大都市RPG 〜失われた輝きを取り戻せ〜

乾為天女

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第三十三章「富士見市 〜白心の珠と封印歌の誓い〜」

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 春風に揺れるかぶ畑は、どこか切なさを帯びていた。白い花はまばらに咲き、葉の縁は乾き、土の色がどこか沈んで見える。例年ならば、畑一面が小さな白い灯りに包まれるはずだった。だが、今年は様子が違っていた。
 敦也は、畑の端に腰を下ろしながら、乾いた土を指でつまんでいた。
「……これじゃ、また収穫はダメだな」
 ぽつりと呟いたその声に、背後から冷ややかな声が返った。
「遅かったんじゃないの? もっと早く異変に気づくべきだったわ」
 あみだった。黒髪をひとつに束ね、白いブラウスを風に揺らしながら、敦也の隣に立った彼女の目は厳しい光を湛えていた。
「言われなくても分かってるよ」
 敦也は顔を上げず、淡々とした口調で答えた。
「この畑にとって、“水”がすべてだ。地中の水脈が枯れかけてる。原因は……“白心の珠”だろうな」
「盗まれたって話、本当だったのね。あの珠がなくなると、水宮神の加護が消えるって……まさか、あれ本当だったの?」
「多分な。“水宮神の祝詞が珠を守る”って記録、あるらしい。仲間の雅樹が昨日言ってた。水宮神社の古文書に残ってるって」
「神頼み? ……今さら?」
「違う、これは“呪術”の話じゃない。“伝承”なんだよ」
 敦也はようやく顔を上げ、空を仰いだ。淡くかすんだ春の空。そこにあるべき“希望”の色が、なぜか今年は見えない。
「珠を失って、畑も花も、水も全部“繋がり”を失ってる」
「どうするの?」
「まずは、雅樹の農家小屋に行く。そこに古文書があるはずだ。“封印歌”の記述もあるかもしれない」
 あみは一瞬、口を閉じた。
 彼女には、急ぐことと、慎重になることのバランスがいつも難しかった。でも今は、言葉よりも“やるべきこと”がはっきりしていた。
「……分かった。あんたがそう言うなら、ついていくわ。ただし、“遅刻”は許さないから」
 その言葉に、敦也がわずかに笑った。
「分かってるって」
 ふたりの足音が、乾いた畦道に刻まれていく。草の葉がかすかに揺れ、畑の奥でひとつだけ白いかぶの花が、静かに首をもたげた。
 それはまるで、“始まりの証”のようだった。



 雅樹の農家小屋は、水子貝塚公園の裏手にひっそりと建っていた。瓦屋根に薄く苔が生え、軒先の風鈴が春の風に揺れて、どこか懐かしい音を鳴らしていた。敦也とあみが到着したとき、小屋の扉は開け放たれ、屋内では雅樹が古文書を広げてしゃがみこんでいた。
「よく来たな、ふたりとも」
 顔を上げた雅樹は、埃っぽい空気の中でも落ち着いた目をしていた。その後ろから、紗代が無言で顔を出す。彼女はいつも、言葉より目線で相手を制するようなところがあった。
「……遅かったわね。水脈の枯れはもう本格的に始まってる」
「分かってる。でも、間に合わないとは思ってない」
 敦也はまっすぐ文書に近づいた。
「それが……水宮神の祝詞?」
「そう。“水宮神社の地下に珠を祀ることで、水脈は安定する”。それがここの水の基盤になってる」
 雅樹は指先で、文書の一節をなぞった。
「“白心の珠は、水の柱なり。祝詞をもって、封を為し、音をもって守る”」
「音……?」
「そう。“謙良節”っていう民謡に、その“封印歌”の旋律が含まれてるらしい。昔から、ここの春祭りで歌われてきた曲だ」
「知ってる。小学校の文化祭でも流れてた。でも……」
 あみが珍しく目を伏せる。
「……あの旋律、わたし……好きじゃなかった。なんだか、誰かに“見透かされる”ような気がして」
 紗代がふっと口を開いた。
「それが“効く”ってことよ。相手に届かない歌なんて、祈りじゃないから」
 あみは言い返さず、少しだけうなずいた。
「水宮神社に向かおう。“封印歌”を取り戻すには、そこに行くしかない」
「その前に、水子貝塚公園に寄る」
 敦也が言い切った。
「地下に埋まってる石板があるんだ。“謙良節”の元節が刻まれてるって、昔の伝承にあった。そこを見つければ、旋律の“本質”が分かるかもしれない」
「なるほど……」
 雅樹が少し目を細めた。
「封印歌を使うには、“旋律”だけじゃなく“意志”が必要だ。その歌に、何を込めるか。それが、珠を目覚めさせる鍵になる」
 敦也は心の中で、無意識に手を握っていた。自分がこの町でどうやって育ち、どうやって人との距離を保ち、生きてきたのか――それを“歌”に込めるということが、思った以上に重く感じられた。
「いこう、水子貝塚公園へ」
 彼の声には、もう迷いはなかった。
 その背を追って、あみ、雅樹、紗代が並ぶ。風が彼らの背を押すように吹き抜け、畑の上を白い花弁が静かに転がっていった。



 水子貝塚公園は、遺跡の名残をとどめつつも、緩やかに春の景観に溶け込んでいた。薄桃色の桜が散り際を迎え、空へ舞う花弁が陽光をまとってふわりと舞う。だが、足元の土にはその美しさとは裏腹に、過去の重みが静かに眠っていた。
「ここが……“石板”のある場所だな」
 敦也が立ち止まったのは、公園の奥まった一角。柵に囲まれ、説明文のプレートが取り付けられた一画だった。足元には、古代の貝層と並んで、半ば地面に埋もれたような岩板が三つ、控えめに並べられている。その中央の石の表面にだけ、何かが刻まれていた。
「これ……文字?」
 あみがしゃがみ込み、目を細めた。磨耗して読み取りづらいが、確かにそこには線が連なり、波のように交差していた。
「いや、これ……五線譜に似てる」
 雅樹が驚いたように言った。
「歌……“謙良節”の、原型じゃないか?」
「でも、文字も楽譜もないのに?」
 紗代が静かに言う。
「“音”って、時には“線”でも伝わるのよ。唄が生まれる前に、“感覚”があった。“風が揺れた線”や、“水が流れるリズム”。それが歌の前身になる」
「……感じるってことか」
 敦也は、石板に手をかざした。すると、風がひと筋だけ、石の表面をなぞるように吹いた。その風が、敦也の指先を通じて、掌へ、そして胸の奥へ染み込んでくる。
「このリズム……懐かしい。たぶん、子どもの頃に何度も聞いたんだ。だけどちゃんと向き合ってなかった。あれはただの“古い歌”じゃなかったんだ……」
「……それが“封印歌”の核」
 雅樹が言った。
「思い出せるか?」
 敦也は黙ってうなずいた。風がまた、桜の花びらを舞い上げる。それはまるで、彼の内にある記憶を手繰るように優しかった。
「♪ 水の声 風の節
    珠の奥に 響けよと
    かぶの花よ 眠るなかれ
    白き心を 結びて開け……」
 石板のまわりの空気が、ぴたりと止まった。
 その瞬間、誰もがそれを“正しい旋律”だと感じた。音ではなく、空気がそう言っていた。風も、光も、すべてがその節を“知っていた”。
「……これが、“謙良節”の原型」
 あみの声が震えていた。
「なんで……こんなに、心に刺さるの?」
 紗代が、あみの肩に手を置いた。
「あなたが、何かを“閉じ込めてた”からよ。珠も、あなたの気持ちも、同じ。だから今、音があなたの中で響いてるの」
「……違うの。閉じ込めてたんじゃない。忘れたフリをしてただけ。――もう逃げない」
 敦也は立ち上がった。
「これで、神社に行ける。“封印歌”を取り戻した今なら、珠の封印を解けるはずだ」
 誰も異論はなかった。
 空はさらに高くなり、風が四人の背を押した。桜の花は風に乗って、彼らの足元に道を作るように、静かに舞い続けていた。



 水宮神社の参道は、驚くほど静かだった。春の終わり、花が散ったあとの境内は、土と杉の匂いが濃くなっていた。空は高く晴れているのに、鳥居の内側だけ、妙に陰って見える。
 敦也は、石畳に足を踏み入れながら深く息を吸った。あみ、雅樹、紗代の気配を後ろに感じる。言葉はいらなかった。彼らがここに来た意味は、すでに“旋律”が示していた。
 拝殿の正面、神楽殿の奥には封印の間へと続く階段がある。普段は開かれることのない鉄の扉がそこにあり、封印の珠はその先に祀られている。
「“封印歌”は、ここで唱えればいいの?」
 あみが尋ねた。
「いや……その前に、“珠”を受け入れる覚悟を示す必要がある。“ただ歌う”だけじゃだめなんだ。“歌を抱えてここまで来た者の意思”がなければ、珠の封印は外れない」
 雅樹の声は柔らかく、しかしはっきりと芯があった。
「……じゃあ、わたしが」
 あみが、そっと前に出る。
「わたし……ずっと、この町を冷たく見てた。家も、学校も、仕事も、全部他人事みたいに。でも本当は、誰よりも気にしてた。どうせ期待されてない、って、自分から目をそらしてた」
 彼女は拝殿の階段を、一歩ずつ登る。
「だから、もう逃げない。“珠”に、わたしの声を届けたい。“今のわたし”が、この富士見で何を見て、何を思ったのか、それを全部こめて」
 誰も口を挟まなかった。
 あみは階段の最上段に立ち、胸の前で手を合わせた。そして、目を閉じる。
「……始めるよ」
 静寂の中、彼女の声が響いた。
「♪ 水の声 風の節
     珠の奥に 響けよと
     かぶの花よ 眠るなかれ
     白き心を 結びて開け……」
 その旋律は、どこまでも透き通っていた。高くも低くもない、ただ真っ直ぐな声。それは、誰かの期待にも、他人の評価にも頼らない、“あみ自身”の音だった。
 歌が終わった瞬間、拝殿の奥で鈍く重い音が響いた。――カタン。
 閉ざされていた鉄の扉が、ひとりでにゆっくりと開いた。
 その奥、祭壇の上に静かに輝いていたのは――
「……“白心の珠”」
 雅樹が呟いた。
 珠はわずかに光を帯びていたが、まだ完全には目覚めていないようだった。その中心に、かぶの花を模した微細な彫刻が埋め込まれている。
「これを……“満たす”には、“水霊”の加護が要る」
 紗代が低く言う。
「次は、難波田城公園。“水霊の祭壇”がある。そこで、“心”を捧げる試練を受けなきゃならない」
 あみは珠を両手でそっと受け取った。その重量は、思ったよりも軽かった。でも、胸の奥は不思議と締めつけられるように苦しかった。
「行こう。今度は、わたしが先に立つ」
 敦也は一歩だけ前に出たが、すぐに引いた。
「――あぁ、任せたよ。今回は」
 その顔には、確かな信頼が浮かんでいた。



 難波田城公園は、春の陽が傾き始めた午後の静けさに包まれていた。風が途切れ途切れに吹き抜け、築山に残る石垣の跡に影が落ちている。水堀の奥に佇む復元された武家屋敷が、遠い時代の名残を今も抱えているようだった。
「……ここに“水霊の祭壇”が?」
 あみの問いに、雅樹は頷いた。
「今はイベント広場の裏にひっそりとある。“白心の珠”を持っている者にしか、“祠”として姿を見せないって伝承されてる。多分……もう、見えてるはずだ」
 四人は芝生広場の端を抜け、裏手に続く茂みの小径へと足を踏み入れた。草を踏む音が一歩ごとに強まり、やがて、他では聞こえない水音が周囲に満ち始める。
「聞こえる……」
 あみが呟いた。
「水の……声?」
 進んだ先にあったのは、竹と木の板で組まれた簡素な祭壇だった。小さな水鉢に清水が張られ、中央にはかつての“白心の珠”が祀られていたと思しき台座が据えられていた。その空白に、あみが手にしていた珠をそっと置く。
 すると、水鉢の水面が揺れ、霧が立ち上がった。
「……これが、“水霊”?」
 紗代が囁く。
 霧の中から、かすかに人の輪郭のようなものが現れた。女とも男ともつかぬ、しかし優しげな気配を湛えた存在――“水宮神の使い”だった。
 “――なにゆえ、珠をここに戻すのか”
 声ではなく、水の波紋のような意識が四人の心に届いた。まるでそれぞれの心に異なる問いを投げかけるように。
「……この町を、守りたいから」
 あみが口を開いた。
「わたしは、自分を守ることで精一杯だった。人と関わると、自分が壊れそうで。でも、そんな私にも、この土地には守ってもらってたって……気づいたんです。だから今度は、わたしが守る番。もう、逃げません」
 水霊の気配がわずかに色づく。水面に小さな波紋が広がると、白心の珠が淡い光を帯び始めた。
 “――ならば、封印を試みよ。歌と心を合わせ、この地に誓うがよい”
 あみは一歩前へ出て、静かに唇を開いた。
「……分かりました。“謙良節”、もう一度、歌います」
 彼女の声が、再び公園に響いた。
「♪ 水の声 風の節
     珠の奥に 響けよと
     かぶの花よ 眠るなかれ
     白き心を 結びて開け……」
 その声は、最初に歌った時よりもずっと伸びやかで、迷いがなかった。風が彼女の髪を揺らし、水霊がその旋律に呼応して、霧の中で溶けていく。
 珠の光が強まると同時に、空の色が変わった。
 それは夕暮れでも朝焼けでもない、白く澄んだ新しい光だった。まるで珠自身が、“春”そのものを照らし返しているようだった。
 白心の珠が、台座の上でゆっくりと回転し、澄みきった水音と共に、空気中へしずくを一粒放った。
 その水滴が芝生に落ちた瞬間、空気が変わった。
「水脈が……戻っていく」
 雅樹が低く呟いた。
 芝の先、畑へと続く地中を何かが走るように、静かな水の振動が広がっていく。
 それは“命”の復活だった。



 珠の放った水の雫は、やがて目に見えない地下の水脈を辿り、静かに、確実にこの地に命を行き渡らせていった。難波田城公園の樹々はゆっくりと葉を揺らし始め、広場に敷かれた芝生の緑がひときわ濃くなっていく。
 あみはその変化を、確かに肌で感じていた。空気が違う。まるで町全体が、大きな息を吐いているようだった。自分が吐き出した歌が、町に返ってきている。今度は、それが分かる。
「戻ってきた……」
 彼女がそう呟いたとき、珠がまた一度、静かに光った。
「珠が……ありがとうって、言ってるみたいだ」
 敦也の声には、少し驚きが混じっていた。
「いや、それ以上かもしれない。これは……この町が、あみを認めた証なんだ」
 雅樹が言った。彼の視線は白心の珠ではなく、あみ自身を見つめていた。
「お前は……町の一部だ。もう、誰にもそれは否定できないよ」
 あみは、一瞬、言葉を失った。
 小さく唇を開いたが、出てきたのは謝罪ではなかった。
「……ありがとう。わたし、自分で選んで、自分で歌えてよかった」
 それは、富士見市という土地と初めて真正面から向き合えた彼女の、心からの言葉だった。
 珠はもう何も言わずとも輝いていた。まるでその小さな光の中に、水子貝塚公園の石板も、難波田城の霧も、かぶ畑の花も、すべてが映り込んでいるようだった。
 彼らが祭壇から下りてきたとき、畑の向こうから聞こえてきたのは、春の農作業を始める軽トラックの音だった。エンジン音の中に混じって、どこかで聞き慣れたメロディが流れてくる。
「……これ、“謙良節”だ」
 あみが呟いた。
 町内放送だった。文化祭に合わせて流していたのかもしれない。でも今、その歌がまるで“祝福”のように聞こえる。
「町全体が、あんたに応えてるのよ」
 紗代の声は、やや照れたような響きを含んでいた。
「歌って、“戻ってくる”ものだったんだね」
 あみの目に、光が差し込む。
「ちゃんと返ってくる。ちゃんと、聞いてくれてる。……だったら、私はもう、声を出すのが怖くない」
 その瞬間、彼女の胸元にあった白心の珠が、ふっと音もなく溶けるように消えた。
 ――否。消えたのではなかった。形を変え、“小さな光の粒”として、彼女の心の奥に宿ったのだ。
 その粒が、これからの彼女の道を照らす“灯”になる。
 そして、その光は周囲にも波及していった。かぶ畑の根元に新しい水が流れ込み、白い花が一斉に咲き始めた。まるで、空から祝福を受けたように。
「戻ってきたな、“富士見の春”」
 敦也が穏やかに言った。
 あみはその横顔を見ながら、初めて“町と人の繋がり”というものを実感していた。

 アイテム:富士見市の輝入手
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