37 / 103
第3章 学術都市
37話 旅の途中で
しおりを挟む
「いやいや、カルロがいてくれて助かったね」
「金って結構減らないもんだったんだな」
「二人の金の使い方がおかしいだけだろ。どんな生活してたんだよ」
カルロが呆れた顔でオレたちを見る。
二つ目の宿場で、あれこれ買い物してるときだ。
「相手が言ってきた金額そのままで買い物してどうすんのさ、値切れるところはしっかり値切らなきゃ」
「値切る、なんて考えたこともないからね」
なんだよその、信じられない、みたいな顔は。
「物の値段なんざ、見ることも気にすることもなかったからな」
「ネエちゃんは市長のとこにいたから金の心配なんて必要なかっただろうけど、オッサンはどこでどういう生活してたんだよ」
「どこで、てね」
「まあカルロから見たら、何もないようなとこの生まれではあるな」
村に行商が来ることはあったが、大抵は物々交換だった気がするし、そもそもそう言う場には村の代表のやつが行ってたから、まだガキだったオレは離れて眺めてただけだ。
「どんな田舎なんだよ、そこ」
「第一オレは、胸のコイツのせいでクソみたいな生活させられてたんでな。買い物なんざ、一度もしたことがないんだ」
カルロの顔が曇る。
「別に気にすることはねえよ、今は好きにやれてるんだからな」
「そうなれるように払った金の話をしたら、レオナルドにあれこれ言われたっけね」
「ケチの市長にあれこれって、ネエちゃんどれだけ払ったんだよ」
「確か相場の十倍、とか言ってたね」
軽い笑いとともに離すレーテの言葉を聞いて、カルロが変な声を出した。
「そういやそんな話したこと会ったな」
「あのときはゴーヴァンがレオナルドを殴らないかと、肝が少しばかり冷えたね」
「いや、十倍はおかしい。ネエちゃん、金銭感覚って無いだろ」
「それだけオレが価値があるってことだろ」
「いや、それは一番無い」
「んだとこのガキ!」
カルロはよく喋るやつだった。その内容はどうでもいい、他愛もない話しだ。どうでもいい話なんだが、話すってのは意外と気を楽にしてくれた。
あの街で買い手になったやつを何人も殴り飛ばしたこと、魔獣相手に戦わされてたこと全部話した。いや、義兄さんを手に掛けたこと以外は、だ。コイツは人から話を聞き出すのが上手いんだろう。
まだ話してないことがあるとしたら、レーテが人の血を飲むってことくらいだ。
「けどホント、どんだけ田舎なんだよオッサンの故郷って」
「その田舎って言葉がバカにされてるようなきがするのは、オレの気のせいか?」
「オッサンの考えすぎだろ」
「確か竜種の村だったかね」
そういやレーテには、故郷の話をしたことがあったんだっけか。
「おう、青い鱗、勇敢な戦士の村だ。魔獣相手でも怯まず立ち向かう、そんな戦士たちが大勢いるぞ」
「魔獣って、あのサラマンダーだっけ、みたいなやつだよな」
「燃えるトカゲなんざ、オレも始めてみたけどな。空を飛ぶようなやつでもない限り、剣一本で戦えて一人前だからな」
「その感覚がすでに、何か違っている気がするのは気のせいかね」
ガキの頃は義兄さんや、村の戦士たちの話す魔獣討伐の話が好きだった。自分もいつかそうなるんだと思ってたら、違う形で魔獣と戦うようになっていた。
「ゴーヴァンは胸の印を消したら、故郷に帰るのだったっけね」
「おう、そのつもり」
胸の印を消したら、故郷には帰るつもりだ。だが一つ問題があった。
帰り方がわからなかった。
地図ってやつを売ってる店があったから、村の場所がわからないか店のやつに聞いてみたんだが、竜種だけの村の場所は聞いたことがないと言われた。
それ以前に、オレと同じ色の鱗の竜種を見たことすら無いなんて言われる始末だ。
「でもおれも見たこと無いんだよな、オッサンと同じ色の竜種」
「そんな珍しいのか、青い鱗ってのは?」
「私も改めて思い出してみても、緑以外は黒を一度見たことがあるだけだからね。ゴーヴァンがそう思ってないだけで、世間では珍しいのかも知れないね」
帰りたくても帰り方がわからない、か。
「まあそれも、これがあればどうにかなるかも知れないね」
そう言って、腰に下げた小袋を叩く。
そういや、レオナルドの野郎に紹介状とやらを書いてもらったんだっけか。
「人間としては問題はあるけど、色々と伝手は効くからね。さっき見た地図も、学術都市で作られた物が大本らしいから、行けば何かしらわかるかも知れないね」
「てかさ、オッサンのいた村って他の町や村に、出稼ぎに出るやつといなかったのかよ」
「聞いたことはないし、村にいたのは今のカルロくらいの頃だからな。覚えてなかったり、忘れちまってることもあるだろうな」
「でも商人が来てたってことはさ、他の町や村から人が来てたってことだよな」
「だから知ってる人間がどこかに居る筈さね。焦らないことだね。私としても、ゴーヴァンとは長く付き合っていきたいからね」
オレはイヤなんだがな。
けど、コイツらとこうして話をしているのは楽しい。腹が立つことも、呆れることもあるが、誰かと話をしてるってのは悪いもんじゃない。
「金って結構減らないもんだったんだな」
「二人の金の使い方がおかしいだけだろ。どんな生活してたんだよ」
カルロが呆れた顔でオレたちを見る。
二つ目の宿場で、あれこれ買い物してるときだ。
「相手が言ってきた金額そのままで買い物してどうすんのさ、値切れるところはしっかり値切らなきゃ」
「値切る、なんて考えたこともないからね」
なんだよその、信じられない、みたいな顔は。
「物の値段なんざ、見ることも気にすることもなかったからな」
「ネエちゃんは市長のとこにいたから金の心配なんて必要なかっただろうけど、オッサンはどこでどういう生活してたんだよ」
「どこで、てね」
「まあカルロから見たら、何もないようなとこの生まれではあるな」
村に行商が来ることはあったが、大抵は物々交換だった気がするし、そもそもそう言う場には村の代表のやつが行ってたから、まだガキだったオレは離れて眺めてただけだ。
「どんな田舎なんだよ、そこ」
「第一オレは、胸のコイツのせいでクソみたいな生活させられてたんでな。買い物なんざ、一度もしたことがないんだ」
カルロの顔が曇る。
「別に気にすることはねえよ、今は好きにやれてるんだからな」
「そうなれるように払った金の話をしたら、レオナルドにあれこれ言われたっけね」
「ケチの市長にあれこれって、ネエちゃんどれだけ払ったんだよ」
「確か相場の十倍、とか言ってたね」
軽い笑いとともに離すレーテの言葉を聞いて、カルロが変な声を出した。
「そういやそんな話したこと会ったな」
「あのときはゴーヴァンがレオナルドを殴らないかと、肝が少しばかり冷えたね」
「いや、十倍はおかしい。ネエちゃん、金銭感覚って無いだろ」
「それだけオレが価値があるってことだろ」
「いや、それは一番無い」
「んだとこのガキ!」
カルロはよく喋るやつだった。その内容はどうでもいい、他愛もない話しだ。どうでもいい話なんだが、話すってのは意外と気を楽にしてくれた。
あの街で買い手になったやつを何人も殴り飛ばしたこと、魔獣相手に戦わされてたこと全部話した。いや、義兄さんを手に掛けたこと以外は、だ。コイツは人から話を聞き出すのが上手いんだろう。
まだ話してないことがあるとしたら、レーテが人の血を飲むってことくらいだ。
「けどホント、どんだけ田舎なんだよオッサンの故郷って」
「その田舎って言葉がバカにされてるようなきがするのは、オレの気のせいか?」
「オッサンの考えすぎだろ」
「確か竜種の村だったかね」
そういやレーテには、故郷の話をしたことがあったんだっけか。
「おう、青い鱗、勇敢な戦士の村だ。魔獣相手でも怯まず立ち向かう、そんな戦士たちが大勢いるぞ」
「魔獣って、あのサラマンダーだっけ、みたいなやつだよな」
「燃えるトカゲなんざ、オレも始めてみたけどな。空を飛ぶようなやつでもない限り、剣一本で戦えて一人前だからな」
「その感覚がすでに、何か違っている気がするのは気のせいかね」
ガキの頃は義兄さんや、村の戦士たちの話す魔獣討伐の話が好きだった。自分もいつかそうなるんだと思ってたら、違う形で魔獣と戦うようになっていた。
「ゴーヴァンは胸の印を消したら、故郷に帰るのだったっけね」
「おう、そのつもり」
胸の印を消したら、故郷には帰るつもりだ。だが一つ問題があった。
帰り方がわからなかった。
地図ってやつを売ってる店があったから、村の場所がわからないか店のやつに聞いてみたんだが、竜種だけの村の場所は聞いたことがないと言われた。
それ以前に、オレと同じ色の鱗の竜種を見たことすら無いなんて言われる始末だ。
「でもおれも見たこと無いんだよな、オッサンと同じ色の竜種」
「そんな珍しいのか、青い鱗ってのは?」
「私も改めて思い出してみても、緑以外は黒を一度見たことがあるだけだからね。ゴーヴァンがそう思ってないだけで、世間では珍しいのかも知れないね」
帰りたくても帰り方がわからない、か。
「まあそれも、これがあればどうにかなるかも知れないね」
そう言って、腰に下げた小袋を叩く。
そういや、レオナルドの野郎に紹介状とやらを書いてもらったんだっけか。
「人間としては問題はあるけど、色々と伝手は効くからね。さっき見た地図も、学術都市で作られた物が大本らしいから、行けば何かしらわかるかも知れないね」
「てかさ、オッサンのいた村って他の町や村に、出稼ぎに出るやつといなかったのかよ」
「聞いたことはないし、村にいたのは今のカルロくらいの頃だからな。覚えてなかったり、忘れちまってることもあるだろうな」
「でも商人が来てたってことはさ、他の町や村から人が来てたってことだよな」
「だから知ってる人間がどこかに居る筈さね。焦らないことだね。私としても、ゴーヴァンとは長く付き合っていきたいからね」
オレはイヤなんだがな。
けど、コイツらとこうして話をしているのは楽しい。腹が立つことも、呆れることもあるが、誰かと話をしてるってのは悪いもんじゃない。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
[完結]7回も人生やってたら無双になるって
紅月
恋愛
「またですか」
アリッサは望まないのに7回目の人生の巻き戻りにため息を吐いた。
驚く事に今までの人生で身に付けた技術、知識はそのままだから有能だけど、いつ巻き戻るか分からないから結婚とかはすっかり諦めていた。
だけど今回は違う。
強力な仲間が居る。
アリッサは今度こそ自分の人生をまっとうしようと前を向く事にした。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる