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第4章 青い竜の村
98話 最後の抵抗
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義兄さんに抱きついて泣くアズを見て、胸の中の重い何かが落ちていった気がした。
「アズ君は無事みたいだな」
「ああ、兄さんもな。オメェは大丈夫なのか?」
「大丈夫な訳、ないだろ……っ。骨もやられたぞ、これは」
「立て……そうにねえな。ほら」
足元が少しフラフラするが、立っていられないほどじゃないし、ダネルに肩を貸すくらい出来るだろう。
ダネルの手を掴んで立たせようとすると、オレの手を止めて、いつも肩にかけているカバンから瓶を取り出した。
「ちょっと……待て。これを飲ませてくれ」
「なんだそりゃ?」
「痛み止めだ。効果が強すぎて感覚が少し鈍くなるが今は丁度いい」
瓶を口に当て、軽く傾ける。
今度はダネルから手を伸ばしてきたので、その手を掴んで立たせる。
腰を掴んで支えると、ダネルもオレの腰を掴んで片足で立つ。
傷のある足を引きずってはいるが、立てないってわけじゃなさそうだ。
義兄さんたちの方へ行こう。ユリウスはその後でいい。
「結構きくんだな、その薬」
「魔術で作った薬は即効性が高いからな。その代わり飲みすぎると逆に調子が悪くなったりもする」
へえ、そういや前に薬飲んだときもすぐにきいたっけ……ん? 飲みすぎると逆に調子が悪くなる、て言わなかったか?
「安心しろ僕が以前飲ませた薬は副効果の弱い薬だ。お前くらいの図体なら何てこともないだろ。
教授がいつも飲ませてだ薬は栄養剤に近い。飲みすぎた所で鼻血が出る程度だしその時点で普通は飲むのを止める」
「イヤ、そう言ういことは飲む前に言えよ!
つうかルクレツィアの奴、何の注意もなく飲めって言ってたぞ!」
多分オレ、鼻血出ても飲むぞ。
「なら覚えておけ。薬はとにかく飲めばいいっていうものじゃない。
薬師なり治癒術師の言うことを守って飲め。
後、ルクレツィア教授の言うことはあまり信用するな」
次から気をつけよう。
「義兄さん、アズ。大丈夫か」
「ああ、ゴーヴァン。オレもアズも無事だ」
全身キズだらけになった義兄さんが、アズを抱きしめたままオレたちの方を見る。
「アズ、オメェのお父さん、強いだろ?」
義兄さんの胸に顔を埋めてしゃくりながら、アズが何度も頷く。
「ゴーヴァン、そっちは大丈夫か」
「ああ、オレはめまいがするくらいだ。
でもダネルが足、やられた」
義兄さんがダネルの足に目をやる。
「相当傷が深そうだな、血止めだけじゃなく、ちゃんと治療をした方がいい」
「僕も早くそうしたいです。けれどその前に」
ダネルが首を動かす。
「ユリウスを逃げられないように縛り上げるのが先です」
ダネルの見ている先には、手首から先がなくなった腕をもう片方の手で握りしめてるユリウスがいた。
「畜生、畜生チクショウ! どうして僕がこんな目に合わなくちゃならない。どうして僕がこんな事にならなくちゃならない!」
「アズを攫ったからだろうが。大人しく姿消して、二度とオレたちの前に出てこなけりゃ良かっただけだろうが」
「煩いウルサイうるさいうるさい!
醜く老いる恐怖も死の恐怖も知らない糞餓鬼が! 」
年とることが醜い? 何いってんだコイツ。
「年とって死ねるなんざ最高だろうが。生きるためにやることやって、生きて生きて生き抜いて死ぬんだ、戦って死ぬのと同じくらい最高の死に方じゃねえか」
「黙れっ!
お前達が来たということはルクレツィアの差金か。と言うことは、リーヴィオやアルバーノ、フェルディナンドも絡んでるということか!
クソっ! クソっ! 僕がこんな見にくく老いるまで時間を賭けてきたことをあの女ぁあぁぁっ!」
なんだなんだ、ユリウスの様子おかしくねえか?
「もう議会の連中なんて当てに出来ない。それどころか全員敵じゃないか! もう少しで議席を手に入れることが出来たのに、また玉座に戻ることだって出来たのに! ああああ、あああああああああああああああああ!!」
ユリウスがオレを睨む。
生まれて初めて見る目だった。
闘技場で斬ってきた奴らも、魔獣も、あんな目でオレを見てきたことはなかった。
「お前がぁ! お前が最初にその男を手に入れようとしたのを邪魔したからだ! その子供を手に入れるのを邪魔したからだ! お前が、お前がいなければ全部、全部上手く行ったんだ!」
赤ん坊が泣くみたいな声を上げながら、ユリウスは何度も何度も頭を振るった。
「もういい、もう全部無駄になった! でもお前は! お前だけは確実に殺すっ!」
ユリウスの視線が虫モドキに向かう。
嫌な予感が体中を走る。
「エムク・リオ・フィア・ボルマ! 炸裂しろ人形おおぉぉおっ!」
矢を向けられているような感覚。
その方向を見ると、虫モドキの体中のキラキラの先端が、矢を向けているようにオレたちの方を向いていた。
義兄さんと視線が合う。
ああ、そうするっきゃねえよな。
オレはダネルを、義兄さんはアズを抱き込み、虫モドキに背を向ける。
爆発する音が聞こえたと思ったら、背中じゅうに痛みが、熱が襲いかかってきた。
「が……っ!」
口の中がサビ臭い味で一杯になった。
「ゴーヴァン、おまえ、なに……」
「だね、る……だいじょうぶ、だな」
うん、ダネルは大丈夫そうだな。
ヤベェ、立ってらんねえや。
「あはっ、ははははははははゃははは!!
ザマアミロ! そんなになって生きていられるものか!
そいつらは死ぬんだ、お前らのせいで!」
なに言ってやがるんだ、ユリウスのヤツ。
ダメだ、体、起こしてらんねえ。
「オイ! 大丈夫か!」
ダネルのヤツ、なに、そんな顔変えてるんだ?
ああ、倒れたから心配してくれてんのか。
やっぱオメェ、優しいんだな。
「おとうさん! おとうさんっ!」
義兄さん、倒れてる? そうか、アズを守ったんだもんな。
義兄さんの背中じゅうに、キラキラが突き刺さってるのが見えた。
多分、オレも同じなんだろう。
背中が燃えてるみたいに熱い、なのにすごく、寒い。
「その傷の位置なら肺は確実に逝ってるよねぇっ!
下手したら心臓もぉっ!
ひゃは、はひゃひゃひゃはひゃひゃっ!」
ウルセエな、ユリウスのヤツ。
気分悪くなる笑いしてんじゃねえぞ。
おかしいな、声が出ねえ。いきも、できねえ。
「どうする、どうすればいい。僕のもってる薬じゃこんな傷は……」
「おとうさん! ねえ、おとうさん! おきてよ、おきてよ!」
だいじょうぶだって、オレもにいさんも、すぐにおきて、ユリウスにやりかえしてやる。
「僕に殆ど魔力は残ってないしこの方法じゃ……いや。でも一人分だけでも魔力があれば」
「おどうざんおねがい! なにがじゃべってよ! ねえ! ねえ!」
あれ、おかしいな……けっこうヒデえケガしてんのに、なんか、いたくなくなってきたな。
「泣いてるんじゃない! 君が家族を助けられるかもしれないんだ!」
「たすけ、られるの? おとうさんたすけられるの!? ゴーヴァンおにいちゃん、たすけられるの!?」
ダネル、いみもなくアズをしかるんじゃねえ。
「いいか僕と同じ魔術文字を書くんだ。一字一句間違えるんじゃないぞ」
「うん、うん」
なんだろ、めのまえ、くらくなってきた
おかしいな、いたくない、あつくない、さむくない。
「発動宣言続けて! 咲き誇れ生命!」
「咲き誇れ生命っ!」
「アズ君は無事みたいだな」
「ああ、兄さんもな。オメェは大丈夫なのか?」
「大丈夫な訳、ないだろ……っ。骨もやられたぞ、これは」
「立て……そうにねえな。ほら」
足元が少しフラフラするが、立っていられないほどじゃないし、ダネルに肩を貸すくらい出来るだろう。
ダネルの手を掴んで立たせようとすると、オレの手を止めて、いつも肩にかけているカバンから瓶を取り出した。
「ちょっと……待て。これを飲ませてくれ」
「なんだそりゃ?」
「痛み止めだ。効果が強すぎて感覚が少し鈍くなるが今は丁度いい」
瓶を口に当て、軽く傾ける。
今度はダネルから手を伸ばしてきたので、その手を掴んで立たせる。
腰を掴んで支えると、ダネルもオレの腰を掴んで片足で立つ。
傷のある足を引きずってはいるが、立てないってわけじゃなさそうだ。
義兄さんたちの方へ行こう。ユリウスはその後でいい。
「結構きくんだな、その薬」
「魔術で作った薬は即効性が高いからな。その代わり飲みすぎると逆に調子が悪くなったりもする」
へえ、そういや前に薬飲んだときもすぐにきいたっけ……ん? 飲みすぎると逆に調子が悪くなる、て言わなかったか?
「安心しろ僕が以前飲ませた薬は副効果の弱い薬だ。お前くらいの図体なら何てこともないだろ。
教授がいつも飲ませてだ薬は栄養剤に近い。飲みすぎた所で鼻血が出る程度だしその時点で普通は飲むのを止める」
「イヤ、そう言ういことは飲む前に言えよ!
つうかルクレツィアの奴、何の注意もなく飲めって言ってたぞ!」
多分オレ、鼻血出ても飲むぞ。
「なら覚えておけ。薬はとにかく飲めばいいっていうものじゃない。
薬師なり治癒術師の言うことを守って飲め。
後、ルクレツィア教授の言うことはあまり信用するな」
次から気をつけよう。
「義兄さん、アズ。大丈夫か」
「ああ、ゴーヴァン。オレもアズも無事だ」
全身キズだらけになった義兄さんが、アズを抱きしめたままオレたちの方を見る。
「アズ、オメェのお父さん、強いだろ?」
義兄さんの胸に顔を埋めてしゃくりながら、アズが何度も頷く。
「ゴーヴァン、そっちは大丈夫か」
「ああ、オレはめまいがするくらいだ。
でもダネルが足、やられた」
義兄さんがダネルの足に目をやる。
「相当傷が深そうだな、血止めだけじゃなく、ちゃんと治療をした方がいい」
「僕も早くそうしたいです。けれどその前に」
ダネルが首を動かす。
「ユリウスを逃げられないように縛り上げるのが先です」
ダネルの見ている先には、手首から先がなくなった腕をもう片方の手で握りしめてるユリウスがいた。
「畜生、畜生チクショウ! どうして僕がこんな目に合わなくちゃならない。どうして僕がこんな事にならなくちゃならない!」
「アズを攫ったからだろうが。大人しく姿消して、二度とオレたちの前に出てこなけりゃ良かっただけだろうが」
「煩いウルサイうるさいうるさい!
醜く老いる恐怖も死の恐怖も知らない糞餓鬼が! 」
年とることが醜い? 何いってんだコイツ。
「年とって死ねるなんざ最高だろうが。生きるためにやることやって、生きて生きて生き抜いて死ぬんだ、戦って死ぬのと同じくらい最高の死に方じゃねえか」
「黙れっ!
お前達が来たということはルクレツィアの差金か。と言うことは、リーヴィオやアルバーノ、フェルディナンドも絡んでるということか!
クソっ! クソっ! 僕がこんな見にくく老いるまで時間を賭けてきたことをあの女ぁあぁぁっ!」
なんだなんだ、ユリウスの様子おかしくねえか?
「もう議会の連中なんて当てに出来ない。それどころか全員敵じゃないか! もう少しで議席を手に入れることが出来たのに、また玉座に戻ることだって出来たのに! ああああ、あああああああああああああああああ!!」
ユリウスがオレを睨む。
生まれて初めて見る目だった。
闘技場で斬ってきた奴らも、魔獣も、あんな目でオレを見てきたことはなかった。
「お前がぁ! お前が最初にその男を手に入れようとしたのを邪魔したからだ! その子供を手に入れるのを邪魔したからだ! お前が、お前がいなければ全部、全部上手く行ったんだ!」
赤ん坊が泣くみたいな声を上げながら、ユリウスは何度も何度も頭を振るった。
「もういい、もう全部無駄になった! でもお前は! お前だけは確実に殺すっ!」
ユリウスの視線が虫モドキに向かう。
嫌な予感が体中を走る。
「エムク・リオ・フィア・ボルマ! 炸裂しろ人形おおぉぉおっ!」
矢を向けられているような感覚。
その方向を見ると、虫モドキの体中のキラキラの先端が、矢を向けているようにオレたちの方を向いていた。
義兄さんと視線が合う。
ああ、そうするっきゃねえよな。
オレはダネルを、義兄さんはアズを抱き込み、虫モドキに背を向ける。
爆発する音が聞こえたと思ったら、背中じゅうに痛みが、熱が襲いかかってきた。
「が……っ!」
口の中がサビ臭い味で一杯になった。
「ゴーヴァン、おまえ、なに……」
「だね、る……だいじょうぶ、だな」
うん、ダネルは大丈夫そうだな。
ヤベェ、立ってらんねえや。
「あはっ、ははははははははゃははは!!
ザマアミロ! そんなになって生きていられるものか!
そいつらは死ぬんだ、お前らのせいで!」
なに言ってやがるんだ、ユリウスのヤツ。
ダメだ、体、起こしてらんねえ。
「オイ! 大丈夫か!」
ダネルのヤツ、なに、そんな顔変えてるんだ?
ああ、倒れたから心配してくれてんのか。
やっぱオメェ、優しいんだな。
「おとうさん! おとうさんっ!」
義兄さん、倒れてる? そうか、アズを守ったんだもんな。
義兄さんの背中じゅうに、キラキラが突き刺さってるのが見えた。
多分、オレも同じなんだろう。
背中が燃えてるみたいに熱い、なのにすごく、寒い。
「その傷の位置なら肺は確実に逝ってるよねぇっ!
下手したら心臓もぉっ!
ひゃは、はひゃひゃひゃはひゃひゃっ!」
ウルセエな、ユリウスのヤツ。
気分悪くなる笑いしてんじゃねえぞ。
おかしいな、声が出ねえ。いきも、できねえ。
「どうする、どうすればいい。僕のもってる薬じゃこんな傷は……」
「おとうさん! ねえ、おとうさん! おきてよ、おきてよ!」
だいじょうぶだって、オレもにいさんも、すぐにおきて、ユリウスにやりかえしてやる。
「僕に殆ど魔力は残ってないしこの方法じゃ……いや。でも一人分だけでも魔力があれば」
「おどうざんおねがい! なにがじゃべってよ! ねえ! ねえ!」
あれ、おかしいな……けっこうヒデえケガしてんのに、なんか、いたくなくなってきたな。
「泣いてるんじゃない! 君が家族を助けられるかもしれないんだ!」
「たすけ、られるの? おとうさんたすけられるの!? ゴーヴァンおにいちゃん、たすけられるの!?」
ダネル、いみもなくアズをしかるんじゃねえ。
「いいか僕と同じ魔術文字を書くんだ。一字一句間違えるんじゃないぞ」
「うん、うん」
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