいでいた。彼女は暖大たちの前でうずくまり、手をすり合わせていた。「こんな夜に、なんでこんな胸騒ぎするのさ……」
「それは、ただの寒さじゃない」暖大が静かに答えた。彼の眼差しは夜空の彼方を見つめていたが、視線の先にあるのは闇の中に潜む異変の気配だった。
「またか……」司が口を開いた。彼は手元のジンギスカン鍋から視線を上げ、外へ目を向けた。「何かが近づいてる。あの雪像、今夜は違うように見える」
彼らは、司が営むジンギスカン小屋『北の蒼火』に集まっていた。赤々とした炭火の上で、香ばしいジンギスカンが焼けていた。店の中には、客の笑い声とともに、温かなスープカレーの香りも漂っていた。はなは、小さな声で「……ねぇ、ほんとに外、大丈夫なの?」と呟いた。
その瞬間、遠くから鋭く乾いた音が響いた。雪が崩れる音ではない。まるで、氷が弾けるような破砕音。それは大通公園の方角からだった。
暖大が立ち上がった。「行こう。あの雪灯籠に、何かが起きた」
「バカ言うなって!外、凍えるほど寒いんだわ!こんな夜に出たら——」恵里の声は途中で震えた。だが、はなが立ち上がった。
「……あたしも、行く。理由はわかんないけど……胸の奥で、誰かが呼んでる気がするの」
司と恵里も続いた。理性よりも、本能が先に彼らの足を動かしていた。
大通公園は、すでに異変に包まれていた。雪像の一つが粉々に砕け、氷の残骸があたりに散らばっていた。地面には霜が走り、まるで凍りついた蛇が這ったような跡が幾筋も残っている。
そして中心にあったはずの、雪灯籠が——消えていた。
「そんな……」はなが震える声で呟いた。「雪灯籠、まるごと……無くなってる……」
「いや、違う。奪われたんだ」暖大の声は低く、確信に満ちていた。「氷霊の仕業だ。『雪灯籠の心臓』を狙って来た」
その言葉に、司の表情が変わった。「それ、本気で言ってるのか?都市伝説みたいな話だぞ」
「けど、今見た現実は?」暖大が雪像の残骸を指さす。「あれは、自然には起こらない。見ろ、雪の結晶が反転してる。これは氷霊にしかできない現象だ」
司はしばらく黙っていたが、やがてポケットから古びたメモを取り出した。「実は、数日前から気になってたことがある。藻岩山の麓で、地元の職人が奇妙なものを見たって。『凍結の魔眼』って呼んでた」
「凍結の魔眼……」暖大が眉をひそめた。「それが氷霊の本拠地を示すものなら、まずはそこを調べるしかない」
「じゃあ決まりだべさ!」恵里が声を張り上げたが、すぐに自分の声に驚いたように口を押さえた。「あ、ごめん……こ、怖くて……でも、放っておけないよ」
彼らはスープカレー屋で身体を温め、準備を整えることにした。札幌味噌ラーメンも頼み、ラードの膜が張る熱々のスープに、はなが思わず「これ食べたら、どんな氷霊でも戦える気がしてくる……」と苦笑した。
外では、雪が強さを増していた。川面に映る時計台も、どこか寂しげに滲んで見える。だがその灯りは、確かに彼らの心に「まだ街は生きている」と伝えていた。
——その夜、雪の精たちが囁き合っていた。「火の神ペッカが眠る藻岩山が目覚める時、雪に覆われた真実が顔を出す」と。
物語は、ゆっくりと、しかし確実に動き始めていた。
夜明け前の札幌は、灰色の帳に包まれていた。空気は重く、街全体が呼吸を止めているかのようだった。藻岩山の頂へと続くロープウェイは、まだ始発前で沈黙を保っていたが、暖大たちは麓の林道を歩いていた。足元は深い雪に覆われ、ブーツが沈むたびに、ぎゅっ、ぎゅっと冷たい音が鳴った。
「……ほんとに、登るの?ロープウェイ、動いてないんだよ?」はなが呟く。彼女の頬は赤く染まり、吐く息が白い綿のように空に溶けていった。「夜が明けてもこの寒さって、普通じゃない気がする」
「いや、異常だな。藻岩山の雪はこんなに硬くないはずだ」司が雪を掴んで手のひらで押し潰すが、それは氷の塊のように跳ね返った。「氷霊の影響が、もう山にまで来てる」
「でも、登るしかないんだわ」恵里が俯きながらも、しっかりと前を見ていた。「雪灯籠の心臓がなかったら……あの雪まつりも、夜の光も、全部消えちまう。なまら寂しいよ」
その言葉に、はなは小さくうなずいた。雪まつり——あの幻想的な雪像たちが光に包まれ、訪れる人々の心をあたためる景色。彼女の中にも、かつてそこで見た小さな灯りが、記憶の中で揺れていた。
「目指すのは山頂の奥、旧観測所跡地だ。あそこには今、誰も近づかない。なぜかって?……凍結の魔眼が、夜な夜な、誰かを見ているって噂が絶えないからさ」
司の言葉に、誰も冗談だとは思えなかった。四人の表情は真剣だった。
木々の枝には、まるで細工のように美しい氷の花が咲いていた。風が吹くたびに、氷の結晶が擦れ合って、鈴の音にも似た微かな響きがした。その音に耳を澄ませながら、彼らは黙々と登り続けた。
途中、道の脇に、古びた木製の鳥居が現れた。「札幌護国神社の分祠か?」暖大がつぶやく。「ここに、何かの痕跡が……」
鳥居の下には、真新しい足跡が一対。しかも、人間のものとは思えない細く尖った形をしていた。まるで、氷の爪で地面を引き裂いたような跡。
「誰か……いや、“何か”が先回りしてる」司が低く警告するように言った。
「こんなとこで引き返せないってば!」恵里が声を震わせながらも叫ぶ。「心臓がなくなった雪灯籠、昨日までピカピカ光ってたのに……今朝のニュースで、全部、ただの雪の塊になったって。まるで、命が吸い取られたみたいだわ」
はなが震える手で、自分の胸元を握った。「あたし……ずっと怖い。でも、逃げても、もっと怖くなる気がして……だから、一緒に来たの。今、引き返したら、自分を嫌いになっちゃうから」
暖大はその言葉を聞き、ゆっくりと振り返ってはなを見た。「ありがとう。はなの気持ち、ちゃんと届いてるよ」
その瞬間、空気が急に変わった。ふわり、と雪の粒が浮き上がる。風が止まったのに、雪だけが上へ、渦を巻くように舞い上がる。そして——。
「来るぞ!」司が叫んだ。
雪の渦の中心から、透き通った人影が現れた。それは人の形をしていたが、実体はない。氷のように冷たく、霧のように曖昧な存在——氷霊だった。
「こいつが……!」暖大が構える。だが、その瞬間、氷霊が放った冷気が周囲を凍てつかせた。木の枝が音を立てて砕け、地面の雪がガラスのようにひび割れた。
「逃げられない……!」恵里が叫ぶ。
「いいえ、逃げない!」はなが両手を広げ、氷霊の前に立つ。「あたしたち、札幌を守るために来たの!だから——あんたが何をしても、絶対に心は凍らない!」
その声に、一瞬だけ氷霊がたじろいだように見えた。次の瞬間、空から光が射した。夜が明けはじめ、藻岩山の木々の間から金色の光が差し込んだのだ。氷霊はそれを嫌うように、身をよじる。
「今だ!」暖大が叫び、司が持っていた小瓶を取り出す。それはジンギスカンの脂で作られた火起こし油だった。雪を焼き、熱をもって、氷霊の体を削る。
「あったまれ!」司が叫び、瓶を投げつける。燃え上がる一筋の炎が、氷霊の胸を貫き、彼の体が音もなく崩れ落ちる。霧のように淡く消えていった。
静けさが戻った。雪は降り続いているが、空はほんのりと明るくなっていた。
「……やった、のか?」はなが小さく呟く。
「まだだ。これは、ただの尖兵だ」暖大は眉間に皺を寄せていた。「本体は山頂だ。そこに、“凍結の魔眼”がある」
「なら、行こう」司が頷いた。「俺たちで、終わらせるんだ」
「うん……行こう」恵里も静かに言った。「怖いけど、もう……何も見えなくなるのはイヤだわ」
四人は再び歩き出した。凍てつく風の中、彼らの背中はまっすぐだった。遠くから、ソーラン節の調べのような、民謡の旋律が風に乗って聞こえた気がした。
それはまるで、次なる出会いを予感させる、精霊たちの歌声のようだった。
山の中腹を越えるころ、空はようやく青みを帯びはじめていた。だが、それは暖かさを告げる兆しではなく、逆に空気はさらに冷え、風は鋭さを増していた。四人の唇は乾き、手袋の中の指先は感覚を失いつつあった。
「この風、凍みる……なまら骨にくる風だわ」恵里が震える声で言った。彼女のまぶたには細かい霜が張りつき、声も震えていたが、目は強く前を見ていた。
「おい、あれ……」司が指差した先、道のわきに、古い山小屋がぽつんと建っていた。壁には積もった雪が貼りつき、屋根の上には氷柱が垂れている。だが、その中からは煙突の煙が細く立ち上り、かすかに音楽のような声が漏れていた。
「誰かいるのか?」暖大が扉を軽くノックすると、少し間をおいてから、内側から鍵が外れる音がした。
「おう、旅人か。……珍しいのう、この雪の中に」
現れたのは、白髪の老職人だった。顔には深い皺が刻まれていたが、目は鋭く澄んでいた。背中には厚手の織物を羽織り、手には糸巻きと針のような細工道具を持っている。木彫りか織物か、判断できないほど多種多様な道具が所狭しと小屋に並べられていた。
「お名前、聞いても?」はなが遠慮がちに尋ねる。
「わしは巽(たつみ)といってな。この山で長いこと雪細工を作っておる。雪まつりの時期には、ここの節を聞いて、雪たちも踊るんじゃ」
「節……って、今、何か歌ってましたよね?」恵里が顔を上げた。「あれ、もしかして……」
「おう、ソーラン節よ。だが、ただの唄じゃない」巽はふと真顔になり、小屋の隅から一冊の手帳を取り出した。「こやつはな、アイヌの祈りと漁師の節を合わせてできた封印歌なんじゃ」
「封印歌……!」
「氷霊が現れたってことは、あれの封印が弱まってきとる証拠じゃ。昔、この山にも一度、氷の呪いが広がった。その時、わしの爺様が、この唄を捧げて封じたと聞いとる。じゃが今、その節回しを正しく知る者は、もう……」
「教えてください!」はなが立ち上がった。「その節がないと、あたしたち、このままじゃ街を守れない!」
巽はしばらく黙っていたが、やがてため息をつき、奥の押し入れから古びた三味線を取り出した。その胴には、氷でできたような透明な彫りがあり、ふたたび風が小屋を打つと、まるでその音が共鳴するように響いた。
「耳を澄ませ。……これは、魂を凍らせぬための節じゃ」
そう言って彼が奏でた旋律は、単なる民謡ではなかった。太く、湿った空気の中でも芯をもって響く旋律は、どこか海の底のような重みをたたえていた。巽の声がそれに重なる。
「ヤーレン ソーラン ソーラン ソーラン……」
ふと、はなの身体が熱を帯びた。彼女の胸に染みこんでいくように、その旋律は鳴り続け、知らぬ間に涙が頬を伝っていた。
「……これが、ソーラン節の……本当の意味なんだね……」と、はなが嗚咽交じりに言った。「悲しみも、寒さも、全部包み込んで、凍らせないように……あっためる唄なんだ」
「それを唄い、魔眼の前で祈るんじゃ。そうすれば、封印の鍵が浮かび上がる」
巽は、彼らに小さな札を手渡した。紙ではなく、薄い氷板に彫られた文字が浮かんでいる。
「それは“ペッカの祝詞”に繋がる印じゃ。札幌護国神社の本殿で一度清めれば、雪灯籠の心臓を呼び戻せるだろう」
「ありがとう……!」四人は深く頭を下げた。
巽は笑った。「札幌の若いもんがここまで来てくれるとは思わんかった。……ほれ、持って行きな。『白い恋人』の試作品だ。凍える旅には、少し甘みが必要じゃろう」
受け取った包みの中には、雪の形をしたホワイトチョコの菓子があった。はなはそれを一つ口に含み、目を細める。「……甘くて、ちょっと涙出そう……」
暖大はそんな彼女の肩を、静かに叩いた。「さあ、行こう。山頂へ」
外へ出ると、さっきまでの猛吹雪が嘘のように静まっていた。雲の切れ間から、一筋の光が差し込んでいる。その先に、凍結の魔眼が待つ山頂があった。
彼らは歩き出す。ソーラン節の旋律を胸に抱き、目の前の闇を照らす光のように。
藻岩山の頂上が目前に迫るころ、道は完全に凍てついた氷の階段と化していた。足を置いた瞬間、靴底がきしむ。冷気が地面から伝い、骨を通り越して内臓まで凍らせるような錯覚に襲われる。風は止んでいた。だがそれは嵐の前の静けさであると、四人は本能で悟っていた。
「……ここが、凍結の魔眼の……」はなが呟いた先には、山頂にぽっかりと空いた円形の広場があった。そこに立っていたのは、直径三メートルほどの透明な氷の瞳。空を映す鏡のようなその表面に、四人の姿が歪んで映っていた。
「見られてる、わたしたち……」恵里が肩を抱きしめるように身を縮こませる。
「違う、試されてるんだ」暖大の声が静かに響いた。「これは、俺たちの心の深さを測ってる。真実だけを見ようとしてる」
「ってことは……下手なこと考えたら、魂まで凍らされるってことか?」司の言葉に、誰も冗談で返せなかった。氷の瞳はまるで生きているかのように瞬きし、その表面に凍りついたような顔が一瞬、浮かび上がっては消えた。それは、今までに飲み込まれてきた心たちの断片だったのかもしれない。
「巽さんが言ってた……唄を捧げれば、鍵が浮かび上がるって」はながそっと胸元の氷板の札を取り出した。
風が吹く。ふとした瞬間に空が晴れた。太陽が氷の瞳を照らし、その中心に細くて美しい傷のようなものが浮かび上がる。それは、ちょうど氷板に刻まれた印と一致していた。
はなは、手がかじかんで動かぬまま、震える唇で小さく口を開いた。
「……ヤーレン……ソーラン……ソーラン……」
最初は小さな声だった。だが、一歩踏み出すごとに、その声は芯を持ち、力を帯びていく。司がリズムをとり、恵里が合いの手をかぶせる。暖大は目を閉じ、地面に掌をつけ、唱えるように続いた。
「……ドッコイショ……ドッコイショ……」
その瞬間、氷の瞳が脈動した。空気が震える。まるで、凍りついた心臓に血が通い始めたような変化が起こる。
「今だ、祝詞を!」暖大が叫ぶ。
はなは札を掲げ、はっきりとした声で読み上げた。
「——ペッカよ、火の神よ。我らの灯火を、再び凍らせぬよう。雪を灯し、闇を照らす、春の兆しを呼び覚ませ——」
空が割れた。雪が舞い上がり、氷の瞳の中心から眩い赤い光が放たれた。その光の中から、一つの小さな灯りが現れた。それはまさしく——“雪灯籠の心臓”だった。
だがその瞬間、地面が震え、空中に現れた白い霧が急激に集まり始める。氷霊の本体——その中心核が姿を現したのだ。まるで巨人のように大きく、腕は雪でできた鍬のように鋭く伸びている。その身体には、過去に奪われた“心”が無数に埋め込まれていた。
「うわぁ……やっぱり来たかよ……」司が呟いた。
「でも、もう逃げない。だって——取り戻すって、決めたから」恵里が一歩、前へ。
「恐れてもいい。でも、踏み出せるのが私たちだって、証明したいの」はなが、震える足を前に出した。
暖大が手を上げる。「いくぞ。全力で、心を守るんだ。あの光を、札幌に取り戻す」
四人の身体から、温かな気配が立ち上った。それは巽から受け取った雪像の願い、スープカレー屋で交わした想い、ジンギスカンのあの炭の匂い、白い恋人の優しい甘み——札幌の記憶そのものだった。
氷霊が吠えた。その声は、雪山すべてを震わせた。だが、彼らは止まらなかった。
はなが唄う。司が前線を切り裂く。恵里が後方から援護の言葉を叫ぶ。暖大が氷霊の中心に祝詞を放つ。
氷霊の身体にひびが走った。内部から、春の光のような金の光が漏れ出し、ついに——大きく崩れた。
静寂。
四人は膝をつき、氷の塵が空に舞う中、手のひらに雪灯籠の心臓が落ちてきた。それは赤く、ほんのりと熱を帯びていた。
「……これが……札幌の心臓……」はなが涙を浮かべた目で、それを見つめた。
暖大が頷いた。「これで……大通公園の雪像たちも、また灯りを取り戻せる」
遠くで、雪の像が一体、ゆっくりと空へ浮かび上がっていくのが見えた。氷の羽を広げるように、光を放ちながら舞い上がるその姿に、四人はただ、静かに見入っていた。
札幌の空に、春の兆しが差し込む。
――そして、彼らの手には、“札幌市の輝”と呼ばれる宝玉が残されていた。
雪灯籠の心臓の中核から生まれたそれは、小さな輝きだったが、どんな雪にも消されぬほど強く、温かく、確かに光っていた。
(終)
【アイテム:札幌市の輝】入手
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