23 / 25
22.5 親の義務
しおりを挟む
Side. ???
自分の子どもを守ることは親の使命。
子どもがどんなに成長しても、それは変わらない。
親ならば、誰よりも自分の子どものことを深く知っているのが普通。
それは当然、子ども本人よりも。
そして、子どもの幸せを応援するのは 親の義務。
**************************
「帰国後には必ず診察を受けてくださいね」
通話を終了して 自分のスケジュールを確認する。
娘が旅行中に怪我をしたらしい。
痛かっただろうに、『もう治ったから大丈夫』と平気そうにしていた。
そのように振る舞う娘のことが、私はずっと心配だった。
あの子は見た目以上に繊細だ。
何かが起こっても平然としているが、自身の中ではかなり考えている。
それなのに、人に頼ろうとしない。
私に迷惑をかけないためか、小さい頃から隠しごとが多かった。
昔から聡明な子だったから、隠すのが上手だ。
でも、私には隠しても無駄。
親なのだから、子どもについて知らないことなどない。
でも、あの子はそのことに気づいてないみたいで、まだ私に隠しごとをしている。
そんなあの子が、依(より)さんのことだけは隠さずに紹介してくれた。
うれしかった。
まあ、あの子は彼女の本性について隠そうとしているみたいだけど。
別に隠さなくてもいいのに。
「お~い」
でも、私はあの子の親だから。
「せんせ~?」
あの子が幸せなら、それを応援するのが私の義務。
余計なことはしないで、見守るのみ。
そう、『見守る』だけ。
「あの~、透(とおる)先生?」
「ぁ」
いけない。
娘のことを考えていたから、目の前にいた患者をほったらかしにしていた。
「失礼」
「いえいえ!お医者さんは忙しいっすもんね!」
「・・・」
この患者は2週間に1回、定期検診に来ている。
よくしゃべるので、正直うっとうしい。
でも、この患者を治すことはあの子を治すことにつながるかもしれない。
そう期待しているから、誰も手を挙げない中、私が主治医に名乗り出たのだ。
「今回も目に見える傷や痣などはありません。臓器にも炎症などの異常はありません。
触診による骨の損傷の疑いもありません。来週は半年ぶりにレントゲンを撮ります」
診察の結果を報告する。
この患者は診察の工程が多すぎる。しかし、1つの工程でも無視すれば、この患者は死んでしまうかもしれない。
診察の後は毎回、私が考案している検査を受けてもらっている。
その検査結果を分析して、報告書を作って、次回の検査内容を考えて…と、
あまりにもやることが多すぎるので、この患者が来る日は他の仕事ができず、すぐに1日が終わる。
「それでは検査に入ります。今日は4階で脳波を調べるので、その際は口を閉じていてくださいね」
「わかりました!閉じてます!!」
「…しゃべるなということです」
日本語が通じない人間の相手をするのは疲れる。
「あなたの症状の原因は、身体ではなく脳にあるのではないかと考えています。そこで、身体に衝撃を与えた時の脳の働きを―――」
「自分、難しいことはわかんないっす!」
「・・・」
インフォームドコンセントは医者の義務だ。
後ろにあったホワイトボードを、この教員のくせに頭の悪い患者の前に持ってくる。
今日もまた、すぐに1日が終わるだろう。
「あなたがわかるまで説明するので集中して聞いてください、繋(けい)さん」
自分の子どもを守ることは親の使命。
子どもがどんなに成長しても、それは変わらない。
親ならば、誰よりも自分の子どものことを深く知っているのが普通。
それは当然、子ども本人よりも。
そして、子どもの幸せを応援するのは 親の義務。
**************************
「帰国後には必ず診察を受けてくださいね」
通話を終了して 自分のスケジュールを確認する。
娘が旅行中に怪我をしたらしい。
痛かっただろうに、『もう治ったから大丈夫』と平気そうにしていた。
そのように振る舞う娘のことが、私はずっと心配だった。
あの子は見た目以上に繊細だ。
何かが起こっても平然としているが、自身の中ではかなり考えている。
それなのに、人に頼ろうとしない。
私に迷惑をかけないためか、小さい頃から隠しごとが多かった。
昔から聡明な子だったから、隠すのが上手だ。
でも、私には隠しても無駄。
親なのだから、子どもについて知らないことなどない。
でも、あの子はそのことに気づいてないみたいで、まだ私に隠しごとをしている。
そんなあの子が、依(より)さんのことだけは隠さずに紹介してくれた。
うれしかった。
まあ、あの子は彼女の本性について隠そうとしているみたいだけど。
別に隠さなくてもいいのに。
「お~い」
でも、私はあの子の親だから。
「せんせ~?」
あの子が幸せなら、それを応援するのが私の義務。
余計なことはしないで、見守るのみ。
そう、『見守る』だけ。
「あの~、透(とおる)先生?」
「ぁ」
いけない。
娘のことを考えていたから、目の前にいた患者をほったらかしにしていた。
「失礼」
「いえいえ!お医者さんは忙しいっすもんね!」
「・・・」
この患者は2週間に1回、定期検診に来ている。
よくしゃべるので、正直うっとうしい。
でも、この患者を治すことはあの子を治すことにつながるかもしれない。
そう期待しているから、誰も手を挙げない中、私が主治医に名乗り出たのだ。
「今回も目に見える傷や痣などはありません。臓器にも炎症などの異常はありません。
触診による骨の損傷の疑いもありません。来週は半年ぶりにレントゲンを撮ります」
診察の結果を報告する。
この患者は診察の工程が多すぎる。しかし、1つの工程でも無視すれば、この患者は死んでしまうかもしれない。
診察の後は毎回、私が考案している検査を受けてもらっている。
その検査結果を分析して、報告書を作って、次回の検査内容を考えて…と、
あまりにもやることが多すぎるので、この患者が来る日は他の仕事ができず、すぐに1日が終わる。
「それでは検査に入ります。今日は4階で脳波を調べるので、その際は口を閉じていてくださいね」
「わかりました!閉じてます!!」
「…しゃべるなということです」
日本語が通じない人間の相手をするのは疲れる。
「あなたの症状の原因は、身体ではなく脳にあるのではないかと考えています。そこで、身体に衝撃を与えた時の脳の働きを―――」
「自分、難しいことはわかんないっす!」
「・・・」
インフォームドコンセントは医者の義務だ。
後ろにあったホワイトボードを、この教員のくせに頭の悪い患者の前に持ってくる。
今日もまた、すぐに1日が終わるだろう。
「あなたがわかるまで説明するので集中して聞いてください、繋(けい)さん」
0
あなたにおすすめの小説
放課後の約束と秘密 ~温もり重ねる二人の時間~
楠富 つかさ
恋愛
中学二年生の佑奈は、母子家庭で家事をこなしながら日々を過ごしていた。友達はいるが、特別に誰かと深く関わることはなく、学校と家を行き来するだけの平凡な毎日。そんな佑奈に、同じクラスの大波多佳子が積極的に距離を縮めてくる。
佳子は華やかで、成績も良く、家は裕福。けれど両親は海外赴任中で、一人暮らしをしている。人懐っこい笑顔の裏で、彼女が抱えているのは、誰にも言えない「寂しさ」だった。
「ねぇ、明日から私の部屋で勉強しない?」
放課後、二人は図書室ではなく、佳子の部屋で過ごすようになる。最初は勉強のためだったはずが、いつの間にか、それはただ一緒にいる時間になり、互いにとってかけがえのないものになっていく。
――けれど、佑奈は思う。
「私なんかが、佳子ちゃんの隣にいていいの?」
特別になりたい。でも、特別になるのが怖い。
放課後、少しずつ距離を縮める二人の、静かであたたかな日々の物語。
4/6以降、8/31の完結まで毎週日曜日更新です。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる