光あれー蒼大と真紀ー

乾為天女

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第五章:鍵が開く時

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 1. 夜の図書館
 学校が静まり返る夜。蒼大と真紀は再び図書館に戻ってきた。音楽室で手に入れた黄金の鍵――それが何を開くのか、二人は確かめなければならなかった。
「この鍵、どこかに隠された扉があるはずだよね……」
 真紀は懐中電灯の光を頼りに古い資料を探している。図書館の奥は埃っぽく、薄暗い光の中に書棚が並ぶ。壁際にある古地図のコーナーに目を向けると、蒼大が声を上げた。
「おい、これ見てみろ」
 蒼大が広げたのは、黎明学院の旧校舎の地図だった。色褪せているが、何か気になる場所が記されている。
「ここ……」
 地図には校舎の一部に、赤い丸印と“隠し階段”という文字が薄く書き込まれていた。
「階段? 地下に続いてるってこと?」
「そうだ。音楽室の隣、視聴覚室の下だな。そこに何かある」
 蒼大の声には確信があった。真紀も息をのんだ。
 隠し扉の先にあるもの――夢に見た「光あれ」の真相が近づいている。

 2. 隠し階段
 視聴覚室の前に立つと、夜の校舎はひときわ静まり返っていた。ガラス窓の向こうに見える校庭は、月明かりにぼんやりと照らされている。
「誰も見てないよね?」
「大丈夫だ。見つかったら謝ればいい」
 蒼大が軽く笑って扉を押すと、視聴覚室の鍵はかかっていなかった。室内に入ると、暗闇の中に机や機材が静かに並んでいる。埃の匂いが鼻を刺した。
「階段、どこにあるの?」
 真紀が声を潜めて尋ねると、蒼大が床を照らしながら部屋の奥へと進んだ。しばらくすると、古い木製の床に妙な継ぎ目があるのを見つけた。
「ここだな」
 蒼大が指で継ぎ目を押すと、床板がわずかにずれ、ギィ……と重々しい音を立てて開いた。
 暗闇の下に続く、急な階段――
 真紀の心臓がドクンと跳ねた。
「行こう」
 蒼大が先頭に立ち、真紀は恐る恐るその後に続く。懐中電灯の光が階段の壁を滑り、湿った空気が顔に当たる。
「こんな場所、今まで誰も知らなかったの?」
「かもな。でもなんで隠してたんだろうな」
 蒼大の言葉に真紀も首を傾げる。この階段は、ただ隠されていたというより「封印されていた」ように思えた。

 3. 扉の鍵穴
 階段を下りきると、二人は広い地下室に出た。空気はひんやりとしていて、壁には無数の古い模様が彫られている。真紀が光を当てると、それはどこかで見た模様――フェニックスの羽を思わせる形だった。
「……ここ、なんなの?」
 中央には巨大な石造りの扉がそびえ立ち、その中心にはやはり「鍵穴」があった。
「やっぱりこれだ」
 蒼大がポケットから黄金の鍵を取り出す。鍵は鈍く輝き、まるで呼吸をしているように光を反射する。
「開けるよ」
 真紀は息を呑んで蒼大を見つめた。扉の向こうには何が待っているのか――それは、夢で見た「光あれ」の真相なのか。それとも……。
 カチッ――
 鍵が鍵穴に挿さり、重い音を立てて回った。瞬間、石造りの扉が低い振動音を響かせながら、ゆっくりと開き始める。

 4. 光の部屋
 扉の向こうには、信じられない光景が広がっていた。
 部屋の中央には古びた祭壇があり、その上には巨大な石板が置かれている。石板にはフェニックスの姿が彫られ、その周囲には円を描くように「光あれ」という文字が刻まれていた。
「これが……」
 蒼大が言葉を失ったように呟く。真紀も震える手でノートを開き、夢で見た言葉を書き記した。
「本当に、光あれ、だ……」
 祭壇の前には、古いオルゴールが置かれている。真紀は無意識に手を伸ばし、オルゴールの蓋を開いた。
 カラカラカラ……
 オルゴールが静かに回り始め、甘くも不気味な旋律が部屋中に響いた。耳に馴染みのある「別れの曲」――だが、それが流れると同時に、部屋全体の空気が変わった。
「やばい、止めろ!」
 蒼大が叫ぶ。しかしオルゴールは止まらない。石板の模様が光り、壁の模様がひとつずつ輝き始めた。
「何が起きてるの……?!」
 真紀の声は震えていた。その瞬間、壁の模様の中から、影のような何かが這い出してきた――。

 5. 忍び寄る影
 部屋全体が揺れ始める。蒼大が真紀の腕を引き、後ずさりする。
「逃げるぞ!」
 影はゆっくりと形を成し、人のような姿になっていく。それは「絶対者」と呼ばれる何か――真紀はその名を知らぬまま、心の中でそう確信した。
「光あれ――」
 壁から低い声が響く。その言葉は真紀が何度も夢で聞いたものだ。
「何なの、これ……!」
「分かんねえ。でも絶対にやばい!」
 蒼大が真紀の手を強く引き、部屋の出口に向かって走り出す。背後では、影が壁を這い、祭壇の周りを覆い尽くしていく。
「……この部屋が、目覚める」
 真紀は、そんな声を幻聴のように聞いた。

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