この人以外ありえない

鳳雛

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1. 放してあげない

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Side.依(より)

「ホント、いつ見てもいい眺め…」
「・・・」
うっとりしちゃう。
大好きな彼女の手足を縄で椅子に固定して目隠しをつけてあげると、アタシはいつも幸せな気持ちになれる。

口も塞いでやろうと思ったけど、だめ。
大好きな人の声が聞こえなくなっちゃうでしょ?
顔もさぁ…糸(いと)ちゃん綺麗な顔してるんだよねぇ。
だからホントは目隠しも邪魔なんだけど、
チョキ チョキ チョキ・・・
「っ」
「っふふ」
右耳にハサミの音を聞かせてあげると、びくって体を震わせて、
「フーっ」
「ぅあっ」
左耳に息を吹きかけてあげると、普段出さない可愛い声を聞かせてくれる。
ほら、こうやって遊べるでしょう?

寝てる時みたいに、糸ちゃんがずーっと目を閉じてくれていればアイマスクもいらないんだけど、
糸ちゃんがそんなことしてくれるはずもないし。
第一、睡眠薬でも使わなきゃこうやって縛ってあげられないし。
力ではこの子に敵わないんだから。

「ん~・・・」
そろそろ糸ちゃんの顔が見たい。
でも もうちょっと遊びたい。
視界を自由にさせちゃうと、可愛い反応が見られなくなる。
それじゃーあー・・・
「・・・目、くり抜いちゃう?」
このハサミで、ぐりぐり~って。
そうすれば 糸ちゃんの顔を見ながら遊べるでしょう?
暗闇で怯えるこの子の表情を存分に味わえる。
最高じゃない!!
き~めたっ。

チョキン

アタシはハサミでアイマスクを切った。

**********************************

Side.糸(いと)

チョキン

うあ、眩しっ。
あ、どうも。
糸(いと)って言います。
さて、今日の私はいつも通り、
「ふふっ」
「・・・」
・・・殺されかけてますね。
目の前でハサミを片手にニコニコしているのは恋人の依(より)。
でもまぁ、この状況からは誰がどう見てもラブラブなそれには見えないだろう。

朝に水を飲んで気を失って、それで気づいたら視界は真っ暗で腕は椅子にぐるぐる、手は後ろで両手首ぐるぐる、足は椅子の脚にぐるぐる。
しかも結構キツめに縛られてて、ちょっと動くだけで痛い。

依の後ろを見ると、テーブルの上にカッター2つハサミ3つナイフ2つに包丁一本。
わー、刃物祭りじゃん。
私今からアレ全部を体中に刺されんのかなぁ。

まぁこんなかんじなんだけど、あれだね。



なるべく明るくいきたいと思います。

「い~とちゃん。お・は・よっ」
「怖いよ」
そんなおはよう聞きたくないわ。
「それで、私の目ぇ取るの?」
「ううん。やっぱりやめたっ」
「なんで?」
「痛がる悲鳴も聞きたかったけど」
「悪趣味」
「アタシ、糸ちゃんの顔も目も大好きだから」
「そう」
「それにさぁ…」
キチキチキチ・・・
「いっ!…った」
依は素早くカッターに持ち替えて、私の左腕を切りつけてきた。
「悲鳴なら いくらでも聞けるからさぁ」
「っ・・・」
結構深くいった。
血、止まんない。
「ねぇ痛い?ぼーっとしてきた?」
「・・・」
そんなニコニコ笑顔で聞かれても…

「もっと楽しいことしようよ」
「楽しいことって?」
「映画観に行ったり、遊園地行ったり、買い物行ったり。
依ちゃんの行きたいとこ連れてってあげるから」
「っ!嬉しい…!」
あ、ほんとに嬉しそう。
「そうでしょ?だから―――」
「でも全然楽しそうじゃない」
「っ」
依がカッターを私の首に当ててきた。
刃をしまいなさい。
「いま動いたら切れるよ?」
言われなくてもわかるわ。
「映画館にも遊園地にもショッピングに行っても、どこに行っても人はいるでしょ?」
当たり前だろ。
「そんなとこ行ったら、いろんな人に糸ちゃん見られちゃうじゃん」
だから当たり前だろって。
「そしたら絶対話しかけられちゃうじゃん。
糸ちゃん、素敵なんだもん」
嫌味か。
自分は誰もが振り向くような美人だろうに。
「そして話しかけられたら、その人たちに笑顔振りまいて手ぇ振ってあげるでしょう?
糸ちゃん、優しいから」
そりゃそうするわ。
「いいんだよ?それで」
いいのかよ。
「アタシは糸ちゃんのそうゆうところが好きなんだから」
ありがとう。
「けどね、その優しさを受け取った奴らが勘違いして糸ちゃんを好きになっちゃったら、
すっごく嫌なんだよねぇ…」
「っ」
薄~く切られてますね、私の首。
「なんなの?ああゆう人たちって。
隣にアタシってゆう恋人がいるのにさぁ」
あー、鼻かゆい。
「それとも、糸ちゃん浮気したいの?」
なんでだよ。
「そんなわけないよねぇ…ねぇ、そうだよねぇ…?」
カッターがYシャツの襟まで降りてきた。
「何とか言ってよぉ…」
いや、今喋ったら首元にあるカッターで首切れちゃうから。
さっきお前もそう言ってただろ。
「っ、返事してってば!!」

バシッ

左の頬を平手で殴られた。
椅子に縛られてるから当然避けることができず、クリーンヒット。
理不尽だなぁ。
でもカッターは首から遠ざかったからそろそろ喋れる―――

チョキ チョキ・・・

「ってなに切ってんの」
依は裁断用のハサミに持ち替えて私のYシャツ切ってきた。
おい、この服新品なんだぞ。
もう血に染まっちゃったけど。
「服、邪魔でしょう?」
「邪魔なわけなくない?」
なんのために服を着てると思ってるんだ。

チョキ チョキ・・・

…あーあ。見えてきたよ。
依につけられてきた傷のコレクション。

チョキ チョキ・・・

ついに私は上だけ裸になった。
待って、いつの間にブラ剥ぎ取ったお前。
新品だった服は血に染まった上に、ジョッキジョキに切り刻まれてもうその原型はない。
「肌綺麗だよね、糸ちゃん。
アタシぃ、綺麗なものほど壊したくなっちゃうんだよねぇ」
「それ褒めてます?」
「もちろん。糸ちゃんの体、傷をつければつけるほどますます綺麗になってく…」
「???」
相変わらず言動が意味不明だ。
しばらく私の上半身を眺める依。

「はぁ、はぁ…素敵だよ、糸ちゃん…
糸ちゃんの目も鼻も耳も口も、歯も舌も息も声も、皮膚も内臓も血管も体液も性器も、それから―――」
「あ、もういいです」
「でもね?全部ぐっちゃぐちゃにしちゃったら、2度と元には戻らないものもあるでしょう?
このYシャツみたいに」
「うまいこと言わなくていい」
「それに、やっぱりその痛がる顔と声が、すごくいいんだよねぇ…」
「ぇ」

包丁 持ってんじゃん。

**********************************

「ぐっあぁ!!あっ!」
「っふふ、はは…!」
包丁で胸の真ん中を何度も切りつけられる。
心臓に一番近い場所。
ちなみに自慢じゃないが私の胸など男性のようなもの。つまり薄い。
そのせいか、痛みを鮮明に感じる。
しかも、切ってくるその一回一回が深い。
縛られている手足の痛みも忘れるほど。

「あぁあ!!がっあ!」

今度は傷つけた場所を一ヶ所ずつ抉って回ってる。

「っははは!」

依は楽しそうに笑ってる。


…可愛い。


それにしても、今日はやけに本気じゃん。
本気で私のこと殺そうとしてきてるじゃん。
「なんな…んがっ」
「余計なこと喋んないで」
口に包丁を突っ込まれた。
口の中が切れないように歯で包丁を押さえてるけど、同時に自分の血が口の中に流れ込む。
うえぇ~…

「あ、いいなぁ、アタシも舐めよっ」
「ぅぐ」
依が私の口から包丁を取って、その包丁…じゃなくて、私の胸を舐めてきた。

痛い痛い。
めちゃめちゃ痛い。

けど、なんかいいよね。
私にすがりついて胸に手を当ててる姿もいいし、舌を出して胸を舐めてるその顔も色っぽい。
「んんっ…」
「っ…」
…血と右手の包丁がなければ本当に最高。
「っはぁ…ごちそうさまっ。
糸ちゃんの血、濃くておいしかったよ」
「あっそ」
血の濃い薄いを舐めて判断できるのはお前だけだよ。

「…依ちゃん、そろそろ腕の縄ほどいて?」
「っ、嫌」
「ほら、はやく」
「嫌だ!放してあげない…」
「依、お願いっ」
「・・・」
優しい口調でお願いすると、依は大人しく包丁で腕の縄を切った。
いやハサミで切ってよ。
てかその包丁切れ味良すぎ…
「手も」
「嫌、糸ちゃん絶対逃げる」
「この足でどうやって逃げんだよ」
足に椅子つけたまま歩けないわ。
「・・・」
依はまた包丁で、私の後ろに立って縄を切った。
痛。
腕にも手首にもようやく血が巡ってきて、感覚が戻ってきた。
痕も酷いし、とにかく痛い。
この調子だと、足はもっと酷いだろうな。歩けるかな。

でも、これでいいね。
「依ちゃん」
「・・・」
「こっちおいで?」
私の背後で包丁を握ったまま黙り込む依ちゃん。
「…ほらっ」
「っ」
その包丁を持っている右手を引いて、私の正面に立たせる。
…できればそれ置いてほしいんだけど。

まぁいっか。

ギュッ

「っ!?」

これで依のこと抱きしめられるから。

「膝の上乗って」
「・・・」
耳元で囁くと素直に従う。
「・・・」
包丁で肩をなぞるのやめなさい。
しょうがないなぁ、この子は。

チュッ

「んっ//」

依の頬を包んで唇にキスした。
血の味する、私の血だけど。

「・・・//」
…なんだよ、顔赤くして下向いて。
さっきまでのオラオラはどこ行ったの。
「ほんと、可愛いね~依ちゃんは」
「っ//」
依は攻められると弱い。
もっ回キスしてあげよう。
「っ…」
「んっ、んぁ//」
ほらね。
舌を入れただけで―――

ゴトッ

っと、いきなり包丁落とすな。
危ないなぁ。
「っはぁ、はぁ…//」
「依、好きだよ」
「っ!//」

どんなに縛られても

どんなに傷つけられても

それでも私は キミが好き。

「いと、ちゃん…//
っもういいでしょ!降りるから放して!」
「嫌ですっ」ギューッ
「なっ…もう//」
絶対 放してあげないよ。
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