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第13話 演習戦1
「それにしても不思議だよねー」
「ピーッ」
エポカと戯れながら、ササPが呟いた。
時刻はお昼。
程良い日差しとそよ風を受けながら、俺とササPは中庭でランチをしていた。
今日のリトの手作り弁当のメニューは、生前の世界で言うナポリタンとサラダだ。ササPとお昼を一緒に食べると伝えてからは、いつも二人分を用意してくれる。
以前は恒例だった、カロルとササPのお昼の鬼ごっこは少し前に無くなった。
ササPがカロルと一対一の勝負をして、コテンパンにのしてから、まだ自分にササP相手は早いと判断したのか、彼は来なくなった。
うん。屋根の上からの眺めは良かったが、やっぱりご飯は地上でゆっくり食べる方がいいな。
「ピーッ」
俺の心情に同意した訳でもないだろうが、エポカが嬉しそうに一声鳴いた。
エポカの存在が、ノーティオ魔法学園の教職員や生徒の知るところとなってから、早一週間。
当然、賛否はあった。寧ろ最初は否の空気の方が強かった。
しかしノクスの熱心な説得と、実質次の国王となるディエスの容認で、なんとか学園内を自由に飛び回れるくらいにはなっている。
一週間前と違うのは、エポカの翼の付け根につけられた、魔石付きの青いリボンだ。許可されたとはいえ、魔物の飼育を快く思わない教職員や生徒も未だ少なくない。
青いリボンは彼らに向けた保険だ。
エポカが万が一、人を襲った時に遠隔で爆破出来る様になっている。
俺はそんな事態にならないよう、心から祈っているが……。
「何が不思議なんです?」
ササPの独り言のような先程の発言を、俺は拾ってみた。
「エポカの存在だよ。ゲームではいなかったし、企画会議でも、そんな案は出なかった」
「あー。でもそれを仰るのなら、ゲーム中ではいなかったキャラ全般について言えますわ」
「うん、そこなんだよ。転生した直後はさ、ここは私が作ったゲームの世界だって思ってた。主要キャラや舞台設定はほぼ同じだし、イベントだってゲームの流れに沿ってる」
「そうですわね……」
ササPと初めて会った日の魔物の襲撃———
その場にフィリアはいなかったが、『ソラトキ』では最初に発生するイベントだ。魔物の形状は現実の方がグロかったが……。
「だから、ひょっとして最近逆なのかなって思ってる」
「つまり……この世界が先にあって、ゲームがそれをなぞった物だと?」
ササPが顎を撫で、困惑したような顔を見せる。
「うん。私たちゲームの制作者サイドに、こっちの世界の人間がいたんじゃないかって」
あり得ない事じゃない。
現に俺とササPは死んではいるが、世界を移動した。
「そうすると……『ソラトキ』の設定を作った方が怪しいですわね。スタッフの中で心当たりは?」
「うーん、ゲームの設定は誰か一人っていうより、みんなでアイディア出し合ってたんだよねえ。初めての乙女ゲーだし、女性スタッフ中心で」
「そうですか……」
「私たちをこの世界に召喚した首謀者の目的が分からないからなあ。そいつが私たちに対して、何らかのアクションを起こしてからだね。今特定するには、判断材料が少な過ぎる」
結局、『分からない事』が分かっただけか……。
「ところでさ、B君」
こっちが本題だとばかりに、真剣な表情でササPが俺に詰めよった。
顔が近い、顔が!
「『パジャマパーティー、一緒に入浴付き❤︎』の件なんだけど」
「今それを蒸し返しますの!?」
「私にとっては大事な事だよ!」
プーっと頬を膨らまして断言する。
その様は可愛いけれど、中の人がオッサンで、考えている事が下心いっぱいとなれば萌えも半減する。
「いつやる?」
「やりませんよ!? ササPさん、エポカを捕まえられなかったじゃないですの」
「えーっ、敢闘賞とかないのー?」
「ありませんわ!」
「ちぇー、お泊まりしたら、B君と生前の世界の話、いっぱいしたかったのになぁ。こんな話、君としか出来ないんだよ……?」
「う……」
上目遣いのおねだりなど、卑怯極まりない。
確かに『あの世界』の話が出来るのは、今のところ俺とササP、二人しかいない。この世界に慣れてきたし、元に戻れないとは知ってるけど、忘れる事は出来ない。
生前と同じ夕陽の色を見れば、小学生時代の友達と駄弁りながらの帰り道を思い出す。
リトが食事の支度をする匂いでも、全く違うはずなのに、母親が夕飯の支度をするのを妹と持っていた光景が目に浮かぶ。
俺だって、元の世界の話はいっぱいしたい。俺の失われた名前以上に、思い出は無くしたくない。
「……分かりましたわ。でもお風呂は一緒には入りませんわよ」
「やったー! 嬉しいよ、B君! チョロくて大好きー❤︎」
「今チョロいって言いやがりました!?」
傍目からは、微笑ましい美少女二人のじゃれあいに見えるだろうが、実際はオッサンである。
それに水を差すように、芝生の上に影が二つ落ちた。
「ピーッ!」
エポカが嬉しそうに一声鳴いて、訪問者の一人の肩に飛び移った。
「ちょっといいかな? お嬢様方」
「少し邪魔をするぞ」
「シルワ先生とノクス先生!?」
何故か先生二人が揃ってご登場だ。
「私たちに何の御用ですか?」
ササPがシルワ先生に対峙する。
他の教職員や生徒に対して当初被っていた猫を、ササPは最近では脱いでいた。
しかし、シルワに対しては最初から塩対応だ。
今も言外に「早くどっか行け」と言っている。
「手間は取らせないよ。少し君たちに質問をね」
シルワが言いながら、チラリとノクスを見た。
ノクスの手元には手帳があり、何かを書き込んでいた。
「クレア嬢とフィリア嬢はお友だちだよね?」
「そうですね。残念ながら、まだ一線は超えてません」
「クレアさん、言い方ぁ!! 私たち、健全なお友だちですわ!」
「他に、学園内で同じくらい仲の良いお友だちは? 異性同性限らず生徒で」
俺とササPは互いの顔を見合わせた。
友人関係にランクを付けるのも何だが、転生者同士という事もあって、俺の中で確かにササPは別格だ。
「同じくらいと言うと難しいですわね。ディエス殿下は婚約者で、コスタは同級生ですが、殿下の侍従という立場をわきまえておられますから、クレアさんと同列には語れませんわ」
「私もフィリア様と同じです。カロル様をはじめ、私に声をかけて下さる御令息御令嬢はいらっしゃいますが、心も体も許したのはフィリア様ただ一人です」
「クレアさん、誤解を招く言い方は本っっ当にやめて下さる?」
「ふーん、じゃあ編成は君たち二人を考慮しておけば良いかな。ね、ノクス先生」
「ああ、そうだな。フィリア嬢、クレア嬢も昼食を邪魔してすまなかった」
シルワとノクスは、勝手に二人で納得して立ち去った。
彼らの一見不可解な行動に、俺とササPは思い当たる事があった。
「ササPさん、これって……」
「うん。きっと明日あたりやるね、イベント」
果たして翌日、ササPの予言は現実のものとなった———
「はーい、みんな注目ー! 今日はこれから魔物討伐の演習戦をやりまーす、団体戦でー!」
シルワの宣言に練習場に集められた生徒一同は動揺し、そのざわめきが場内を包んだ。
「やっぱりアレ、『演習戦』での班分けアンケートだったかー」
「ですわね」
ササPと俺は特に動揺する事なく、班ごとに名前が書かれた紙が掲示板に貼り出されるのを眺めていた。
乙女ゲーム『ソラトキ』での『演習戦』イベントは、魔力で造られた擬似魔物を班で倒し、ポイントを競うものだ。
ヒロイン『クレア』が【乙女】や【通常】バージョンの場合は、能力パラメータと攻略キャラの好感度を上げる大事なイベントだ。
なお【残念】バージョンの場合は、擬似魔物に対してひたすら無双する。
「今回は個人の成績を考慮しつつも、その班での戦果を重視する。編成に関しての苦情は一切受け付けない」
ノクスの説明に一部で不満の声が上がる。
編成と言っても、ゲーム同様仲良しグループで固めてあるのだろう。
俺は攻撃が出来ないから、後方でササPの活躍を見つつ、怪我人が出たら対処すれば良い——なんて考えつつメンバー表を見れば、
「あれ?」
思っていたのと違った。
「はい、ノクス先生」
隣のササPが挙手する。
「何だ? クレア嬢」
「この分け方はおかしいです。何故フィリア様と私は違う班なのですか?」
「苦情は受け付けないと言ったはずだが」
「でも、昨日先生方は私とフィリア様が友だちかどうか、わざわざ確認したじゃないですか。だったら、普通一緒にすると思います」
ササPの言葉に周りの生徒も一様に頷いた。どうやらノクスたちは、他の生徒たちにも友人関係の確認を取ったのだろう。
「だからだ。クレア嬢」
「え?」
「この演習戦は息の合った者同士で、効率的に行うものではない。寧ろ逆だ。諸君らは卒業後、騎士団を率いるか、団員の一人として魔物討伐に赴くだろう。そこにいる全員が、味方であっても気の合う仲間だとは限らない。そして現場では不測の事態が常に起こり得る」
「つまり、今回はそれを想定して?」
「そのとおり。だからあえて面識の少ない者同士組ませたと言って良い。しかし戦力の均衡を図るため例外はある。以上だ」
異論は認めないと、ノクスは生徒たちをぐるりと睨んで口を噤んだ。
ササPはガックリと肩を落とす。
「あー、マジかー、ゲームと違うじゃーん」
「まあ、ノクス先生の方が正論ではありますわ」
現実では好感度より、危険な魔物の殲滅の方が重要だ。
ササPの落胆など知らぬげに、カロルがこちらに駆け寄ってきた。
爽やかと元気が暑苦しくなく同居して、さすが乙女ゲー攻略キャラだ。
「クレア嬢! 一緒の班になったな! お互い頑張ろう!」
「ええ……」
嬉しそうに手を振るカロルに、渋面のササP。
あれだけ一時は追いかけ回していたのに、本人からも周囲からもお友だち認定されてなくて、ちょっと可哀想だなと思う。
同じ班のメンバーは……と、俺はメンバー表に視線を戻す。
親しいと思われているディエス殿下とコスタの名前は、当然そこにはない。
………うん、ほとんど面識のない御令息や御令嬢ばかりだ。
だけど一人、面識はないくせに、よく知っている名前があった。
『ソラトキ』攻略キャラの一人、『グランス・ブルケル』だ。
「ピーッ」
エポカと戯れながら、ササPが呟いた。
時刻はお昼。
程良い日差しとそよ風を受けながら、俺とササPは中庭でランチをしていた。
今日のリトの手作り弁当のメニューは、生前の世界で言うナポリタンとサラダだ。ササPとお昼を一緒に食べると伝えてからは、いつも二人分を用意してくれる。
以前は恒例だった、カロルとササPのお昼の鬼ごっこは少し前に無くなった。
ササPがカロルと一対一の勝負をして、コテンパンにのしてから、まだ自分にササP相手は早いと判断したのか、彼は来なくなった。
うん。屋根の上からの眺めは良かったが、やっぱりご飯は地上でゆっくり食べる方がいいな。
「ピーッ」
俺の心情に同意した訳でもないだろうが、エポカが嬉しそうに一声鳴いた。
エポカの存在が、ノーティオ魔法学園の教職員や生徒の知るところとなってから、早一週間。
当然、賛否はあった。寧ろ最初は否の空気の方が強かった。
しかしノクスの熱心な説得と、実質次の国王となるディエスの容認で、なんとか学園内を自由に飛び回れるくらいにはなっている。
一週間前と違うのは、エポカの翼の付け根につけられた、魔石付きの青いリボンだ。許可されたとはいえ、魔物の飼育を快く思わない教職員や生徒も未だ少なくない。
青いリボンは彼らに向けた保険だ。
エポカが万が一、人を襲った時に遠隔で爆破出来る様になっている。
俺はそんな事態にならないよう、心から祈っているが……。
「何が不思議なんです?」
ササPの独り言のような先程の発言を、俺は拾ってみた。
「エポカの存在だよ。ゲームではいなかったし、企画会議でも、そんな案は出なかった」
「あー。でもそれを仰るのなら、ゲーム中ではいなかったキャラ全般について言えますわ」
「うん、そこなんだよ。転生した直後はさ、ここは私が作ったゲームの世界だって思ってた。主要キャラや舞台設定はほぼ同じだし、イベントだってゲームの流れに沿ってる」
「そうですわね……」
ササPと初めて会った日の魔物の襲撃———
その場にフィリアはいなかったが、『ソラトキ』では最初に発生するイベントだ。魔物の形状は現実の方がグロかったが……。
「だから、ひょっとして最近逆なのかなって思ってる」
「つまり……この世界が先にあって、ゲームがそれをなぞった物だと?」
ササPが顎を撫で、困惑したような顔を見せる。
「うん。私たちゲームの制作者サイドに、こっちの世界の人間がいたんじゃないかって」
あり得ない事じゃない。
現に俺とササPは死んではいるが、世界を移動した。
「そうすると……『ソラトキ』の設定を作った方が怪しいですわね。スタッフの中で心当たりは?」
「うーん、ゲームの設定は誰か一人っていうより、みんなでアイディア出し合ってたんだよねえ。初めての乙女ゲーだし、女性スタッフ中心で」
「そうですか……」
「私たちをこの世界に召喚した首謀者の目的が分からないからなあ。そいつが私たちに対して、何らかのアクションを起こしてからだね。今特定するには、判断材料が少な過ぎる」
結局、『分からない事』が分かっただけか……。
「ところでさ、B君」
こっちが本題だとばかりに、真剣な表情でササPが俺に詰めよった。
顔が近い、顔が!
「『パジャマパーティー、一緒に入浴付き❤︎』の件なんだけど」
「今それを蒸し返しますの!?」
「私にとっては大事な事だよ!」
プーっと頬を膨らまして断言する。
その様は可愛いけれど、中の人がオッサンで、考えている事が下心いっぱいとなれば萌えも半減する。
「いつやる?」
「やりませんよ!? ササPさん、エポカを捕まえられなかったじゃないですの」
「えーっ、敢闘賞とかないのー?」
「ありませんわ!」
「ちぇー、お泊まりしたら、B君と生前の世界の話、いっぱいしたかったのになぁ。こんな話、君としか出来ないんだよ……?」
「う……」
上目遣いのおねだりなど、卑怯極まりない。
確かに『あの世界』の話が出来るのは、今のところ俺とササP、二人しかいない。この世界に慣れてきたし、元に戻れないとは知ってるけど、忘れる事は出来ない。
生前と同じ夕陽の色を見れば、小学生時代の友達と駄弁りながらの帰り道を思い出す。
リトが食事の支度をする匂いでも、全く違うはずなのに、母親が夕飯の支度をするのを妹と持っていた光景が目に浮かぶ。
俺だって、元の世界の話はいっぱいしたい。俺の失われた名前以上に、思い出は無くしたくない。
「……分かりましたわ。でもお風呂は一緒には入りませんわよ」
「やったー! 嬉しいよ、B君! チョロくて大好きー❤︎」
「今チョロいって言いやがりました!?」
傍目からは、微笑ましい美少女二人のじゃれあいに見えるだろうが、実際はオッサンである。
それに水を差すように、芝生の上に影が二つ落ちた。
「ピーッ!」
エポカが嬉しそうに一声鳴いて、訪問者の一人の肩に飛び移った。
「ちょっといいかな? お嬢様方」
「少し邪魔をするぞ」
「シルワ先生とノクス先生!?」
何故か先生二人が揃ってご登場だ。
「私たちに何の御用ですか?」
ササPがシルワ先生に対峙する。
他の教職員や生徒に対して当初被っていた猫を、ササPは最近では脱いでいた。
しかし、シルワに対しては最初から塩対応だ。
今も言外に「早くどっか行け」と言っている。
「手間は取らせないよ。少し君たちに質問をね」
シルワが言いながら、チラリとノクスを見た。
ノクスの手元には手帳があり、何かを書き込んでいた。
「クレア嬢とフィリア嬢はお友だちだよね?」
「そうですね。残念ながら、まだ一線は超えてません」
「クレアさん、言い方ぁ!! 私たち、健全なお友だちですわ!」
「他に、学園内で同じくらい仲の良いお友だちは? 異性同性限らず生徒で」
俺とササPは互いの顔を見合わせた。
友人関係にランクを付けるのも何だが、転生者同士という事もあって、俺の中で確かにササPは別格だ。
「同じくらいと言うと難しいですわね。ディエス殿下は婚約者で、コスタは同級生ですが、殿下の侍従という立場をわきまえておられますから、クレアさんと同列には語れませんわ」
「私もフィリア様と同じです。カロル様をはじめ、私に声をかけて下さる御令息御令嬢はいらっしゃいますが、心も体も許したのはフィリア様ただ一人です」
「クレアさん、誤解を招く言い方は本っっ当にやめて下さる?」
「ふーん、じゃあ編成は君たち二人を考慮しておけば良いかな。ね、ノクス先生」
「ああ、そうだな。フィリア嬢、クレア嬢も昼食を邪魔してすまなかった」
シルワとノクスは、勝手に二人で納得して立ち去った。
彼らの一見不可解な行動に、俺とササPは思い当たる事があった。
「ササPさん、これって……」
「うん。きっと明日あたりやるね、イベント」
果たして翌日、ササPの予言は現実のものとなった———
「はーい、みんな注目ー! 今日はこれから魔物討伐の演習戦をやりまーす、団体戦でー!」
シルワの宣言に練習場に集められた生徒一同は動揺し、そのざわめきが場内を包んだ。
「やっぱりアレ、『演習戦』での班分けアンケートだったかー」
「ですわね」
ササPと俺は特に動揺する事なく、班ごとに名前が書かれた紙が掲示板に貼り出されるのを眺めていた。
乙女ゲーム『ソラトキ』での『演習戦』イベントは、魔力で造られた擬似魔物を班で倒し、ポイントを競うものだ。
ヒロイン『クレア』が【乙女】や【通常】バージョンの場合は、能力パラメータと攻略キャラの好感度を上げる大事なイベントだ。
なお【残念】バージョンの場合は、擬似魔物に対してひたすら無双する。
「今回は個人の成績を考慮しつつも、その班での戦果を重視する。編成に関しての苦情は一切受け付けない」
ノクスの説明に一部で不満の声が上がる。
編成と言っても、ゲーム同様仲良しグループで固めてあるのだろう。
俺は攻撃が出来ないから、後方でササPの活躍を見つつ、怪我人が出たら対処すれば良い——なんて考えつつメンバー表を見れば、
「あれ?」
思っていたのと違った。
「はい、ノクス先生」
隣のササPが挙手する。
「何だ? クレア嬢」
「この分け方はおかしいです。何故フィリア様と私は違う班なのですか?」
「苦情は受け付けないと言ったはずだが」
「でも、昨日先生方は私とフィリア様が友だちかどうか、わざわざ確認したじゃないですか。だったら、普通一緒にすると思います」
ササPの言葉に周りの生徒も一様に頷いた。どうやらノクスたちは、他の生徒たちにも友人関係の確認を取ったのだろう。
「だからだ。クレア嬢」
「え?」
「この演習戦は息の合った者同士で、効率的に行うものではない。寧ろ逆だ。諸君らは卒業後、騎士団を率いるか、団員の一人として魔物討伐に赴くだろう。そこにいる全員が、味方であっても気の合う仲間だとは限らない。そして現場では不測の事態が常に起こり得る」
「つまり、今回はそれを想定して?」
「そのとおり。だからあえて面識の少ない者同士組ませたと言って良い。しかし戦力の均衡を図るため例外はある。以上だ」
異論は認めないと、ノクスは生徒たちをぐるりと睨んで口を噤んだ。
ササPはガックリと肩を落とす。
「あー、マジかー、ゲームと違うじゃーん」
「まあ、ノクス先生の方が正論ではありますわ」
現実では好感度より、危険な魔物の殲滅の方が重要だ。
ササPの落胆など知らぬげに、カロルがこちらに駆け寄ってきた。
爽やかと元気が暑苦しくなく同居して、さすが乙女ゲー攻略キャラだ。
「クレア嬢! 一緒の班になったな! お互い頑張ろう!」
「ええ……」
嬉しそうに手を振るカロルに、渋面のササP。
あれだけ一時は追いかけ回していたのに、本人からも周囲からもお友だち認定されてなくて、ちょっと可哀想だなと思う。
同じ班のメンバーは……と、俺はメンバー表に視線を戻す。
親しいと思われているディエス殿下とコスタの名前は、当然そこにはない。
………うん、ほとんど面識のない御令息や御令嬢ばかりだ。
だけど一人、面識はないくせに、よく知っている名前があった。
『ソラトキ』攻略キャラの一人、『グランス・ブルケル』だ。
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