イデオロギーは悪なのか

ササキ・シゲロー

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イデオロギーは悪なのか〈19〉

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 「イデオロギー一般は不動である」とアルチュセールは言う。たとえそれぞれのイデオロギーはまさに、その時代に見合うその時代の所産だとしても、その「構造・機能・形式・様式」は、けっして「時代の要求にしたがって曲折することはない」のだ、と。
「…イデオロギーは変化するものの、その変化は目に見えぬものであって、そのイデオロギー上の形態はそのままなのだ。イデオロギーは動くものの、その動きは不動の動きであって、イデオロギーは元の位置に保たれ、その場も役割も元のままなのである。…」(※1)
 イデオロギーはその「様態の変化」によって、ある場合はイデオロギーになったり、別の場合にはイデオロギーではなくなったりするというものではない。イデオロギーはイデオロギーという「一般的な形式にもとづいて形成されている」のである限りは「イデオロギー上の形態はそのまま」であり、ゆえに「イデオロギーとして不動」であることができるのである。
 このような意味においてイデオロギーは、その「一般的な構造・機能・形式・様式」において不動であり、そしてそのような「一般的なもの」とは、たとえどの時代であれ、どの人間たちの生活環境においてであれ、それにもとづいて形成されたものを「一般的なものとして形成する」のである。
 たとえば「国家」がその一般的な形式において「個々の個別の国家」をそれぞれに形成することになるのと同様に、イデオロギーは、その一般的な形式において「個々の個別のイデオロギーを、それぞれのイデオロギーとして形成する」わけである。

 イデオロギーの構造と機能、あるいはイデオロギー的な関係やその主体であることなどについての考察は、アルチュセールよりももっと以前に、それどころかマルクスやヘーゲルなどよりもさらに以前に、いわゆる「社会契約の思想家たち」においておおよその部分が考えられていたのだと言える。
 たとえばルソーは、「…一般意志は、常に不動で変わらず、純粋である。…」(※2)と言う。そして次のような言葉に、アルチュセールがイデオロギーに対して施した数々の分析を、すでにそして明瞭に先取りしているのではないかと「想像する」のは、けっして難しいことではない。
「…党派という部分的結合が、政治体という大結合を犠牲にしてつくられると、これらの結合のおのおのの意志は、その構成員に対しては一般意志となり、国家に対しては特殊意志となる。…」(※3)
 繰り返すと、ルソーが「特殊意志は、その内部においては一般意志として機能する」というように言うとき、彼は意志=イデオロギーの機能・構造・形式そのものを言い当てているのだと言える。
 そしてルソーに限らず、その他のかつての「社会契約の思想家たち」もまた、個々の政治的イデオロギーの分析者だったのと同時に、その分析においては「イデオロギー一般の機能・構造・形式」そのものをかなりの部分でいち早く浮き彫りにしていたのだと見なすことができる。
 ではなぜ、彼らにはそれができたのか?
 それは、「その時代においても、イデオロギーはすでに常に不動で変わらず、純粋だったからだ」と、言えるのではないか?
(つづく)

◎引用・参照
(※1)アルチュセール「資本論を読む」 権・神戸訳
(※2)ルソー「社会契約論」 井上幸治訳
(※3)ルソー「社会契約論」 井上幸治訳

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