最弱悪役令嬢に捧ぐ

クロタ

文字の大きさ
22 / 59

第22話 レッツお出かけイベント2

「私、汚されましたわ……」
 あの後リトとササPによる試着という名の、俺——フィリアの強制着せ替えイベントが発生した。
 ゲームならゴッソリHPが減ってるだろう。

「何落ち込んでるの? 可愛かったじゃん。スケスケで」
「スケスケは解釈違いですわ!!」
 抜け抜けとのたまうササPに抗議するも、ヤツはどこ吹く風だ。
「フィリアは痴女じゃありませんのよ! もっとこう露出は少ないけれど、腰とか足首とか、華奢な身体を引き立たせるような可愛さ全振りの服が似合うんですわ! それを、あんな『布面積が少なければエッチ』だと思ってるような服を何着も着せるだなんて、プロデューサーのくせに何も分かっていませんわね!!」
「君もけっこう面倒くさいタイプのファンだよね、B君」
 ちなみにもう一人の共犯者は嬉々として、試着した服全てをお会計中である。
 アレ、『パジャマパーティー』開催されるたびに着せられるんだろうなあ、俺———

 暗澹たる気持ちで街行く人々を眺めていると、見知った顔に気がついた。
「あれグランス様じゃありませんこと? ササPさん」
「あ、ホントだ。偶然だねえ」
 グランスは街角に佇んで、ただジッとどこかを見ているようだった。
 誰かと待ち合わせという雰囲気でもないな。
 彼の視線の先を見て、俺はハッとした。
「ササPさん、あのお店って……」
「ああ、多分彼のお母さんが働いている店だね」
 ササPも気がついたようだ。

 グランスの視線の先———それは彼の母親が勤めるお菓子屋さんだった。
 焼き菓子を買う女の子たちに、ニコニコと対応しているのがそうだろうか。
 少し目元が似ている気がする。
「ブルケル男爵との約束なんかブッチして、会いに行けばいいのに。義理堅いねえ」
「彼はササPさんとは違うのですわ。でも同じ世界にいるのに、会えないのは可哀想ですわね……」
 ゲームの中のグランスも、結局最後まで母親とは会えなかった。
 ここで彼を誘って、客としてあの店に行くのはどうだろう?
 しかし父親である男爵にバレて、後々面倒なことになる可能性もあるか………。

「クレアさん、フィリア様! どうしてここにいるんですか!?」

 うんうん唸って考えているうちに、俺たちがグランスに見つかった。
 俺は彼と演習戦で知り合ったが、もともとクレアの方は彼と同じシルワ先生のクラスで顔見知りだ。

「こんにちは、グランス君。私たちは買い物だよ。グランス君は?」
 ササP——クレアが何事も無かったかのように、無邪気な笑顔を浮かべて訊ねる。
 こういう切替えの速さは流石だな。
「あ……僕も似たようなものです」
 こちらは目を逸らして誤魔化した。
 まあ、グランスが自分の事情を俺たちに話すわけないか。

「ところで、今後のご予定は? グランス君」
「え?」
 おい、クレアさん。何で彼の予定を聞いた。
 俺は嫌な予感がするぞ。
「もし良かったら、私たちと一緒に串焼きを食べましょう。フィリア様の奢りで❤︎」
「!!」
「いや、そこまで僕は図々しくないです。串焼きくらい自分で払えますよ」
 グランスは極めて良識的な発言を返してくれる。
 しかし残念ながら、ここで己れの信念を曲げるクレア——ササPではない。
「奢ってくれますよね? フィリア様」
「いやいや、奢るのはやぶさかではありませんわ。でも、あなたの魂胆はそこではありませんわよねえ? クレアさん」
「そうですとも! 肉汁で顔や手をベトベトに汚しながら串焼きを頬張るフィリア様を、一緒に鑑賞しましょう! グランス君!!」
 やっぱり目的はそこか!!
 性癖がおかし過ぎるだろう! そんなマニアな集まりに賛同するのはリトぐらいだぞ!!

「え、それは僕が行っても大丈夫なんですか?」
 まともだと思ってたのに、お前もか!? 
 しかも控え目に参加の意を示すなーっ!!
 無言で抗議の視線を送ったら「ベトベトになる前に僕が拭いてあげます」と、フォローになってないフォローをされた。

 しかも折り悪く、焼きたてホカホカの串焼き四本を手に、リトがこっちに向かって来た。
 ………うん、串焼きは本当に美味しかったんだ。串焼きは……。

感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺が悪役令嬢になって汚名を返上するまで (旧タイトル・男版 乙女ゲーの悪役令嬢になったよくある話)

南野海風
ファンタジー
気がついたら、俺は乙女ゲーの悪役令嬢になってました。 こいつは悪役令嬢らしく皆に嫌われ、周囲に味方はほぼいません。 完全没落まで一年という短い期間しか残っていません。 この無理ゲーの攻略方法を、誰か教えてください。 ライトオタクを自認する高校生男子・弓原陽が辿る、悪役令嬢としての一年間。 彼は令嬢の身体を得て、この世界で何を考え、何を為すのか……彼の乙女ゲーム攻略が始まる。 ※書籍化に伴いダイジェスト化しております。ご了承ください。(旧タイトル・男版 乙女ゲーの悪役令嬢になったよくある話)

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

モブでいたはずの私が、ただひとりに溺愛されるまで

ChaCha
恋愛
乙女ゲームの世界に転生したことに気づいたアイナ・ネルケ。 だが彼女はヒロインではない――ただの“モブ令嬢”。 「私は観る側。恋はヒロインのもの」 そう決めて、治癒魔術科で必死に学び、気合いと根性で仲間を癒し続けていた。 筋肉とビンタと回復の日々。 それなのに―― 「大丈夫だ。俺が必ず君を守る」 野外訓練で命を救った騎士、エルンスト・トゥルぺ。 彼の瞳と声が、治癒と共に魂に触れた瞬間から、世界が静かに変わり始める。 幼馴染ヴィルの揺れる視線。 家族の温かな歓迎。 辺境伯領と学園という“日常の戦場”。 「……好き」 「これは恋だ。もう、モブではいたくない」 守られるだけの存在ではなく、選ばれる覚悟を決めたモブ令嬢と、 現実しか知らない騎士の、静かで激しい溺愛の始まり。 これは―― モブでいたはずの私が、ただひとりに溺愛されるまでの物語。 ※溺愛表現は後半からです。のんびり更新します。 ※作者の好みにより筋肉と気合い…ヤンデレ落ち掛けが踊りながらやって来ます。 ※これは恋愛ファンタジーです。ヒロインと違ってモブは本当に大変なんです。みんなアイナを応援してあげて下さい!! ※本編は完結しました。後日談をのんびり不定期でUPしてます。

ヒロインだと言われましたが、人違いです!

みおな
恋愛
 目が覚めたら、そこは乙女ゲームの世界でした。  って、ベタすぎなので勘弁してください。  しかも悪役令嬢にざまあされる運命のヒロインとかって、冗談じゃありません。  私はヒロインでも悪役令嬢でもありません。ですから、関わらないで下さい。

乙女ゲームの悪役令嬢、ですか

碧井 汐桜香
ファンタジー
王子様って、本当に平民のヒロインに惚れるのだろうか?

悪役令嬢エリザベート物語

kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ 公爵令嬢である。 前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。 ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。 父はアフレイド・ノイズ公爵。 ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。 魔法騎士団の総団長でもある。 母はマーガレット。 隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。 兄の名前はリアム。  前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。 そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。 王太子と婚約なんてするものか。 国外追放になどなるものか。 乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。 私は人生をあきらめない。 エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。 ⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?