13 / 44
◆お墓参り◆
しおりを挟む
※2025年7月30日。夕方の部・アフタヌーン・ティーでの披露。
※(店主と家族の体験談です)
※(プライバシー保護のため地域・固有名詞などは伏せています)
数年前の冬。
夏の間茂っていた雑草を一掃すべく墓参りへ行きました。
車で四十分ほどのお寺に到着。
入口近くの水場にはバケツが用意されています。
掃除用にいくつか水を注ぎ、一族の墓まで運ぶのですが、これがかなりの重労働。
家族三人、繰り返しバケツリレーしながら掃除を終えました。
残ったバケツを店主が取りに行ったとき、柄杓を 掴んで前かがみになっている若いお坊さんの姿が見えました。
『すみません。片づけます!』
通路の端に置いていたとはいえ、通行の邪魔だと思い、お坊さんへ声をかけながら小走りで近づきました。
距離は二メートルぐらい。バケツの水を軽くかき混ぜているのか、柄杓とバケツがぶつかる音が聞こえてきます。
すぐそこまで接近したとき、目の前に立っているお坊さんが、背景へスッと
ゆっくり吸い込まれていきました。
消えていく途中の姿は、後ろの墓地の景色が透けて見えてあぜんとするしかありませんでした。
『誰と話してるの?』 母の声が聞こえてきます。
『さっき、お坊さんがバケツのところにいて……』
父は黙ってその様子を見ているだけです。
『誰もいないじゃない』
掃除中、墓地で他の人を見かけることはありませんでした。
『いや、本当に若いお坊さんがさっきまでそこに立ってた』
『見間違いでしょう?』
『夏用の白い紗を着てた』
今は冬。そして真昼間です。
三人とも沈黙していたとき、墓の通路へ強い熱風が吹いてきました。
母がひとり『ギャアアアアアア!!!』と絶叫したので、父も店主もビクッと肩をすくめ、顔を見合わせるしかありません。
母の大きい声の方が心臓に悪かったです。
※※※※※※
お墓での出来事を忘れかけていた時、母が問いかけてきました。
『あなた、おうさん(住職)の息子さんが亡くなったの知ってた?』
『……なんて? 誰が、どうしたの?』
『おうさんの息子さん、今年の夏、交通事故で亡くなってたって』
『いや、知らない。お寺の事情なんて分からない』
店主は檀家や宗旨など全く興味がないので、血族の眠る墓を誰が管理しているとか聞いた覚えがないです。
『墓参りする前に調べてた?』
『そんな手間なことして、何か得する?』
理由がはっきりせず、母の問いかけは無理があります。
話は平行線だったのですが、
その年の夏、住職の長男が事故〇していたこと、
檀家の人でも一部にしか知らされていなかったこと、
※(現に檀家であるはずの母は他の人から聞くまで知りませんでした)
住職の奥さんが未だ悲しみの中で臥せっていること。
『幽霊を見たとか。奥さんに言ってはだめよ』
『……幽霊って断定するの?』
店主が墓地で見た年若いお坊さんは、
やはり母の言うとおり幽霊なのか。真冬に吹いた熱風は何だったのか。
何ひとつ明かされてはいません。
※(店主と家族の体験談です)
※(プライバシー保護のため地域・固有名詞などは伏せています)
数年前の冬。
夏の間茂っていた雑草を一掃すべく墓参りへ行きました。
車で四十分ほどのお寺に到着。
入口近くの水場にはバケツが用意されています。
掃除用にいくつか水を注ぎ、一族の墓まで運ぶのですが、これがかなりの重労働。
家族三人、繰り返しバケツリレーしながら掃除を終えました。
残ったバケツを店主が取りに行ったとき、柄杓を 掴んで前かがみになっている若いお坊さんの姿が見えました。
『すみません。片づけます!』
通路の端に置いていたとはいえ、通行の邪魔だと思い、お坊さんへ声をかけながら小走りで近づきました。
距離は二メートルぐらい。バケツの水を軽くかき混ぜているのか、柄杓とバケツがぶつかる音が聞こえてきます。
すぐそこまで接近したとき、目の前に立っているお坊さんが、背景へスッと
ゆっくり吸い込まれていきました。
消えていく途中の姿は、後ろの墓地の景色が透けて見えてあぜんとするしかありませんでした。
『誰と話してるの?』 母の声が聞こえてきます。
『さっき、お坊さんがバケツのところにいて……』
父は黙ってその様子を見ているだけです。
『誰もいないじゃない』
掃除中、墓地で他の人を見かけることはありませんでした。
『いや、本当に若いお坊さんがさっきまでそこに立ってた』
『見間違いでしょう?』
『夏用の白い紗を着てた』
今は冬。そして真昼間です。
三人とも沈黙していたとき、墓の通路へ強い熱風が吹いてきました。
母がひとり『ギャアアアアアア!!!』と絶叫したので、父も店主もビクッと肩をすくめ、顔を見合わせるしかありません。
母の大きい声の方が心臓に悪かったです。
※※※※※※
お墓での出来事を忘れかけていた時、母が問いかけてきました。
『あなた、おうさん(住職)の息子さんが亡くなったの知ってた?』
『……なんて? 誰が、どうしたの?』
『おうさんの息子さん、今年の夏、交通事故で亡くなってたって』
『いや、知らない。お寺の事情なんて分からない』
店主は檀家や宗旨など全く興味がないので、血族の眠る墓を誰が管理しているとか聞いた覚えがないです。
『墓参りする前に調べてた?』
『そんな手間なことして、何か得する?』
理由がはっきりせず、母の問いかけは無理があります。
話は平行線だったのですが、
その年の夏、住職の長男が事故〇していたこと、
檀家の人でも一部にしか知らされていなかったこと、
※(現に檀家であるはずの母は他の人から聞くまで知りませんでした)
住職の奥さんが未だ悲しみの中で臥せっていること。
『幽霊を見たとか。奥さんに言ってはだめよ』
『……幽霊って断定するの?』
店主が墓地で見た年若いお坊さんは、
やはり母の言うとおり幽霊なのか。真冬に吹いた熱風は何だったのか。
何ひとつ明かされてはいません。
0
あなたにおすすめの小説
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
【電子書籍化】ホラー短編集・ある怖い話の記録~旧 2ch 洒落にならない怖い話風 現代ホラー~
榊シロ
ホラー
【1~4話で完結する、語り口調の短編ホラー集】
ジャパニーズホラー、じわ怖、身近にありそうな怖い話など。
八尺様 や リアルなど、2chの 傑作ホラー の雰囲気を目指しています。現在 150話 越え。
===
エブリスタ・小説家になろう・カクヨムに同時掲載中
【総文字数 800,000字 超え 文庫本 約8冊分 のボリュームです】
【怖さレベル】
★☆☆ 微ホラー・ほんのり程度
★★☆ ふつうに怖い話
★★★ 旧2ch 洒落怖くらいの話
※8/2 Kindleにて電子書籍化しました
『9/27 名称変更→旧:ある雑誌記者の記録』
意味がわかると怖い話
邪神 白猫
ホラー
【意味がわかると怖い話】解説付き
基本的には読めば誰でも分かるお話になっていますが、たまに激ムズが混ざっています。
※完結としますが、追加次第随時更新※
YouTubeにて、朗読始めました(*'ω'*)
お休み前や何かの作業のお供に、耳から読書はいかがですか?📕
https://youtube.com/@yuachanRio
百物語 厄災
嵐山ノキ
ホラー
怪談の百物語です。一話一話は長くありませんのでお好きなときにお読みください。渾身の仕掛けも盛り込んでおり、最後まで読むと驚くべき何かが提示されます。
小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる