22 / 57
第二十二話
しおりを挟む
[第二十二話]
ガルアリンデ平原にやってきた俺、トールは速足で野を駆ける。
すでに時刻は二十時半を周っている。こんなところで時間を食いたくない。
「おかしいな…」
足を動かしながら、周囲の把握に努める。
十分くらい走っているが、まるで魔物と遭遇しない。
『フライ・スタンピード』で、平原の魔物が死に絶えているのか?
「キャンユーフライの貪欲さなら、それもありえるか?」
疑問に思いつつもさらに十分ほど走ると、辺りが湿気っぽくなってきた。
足を止めて、周りを見てみる。
平原で俺が作ったような水たまりよりも大きな池が、そこら中にいくつも寝そべっている。
植生が変わり、至るところから伸びる細長く黄緑色の草やキノコのようなもの。
あの、白いふわふわしたものはイッタンモメンだろうか。
「ここだな」
とうとう、アヤカシ湿原に来てしまったようだ。
自分で依頼を受けておいてなんだが、早く帰りたい。ガンケンさんに死亡フラグという呪縛をかけられたからな。
幸い、今受注している依頼の達成に必要な素材は全て、この湿原で集めることができる。
素早く採取ポイントを巡って、とっとと帰ろう。
「ここで、いいか…?」
そう思い、池の近くにある一番近くの採取ポイントに跪いた途端…。
…突然伸びてきた舌に、体を絡め取られる。
「まずいっ!」
そのまま、水の中に引きずり込まれた。
バシャアアッという大きな水音とともに、池にダイブする。
やつはこのまま俺を食うつもりだろうか。
この、大きなカエルの魔物は…。
「ゲコッ」
俺の胸中を察したかのように、小さく鳴くカエル。
この魔物の名前は、チョウチンガエル。
喉を大きく膨らませると提灯のように光る、大型のカエルの魔物だ。
「っ!…っ!」
暗い水の中、抵抗を試みるが上手くいかない。
やはり、純粋な力は魔物に遠く及ばないか。
「ゲロロンッ」
自分のテリトリーに招き入れて、勝った気でいるカエルの魔物。
拘束されたまま、強い力で水の中に沈められる。
確かに、NPCや戦闘向きではないプレイヤーならここで詰みだろう。
だが、残念。俺は水魔法使いだ。
「『アクア・ソード』!」
俺の腹からピンと張られた舌に向かって、魔法を唱える。
杖を素早く振り抜き、太くぶよぶよとしたピンク色の舌を両断した。
環境の恩恵を受けるのか、水中だと水属性魔法の威力が二倍になるという仕様が功を奏したな。
「―ッッッ!」
水中で声にならない声を上げ、チョウチンガエルが絶叫する。
その隙に、俺は池からの脱出を試みる。
必死に水を掻き、真上へ向かって泳いでいく。
「っぷはあっ」
頭を水面から出す。
やっと息ができた。岸はあそこだな。
今度はクロールをして、一番近い岸へ泳ぐ。
後ろをちらりと見ると、舌をちょん切られたカエルが迫ってきていた。
「ゲコゲコゲコオッッ!!!」
大激怒で水面を蹴る魔物を後ろ目に、無我夢中で水を掻く。
魔法のボーナスがあるとはいえ、水中では不利だ。
まずは地に足をつけて、万全の状態で迎え撃つ。
そのために、いったん逃げる。
もう少しだ!もう少しで陸に上がれる!
「ゲコーーッッッ!!」
だが、そう上手くはいかなかった。
一際大きな声とともに突き出された舌で、俺の体が再び拘束される。
「ゲコッ」
「くそっ」
あと少しだったのに。
赤紫色に滲んだ舌で持ち上げられ、身動き一つとれないまま岸に運ばれる俺。
捕食の場をセッティングし終えたチョウチンガエルは、大口を開けて俺を飲み込もうとする。
「…?」
まさか、カエルで死に戻りすることになるなんてな。
そう覚悟を決めて目を閉じるが、どうも炎熱が迸ったらしい。
目をつぶっていても眩しいほどの光、それと背中に燻る猛烈な熱。
俺の意識は、瞬時に途絶えるのだった。
※※※
え?
多分あの炎の攻撃がそうなんだろうが、もはや『キュウビノヨウコ』にやられたかどうかすら分からなかったぞ。
こんな死亡フラグの回収の仕方があるか。どうすればいいんだ、この気持ち。
所持金は半減して1050タメル。
時刻は二十一時、再戦を挑むかどうか微妙な時間だ。
非常に迷うところだが、行くか。
全く採取ができなかったし、何の成果も得られないで終わるのは嫌だ。
アヤカシ湿原の往復で四十分。二十二時にログアウトするとして、採取に二十分はかけられる。
「よしっ」
すぐに時間を計算した俺は気合いを入れ直し、再び湿原への道を進むのだった。
※※※
気まずいのでガンケンさんとは別の人に検問をしてもらい、アヤカシ湿原に舞い戻ってきた。
今度は慎重にいくぞ。カエルに引きずり込まれないようにな。
「『アクア・ボール』」
生育する条件が決まっているのか、採取ポイントはこぞって水辺にある。
なので、チョウチンガエルがいるかどうか確かめるため、水面にボールを放ってから採集を行うことにした。
ただ、今回は運が良かったようだ。
不意打ちされることなく、目的のアイテムを集められた。
〇アイテム:ナオレ草 効果:体力回復:微
体力を回復させる草。生のままだと効果が薄く、苦みが強い。
〇アイテム:アヤカシ葦 効果:なし
アヤカシ湿原の水辺に生える、丈が長く、丈夫な草。衣料の原料として用いられる。
〇アイテム:イッタンモメン 効果:なし
アヤカシ湿原に生る、平べったく細長い木綿。衣料の原料として用いられる。
〇アイテム:ネムレ草 効果:睡眠
眠らせる草。生のままだと効果が薄く、酸味が強い。
〇アイテム:ヨクナレ草 効果:体力回復:小
体力を回復させる草。生のままだと効果が薄く、苦みが強い。
〇アイテム:バクダンホオズキ 効果:爆発:微 火傷:微
火薬の成分が含まれているホオズキ。衝撃に弱く、ちょっとの刺激で爆発を起こす。湿気で不活性化する。
レア度の低い順から、採取できた素材をリストアップしてみた。
ナオレ草はいつもの通り。生で食べられなくはないけど、調薬で使った方がよさそうな青々しい葉っぱ。
アヤカシ葦はあれだ。俺のベースボールキャップに使われている細長い植物だ。
イッタンモメンはポロシャツの方だな。白くもこもこの木綿で、アヤカシ葦と併せて服飾の生地によく用いられる。
ネムレ草はピンク色の怪しげな草で、いかにも有害ですよという見た目をしていた。
多めに生えているようだし、依頼の分が余ったら睡眠薬も作ってみようか。
ヨクナレ草は珍しいのか、あまり獲れない。ナオレ草よりも上位のアイテムだからだろう。
だが、このまま順調にいけば依頼分の三十本は取れそうだ。
問題は最後。
バクダンホオズキが全然生えていない。
一体どういうことだ。十か所以上の採取ポイントを探って二個しか取れてないぞ。
いくらなんでも少なすぎる。
これじゃあ、依頼を達成するのが真夜中になりそうだ。
「ん、待てよ?」
いやな連想をしてしまった。
おそらく名前からして、『キュウビノヨウコ』は炎を使う。
怪談や妖怪に詳しくはないが、『狐火』なんて言葉があるくらいだからな。火となにかしらの関係があると思う。
そして魔物とは言え、やつも生き物だ。いくら強くても、何も食べず、飲まず、不老不死というわけではあるまい。
ということは…、『キュウビノヨウコ』の好物ってもしかして?
「きゅるるるああっっ」
音もなく背後からやってきたそれは、俺の腰を長い尾で打ちつけた。
「ぐわっ!」
激しい力が加わり、バランスを崩して前につんのめってしまう。
それに少し遅れて、目の前にウインドウが出現する。
『バクダンホオズキ×2が盗まれました』
流石キツネだな。好きなものは奪い取ってでも欲しいってか。
「こいよ」
突き飛ばされた勢いのまま前転し、体勢を整えて後ろを向いた俺は、赤サンゴの杖をちょいちょいと傾けて挑発する。
そこには、四つ足で立った状態で二メートル、尻尾一本の長さがその倍はあろうかという規格外の大きさをしたキツネの魔物、『キュウビノヨウコ』がいた。
白い頭部に白い胴、九つの尾も全て真っ白という外見。
まさしく妖艶。創作に出てくる九尾の狐と表現するにふさわしい。
「きゅるるるるるるるっっ」
妖の主はむしゃむしゃとホオズキをほおばっていたが、俺に気がつくと口の端を釣り上げて威嚇した。
ガンケンさんが注意を促すほどの魔物との対面。
すでに一度倒され、大事なバクダンホオズキも奪われた。
死に戻りの恨み、そして奪われた食べ物の恨み、晴らさでおくべきか。
※※※
えー、速攻で死に戻りしました。緩急をつけた九本の尾による連続攻撃で、成す術もありませんでした。
格が違いすぎた。火に対して水というのは相性が良いはずだが、レベル四の魔法使い初心者の俺が土俵に立てるわけがなかった。
やつを倒す、少なくとも撃退するには、レベリングと戦闘経験が必要だな。
所持金はさらに半分になって525タメル。アイテムはヨクナレ草とネムレ草をロストした。
せっかく集めたのに。まあ、死の代償がないとつまらないからいいか。
一方で、百本近く集めたナオレ草は無事だった。依頼分を差し引いても五十本近く残る計算だ。
ちなみに、『野外調薬キッド』と『試験管ホルダー』は特別なアイテム扱いらしく、死んでもロストしないと調薬ギルドのおじいさんから教わっていた。
「はあ…」
おさらい終わり。時刻は二十二時。
タイムリミットはやってきてしまったし、なにより疲れた。
今日はもうログアウトして、心と体を休めることにする。
そして明日は、ナオレ草の納品から始めようか。
「新しいフィールドは面白かったが、色々起きすぎたな」
いつか『キュウビノヨウコ』へのリベンジを果たすことを誓い、俺はゆっくりとメニュー画面を開くのだった。
ガルアリンデ平原にやってきた俺、トールは速足で野を駆ける。
すでに時刻は二十時半を周っている。こんなところで時間を食いたくない。
「おかしいな…」
足を動かしながら、周囲の把握に努める。
十分くらい走っているが、まるで魔物と遭遇しない。
『フライ・スタンピード』で、平原の魔物が死に絶えているのか?
「キャンユーフライの貪欲さなら、それもありえるか?」
疑問に思いつつもさらに十分ほど走ると、辺りが湿気っぽくなってきた。
足を止めて、周りを見てみる。
平原で俺が作ったような水たまりよりも大きな池が、そこら中にいくつも寝そべっている。
植生が変わり、至るところから伸びる細長く黄緑色の草やキノコのようなもの。
あの、白いふわふわしたものはイッタンモメンだろうか。
「ここだな」
とうとう、アヤカシ湿原に来てしまったようだ。
自分で依頼を受けておいてなんだが、早く帰りたい。ガンケンさんに死亡フラグという呪縛をかけられたからな。
幸い、今受注している依頼の達成に必要な素材は全て、この湿原で集めることができる。
素早く採取ポイントを巡って、とっとと帰ろう。
「ここで、いいか…?」
そう思い、池の近くにある一番近くの採取ポイントに跪いた途端…。
…突然伸びてきた舌に、体を絡め取られる。
「まずいっ!」
そのまま、水の中に引きずり込まれた。
バシャアアッという大きな水音とともに、池にダイブする。
やつはこのまま俺を食うつもりだろうか。
この、大きなカエルの魔物は…。
「ゲコッ」
俺の胸中を察したかのように、小さく鳴くカエル。
この魔物の名前は、チョウチンガエル。
喉を大きく膨らませると提灯のように光る、大型のカエルの魔物だ。
「っ!…っ!」
暗い水の中、抵抗を試みるが上手くいかない。
やはり、純粋な力は魔物に遠く及ばないか。
「ゲロロンッ」
自分のテリトリーに招き入れて、勝った気でいるカエルの魔物。
拘束されたまま、強い力で水の中に沈められる。
確かに、NPCや戦闘向きではないプレイヤーならここで詰みだろう。
だが、残念。俺は水魔法使いだ。
「『アクア・ソード』!」
俺の腹からピンと張られた舌に向かって、魔法を唱える。
杖を素早く振り抜き、太くぶよぶよとしたピンク色の舌を両断した。
環境の恩恵を受けるのか、水中だと水属性魔法の威力が二倍になるという仕様が功を奏したな。
「―ッッッ!」
水中で声にならない声を上げ、チョウチンガエルが絶叫する。
その隙に、俺は池からの脱出を試みる。
必死に水を掻き、真上へ向かって泳いでいく。
「っぷはあっ」
頭を水面から出す。
やっと息ができた。岸はあそこだな。
今度はクロールをして、一番近い岸へ泳ぐ。
後ろをちらりと見ると、舌をちょん切られたカエルが迫ってきていた。
「ゲコゲコゲコオッッ!!!」
大激怒で水面を蹴る魔物を後ろ目に、無我夢中で水を掻く。
魔法のボーナスがあるとはいえ、水中では不利だ。
まずは地に足をつけて、万全の状態で迎え撃つ。
そのために、いったん逃げる。
もう少しだ!もう少しで陸に上がれる!
「ゲコーーッッッ!!」
だが、そう上手くはいかなかった。
一際大きな声とともに突き出された舌で、俺の体が再び拘束される。
「ゲコッ」
「くそっ」
あと少しだったのに。
赤紫色に滲んだ舌で持ち上げられ、身動き一つとれないまま岸に運ばれる俺。
捕食の場をセッティングし終えたチョウチンガエルは、大口を開けて俺を飲み込もうとする。
「…?」
まさか、カエルで死に戻りすることになるなんてな。
そう覚悟を決めて目を閉じるが、どうも炎熱が迸ったらしい。
目をつぶっていても眩しいほどの光、それと背中に燻る猛烈な熱。
俺の意識は、瞬時に途絶えるのだった。
※※※
え?
多分あの炎の攻撃がそうなんだろうが、もはや『キュウビノヨウコ』にやられたかどうかすら分からなかったぞ。
こんな死亡フラグの回収の仕方があるか。どうすればいいんだ、この気持ち。
所持金は半減して1050タメル。
時刻は二十一時、再戦を挑むかどうか微妙な時間だ。
非常に迷うところだが、行くか。
全く採取ができなかったし、何の成果も得られないで終わるのは嫌だ。
アヤカシ湿原の往復で四十分。二十二時にログアウトするとして、採取に二十分はかけられる。
「よしっ」
すぐに時間を計算した俺は気合いを入れ直し、再び湿原への道を進むのだった。
※※※
気まずいのでガンケンさんとは別の人に検問をしてもらい、アヤカシ湿原に舞い戻ってきた。
今度は慎重にいくぞ。カエルに引きずり込まれないようにな。
「『アクア・ボール』」
生育する条件が決まっているのか、採取ポイントはこぞって水辺にある。
なので、チョウチンガエルがいるかどうか確かめるため、水面にボールを放ってから採集を行うことにした。
ただ、今回は運が良かったようだ。
不意打ちされることなく、目的のアイテムを集められた。
〇アイテム:ナオレ草 効果:体力回復:微
体力を回復させる草。生のままだと効果が薄く、苦みが強い。
〇アイテム:アヤカシ葦 効果:なし
アヤカシ湿原の水辺に生える、丈が長く、丈夫な草。衣料の原料として用いられる。
〇アイテム:イッタンモメン 効果:なし
アヤカシ湿原に生る、平べったく細長い木綿。衣料の原料として用いられる。
〇アイテム:ネムレ草 効果:睡眠
眠らせる草。生のままだと効果が薄く、酸味が強い。
〇アイテム:ヨクナレ草 効果:体力回復:小
体力を回復させる草。生のままだと効果が薄く、苦みが強い。
〇アイテム:バクダンホオズキ 効果:爆発:微 火傷:微
火薬の成分が含まれているホオズキ。衝撃に弱く、ちょっとの刺激で爆発を起こす。湿気で不活性化する。
レア度の低い順から、採取できた素材をリストアップしてみた。
ナオレ草はいつもの通り。生で食べられなくはないけど、調薬で使った方がよさそうな青々しい葉っぱ。
アヤカシ葦はあれだ。俺のベースボールキャップに使われている細長い植物だ。
イッタンモメンはポロシャツの方だな。白くもこもこの木綿で、アヤカシ葦と併せて服飾の生地によく用いられる。
ネムレ草はピンク色の怪しげな草で、いかにも有害ですよという見た目をしていた。
多めに生えているようだし、依頼の分が余ったら睡眠薬も作ってみようか。
ヨクナレ草は珍しいのか、あまり獲れない。ナオレ草よりも上位のアイテムだからだろう。
だが、このまま順調にいけば依頼分の三十本は取れそうだ。
問題は最後。
バクダンホオズキが全然生えていない。
一体どういうことだ。十か所以上の採取ポイントを探って二個しか取れてないぞ。
いくらなんでも少なすぎる。
これじゃあ、依頼を達成するのが真夜中になりそうだ。
「ん、待てよ?」
いやな連想をしてしまった。
おそらく名前からして、『キュウビノヨウコ』は炎を使う。
怪談や妖怪に詳しくはないが、『狐火』なんて言葉があるくらいだからな。火となにかしらの関係があると思う。
そして魔物とは言え、やつも生き物だ。いくら強くても、何も食べず、飲まず、不老不死というわけではあるまい。
ということは…、『キュウビノヨウコ』の好物ってもしかして?
「きゅるるるああっっ」
音もなく背後からやってきたそれは、俺の腰を長い尾で打ちつけた。
「ぐわっ!」
激しい力が加わり、バランスを崩して前につんのめってしまう。
それに少し遅れて、目の前にウインドウが出現する。
『バクダンホオズキ×2が盗まれました』
流石キツネだな。好きなものは奪い取ってでも欲しいってか。
「こいよ」
突き飛ばされた勢いのまま前転し、体勢を整えて後ろを向いた俺は、赤サンゴの杖をちょいちょいと傾けて挑発する。
そこには、四つ足で立った状態で二メートル、尻尾一本の長さがその倍はあろうかという規格外の大きさをしたキツネの魔物、『キュウビノヨウコ』がいた。
白い頭部に白い胴、九つの尾も全て真っ白という外見。
まさしく妖艶。創作に出てくる九尾の狐と表現するにふさわしい。
「きゅるるるるるるるっっ」
妖の主はむしゃむしゃとホオズキをほおばっていたが、俺に気がつくと口の端を釣り上げて威嚇した。
ガンケンさんが注意を促すほどの魔物との対面。
すでに一度倒され、大事なバクダンホオズキも奪われた。
死に戻りの恨み、そして奪われた食べ物の恨み、晴らさでおくべきか。
※※※
えー、速攻で死に戻りしました。緩急をつけた九本の尾による連続攻撃で、成す術もありませんでした。
格が違いすぎた。火に対して水というのは相性が良いはずだが、レベル四の魔法使い初心者の俺が土俵に立てるわけがなかった。
やつを倒す、少なくとも撃退するには、レベリングと戦闘経験が必要だな。
所持金はさらに半分になって525タメル。アイテムはヨクナレ草とネムレ草をロストした。
せっかく集めたのに。まあ、死の代償がないとつまらないからいいか。
一方で、百本近く集めたナオレ草は無事だった。依頼分を差し引いても五十本近く残る計算だ。
ちなみに、『野外調薬キッド』と『試験管ホルダー』は特別なアイテム扱いらしく、死んでもロストしないと調薬ギルドのおじいさんから教わっていた。
「はあ…」
おさらい終わり。時刻は二十二時。
タイムリミットはやってきてしまったし、なにより疲れた。
今日はもうログアウトして、心と体を休めることにする。
そして明日は、ナオレ草の納品から始めようか。
「新しいフィールドは面白かったが、色々起きすぎたな」
いつか『キュウビノヨウコ』へのリベンジを果たすことを誓い、俺はゆっくりとメニュー画面を開くのだった。
0
あなたにおすすめの小説
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―
山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。
Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。
最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!?
ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。
はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切)
1話約1000文字です
01章――バトル無し・下準備回
02章――冒険の始まり・死に続ける
03章――『超越者』・騎士の国へ
04章――森の守護獣・イベント参加
05章――ダンジョン・未知との遭遇
06章──仙人の街・帝国の進撃
07章──強さを求めて・錬金の王
08章──魔族の侵略・魔王との邂逅
09章──匠天の証明・眠る機械龍
10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女
11章──アンヤク・封じられし人形
12章──獣人の都・蔓延る闘争
13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者
14章──天の集い・北の果て
15章──刀の王様・眠れる妖精
16章──腕輪祭り・悪鬼騒動
17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕
18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王
19章──剋服の試練・ギルド問題
20章──五州騒動・迷宮イベント
21章──VS戦乙女・就職活動
22章──休日開放・家族冒険
23章──千■万■・■■の主(予定)
タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた
ひまなひと
ファンタジー
主人公がダンジョンに潜り、ステータスを強化し、強くなることを目指す物語である。
今の所、170話近くあります。
(修正していないものは1600です)
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる