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◆おどる翁◆
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※(店主の体験談です)
※(プライバシー保護のため地域・固有名詞などは伏せています)
【おまえ誰やねん】
元は個人で商店を営んでいた商売人たちが所場としていた市場。
何者かの放火で焼け落ち、各個人が資金を出し合って2階建てのスーパーマーケットとして再スタートした頃の話です。毎日営業ではなく、毎週木曜日が定休日でした。
その日、図書館へ本を返却するために自転車でスーパーの前を通ったとき、自動ドアの向こうは照明が落とされて非常灯のみでした。
しかし、店内の自動ドア付近に白い翁面を着けた3人が軽やかに舞っていたのです。
内1人は片手に小さめの金色の獅子頭を持って、少し奥で踊っています。
全員の頭に手ぬぐいが巻かれていて頭髪は見えませんでした。
3人の服装は麻袋に穴を開けて被り、腰を荒縄で縛った非常にシンプルな格好です。足元は藁草履。よく見ると4人目がいて、三味線を掻き鳴らしているのも見えました。
その時は「何か出し物の練習をしているのかな」ぐらいにしか思っていませんでした。
関西でも正月に「門付け(かどつけ)」が来ることがあり、人家の門口で音曲や芸を披露して金品を受け取る「門付け屋」の存在は知っていました。
「祝言人(ほがいびと)」を源流とした、神が祝福に訪れるという民俗信仰です。
それにしても、わざわざ定休日のスーパーマーケットで芸事の練習をするとは……。
首をかしげるしかなかったのですが、図書館へ本の返却をしなければなりません。思わずペダルを漕ぐのを止めていた自転車を再び動かし、速度を上げて立ち去りました。
従業員が出し物の練習をしていたのだろう。勝手にそう思っていました。
よく考えれば、定休日の店内、外から辛うじて見える薄暗いスペースで踊りの練習をするのはやりにくくはないのか。2階の事務所の上には内側へ返しが付いた高いフェンスに守られた屋上もあり、そこの方がよほど広々としているはずです。
それに、素人芸とは思えない、引き込まれるような風雅な舞いはやはり「門付け」とも思えましたが、防犯上、物品の並んだ店内へ関係者以外が侵入することはできないはずです。
当時、出入口にシャッター設置はなく自動ドアのロックのみ。侵入を知らせる人感センサーに反応があれば、非常ベルが鳴り響き、近所に住んでいるスーパーの従業員が警察に知らせるような体制でした。
では、あの翁たちは何者だったのか。
不気味というよりは摩訶不思議な光景でした。
未だに思い出すこともあるのですが、正体は不明のままです。
※(プライバシー保護のため地域・固有名詞などは伏せています)
【おまえ誰やねん】
元は個人で商店を営んでいた商売人たちが所場としていた市場。
何者かの放火で焼け落ち、各個人が資金を出し合って2階建てのスーパーマーケットとして再スタートした頃の話です。毎日営業ではなく、毎週木曜日が定休日でした。
その日、図書館へ本を返却するために自転車でスーパーの前を通ったとき、自動ドアの向こうは照明が落とされて非常灯のみでした。
しかし、店内の自動ドア付近に白い翁面を着けた3人が軽やかに舞っていたのです。
内1人は片手に小さめの金色の獅子頭を持って、少し奥で踊っています。
全員の頭に手ぬぐいが巻かれていて頭髪は見えませんでした。
3人の服装は麻袋に穴を開けて被り、腰を荒縄で縛った非常にシンプルな格好です。足元は藁草履。よく見ると4人目がいて、三味線を掻き鳴らしているのも見えました。
その時は「何か出し物の練習をしているのかな」ぐらいにしか思っていませんでした。
関西でも正月に「門付け(かどつけ)」が来ることがあり、人家の門口で音曲や芸を披露して金品を受け取る「門付け屋」の存在は知っていました。
「祝言人(ほがいびと)」を源流とした、神が祝福に訪れるという民俗信仰です。
それにしても、わざわざ定休日のスーパーマーケットで芸事の練習をするとは……。
首をかしげるしかなかったのですが、図書館へ本の返却をしなければなりません。思わずペダルを漕ぐのを止めていた自転車を再び動かし、速度を上げて立ち去りました。
従業員が出し物の練習をしていたのだろう。勝手にそう思っていました。
よく考えれば、定休日の店内、外から辛うじて見える薄暗いスペースで踊りの練習をするのはやりにくくはないのか。2階の事務所の上には内側へ返しが付いた高いフェンスに守られた屋上もあり、そこの方がよほど広々としているはずです。
それに、素人芸とは思えない、引き込まれるような風雅な舞いはやはり「門付け」とも思えましたが、防犯上、物品の並んだ店内へ関係者以外が侵入することはできないはずです。
当時、出入口にシャッター設置はなく自動ドアのロックのみ。侵入を知らせる人感センサーに反応があれば、非常ベルが鳴り響き、近所に住んでいるスーパーの従業員が警察に知らせるような体制でした。
では、あの翁たちは何者だったのか。
不気味というよりは摩訶不思議な光景でした。
未だに思い出すこともあるのですが、正体は不明のままです。
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