実話怪談・短編集◆とほかみ◆

茶房の幽霊店主

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◆Kさんの受難◆

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※2025年8月11日のアフタヌーン・ティーでの披露。
※(プライバシー保護のため地域・固有名詞などは伏せています)
※(また、過去、実際に起こった事件の体験談のため一部フェイクを入れています)



【学校の中だけのルール】


Kさんと出会ったのは今から十二年前、Oさんの個展の会場でした。 
まさか、十年以上の友人になるとはまったく思ってもいませんでした。

両親ともに教育関係者で、一般企業に勤めたことはなく、今もずっと、公務員という職業に就いているのですが、この時は母親の影響で学校の教師をしていました。

勤務先の学校では常に女生徒の注目の的。
多くの手紙や、イベントごとのプレゼントを山のようにもらっていたそうで、 学校の同僚である教師からやっかみもありました。
住まいは実家を出て賃貸マンションで暮らしています。

住人はすべて公務員関係の人ばかり。一般企業の方は入居していません。
管理人と大家の方針で、身元や身分がしっかり分かっている≪公務員・お役所関係者≫しか住めないマンションです。

ここはエントランスのドアが常に施錠されているオートロック。
店主も副店主のJさんも訪れたことがありますが、閑静な住宅街で 比較的治安の良い立地のマンションでした。

ある年の夏。Kさんから電話がありました。

『店主、今日、自分の家に来ましたか?』
『Kさんの今お住まいのマンションですか?いいえ。今日は一日自宅でいましたし』

店主の自宅からKさんのマンションまで片道二時間ぐらいですので、会う際は必ず事前に連絡し合うのが常です 。

『……ちょっと聞きたいことがあるのですが』
『はい。何でしょう』

『マンションの自分の部屋のドアノブに、コンビニ菓子が入った袋が 掛けられていたんです。本当に店主ではないんですね?』
『え。お菓子ですか?いいえ。店主ではないですね』

Kさんは異常なぐらいモテる男性なので、学校の女生徒がこっそり訪れたと
してもおかしくはないのですが、教員の住所を生徒が知るのは少し難しいかもしれません。

『……自分の好物である銘柄のプリンが入っていまして、これを知っているのは店主とS条だけなんです』
『じゃあ、S条さんではないのですか?』
『S条にはさっき電話で確認したのですが、違うそうです』

しかも、このプリンだけはデパ地下の某店のものでした。
どんどん雲行きが怪しくなっていきます。

『Kさん、確かエントランスはオートロックですよね?』
『はい。でもエントランスの防犯カメラがここ数日故障していたんです。それを知らされているのはマンションの住人だけでした。管理人は速攻でカメラの交換をしたようですが、どうもカメラが作動していない時に来たようなのです』

では、マンションの住人でしょうか?

学校関係者の可能性もあるので、入手しやすいクレゾールや除草剤が混入されているかもしれない、との考えが、脳裏をよぎりました。

『……Kさん、そのお菓子、絶対に食べないでください。袋や内容物を触っているのは今のところKさんだけですか?』
『はい。さすがにこれは食べませんよ』

『では、警察に連絡してそのまま袋を持って行きましょう。お菓子を持ってきた者は、不法侵入しているわけですし』
『……そうですね』
『おそらくマンション住人がロックを解除したのを見計らい、“共連れ”で入ってきたのだと思います』

※※※※※

Kさんは部屋には入らず、ずっと自室のドアの前にいたようなので、その足で警察署へ向かいました。

しかし、不法侵入者のカメラ映像が残っておらず、実質、何かしらの被害を受けているわけではないので、被害届の受理ではなく、相談として事情聴取するに留まりました。

マンション周辺の巡回強化はしてくれるとのことでしたが、証拠品である袋やお菓子は、Kさん自身で捨てておくよう言われただけでした。女性の被害届であればもう少し話は違っていたかもしれません。

袋の件から何日かが経過し、Kさんはあることに気が付きました。
疲れて帰宅し、部屋の明かりを点けた瞬間、必ず家の電話が鳴っている。

Kさんは学校関係の連絡先を固定電話にしていたので、ここへ掛かってくるのは関係者だけなのです。プライベートでのやり取りはすべて携帯電話です。

緊急時のみ携帯へ連絡が入ることはあっても、当時、学校情報のデジタル化はかなり遅れていたため、FAXでやり取りすることもありました。(現在は違っていると思います)

夜の部屋で、固定電話の呼び出し音が響いています。
受話器を取った直後、電話はぷつりと切れてしまうのです。

試しに明かりを点けずにいたところ、電話は鳴りませんでした。
しかし、確実に、すぐ近くに電話をかけている者がいるはずです。

Kさんは、暗い中でなんとかベランダの窓までたどり着き、カーテンを少しだけ開けて外の様子を見ましたが、微かに照らされたアスファルトの一部が見えるだけです。

これは近日、電話の主がアクションをしてくるのではないか。
そう予感していました。

なぜかというと、学校の用務員である男性と臨時職員の女性が、とある人物が、Kさんに対してどういう思いを持っているか、胸の内を吐露していたのだそうで、

“Kさんが好きだ”
“Kさんが好きすぎてめちゃくちゃにしたくなる”
“あの人が悪い。こんな気持ちにさせるKさんが悪い”

※(他の内容は聞くに堪えないものだったので、割愛させていただきます)

『ありゃあ、きっと性癖が完全に歪んでる。猟奇的だよ』
『夜道を歩くときは気を付けて!あの人は正気ではない』

そして、この警告と予感は的中し、帰宅中のKさんの後ろをついてくる気配を初めて感じました。

残業をしてから帰宅ラッシュを過ぎた夜道には他の通行人はいません。
地元の住人もこの時間はすでに家の中です。

“やるしかない”

ここ数カ月でかなり距離を詰めてきていたので、Kさんは反撃の機会を窺っていたのです。

そのまま住宅地を進み、ブロック塀の角を曲がったと見せて、塀に体を沿わせて待ち伏せしました。

小走りに角を曲がってきた人物の手首を素早く掴み、街灯の明かりで陰影の濃いその顔を覗き込みました。

予想したとおり、同僚の教師でした。
いままでずっと一緒に教鞭を振るってきた者です。
仰天はしましたが、刺激をしないよう平静を保ちます。

手を振り払うでもなく、Kさんの手の上に自分の手を重ねてきましたが、110番通報しても間に合わない状態だったため、私人逮捕を行いました。

同僚はKさんといた時はまったく無抵抗でしたが、警官が駆け付けると突然激しい感情や行動を示し始め、

『この人が悪い!この人が!どうしようもない気持ちにさせておいて、ずっと気のないそぶり!〇したい!一緒に〇にたい!』

絶叫するその歪んだ形相に、Kさんは震え上がったのだとか。


※※※※※


その後、同僚は家宅捜索され、Kさんの使っていたボールペンや 着ていたシャツ、隠し撮りされた写真などが押収されました。

しかし、Kさんは自分のシャツが盗まれていたことに、まったく気が付いていなかったそうです。

この一件で、Kさんは教師を辞めました。
父親の勧めでお役所勤めにたどり着き、デスクワーク中心の部署へ転職しました。

Kさんと同僚は友人関係というわけではなく、本当に職場で顔を合わせているだけのひとでした。

会話をしたのも数えるほどで、社交辞令はあれど、親しい仲ではなかったそうです。

同僚は飲み会にも来ないひとだったようで、接点はそこまでなかったとのこと。 
普通に仕事をして日常を過ごしているだけで、とんでもない剛速球が投げつけられることもある。

そんなヒトコワでした。


※※※※※


※ここからは【Kさんの受難】の補足です。

学校関係者が起こした問題は、隠蔽される傾向があり、実際、この時起こった教員による付きまとい、ス〇ーカー事件が表にでてくることはありませんでした。

『そんなことがあったら、ニュースになり、新聞に載るだろう』

そう思われるでしょうが、地元の新聞にさえこの事件が取り上げられることはなかったのです。

代わりに、Kさんのいた学校ではない別の高等学校で、
『男性教師が、新任の女性教師にセ〇ハラ行為をした』
という件が、テレビのニュースとして放映されていたそうなのですが、

店主は上記のニュースをまったく知りませんでした。

『最近、教師同士によるこういった不祥事が多くて、恥ずかしい話ですよ』

と、Kさんから“セク〇ラ不祥事”の話を聞きましたが、それよりも、あなたの方がよっぽど危険な目に遭っているだろうに。

どれだけ、メンタル鋼なのか。


※※※※※


この後、Kさんの住むこのマンションで恐るべき「ある事件」が起こります。
人が死んでもニュースにも新聞にも載らず、社会には知らされない。

学校関係以外にも、特〇階級と呼ばれる者たちは、お金の力で現実を改ざんしているのをまざまざと見せつけれました。

そのお話はまた、別の機会で。
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