ニナにまつわること

灰塔アニヤ

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ニナにまつわること

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「ジンボさん、じゃあ『キラガ』は知ってる?綺羅☆Girl'sきらぼしガールズっていう三人組の」
カンダは、黙々と袋入りのネジを数える男、ジンボに尋ねる。
「キラガ……ですか。好きですよ。あ、ネジ小8本入り、27袋です」
ジンボが、手元を見たまま、答える。前髪が長く、俯きがちのジンボの表情は伺い知れない。
とは言え、彼はこの職場でカンダにとって唯一の同志だ。カンダもジンボも地下アイドルオタク、いわゆる『ドルヲタ』だ。彼がこのホームセンターで棚卸しに勤しんでいるのも、推しアイドルのライヴのため、『推し活』のためのアルバイトの一つである。こうした単発のアルバイトも含め、カンダは常に最低3つはアルバイトを掛け持ちしている。寡黙なジンボに、私生活について詳しく尋ねた事はないが恐らく彼も似たようなものだろう。
カンダは欠伸まじりに、ジンボが告げた数字をバインダーに挟んだ表に記入する。棚卸し作業は二人一組が基本だ。たまたま組むことになった相手だが、ジンボが相手で良かったと思う。この単純作業も『推しトーク』で多少は気が紛れる。
「あ、だったらもう知ってました?キラガ、解散しちゃったのって」
ジンボは隣の列のナットを数えながら、ふっとカンダを見遣った。

✱✱✱
【◎REC】

「お疲れ!ごめん、今日は先に帰るね!」
メンバーのユイナ、リンナに声を掛け、あたしはさっさと控え室を出ようとする。二人は衣装のままで、お菓子を食べたり、スマホをいじったりとだらだらしていた。
「えー、ニナちゃん帰っちゃうの?」
「折角だから、ご飯いこーよ。キラガ一周年で、今日の動員も良かったじゃん」
「えーと、ごめんね。明日、早朝バイト入れちゃって。今日は寝ないとキツイかも」
本当はバイトのシフトなんて入れていない。
「どうせ一周年って言っても、トガワさん、奢ってくれなそうだし。早くバイト辞めて、アイドルだけで生活したいんですけど」
マネージャーのトガワさんをわざとらしく睨みつける。トガワさんは『あぁ』とか『まぁ』とか曖昧な返事をしながら煙草を咥えている。
「じゃ、お先でーす!」
あたしは衣装やメイク用品を入れた、キャリーケースを引きながらライヴハウスを後にした。

「ただいまー」
アパートに帰って声を掛けるが、勿論返事はない。同居人もいなければ、ペットも飼っていない。そもそも地下アイドルごときがペットなんて飼える経済力がある訳もなく。電気をつけると、二対のガラス玉の瞳と目が合う。
彼女たちは着せ替え人形の『ミゼルヌ』。立ち姿だと約30cmくらいの背の高さ。
あたしがこのミゼルヌが大好き、と話した時、かわいいもの好きのユイナは、
「お人形よりぬいぐるみの方が良くない?抱き心地もいいし」
と言った。ユイナ推しのファン達は、彼女が大好きなキャラクターのぬいぐるみをよくプレゼントしている。
でも、ユイナ。あなたが抱きしめてるぬいぐるみ、どこかの男がキスしたり、舐め回したり、それ以外の液体が付いていたりするかもしれないんだよ?
リンナは、
「着せ替え人形?あはは、ニナちゃんらしくなーい」
と笑いながら言った。でも、リンナ。あなたは全然分かってないよ。
ミゼルヌは1980年代フランス生まれの現代版・ビスクドールと呼ばれていること。色々なハイブランドとコラボレーションして、コレクションラインのお披露目のための小さなモデル役をになっていたこと。今はフランスでの生産はなくオークションで買うか、日本のおもちゃメーカーが権利を買い取って『ミゼルヌ・レプリカ』として生産しているものを買うしかないこと。
あたしがどうしても早く帰りたかった理由。
それはミゼルヌに関係がある。
今日、念願の、レプリカじゃない本物のミゼルヌを手に入れたのだ。(うちにいるミゼルヌは、全世界100体の限定品だけど、ミゼルヌ・レプリカだ)

ライヴの時にはプレゼントボックス、というその名の通り各メンバー宛のプレゼントをいれる箱が用意されているのだけれど、『ニナ』の箱に妙に大きなプレゼントがあった。その存在感が気になり、本番前にちらっと見て……叫びそうになった。確かに今日はあたし達のグループ『綺羅☆Girl's (通称キラガ)』の一周年ライヴだった。
でも、まさか本当にあたしの趣味を解って、本物をプレゼントしてくれるファンがいるなんて。オークションで何度か出品されているのは知っていたが、到底手の出せる値段じゃなかった。
それに、正直、あたしのファンはユイナ、リンナに比べたら圧倒的に少ない。センターを務めていても人気は比例しない。理由は分かっている。

『ニナ様は歌もダンスも上手いけど……アイドルらしくない』

匿名掲示板でも、ステージが始まる前のファンの話し声の中にもよく聞く言葉。
今日のライヴだってそうだ。あたしのメンバーカラーである、赤色のサイリウムを振るファンはまばら。何だか昔読んだ、一匹だけ色違いの魚が主人公の絵本みたいだ。
だけど、それでも、色違いの魚みたいに、ユイナの白、リンナの黄色のサイリウムの中でも赤色を振り続けてくれた誰かが、あたしに本物のミゼルヌをくれた。相手の名前も何も分からないけど、嬉しくて嬉しくて。
ずっと眺めていたくて早く家に、帰りたかった。
家につくとすぐさまキャリーケースを開け、もらったミゼルヌをベッドサイドへそっと立たせてあげる。
本物は、うちに元からいたレプリカ二人よりも、圧倒的に可愛くて、品があって、眺めているだけで深い充足感に包まれた。

あたしはライヴ後に決まってすることがある。
それはMarieマリィのライヴ映像を観ること。今の人気のアイドルや、あたしの同世代の子からしたら『誰?』って思うだろう。
Marieはあたしのママの青春にして、あたしの原体験だ。Marieは今のアイドルと違って、歌もダンスもそしてステージパフォーマンスも完璧なまさに『歌姫』。
小さいあたしは、ママとMarieのライヴ映像を観て一瞬で虜になった。

Marieになりたい。

Marieの歌は全部覚えて、家のソファをステージにライヴごっこをした。

Marieになりたい。

ママにせがんで隣町のダンススクールに通わせてもらった。

Marieは本名・年齢不詳。
でも、20周年ライヴを行った一昨年、彼女は引退した。バラエティや特別番組にも一切出演しない、普通の一般女性になった。
それがあたしが17歳の時。大学受験も考えないといけなかったけれど、それ以上にあたしはMarieになりたかった。通い続けていたダンススクールに、芸能事務所主催のオーディションの案内が来た。すぐに応募した。
大学受験も合格、オーディションも無事合格、ママも大喜び。
……ここまでは、良かったんだけれど。
あたしが組むことになったのはユイナとリンナ。
素人同然の歌唱力、ダンスはよく間違える。『綺羅☆Girl's』なんていつの時代?みたいなクソダサいグループ名で。
でも、ユイナの歌も『ゆるふわ癒し系でユーちゃんマジ天使』。
リンナがダンスを間違えても『おっちょこちょい、でも明るいリーちゃんマジ天使』。
あたしは『ニナ様は……上手いけどアイドルっぽくない』。そう、あたしのことだけファンは『様』付けで呼ぶ。
今日もらったばかりのミゼルヌを見る。彼女は完璧に可愛い立ち姿、澄んだ瞳であたしを見ている。
あたしはすっと立ち上がる。
流しっぱなしにしているMarieのライヴに合わせてダンスを真似る。

……やっぱりMarieはすごい。
2時間近く歌って踊り続けて、ドームクラスの会場をたった一人の力で感動させてしまうのだ。
久しぶりにMarieの曲で踊ったのもあるけれど、映像が終わる頃には汗でびっしょりだった。シャワーを浴びたい。着替えの準備をしているとスマホが小さく震えた。間を置いてもう一件。
一件目はユイナ、リンナとのグループチャット。
『ニナちゃん、今日のキラガブログあっぷしてね♡』
『わたしはもうUPした!!*。٩('ᗜ'*)و*。』
……これもあたしはあんまり好きじゃない。
ライヴ後なるべくすぐにブログをUPして、ファンを飽きさせないように、時間があったらオフの日の自然体な姿も載せるように。
大体、学生もやってるし、オフの日はバイトだ。ユイナ、リンナのように食べ歩きだとか、えスポットだとか、カラオケだとか。よく頻繁にUPできるものだと思う。あたしもなんとかひねりだしているが、そんな事に時間をくくらいならMarieを踊ってたいよ。
もう一件はトガワさんから。
『今日、そっちいくから』
有無を言わせない文章。あたしは精一杯、可愛いスタンプを選んで答えてから、シャワーへ向かった。

部屋着に着替え、どうせすぐ脱ぐことになるのは分かっていても一番可愛い下着を身につける。さっきとは違うMarieの映像を流しながら、キラガブログを更新する。
ユイナは自撮り、リンナは文面にたくさんの絵文字、顔文字が、踊っている。
その可愛い笑顔、加工アプリじゃなくてステージ上で見せなよ。
絵文字、顔文字じゃなくてあなた自身の身体でダンスしなよ。
更新ボタンを押す前にユイナ、リンナの文面をあたしのと比べて小さくため息を吐く。そうだよね、一周年ライヴっていう節目だしもう少しはしゃいで見せたほうがいいんだよね。

Marieの活躍していた頃はアーティスト側からの発信なんてほとんどなかったから、彼女ならどうしただろう?……という想像は何の役にも立たない。
そうだ!ミゼルヌの事を書こう。
『一周年にとっても素敵なプレゼントをもらったよ~!ニナ様推しのファンの方、ありがと☆』
……いいかな。更新ボタンを押すとほぼ同時くらいに、がちゃりと家の鍵が開く。トガワさんだ。彼は合鍵を持っていて、家に着いてもメッセージも送らないし、チャイムも鳴らさない。
合鍵を作っているのはあたしの家だけ。
そのことをユイナもリンナも、たぶん運営も知らない。
「よぉ、風呂はもう入ったの」
「はい。トガワさん、入りますか?あ、何か飲みますか?」
「いや……お前と入りたかっんだけど、まぁいいや」
冷蔵庫に飲み物を取りに行こうとしたとき、後ろから抱きしめられる。いつもの煙草と香水、男の人の匂い。
でも、あたしの知っている男の人の匂いは、トガワさんただ一人だけ。
「へぇ……Marieか。懐かしいもの見てんだな。もっとさ……」
今、日本で一番売れているアイドルグループとかK-POPアイドルの名前を並べながら、トガワさんはベッドに腰掛ける。
「でも、Marieのダンスも歌も格好いいじゃん。このアリーナの時だって……っ!」
ちょっとムキになるあたしの腕を掴んで、ベッドに押し倒される。
「そうだよな。ニナの歌唱力もダンスも、Marieへの憧れからだもんな。それは地下ドルの中じゃトップクラスだよ。俺もキラガのセンターはニナしかあり得ないと思ってる」
優しく囁かれて、煙草の香りのする唇にキスをされる。部屋着のボタンが一つずつ丁寧に外されていく。

「そういや、また増えたの?その……」
「ミゼルヌの事?」
事を終えるとトガワさんは必ず煙草を吸って、炭酸水を飲む。
本当はミゼルヌの髪や服に臭いがつくから止めて欲しいけど、言えない。
「そうそう。何か……ベッドサイドに置いてあるの、怖くない?ずっと見られてるみたいで」
「それ、ユイナにも似たようなこと言われましたよ。ぬいぐるみの方が良くない?って。でも、あたしは人形の方が友達っぽく感じられるっていうか……いいと思うけど」
「ニナ、ぼっちなのかよ。今日もメンバーの中で真っ先に帰ったし」
煙草の煙を吐きながら、トガワさんは笑う。
「ぼっちじゃないですー。ニナ様は一匹狼なの、そういうキャラでしょ?」
「はいはい。さっきまで仔犬みたいな可愛い声で鳴いてたけどな」
煙草を片手にあたしを抱き寄せ、キスをする。
ファンが求めているのは天使みたいに可愛いけど、手の届く存在。あたしはそんな小さな賛美だけで納得なんて出来ない。
だったら、一匹狼でも、ちょっと近寄りがたい『ニナ様』だっていい。
「そろそろ夏の新曲と、ニナのバースデーライヴの話も固まってくると思う。ニナのダンスが映えるように、一応そんな感じで振付師とも相談してるから」
本当にあたしを理解して、評価してくれるのはトガワさんだけだ。
もう一度、今度はあたしから背伸びをしてキスをする。
「じゃあな。ちゃんと戸締まりして、しっかり休めよ」
「はい!お疲れ様です」
トガワさんは合鍵を持っているけど、うちに泊まる事はない。

最悪だ。最低だ。
一日がそれで始まり、それで終わったという感じ。ベッドにレッスン着を入れたトートバッグを放り投げ、それでもむしゃくしゃした気持ちは消えない。
クッションを投げつけ、枕を放り投げ、机の上の化粧水が倒れ、他に、他に……荒れ狂う気持ちのまま、他に八つ当たりが出来るものを……と、ベッドサイドのミゼルヌと目が合った。
ガラスの静かな瞳、薔薇色の美しい唇が微笑んでいる。
「……ほんと、最悪だった。ねぇ、聞いてよ?」
ミゼルヌに今日のことを語りかける。
整理するように、心を落ち着けるように。

まず、早朝のカフェのバイトでのこと。
毎日コーヒー1杯だけを頼むサラリーマンの常連客がいる。常連とはいえ馴れ馴れしくて、もともとあまり好きじゃなかった。その人がお釣りを返す時に手を握り返してきたのだ。
それだけで気持ち悪いのに、握り返された手には電話番号と、
『良かったら連絡してね(^^)』
と書いたメモ。
ビリビリに破った。
苛々してバックヤードで何度も手を洗って、何度もアルコール消毒をしていたら、同じシフトの女の先輩に不思議がられ事情を話した。
すると、『ニナちゃん、可愛いもんね。結構、ニナちゃん目当てのおじさんたち多いんじゃないの、モテていいじゃん』とあっけらかんと返された。
地下アイドルとはいえ、活動をしていれば確かにそういう『繋がり』を求めるファンだっている。でも彼らはチケット代、チェキ代と最低3,000円くらい出してのことだ。このサラリーマンは350円のコーヒー1杯でイコールだと思っている。綺羅☆Girl'sのニナ様としてのあたしと、時給910円のカフェ店員としてのあたしの価値。

でも今日は夕方からダンスのレッスン。
しかも、この間トガワさんが言っていた新曲のことも詳しく聞けるみたい。
最悪な朝からスタートしたんだから、きっといい話が聞けるはず……期待値を上げすぎたあたしが馬鹿だった。
「ニナちゃんおはよー」
「おはよ!トガワさんがね、新曲のデモと衣装案持ってきてくれたよ!」
スタジオに行くとユイナとリンナは先に来ていた。二人ともはしゃぎながらPCから音源を聴いている。手元には資料の束。
「おはよう。なになに、あたしにも聴かせて」
レッスン着にすぐ着替えて、二人のもとへ近寄る。途中まで掛かっていたデモ音源を0:00までに戻してプレイボタンを押す。
「ね、可愛くてよくない?」
気になる人を誘って海へ行きたい、でも誘えない優柔不断な乙女心。リンナは語彙力がないから、なんでもすぐ可愛いっていう。
「衣装もね、海っぽく水着を意識してるんだって」
フリルのついたショートパンツに、胸元を強調しておへそが見えるくらいショート丈の、同じくフリルのついたトップス。ユイナはそれをお菓子を食べながら可愛いという。
彼女はいつもゆったりしたレッスン着を着ているから分かりづらいけど、この衣装を着たら『ちょいぽちゃ』どころじゃないことがファンにバレるよ。
それよりもなによりも。

あたしのバースデーライヴで披露する新曲がコレ?

トガワさん、あたしのバースデーライヴだから、あたしのダンスが映えるような曲にするって言っていたのに。当のトガワさんを探すが見当たらない。
「これってさ、デモ曲でしょ?二人はどんなダンスになるかとか知ってる?」
「さぁ。でも曲はほぼこれで完成っぽいよ。こうゆうバラード?しっとり系?の曲ってキラガになかったからいいよね!」
「ダンスの振りも今日のレッスンで分かるんじゃないかなぁ。あ、ニナちゃんもチョコ食べる?新作でたんだよー、これ好きだったよね?」
語彙力の足りないリンナも、呑気なユイナにも苛つく。結局、トガワさんを問い詰めることも出来ないまま、もやもやした感情を抱えてレッスンが始まった。

レッスン後、さっさと帰る二人に『もう少し復習したいから』と言ってしばらくスタジオでトガワさんを待った。メッセージを送って、電話を何度もして、やっと彼は現れた。
「……ニナ、あんまり私用で連絡するなって言っただろう」
現れて一言目がそれだ。あたしはトガワさんに詰め寄ってまくし立てる。
「私用、じゃないですよ!あれ、新曲、本当にあれでいいんですか⁉あたしのバースデーライヴで披露する曲ですよね⁉あたしが映えるように、ダンスメインの曲にするって……‼」
「落ち着け、ニナ。確かに俺はそう提案したんだよ。でも運営が、やっぱりチェキの売り上げありきだって押し切ってな」
アイドルのライヴはチケット代以上に、チェキ券・グッズ販売が売り上げの大半を占める。
チェキ券は名前の通り、好きなメンバーと2ショットのチェキを撮る権利。うちのチェキ券は1枚1,000円。盲目的なファンはこのチェキ券に何万もつぎ込む。
「今回は夏らしい衣装だし、今までにない感じだから曲もそっちに合わせて作ることになったんだよ」
「あんな曲じゃ、あたしのダンスなんてあってもなくてもいいじゃん!水着みたいな衣装で、チェキ代で稼いで……あたしがやってるのはグラビアじゃなくて、アイドルだよ⁉」
「ニナ、ちょっとこっち来い。分かったから、大声だすな」
スタジオ裏の喫煙所に呼び出される。
「な、俺の気持ちも分かってくれ。俺だってニナの能力を買ってるから、ニナのバースデーライヴはお前にもっと花を持たせてやりたいよ。……けど、キラガはお前一人じゃないだろ?ユイナ、リンナがいてセンターのお前がいる」
「……だけど」
言いかけた反論を煙草の香りで塞がれる。
二度、三度ととろけそうなキス。
「キラガとしてもっと人気が出たら、それぞれのソロ曲だって、逆に人気絶頂での卒業、ニナのソロデビューへのシナリオだってあり得るんだ。別に我慢しろって訳じゃない。ただお前の目標はMarie、だろ?」
ふわふわした思考で、あたしはそれ以上の反論が出来なくなる。
トガワさんが、小声であたしの耳元で問う。
「で、今日は大丈夫な日?」
「……ごめんなさい。今日は女の子の日だから」
それは嘘だったけれど。

全てをミゼルヌ相手に告げると、あれほど大暴れしていた感情がすっと穏やかになった。
「ありがとね。ミゼルヌ」
今日も、またMarieの曲で踊ろうかな。
そう思ってふと新曲のことを再度思い出す。ユイナが、新曲に人気アイドルの有名曲と似た振りがあってテンションがあがる、とはしゃいでいたこと。あまり興味がなくてちゃんと見たことがなかったけど、動画サイトでMVを検索する。
閲覧数1000万回以上。公式動画の下にはたくさんの『踊ってみた動画』が並んでいた。
例のMVを観てみるとユイナの言う『似ている振り』はなかったけど、Marieに比べたらよっぽど簡単なダンスだった。どおりでこんなに踊ってみた動画が多い訳だ。

……だったら、あたしだって簡単に出来るんじゃない?

その曲を二度、三度流して踊る。
姿見で細部まで確認する。
やっぱりあたしのダンスは上手い!
これを投稿したら評価して貰えるんじゃない?……そうだ、確かハロウィンの時に買ったマスクがあるはず。トガワさんをびっくりさせようとして買った、ムンクの叫びみたいなやつ。全然驚いてくれなくて、クローゼットにしまってそのままのはずだ……あった。
思いついてから行動するまでに時間は掛からなかった。動画投稿はキラガの公式チャンネルでもやった事があるから大丈夫。
あたしはマスクをつけて踊ってみた。
【□PAUSE】

最近、すごく充足感に満たされている。
カフェバイトの鬱陶うっとうしい常連客も気にならない。
デモから正式の音源になって、レコーディングを終えた新曲も、そのダンスも、露出の多い衣装も気にならない。

あたしの踊ってみた動画『えぬちゃんねる』の閲覧数が日に日に伸びているのだ。低評価もあるけど、それ以上にコメント欄には賞賛の言葉が並ぶ。
スクリームマスクでアイドルの踊ってみた、というギャップも良かったみたい。あたしは他の有名アイドルの曲も踊った。センターの子、それ以外の子、地下アイドル、K-POPアイドル、……洋楽のダンスミュージックはウケなかったけど。
本当に踊るのって楽しい。
こんなにあたしに注目してくれる人がいるなんて。
昨日はMarieの曲の踊ってみたをUPしたばかりだった。こんなに見てくれるならあたしの踊るMarieだってきっと評価してくれる。バイトを終え、レッスンに向かう途中『えぬちゃんねる』の確認をする。
……あまり閲覧数は伸びていない。
確かに古い曲だし、低評価はされていないし……とコメント欄を見て凍りついた。
『Marie?誰?』
『古いwww』
『懐かしいwww』
『Marie選ぶなんて中の人BBAなんじゃね?』
凍りついた感情が一気に炎のように燃え上がる。

分かってない‼どいつもこいつも‼何一つ分かってない‼

結局『人気アイドルの○○踊ってみた』を見て評価している。沸き上がる感情は収まらなかったが、移動中の電車内ではどうすることも出来なくて、強くスマホを握りしめた。

「ちょっとニナ、いいか」
気もそぞろのままレッスンを終えると、トガワさんに呼び出された。そのまま二人で、スタジオ裏の喫煙所へ行く。
うちに来る訳じゃないってことは仕事のことなんだろう。
「ニナ、これお前だよな?」
煙草を吸いながらトガワさんがスマホの画面を見せる。
『えぬちゃんねる』
……どきりとしながらも、行きの電車で感じた気持ちが再度、ふつふつと沸き上がってくる。
「そうですけど、何がダメなんですか?顔も出してないし」
「それが、どこかからバレたらしい。運営にファンらしき人物から連絡があったそうで。これはキラガのニナなんじゃないかって」
「だから何で、ダメなの?確かにトガワさんにも事務所にも黙ってたけど、これでお金稼いでる訳でもないじゃん⁉」
「ニナ、落ち着け」
「だって『あんじー・えんじぇる』とかだってメンバーが個人でチャンネル作ったりしてるよ⁉なんであたしはダメなの⁉」
「だから落ち着け。いいか、正直『あんえん』と『キラガ』じゃ規模が、人気が違うんだよ。そのファンらしき奴はこう言ったらしい。『ニナの行動はキラガへの裏切りなんじゃないか、やるならキラガ公式でやれ』って」
トガワさんへ向けた言葉の威勢が、感情の炎がふっと消された気がした。

『キラガへの裏切り』

キラガ公式チャンネルの閲覧数は多くても500回程度。それに比べてあたしの『えぬちゃんねる』は……。
「とにかく、それをすぐに消せ。お前、スマホ持ってるだろ?お前のバースデーライヴも近いんだ。事が大きくなる前に、今、俺の前でチャンネルを消してくれ」
キラガのセンター、ニナ様としてのあたしの価値と、顔出ししない踊ってみた投稿主としてのあたしの価値。
「……はい、分かりました」

✱✱✱

「カンダさんはキラガのライヴ行った事ありますか」
ジンボがぼそぼそと聞き取りづらい声で、カンダに尋ねた。
「そっすね、推しの対バンで何回かとあとニナ様バースデーライヴは行ったかな。俺、どっちかっていうと『誰でも大好き』タイプっていうか。オタ仲間にそれでディスられる事もあったけど、推しがたくさんいて、ほぼ毎日近く時間さえあれば誰かしら推しに逢えるなんて最高だと思うんだけど」
「キラガだと、誰推しだったんですか」
「俺?そうだなー……ユーちゃんかな。今の最推しが『あんえん』のしいにゃんで。知ってます?『あんじー・えんじぇる』。やっぱああいう正統派っていうか、清純系っていうか、そういう子が一番推せるかな。あ、ちなみにジンボさんは誰推しだったんです?キラガだと」
「……ニナ、ですよ」

✱✱✱
【◎REC】

7月7日がやってきた。
あたしの誕生日、ニナ様のバースデーライヴ当日。
「ニナちゃんおめでと!」
「おめでとう~」
真っ先に控え室でユイナとリンナがお祝いをしてくれた。大きなケーキとクラッカーの弾ける音と一緒に。
「二人ともありがとう。……でもケーキは後の方が良くない?緊張してて、今食べたらステージで吐いちゃいそうだよ」
苦笑いを浮かべながら、思ってもいないことを口にする。
「えー、緊張だなんてニナちゃんらしくないよー」
呑気にリンナが言う。ポニーテールにした彼女のうなじに、産毛うぶげが、残っているのが気になる。
「じゃあ、ラストの曲終わったらスタッフさんに持ってきてもらおう!そこでみんなでもう一回お祝いしようよ」
ふわふわとした声でユイナが提案する。
新衣装に向けてダイエットする、と言った彼女の決意は続かなかったようで、フリル付きの可愛いショートパンツのウエストには少しお腹が乗っている。
「そうだね、せっかくだからファンのみんなとお祝いしたいよね」
また思ってもいないことを、笑顔を浮かべながら言う。
Marieは……、今のあたしと同じ年齢の頃、何をしていたのだろう。
ヒットチャート4週連続1位?
アリーナ2DAYS?
初のドーム公演?
「ニナちゃん、今日はおめでとう!プレボ、ダンボールいっぱいだよ。新しいダンボール出しとくから、こっち、控え室に置いとくね」
スタッフさんの一人がプレゼントボックスのダンボールを一箱置いていく。
あたしのメンバーカラー、赤色のラッピング、リボン、花束が目立つ。小物やファンレターが多いがひときわ大きなラッピング袋が目についた。
「ねぇねぇ、この大きいのもしかしてニナちゃんの好きなお人形さんなんじゃない?」
「きっとそうだよ!一周年の時にもくれた人かも!ニナちゃん、開けてみなよ、絶対ライヴ前にテンション上がるよ~!」
二人の言い方が少し気に障り、相変わらず分かってないな、と思いつつやはり少し期待していた。
赤いラッピングとリボンをそっと解く。『ミゼルヌ』のロゴが目に入る。箱の新しさから『ミゼルヌ・レプリカ』だけど、おそらく限定品。箱を取り出すとこちらを覗き込んでいたユイナ、リンナが悲鳴をあげた。
「……何、コレ……」
「き、きっとニナちゃんの、アンチのしわざだよ!きっとそうだよ!だから……えっと……」
言葉に詰まるリンナと、同じくあたしも絶句していた。

箱の中のミゼルヌ・レプリカは胴体と手足が無理矢理ねじりとるようにバラバラに取り外され、首は奇妙な角度に曲がっている。着せ替えの服も、髪もボロボロに切られて、破かれ、美しいガラス玉の瞳も粉々に砕かれていた。切れ切れの服から覗く、ボディはカッターなのかハサミなのか、刃物で切りつけた跡がたくさんあった。瞳がぽっかりと外された、のっぺらぼうの顔に、切り抜かれたあたしのチェキが貼られていた。
「怖いよ、そんなの捨てちゃおうよ」
あたし以上にユイナは怯えている。
すぐにでもトガワさんに相談したかったが、関係者、スタッフさんとの最終打ち合わせ中だろう、いつもこれくらいの時間には会えない。
「……だ、大丈夫。アンチだろうが、それだけキラガを、あたしを注目してるってことでしょ?あたしのバースデーライヴなんだから。絶対に成功させよう!ね?」
二人の肩をぎゅっと引き寄せるように軽く叩いて、明るく言い放つ。

綺羅☆Girl'sセンターの高飛車キャラ、歌唱力、ダンス力、抜群のニナ様。

上手く笑顔は作れていただろうか。
ステージに上がる手前、舞台袖でミゼルヌ・レプリカのことと、一緒に入っていた真っ赤な封筒のことが頭にずっと引っ掛かっていた。

新衣装、新曲披露というのもあってステージに立った瞬間、いつもより多くの歓声が上がる。
あたしのバースデーライヴだから、赤いサイリウムもたくさん瞬いている。
でも、最前列。
そこに立つなら『ユイナ愛』とかリンナのサイン入りのグッズTシャツなんか着ないで徹底してよ。
「「「「「言いたいことがあるんだよ!」」」」」
「なーにー⁉」
間奏中のアイドルとファンとのコール。
「「「「「世界で一番ニナ様愛してる!!!!」」」」」

ここにいる全員、嘘つき。

ファンのコール、何一つ頭に入ってこない。
笑顔で歌って踊って、みんなに誕生日を祝ってもらって。最悪の誕生日はまだ終わらない。

ほんの少しの休憩のあと、終演後のグッズ販売、チェキ撮影、ファンとの交流がある。
「ニナ様おめでとう!今日も可愛いよ」
「ありがとー!」
メンバー全員が好き、通称『箱推し』のファンでも、チェキ券を買ってくれる人は、さすがに今日ばかりは『ニナ様最推し」のフリをしてくれる。
「ニナ様おめでとう。何歳になったのー?」
「はぁ?女子に年齢聞くとかマジ失礼!だったらあなたも年齢言ってよね!」
「うは、ニナ様節だ!」
バースデーライヴだから、いつもよりあたしとチェキを撮る人は多い。
でもあたしだけを推している『単推し』は大していない。口だけのおめでとう、その日限りの『ニナ様推し』。惨めになると同時に、段々チェキで並ぶファンをお札として数えるようになってきた。
うちのチェキは1枚1,000円。

ピースして1,000円。
ファンとハートを作って2,000円。
3,000円、4,000円、5,000円、6,000円……15,000円、16,000円……21,000円……。

当たり前だけど、チェキ代、グッズ代の、全てがあたしたちのギャラになるわけではない。
でも、時給910円でカフェのアルバイトを実働8時間働いているのと、どちらがどれだけ稼げているのだろう。
チェキ代がいくらになったのか、もう数え続けるのもよく分からなくなってきた頃、チェキでもグッズ販売でも並ぶファン達はほとんどいなくなった。
「今日はありがとう!」
「ニナ、全然気づいてくれなかったね」
「……え?」
「全部、僕だよ。ニナの嘘つき」
不意に掛けられた言葉が理解出来なかった。
ついさっきのことなのに、相手の顔も表情も全く思い出せない。

ゼンブ ボクダヨ ニナノウソツキ

グッズ販売、チェキの撮影が全て終わると、あたしはすぐに控え室に走って戻った。

バラバラにされた、直視もしたくないミゼルヌ・レプリカ。それと一緒に入っていた丁寧に糊付けされた真っ赤な封筒。手が震える。上手く開けられなくて、ほぼ破くように封を開ける。
中身は、几帳面に折り畳まれたコピー用紙。
印字された文字が淡々と並んでいる。
読み進めるごとに呼吸が早くなっていく。
けれど瞳孔が文字に引き寄せられるように読むことを止められない。

誰か。

トガワさん?
ダメだ、相手にはトガワさんの事もバレている。
メンバーにも勿論言えない。
ママにも言える訳がない。

誰か、だれか、だれか!!!!

どこで間違えたの?どうしたらいいの?あたしどうなるの?家にも……帰れない。
「―――――――っ!!!!」
大声で叫んで、バラバラにされたミゼルヌ・レプリカを箱ごとなぎ払う。
がちゃんと響いた大きな音は、あたしの心の奥から聞こえた気がした。

『ニナへ。僕があげたミゼルヌ、とても大事にしてくれたみたいだね。
たくさん話し掛けてくれて、君の無防備な寝顔、バイトに遅刻しそうになって大慌てで着替えているところ。他のファンは"ニナ様"って言うけれど、君が一人の可愛い女の子だって間近で知る事が出来て、もっともっと君の事を好きになったよ。

でも、ニナ。
君が他の女みたいにこんな裏切りをしていたなんて。
ミゼルヌをプレゼントしても限定品じゃないとすぐフリマアプリで売る。
キラガの事なんてどうでもよくて自己中の承認欲求の塊。
簡単にマネージャーに媚びを売って身体を差し出すクソビッチ。
全部、ミゼルヌが僕の代わりに見ていてくれて、全て聞いていてくれたんだ。
ねぇ、ニナ。
限定品とブランドものが大好きな君なら気づいてるよね。
このミゼルヌは君と同じ名前。
きみの分身。
ほかのおとこに抱きつく腕を引きちぎった。
ぼくのことなんて一度もみてくれない目をこなごなに砕いた。
人形のくちびるにはキスができない。
いらない。
だいすきなダンスが二度とできないように脚もきりおとした。
かんたんにおとこにべたべた触らせるからだなんで……ミゼルヌって作りがいいんだね。腹に突き立てたカッターの刃がなんどか折れたよ。
ミゼルヌのニナをころした。
でもニナ、きみがすきだよ。
きみの家でまってるミゼルヌのおかげできみの家もわかったよ。ありがとう。
にな、あいにいくね。あいしてるよ』

✱✱✱

「へー、ニナ様推しだったんすね。じゃあ特にショックだったんじゃないですか?キラガの解散理由ってニナ様の体調不良とか、あとスキャンダル?でしょ。ニナ様が一番そういうのあり得ないと思ってたけどなぁ」
「ええ、よく知ってますよ。全部、僕がやりましたから」
「……は?」
「カンダさん、ナット大4個入り12袋です」
「あ、あぁ、うん……」
ジンボはまた棚に向き直りナットの隣のワッシャーを数えている。
俯きがちの顔から表情は伺い知れなかったが、口元に笑みを浮かべているように思えた。
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