男子校でハーレムが作れる俺マジ勝ち組

葉鳥(はとごろTIMES)

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早乙女静香ルート

すべてを賭けて見えたもの1

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※この作品は同人ゲーム「男子校でハーレムが作れる俺マジ勝ち組」からテキストを抜き出したノベル版です。
 ゲームテキスト形式なので背景やキャラ名の指定が残っています。
 原作ゲームは18禁ですが、今作は18禁シーンを削除し全年齢版として公開します。
 PCを持っていない方のために、同じく全年齢版の体験版プレイ動画もございます。
 詳しくは「はとごろTIMES」のホームページをご覧下さい。
 また、漫画も投稿しています。そちらも是非ご覧下さい。



《早乙女家・リビング》《静香視点》

「昨日はごめんなさい……しずかも、触れられたくないことがあるのよね」
四ッ橋家で一日を過ごして戻ってきた時、母さんは一番に僕を抱きしめてそう言った。
昨日も感じた温もり。これを手放すことは、とても怖い。
でも、この人が見ているのは僕ではない。
……見えなくしてしまったのは……僕なのか……?
男だった時から、僕はこの人と仲良くしたくて色々なことを語りかけていた。
しかし言い換えればそれは「機嫌を取っていた」ということ。
昔から本当の僕なんて、一度たりともみせたことはなかった。
見せたところで、汚らわしい男だと殴られるのも分かっていた。
……今は、違う。
身体が震える。この温かさに触れてしまった今、失うことはとても怖い。

「昨日は四ッ橋さんの家に泊まったのよね。本当に彼女には頭が上がらないわ」
静香
「そうだね……でも、僕を泊めてくれたのは零時だったよ」

「…………」

「……あ、あのねしずか、ずっと思っていたことがあるのよ」
静香
「……?」
いつになく真剣な眼差しを向けられる。
何を言われるのだろう。想像もつかない。ただ、もう悲しいことは言われたくない。

「あなた、転校する気はない?」
静香
「てん、こう……?」

「今の学校、男ばかりじゃない。陽子さんの子なら私もまだ許せるけど、他の人の家とかには行かせたくないわ」

「少し遠い所にある女子校に通わせたいってずっと思ってた。ちゃんとあなたの学力に合った学校よ」

「あなたが学校に行ってる間、心配で気が気じゃないの……」
それは……母さん以外の全てを手放せということか?
母さんが男嫌いになった理由を考えると、そう心配するのは分かる。
これは全て善意だ。
この人はただ優しくて、娘として僕を好きでいるだけ。
けど……
静香
「いや……です……」
意識するより先に否定が出る。同時に、昨日の零時の言葉が脳裏に蘇った。
これが幸せだからと理由をつけ、押さえ込んでいるもの。
今言おうとしていることは、まさにそれだった。
言ってしまったら、今度こそ母さんとの生活はなくなってしまうかもしれない。
怖い。また氷のような眼差しで睨まれるのは嫌だ。
でも……零時の……皆の側を離れるのも、嫌だ。
こんな気分をずっと抱え続けて生きるのも……いやだ。
静香
「転校はしたくない……このまま、今の母さんと一緒にいるのも……」

「しず、か……?」
静香
「僕はしずかなんて名前じゃない!」
その呼ばれ方は大嫌いだった。この人が、僕を見てくれなくなる名前だから。
優しく呼ばれることがたまらなく嫌だった。思いやってくれている行動が嫌だった。
この人のくれるすべて、嫌なことだった。
静香
「僕はずっと、こんな風に母さんと一緒に暮らすのを夢見てた。ずっと出来なかったことだったから」
静香
「あなたと過ごした子供の頃なんてない。本を読んでくれてことも、晩御飯をつくってくれたこともない」

「なに……言って……」
静香
「あなたは僕に何の本を読んだのか……本当に覚えているんですか?」

「え……あ…………」
母さんは必死に思い出そうと思考をめぐらせる。けれども、思い出せるはずがない。
そんな事実は存在しないから。
それは母さんが思い描いた「愛する娘にしてあげたいこと」。
僕と同じで、この人もずっと求めていたんだ。
自分が嫌わないでいられる子供との、幸せな家庭を。
その妄想が、僕が女になったことで現実の記憶にすり替わっていただけなんだ。
気づいていた。ただ、目をそらしたかった。
僕もそうして、自分の妄想を記憶にして生きたかったから。
でも、それは本当の幸せじゃない。そう教えてくれた人がいる。
静香
「娘がハンバーグが好きだなんていつ知ったんですか? いつ、娘を愛したんですか?」

「……そんなの……あ、あぁ……分か、らな…………」

「ち、小さい頃よ……あなたが、とても小さいころ……」
静香
「幼稚園児の時? 小学生の時? 普通そのくらい覚えてるでしょう」

「どっち……なのか、分からない……どうして……」
静香
「そんなことは無かったからです。あなたは僕を愛したことなんてなかった」
静香
「幼稚園児の頃はずっと無視でしたね。どうして僕のことを遠ざけるのかわからなくて、悲しかった」
静香
「小学生の頃は怒鳴るようになった。大きくなるにつれ、暴力をふるった」

「いや、嫌よ……聞きたくないわ、そんなこと……」
静香
「すごく痛かった……殴られたところも、心も、全部が」
静香
「昨日あなたは聞きましたね、背中の痣は誰にやられたのかと」

「あ……あぁ、ああああああああああぁぁ!」
妄想は、真実の記憶の前では薄っぺらい膜のようなもの。
こんなにも簡単に破れてしまう。
僕が溺れていた幸せは、こんなにあっさりと消える程度のものだった。
こんなものを必死に守っていたのか、僕は。
本当に、無駄なことしかしない人生。
静香
「母さん……」
頭を抱えたまま動かなくなった母に声をかける。
しかし、返事どころかぴくりとも動かなかった。
恐るおそるその身体に触れる。

――ドサッ

静香
「…………え?」
どうやら、世界はまだ僕を甘やかしてはくれないらしい。
母さんは死んでしまったかのように、その場に倒れて動かなくなってしまった。



《自宅・居間》《零時視点》
零時
「…………」
静香が帰った後、入れ替わるように一人の男が来客した。
全く見たことも無い、身体の大きな四十過ぎくらいのオジサンだ。
その人は俺を見るなり「成長したな」と言った。
零時
「ど、どちら様ですか……?」

「覚えていないはずだ。君はまだ赤ん坊だったしな」

「早乙女義純という者だ」
早乙女……まさか、静香の父親……?
義純
「陽子さんには家に伺うと連絡したのだが、どうやら君まで伝わっていなかったようだ」
義純
「いや、あえて伝えなかったのか……あの人も見かけによらず頭が回る」
零時
「なんか、俺に会いに来たみたいな言い方ですね……」
義純
「ああ、そうだ。君に会いに来た」
零時
「な、なんで……静香に会ってやったほうがいいはずです」
義純
「父親とは名ばかりだ。私にあの子は救えん」
零時
「どういうことです?」
義純
「君には全てを話すよ。そのために休みを取ってここに来た」
それから、義純さんは静香と心さんについてのことを話し始めた。
心さんが異常なまでに男を嫌うのは、彼女が昔男に拉致監禁され酷い目にあったから。
まだ学生だった心さんは、下校途中に不良グループに目をつけられ連れ去られた。
男が若い女を捕まえてすることなんて決まっている。強姦だ。
拘束され、目と口を塞がれ、嫌だと叫ぶことも許しを請うこともできずに犯される。
男たちの行為は日に日に酷くなる。殴り、蹴り、犯し、皮膚を切り、針を刺し、火で炙り……
警察が発見した時、心さんの身体に無事なところはなかったという。
保護された後も、ひたすら怯えて嫌だやめてと泣き叫ぶ。
義純
「当時彼女を保護した警官が私だ。あの時の心は、見ていられなかった」
なんとか入院させて身体の傷は治すことができたが、心に負った傷までは消すことが出来ない。
それに、傷以外に男たちが身体に残したものもあった。
心さんは妊娠していた。恐ろしいことをした男のうちの誰かの子を。
義純
「心は中絶するべきか悩み……産むことを選んだ。自分が殺されかけたから、子供を殺すという選択ができなかったんだ」
おぞましい男たちの子が我が身に宿っていることに耐え切れず、何度も自殺未遂をした。
その度に病院の人や義純さんに止められ、生き永らえてしまったため子供は中で大きくなっていく。
腹の中に男達と同じものがあるという気持ち悪さと、子供を殺して自分が奴らと同類になる恐怖に板挟みにされる。
自分の心を壊すほどに悩んだ結果、心さんは自分自身を守ることを決めた。
そうして産まれた子供が、早乙女静香だった。
義純
「私は子供を産んで疲労している心を、無理矢理のように嫁に迎えた。哀れな彼女を放っておけなかったんだ」
義純さんが心さんと結婚したのは、言ってしまえば同情心から。
だから心さんを愛してもいないし、静香を子供だとも思っていない。
義純
「静香は感づいていたようで、あの子から距離をおいていたよ。情けないが、有難いとも思っていた」
零時
「だけど、心さんは母親だから打ち解けようとした……」
義純
「子供とは鋭く、そして愚直だ。心が静香をまともに見られるはずがないのに」
心さんからすれば、自分が産んだというだけで、望んでもない子供。
忌々しい男の遺伝子を持った男。嫌わない理由がない。
なんて……救いのない……
静香は産まれる前から残酷な道を生きると決められていたんだ。
義純
「静香がどうして女になっているのか知らないが、そのことで心が静香を愛するならそれもいいのかと思っていた」
義純
「だが、心は静香を愛したことがない。今更ちゃんと愛せるはずもない」
零時
「知って……いるんですか。今の二人のこと」
義純
「いや、私が顔を出すと心が取り乱してしまうからね。想像だ」
義純
「もう静香には君しかいないんだろう……だから君に真実を知ってほしかった」
零時
「そのこと、静香は……」
義純
「あの子が家を出ると決めた時、大まかには説明した。静香のことだから全貌に気づいているだろう」
義純
「それから、実は君の母親である陽子さんもこのことを知っている」
零時
「えっ」
義純
「静香が生まれる時に病院でな」
知らなかった……母さんと心さん、そんな時から交流があったのか。
心さんが静香を愛せないって知ってて、静香をうちに招いていたんだ。
母さんがどうして心さんを嫌わないのか不審に思っていたけど、こういうことか。
義純
「私も陽子さんも、心や静香のことを知っていたから助けようとしていた」
義純
「だが君は違う。君だけは何も知らないままで静香を愛したんだろう?」
義純
「だから静香を救ってやれるのは、君だけなんだよ」
零時
「……はい」
この重すぎる真実をどう扱えばいいのかは分からないが、俺は俺のできることをする。
あいつは俺の彼女だ。最後まで側にいて、支えてやる。
その決心だけは、もう揺るがない。
義純
「静香のことを頼む。あの子に、今できることをさせてやってくれ」
義純
「心も、もう長くないだろうしな」
零時
「…………え?」
義純さんの話を聞いた、数時間後のこと。
静香から、心さんが入院したという連絡を受けた。



《病院》
静香
「………………」
母の状態を聞かされてから、静香は病院の待合室で虚ろな目をして座っていた。
心さんは病気を抱えていた。静香が生まれるよりも前からずっと。
性感染症……何人もの相手に暴行された時、静香と共に残された傷跡だった。
治療する術はなく、長期にわたって心さんを蝕み続けていた。
病状はすでに末期を迎えていて、立つことすらままならない状態だという。
それでも彼女は最後まで入院を拒み、自分が愛しているはずの娘との生活を選んだ。
ボロボロの身体で、それを悟られないよう、優しい姿をいっぱい見せて。
静香
「しらな……かった……そんなこと」
義純さんは、静香への感染を防げたことが、唯一の幸運だったと言っていた。
このことだけは、心さんも義純さんも、ずっと隠し通してきた。
知ってしまったら、静香は何があっても母の元を離れなかっただろう。
静香と心さんは、生まれる前から離別する運命だった。なら、必要以上に近づけるほうが酷だ。
しかし静香はそんなことを知らずとも、心さんに近づこうと無駄な努力を重ねてしまったのだけれど。
母のことを嫌うことが、静香が一番幸せになれる道だった。
そんな悲しい生き方でしか、静香は救われなかった。
静香
「母さん……ずっと無理して……立っていることも辛かった程なのに……」
静香
「僕はそんな母さんに、なんてこと……うぁ、あぁぁっ……」
こうなると知っていれば、俺も静香もあと少しだけ偽りの幸せに身を任せていただろう。
結局、正しいことなんてこの世に存在しない。
何をしようと無駄なものは無駄で、救われないものは救えない。
静香
「これから……だったのに……全部捨てて、はじめようと……したのにっ」
静香
「全部なくして、はじめることすらできなくなって……」
静香
「僕が何かをするたび、全部に意味がなくなる……ぼくに、意味がないから……」
否定したかった。そんなことないと言いたかった。
でも、それが事実だから、傷つけるだけの嘘は言えない。
静香
「もう……なにも、しないから……っく、こんなの、おわりにして……う、うぅぅ」
零時
「……お前が望むなら、俺はお前を殺すよ。約束したから」
零時
「でも、俺に殺される前に、心残りのないようにしてくれ。未練のあるお前は殺せない」
静香
「み、れん……? なにもできないのに、そんなの……」
零時
「心さんの最後くらい、見届けてもいいんじゃないか?」
静香
「見届ける……見るだけなら、もう何も無駄にしない……?」
その問いに答えは返せなかった。そんなの、誰にもわからないから。
静香
「…………家に、帰る……」
零時
「静香……」
静香
「ひとりになりたいんだ……」
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