その口吻(くちづけ)は毒より甘く

門音日月

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第4章 青い竜の村

86話 ひみつのともだち

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 おかあさんにも、おじさん、ううん、ゴーヴァンおにいちゃんやカルロおにいちゃんにも、ヒミツのともだちがいる。
「やあアズ、お早う」
 おかあさんが、朝おきるより早く、まだ人がほとんどいない外に出ると、ともだちがまっている。
「おじさん!」
 しろいウロコのおじさん。
 みんなにヒミツのともだち。
「今日はなにするの?」
「最初に今まで教えたことをやってみようか」
「うん」
 おじさんがくれた光る石を手にもって、おしえてもらった文字をかく。
「燃やせ火球」
 そらへ真っ赤な火の玉がとんでいく。
 たかいところまでとんで、はじけてきえる。
 こんどはべつの文字をかく。
「流し喰らえ水流」
 水がヘビみたいに、ぼくのまわりをクルクルまわる。
 まわりながら、ぼくのずっと上にあがっていって、はじけて雨みたいになる。
「アズは魔術の才能があるのかな。教えて短いのにとても上手だ」
「えへへ」
 剣の稽古でゴーヴァンおにいちゃんにほめてもらうのも好きだけど、白いおじちゃんにほめてもらうのも好き。
「じゃあ今日は、新しい魔術を教えようかな」
「本当? やった!」
「いいかい、今から書く文字をよく覚えるんだよ」
 おじさんがかく文字をじっと見て、文字のかたちをおぼえる。
「走れ雷電」
 おじさんが文字をかくと、カミナリがおじさんの前からじめんにおちる。
「さあ、やってごらん」
 おじさんがかいたのと、同じ文字をかく。
「走れ雷電」
 ぼくのまえから、おじさんよりも小さなカミナリが出る。
「やった、できたよ」
「本当にアズは魔術の才能があるな。
 初めての呪文を、どれも一回で成功させてる」
 おじさんが、ぼくのあたまをなでてくれる。
 うれしくて、声が出そうになるけどガマンする。
 だれかにみつかったら、おじさんが、もう来てくれなくなるから。
「アズなら、もっと難しい魔術もすぐに使えるようになるね」
「ほんとう? どんなことができるの?」
「アズがやりたいと思うことは、何だって出きるさ。
 覚えなくちゃいけないことは沢山あるけど、覚えれば覚えただけ、魔術は出きることが増えるんだよ」
 すごい!
「じゃあ、ゴーヴァンおにいちゃんよりつよくなったり、空のお星さまをみんなあつめたりできるの?」
「ああ、アズがやりたいことは何だって出来るさ」
 うれしいな、そうなりたいな。
 なんだってできるなら、なにからやろうかな。
 すごく、すっごくたのしみだな。
 そんなすごいことをおしえてくれる、そんなおじさんが、大好き。
 つよいゴーヴァンおにいちゃんと同じくらい、大好き!
 だから……
「ぼく、おとうさんより、おじさんのほうが好きだな」
「お父さんと喧嘩でもしたのかい?」
「おとうさん、すっごくよわそうだった。
 おかあさんも、ゴーヴァンおにいちゃんも、おとうさんはつよいって言ってたのに、ぼくのこと、だっこできなかった」
 きのうのよるのこと、おもいだす。
 おかあさんも、ゴーヴァンおにいちゃんも、カルロおにいちゃんだって、ぼくのことだっこして、もちあげてくれる。
 でも、おとうさんはできなかった。
「そうか、皆に嘘を吐かれて悲しかったんだ」
 おじさんにそういわれて、少しかんがえる。
 うそ? みんな? ぼくにウソ言ってたの?
 やだな、そんなの。
「ああ、アズ。そんな悲しい顔はしないでおくれ。
 僕まで見ていて悲しくなってしまう」
 おじさんが、ぼくのあたまをなでてくれる。
「じゃあアズには、特別な魔法をおしえてあげよう」
「魔法? 魔術じゃなくて?」
「そう、魔法。昔々からある、誰だって使える不思議な力のある言葉だよ」
 ふしぎな力? ぼくでもつかえるの?
「ははは、嬉しそうな顔になったね。
 僕はアズはそう言う顔の方が好きだな」
 おじさんがわらってくれる。
「じゃあ、特別な魔法を教えてあげる。
 一回しか言わないから、ちゃんと覚えるんだよ」
 いっかい!? わすれないようにしないと!
「いいかい、お父さんと嫌なことがあったら、こう言うんだ。
 お前なんてお父さんじゃない。お前なんていらない、てね」
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