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至福の私服
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※この作品は同人ゲーム「男子校でハーレムが作れる俺マジ勝ち組」からテキストを抜き出したノベル版です。
ゲームテキスト形式なので背景やキャラ名の指定が残っています。
原作ゲームは18禁ですが、今作は18禁シーンを削除し全年齢版として公開します。
PCを持っていない方のために、同じく全年齢版の体験版プレイ動画もございます。
詳しくは「はとごろTIMES」のホームページをご覧下さい。
また、漫画も投稿しています。そちらも是非ご覧下さい。
《土曜日》
《実家・居間》
静香
「そろそろ出るか」
時間を確認する。先輩達との約束の時間が近づいていた。
私服を持っていない静香は制服を着ている。俺は普通に私服だ。
別に土曜に学校があることも珍しくはないし、変に目立ちはしないだろう。
それに……
桃滋楼
「ま、マジでこの格好で行くのかよ……」
今日ばかりは、伏嶋も男装ではなく普通の制服を着せたことだし。
学校では元々女が居ること自体おかしいから何も言われないが、街中で学ランは絶対に目立つ。
よって、母さんがマザーコネクションで調達してきた女子制服の出番というわけだ。
顔を真っ赤にし、スカートを引っ張って少しでも足を隠そうとしている姿はとても可愛い。
桃滋楼
「うぅ……なんだよこれ、おかしいだろ。短すぎんだろ、これ」
桃滋楼
「こんな布一枚で街を練り歩くなんてキチガイじゃねーの? 女ってマジわっかんねぇ」
零時
「定められてる正装だし、キチガイではないと思うけど」
静香
「黒タイツを穿いているのに、スカート伸ばしてなんの意味があるんだ?」
桃滋楼
「タイツはいてようが見えるもんは見えるだろっ」
静香
「そうなのか?」
零時
「俺に聞くなよ。俺が穿いたことあったらキモイだろ」
静香
「僕だって、タイツなんて触ったことすら無いんだ」
桃滋楼
「穿いてる俺がおかしいみたいな言い方すんじゃねーよ!」
静香
「そんなことは無いさ。似合ってると思うぞ?」
零時
「そだな。しかしタイツときたか……俺絶対伏嶋はジャージとか穿いてくると思った」
アレは駄目だ。色気も無ければ可愛げも無い。あれこそキチガイのやることだ。
桃滋楼
「最初はそれも考えたけど、お前の母さんに全力で止められた」
初めて母さんの存在が輝いて見えた瞬間だった。グッジョブ、母さん。あんた神や。
桃滋楼
「パンツ丸出しは無理って言ったら、なら黒タイツ貸してあげるって言われた」
静香
「お前は今、僕に向かってパンツ丸出しと言ったか?」
桃滋楼
「似たようなもんだろ」
静香
「……否定の言葉が思い浮かばない」
やはり静香も元男。スカートについての意識は皆一緒のようだった。
零時
「つーか、こんな会話絶対草田先輩の前でしちゃ駄目だぞ」
静香
「あ……ああ、あの人は妙に女らしさに拘りがあるみたいだしな」
桃滋楼
「俺アイツ無理だ。男だったとか嘘だろ。キチガイだ」
零時
「先輩にも色々あるんだから、そう言ってやんなよ」
静香
「…………」
零時
「な、なんだよ」
静香
「いいや、別に」
静香
「零時、先輩で童貞捨ててからあの人の肩を持つことが多くないか?」
零時
「ぅえっ!?」
静香
「どうせ先輩に襲われて成り行きで童貞喪失だろうと思っていたが、もしや満更でもないのか?」
零時
「ぶべ、別にそんなことねーけどっ!?」
静香
「ふぅん」
ニヤニヤと嫌みったらしく笑う静香。それに対し、きっと俺は真っ赤だろう。
くっ、相手が静香だから完全に油断していた。そういうネタは興味無いと思ってたのに。
別に先輩のことを好きになったとか、そういうわけではない。でも男として初体験の相手ってほら……あれじゃん。
桃滋楼
「? どういう話の流れなんだ?」
静香
「お前は……本当にこういう話に疎いな」
桃滋楼
「は?」
零時
「別に大した話じゃねーし、もういいだろ。ほら急がないと遅れるぞ」
強引に話を区切り、二人の手を引っ張って外に出る。
《駅前》
羅斗
「あ、きたきた」
騒
「せんぱーい、こっちでーす!」
約束の時間まで五分ほど余裕があったが、それでも俺達より先輩と騒のほうが早かったようだ。
零時
「悪いな、待たせたみたいで」
騒
「いえいえ、先輩を待ってる時間もまた至福のときですから」
純粋な笑顔でそんなことを言われると困る。毒舌さえ出なければ普通に美少女なんだから。
羅斗
「おー、桃ちゃんが女の子の服着てる!」
桃滋楼
「黙れ! 見んな! 消えろ!」
羅斗
「うっわー酷い言われようだこと」
そう言う先輩は私服だ。騒もだけど。
制服があれだけ露出全開だったから心配してたが、普通の格好で良かった。
零時
「先輩、今日は普通なんですね」
羅斗
「ん? あー、まぁねぇ」
羅斗
「あんな格好、学校以外でしたら露出狂と間違われて捕まるじゃん」
自覚あったんだ……
羅斗
「それより、全員揃ったんだからお店にれっつごー!」
騒
「えへへへ、先輩と一緒にショッピングだ~」
静香
「完全に僕達の存在を認識していないな」
桃滋楼
「突っかかってくるよりいいだろ。ウゼェし」
《デパート店内》
やってきたのは、数年前に駅前に出来た大型のデパートだった。
零時
「開店セールの時に来たっきりだったなーここ」
この辺りでは今までに無く大規模な店だったので、開店当時は母さんに連れまわされた覚えがある。
静香
「ああ、あの時は本当に疲れたな」
ちなみに静香も被害者仲間であった。
羅斗
「おー、そういう会話地元民っぽいねー」
騒
「くっ……やっぱり幼馴染ってずるいです」
羅斗
「さわちゃんは家から通ってるでしょ? この辺りに住んでたんじゃないの?」
騒
「あたしは今年からおばーちゃんの家に住まわせてもらってるだけで、実家は遠いんです」
羅斗
「そなんだ。ま、私も同じようなものだけど」
先輩も寮住まいだったはずだ。女にしてしまってから、一度うちに来るかと声をかけたが「えー、寮でいいよ。ヤりたい放題だし」と言い自ら寮に残っている。ビッチだからこその選択だ。
羅斗
「桃ちゃんは……見たら分かるね」
伏嶋は物珍しそうに店内を見回していた。
桃滋楼
「俺、こういうでっかいとこ来たことねぇ」
騒
「でしょうね。田舎モノ丸出しって感じです」
――ドカッ!
騒
「いったあぁ!」
桃滋楼
「悪かったな田舎者でよ!」
騒
「殴ることないじゃないですかっ!」
羅斗
「はいはい、喧嘩しない喧嘩しない」
先輩は二人をなだめつつ、上手く洋服店の方へと誘導していった。
こうして見ていると、なんだか姉と妹みたいだ。案外面倒見がいいのかもしれない。
《洋服店》
羅斗
「ほら、これとか似合うんじゃない?」
静香
「い、いやそれは、派手すぎるといいますか……」
騒
「じゃあこれなんてどうですか? ワンピース」
静香
「ピンクとか難易度高すぎだろう」
騒
「えー、これ着たら絶対リアルしずかちゃんになるのにー」
静香
「ぶっ殺してやろうか!」
羅斗
「こっちは桃ちゃんに似合いそうー」
桃滋楼
「スカート系はやめてくれって言ってんだろ!」
羅斗
「何言ってんの、今足出さずにいつ出すの」
桃滋楼
「いつまでも出さなきゃいいんじゃねーの!?」
羅斗
「勿体無い! それは勿体無いよ桃ちゃん!」
桃滋楼
「普通にジーパンとかで歩いてる女だっているだろうがよぉ!」
先輩と騒が、代わるがわる静ちゃん桃ちゃんに似合いそうなものを選びまくり、否定される。
そんなことをかれこれ十分近く繰り返しているのだが、未だに進展は見られなかった。
しかし……これは想像以上に居づらいぞ。
女物の洋服売り場ってだけでもう場違いなのに、更に女子四人に囲まれているこの状況。
さっきから通行人にチラチラ見られてるし、もう恥ずかしくて居たたまれないです。
羅斗
「ほら、ゼロ君もこれ桃ちゃんに似合うと思うでしょ?」
零時
「あ、え、は、はい」
せっかく話しかけてもらっても、キョドって会話につなげられない。俺情けなさすぎ。泣ける。
羅斗
「ほら似合うってー。じゃ、こっちもアリだよねぇ」
先輩はそんな俺に気づいているようだ。手助けするように何度も話を振ってくれる。
でも、できれば俺はこの空間から出たいです。
零時
「はい、いいと思われますです、はい」
羅斗
「…………」(ジト目)
うわ、先輩が「こいつもう駄目だな」って目をしはじめた!
羅斗
「…………!」(笑顔)
あれ? と思ったら急に笑顔に……
羅斗
「ゼロ君、ちょっとこっち来て」
零時
「えっ!? ち、ちょっ」
ニコニコと笑う草田先輩に首根っこをひっ捕まれ、ずるずると引きずられる。
《試着室》
――ドサッ!
零時
「うわっ!?」
わけも分からないまま、どこかに放り投げられた。
零時
「いっててて……?」
ここは……試着室の中?
羅斗
「ゼロくーん、お姉さんとお遊びしよう」
カーテンの向こうから、子供をあやすような言葉が投げかけられる。
い、嫌な予感しかしねー!
零時
「な、なんでしょう……」
羅斗
「私がいいよって言うまで、絶対に動かないで、喋らないで欲しいの」
零時
「なぜ……」
羅斗
「面白いことするから」
顔が見えなくても、悪戯をしかける子供のように笑う姿が容易に想像できてしまう。
羅斗
「じゃ、ゲームスタートっ」
その言葉と同時に、パタパタとどこかに駆けて行く足音がした。
え……えっ? ちょっと待て、なにそれ。いやいやいや、困るんですけど! 喋るな動くなって、言われなくても無理だよ!
だってここレディース服の売り場ですよ? そこの試着室ですよ?
そんな所から男が出てきたら、確実に変態じゃん!
つーかずっと居ても変態だよ。どの道変態にしかなれねーよ。どうすればいいの俺。
ここは素直に従って、先輩が助け出してくれるのを待つしかないのか……
そんなことを考えていたら、また先輩の声が近づいてきた。
羅斗
「桃ちゃんブラしてないでしょー」
桃滋楼
「でっ、できるわけねーだろあんなもん!」
…………嫌な予感が膨れ上がった。
羅斗
「駄目だってば、そこそこおっきいんだし垂れるよ? ズボン許してもそれは許さない」
桃滋楼
「おおお大きさとかわっわかんねーし」
羅斗
「大きいです。ブラ必須です。いらないのは静香ちゃんレベルだけです」
桃滋楼
「くそ、だから俺だけ連れてきやがったのか」
羅斗
「目測でこんなもんかな、って大きさの奴見繕ってきたから、合いそうだったら買うよ」
羅斗
「つけ方も今からおしえたげる」
桃滋楼
「い、いい! いらないっ!」
羅斗
「え、自分でつけれるの?」
桃滋楼
「うぐ……そ、それは……無理」
羅斗
「でしょ? なら大人しく言うこと聞く」
桃滋楼
「わっ!? な、なにすんだ……っ」
零時
「――――ッ!!」
心の準備はしていたが、目隠しされた伏嶋と、とてもいやらしく笑う草田先輩が入ってきて、さすがに言葉を失った。
桃滋楼
「なんで目隠しすん、だよ……」
羅斗
「桃ちゃんピュアだから、自分の身体直視できないと思って」
桃滋楼
「それは……で、できねーけど……」
なんか伏嶋を気遣ってるみたいなこと言ってるけど、絶対嘘だ。
にやにやとこっちを見てくるその顔で分かる。目隠しは俺の存在を隠すためでしかない。
策士だ……そして最低のビッチだ。
羅斗
「こうでもしないと、桃ちゃん開き直れないでしょ?」
桃滋楼
「え、なに……」
羅斗
「はいセーター捲くるよ」
先輩が伏嶋の服に手をかける。
ああダメだこれ。見ちゃだめだってわかってるのに。見てみたい気持ちもある。動けない。この状況で理性なんて保てるほど聖者になれません。
と…
桃滋楼
「あ……」
あと少しで胸が露出するというタイミングで、ぱらりと伏嶋の目隠しが落ちた。
零時・羅斗
「あっ」
目が合う。
伏嶋はボフっと顔を真っ赤にして、ぶるぶる身体をふるわせる。
当然だ。自分でも直視できない身体を見られる寸前だったのだから。
なので、伏嶋がキレるのは当然で……
桃滋楼
「うがあああああああっ!!」
俺の顔面に伏嶋の拳が直撃するのも、当然のことだった。
ああ、目の前が……真っ白に…………
《デパート内》
零時
「ハッ!」
目を覚ますと、白く光る照明が視界一杯に広がった。
あれ、ここは……どこだ? 天国か? 走馬灯が見えた気がしたんだけど……
羅斗
「あ、よかった起きてくれた」
零時
「せんぱい……」
羅斗
「桃ちゃんすごいねー、ゼロ君十分くらい気絶してたよ。どんだけ本気で殴ったの」
桃滋楼
「十分で済んで良かったと思え!」
そうだ、俺は伏嶋のあられもない姿を見た罪でぶん殴られるの刑になったんだっけ。
身体を起こす。殴られたのは右頬らしく、触ってみるとまだ少し熱を持っていた。
腫れてはいないっぽいけど、気絶するってマジどんだけだよ。不良もどき怖すぎる。
羅斗
「最初は鼻血も出てけど、寝てる間に止まったみたい」
零時
「マジすか」
でも、あれは言いなりになった俺にも責任はあるからなぁ。
零時
「伏嶋、ごめん。俺……」
ちゃんと謝罪をしようと、伏嶋のほうを向く。
桃滋楼
「全部金髪に聞いた。こいつもぶん殴ったからもういい」
伏嶋は私服になっていた。俺が倒れている間に本来の目的は達成されたらしい。
びっくりした。制服でもそうだったけど、何処からどう見ても普通の女子だ。男子校で不良だと恐れられていたとは思えない。
あんな姿をみたのも相まってか、とても可愛く思えた。口から出る言葉さえなければ完璧だっただろう。
羅斗
「私は頭はたかれたー。痛かったー」
桃滋楼
「グーで腹パンされなかっただけいいだろ」
羅斗
「うおぉ、今わりと本気で背筋が凍った……」
やっぱり女になっても物騒な奴だった。
零時
「でも本当に悪かったよ。もうあんなことにならないように注意するし」
桃滋楼
「んなこと当然……」
桃滋楼
「ぶっ」
え?
今までこっちを見ていなかった伏嶋が、俺と目が合った瞬間に笑い出した。
え、なにそれ。何で人のこと見て笑うの。あんなことがあった後なのに。
零時
「俺の顔になんかついてる?」
桃滋楼
「そ、そうじゃねー……ぷふっ」
なんかむっちゃ笑い堪えてますけど!?
怖い。怒られるよりマシだったのかもしれないけど、でも怖い。
零時
「せ、先輩……まさか俺の顔に落書きしたとか?」
羅斗
「そんな小学生みたいなことしないよ。私のことどういう目で見てるの」
零時
「あ、ごめんなさい」
そうですね、小学生とビッチは似ても似つかないですもんね。世界中の小学生ごめんなさい。
羅斗
「桃ちゃんが笑ってる理由は、これかな」
零時
「え?」
ずい、と紙袋を差し出される。さっきのショップのマーク入りだ。
零時
「これは……?」
羅斗
「怒ってる桃ちゃんをなだめようと思ってね、さっきのお店で適当に買って気絶中に着替えさせたの。で、これゼロ君が元々着てた服」
俺が倒れるまでいた店は、伏嶋と静香の私服選びのために来ていた場所である。
分かりきっていることだが、当然女性用の服しか売っていない。
零時
「…………」
立ち上がり、鏡のついた柱の目の前に立つ。
零時
「…………」
せめて、フリル系はやめてほしかった。
ゲームテキスト形式なので背景やキャラ名の指定が残っています。
原作ゲームは18禁ですが、今作は18禁シーンを削除し全年齢版として公開します。
PCを持っていない方のために、同じく全年齢版の体験版プレイ動画もございます。
詳しくは「はとごろTIMES」のホームページをご覧下さい。
また、漫画も投稿しています。そちらも是非ご覧下さい。
《土曜日》
《実家・居間》
静香
「そろそろ出るか」
時間を確認する。先輩達との約束の時間が近づいていた。
私服を持っていない静香は制服を着ている。俺は普通に私服だ。
別に土曜に学校があることも珍しくはないし、変に目立ちはしないだろう。
それに……
桃滋楼
「ま、マジでこの格好で行くのかよ……」
今日ばかりは、伏嶋も男装ではなく普通の制服を着せたことだし。
学校では元々女が居ること自体おかしいから何も言われないが、街中で学ランは絶対に目立つ。
よって、母さんがマザーコネクションで調達してきた女子制服の出番というわけだ。
顔を真っ赤にし、スカートを引っ張って少しでも足を隠そうとしている姿はとても可愛い。
桃滋楼
「うぅ……なんだよこれ、おかしいだろ。短すぎんだろ、これ」
桃滋楼
「こんな布一枚で街を練り歩くなんてキチガイじゃねーの? 女ってマジわっかんねぇ」
零時
「定められてる正装だし、キチガイではないと思うけど」
静香
「黒タイツを穿いているのに、スカート伸ばしてなんの意味があるんだ?」
桃滋楼
「タイツはいてようが見えるもんは見えるだろっ」
静香
「そうなのか?」
零時
「俺に聞くなよ。俺が穿いたことあったらキモイだろ」
静香
「僕だって、タイツなんて触ったことすら無いんだ」
桃滋楼
「穿いてる俺がおかしいみたいな言い方すんじゃねーよ!」
静香
「そんなことは無いさ。似合ってると思うぞ?」
零時
「そだな。しかしタイツときたか……俺絶対伏嶋はジャージとか穿いてくると思った」
アレは駄目だ。色気も無ければ可愛げも無い。あれこそキチガイのやることだ。
桃滋楼
「最初はそれも考えたけど、お前の母さんに全力で止められた」
初めて母さんの存在が輝いて見えた瞬間だった。グッジョブ、母さん。あんた神や。
桃滋楼
「パンツ丸出しは無理って言ったら、なら黒タイツ貸してあげるって言われた」
静香
「お前は今、僕に向かってパンツ丸出しと言ったか?」
桃滋楼
「似たようなもんだろ」
静香
「……否定の言葉が思い浮かばない」
やはり静香も元男。スカートについての意識は皆一緒のようだった。
零時
「つーか、こんな会話絶対草田先輩の前でしちゃ駄目だぞ」
静香
「あ……ああ、あの人は妙に女らしさに拘りがあるみたいだしな」
桃滋楼
「俺アイツ無理だ。男だったとか嘘だろ。キチガイだ」
零時
「先輩にも色々あるんだから、そう言ってやんなよ」
静香
「…………」
零時
「な、なんだよ」
静香
「いいや、別に」
静香
「零時、先輩で童貞捨ててからあの人の肩を持つことが多くないか?」
零時
「ぅえっ!?」
静香
「どうせ先輩に襲われて成り行きで童貞喪失だろうと思っていたが、もしや満更でもないのか?」
零時
「ぶべ、別にそんなことねーけどっ!?」
静香
「ふぅん」
ニヤニヤと嫌みったらしく笑う静香。それに対し、きっと俺は真っ赤だろう。
くっ、相手が静香だから完全に油断していた。そういうネタは興味無いと思ってたのに。
別に先輩のことを好きになったとか、そういうわけではない。でも男として初体験の相手ってほら……あれじゃん。
桃滋楼
「? どういう話の流れなんだ?」
静香
「お前は……本当にこういう話に疎いな」
桃滋楼
「は?」
零時
「別に大した話じゃねーし、もういいだろ。ほら急がないと遅れるぞ」
強引に話を区切り、二人の手を引っ張って外に出る。
《駅前》
羅斗
「あ、きたきた」
騒
「せんぱーい、こっちでーす!」
約束の時間まで五分ほど余裕があったが、それでも俺達より先輩と騒のほうが早かったようだ。
零時
「悪いな、待たせたみたいで」
騒
「いえいえ、先輩を待ってる時間もまた至福のときですから」
純粋な笑顔でそんなことを言われると困る。毒舌さえ出なければ普通に美少女なんだから。
羅斗
「おー、桃ちゃんが女の子の服着てる!」
桃滋楼
「黙れ! 見んな! 消えろ!」
羅斗
「うっわー酷い言われようだこと」
そう言う先輩は私服だ。騒もだけど。
制服があれだけ露出全開だったから心配してたが、普通の格好で良かった。
零時
「先輩、今日は普通なんですね」
羅斗
「ん? あー、まぁねぇ」
羅斗
「あんな格好、学校以外でしたら露出狂と間違われて捕まるじゃん」
自覚あったんだ……
羅斗
「それより、全員揃ったんだからお店にれっつごー!」
騒
「えへへへ、先輩と一緒にショッピングだ~」
静香
「完全に僕達の存在を認識していないな」
桃滋楼
「突っかかってくるよりいいだろ。ウゼェし」
《デパート店内》
やってきたのは、数年前に駅前に出来た大型のデパートだった。
零時
「開店セールの時に来たっきりだったなーここ」
この辺りでは今までに無く大規模な店だったので、開店当時は母さんに連れまわされた覚えがある。
静香
「ああ、あの時は本当に疲れたな」
ちなみに静香も被害者仲間であった。
羅斗
「おー、そういう会話地元民っぽいねー」
騒
「くっ……やっぱり幼馴染ってずるいです」
羅斗
「さわちゃんは家から通ってるでしょ? この辺りに住んでたんじゃないの?」
騒
「あたしは今年からおばーちゃんの家に住まわせてもらってるだけで、実家は遠いんです」
羅斗
「そなんだ。ま、私も同じようなものだけど」
先輩も寮住まいだったはずだ。女にしてしまってから、一度うちに来るかと声をかけたが「えー、寮でいいよ。ヤりたい放題だし」と言い自ら寮に残っている。ビッチだからこその選択だ。
羅斗
「桃ちゃんは……見たら分かるね」
伏嶋は物珍しそうに店内を見回していた。
桃滋楼
「俺、こういうでっかいとこ来たことねぇ」
騒
「でしょうね。田舎モノ丸出しって感じです」
――ドカッ!
騒
「いったあぁ!」
桃滋楼
「悪かったな田舎者でよ!」
騒
「殴ることないじゃないですかっ!」
羅斗
「はいはい、喧嘩しない喧嘩しない」
先輩は二人をなだめつつ、上手く洋服店の方へと誘導していった。
こうして見ていると、なんだか姉と妹みたいだ。案外面倒見がいいのかもしれない。
《洋服店》
羅斗
「ほら、これとか似合うんじゃない?」
静香
「い、いやそれは、派手すぎるといいますか……」
騒
「じゃあこれなんてどうですか? ワンピース」
静香
「ピンクとか難易度高すぎだろう」
騒
「えー、これ着たら絶対リアルしずかちゃんになるのにー」
静香
「ぶっ殺してやろうか!」
羅斗
「こっちは桃ちゃんに似合いそうー」
桃滋楼
「スカート系はやめてくれって言ってんだろ!」
羅斗
「何言ってんの、今足出さずにいつ出すの」
桃滋楼
「いつまでも出さなきゃいいんじゃねーの!?」
羅斗
「勿体無い! それは勿体無いよ桃ちゃん!」
桃滋楼
「普通にジーパンとかで歩いてる女だっているだろうがよぉ!」
先輩と騒が、代わるがわる静ちゃん桃ちゃんに似合いそうなものを選びまくり、否定される。
そんなことをかれこれ十分近く繰り返しているのだが、未だに進展は見られなかった。
しかし……これは想像以上に居づらいぞ。
女物の洋服売り場ってだけでもう場違いなのに、更に女子四人に囲まれているこの状況。
さっきから通行人にチラチラ見られてるし、もう恥ずかしくて居たたまれないです。
羅斗
「ほら、ゼロ君もこれ桃ちゃんに似合うと思うでしょ?」
零時
「あ、え、は、はい」
せっかく話しかけてもらっても、キョドって会話につなげられない。俺情けなさすぎ。泣ける。
羅斗
「ほら似合うってー。じゃ、こっちもアリだよねぇ」
先輩はそんな俺に気づいているようだ。手助けするように何度も話を振ってくれる。
でも、できれば俺はこの空間から出たいです。
零時
「はい、いいと思われますです、はい」
羅斗
「…………」(ジト目)
うわ、先輩が「こいつもう駄目だな」って目をしはじめた!
羅斗
「…………!」(笑顔)
あれ? と思ったら急に笑顔に……
羅斗
「ゼロ君、ちょっとこっち来て」
零時
「えっ!? ち、ちょっ」
ニコニコと笑う草田先輩に首根っこをひっ捕まれ、ずるずると引きずられる。
《試着室》
――ドサッ!
零時
「うわっ!?」
わけも分からないまま、どこかに放り投げられた。
零時
「いっててて……?」
ここは……試着室の中?
羅斗
「ゼロくーん、お姉さんとお遊びしよう」
カーテンの向こうから、子供をあやすような言葉が投げかけられる。
い、嫌な予感しかしねー!
零時
「な、なんでしょう……」
羅斗
「私がいいよって言うまで、絶対に動かないで、喋らないで欲しいの」
零時
「なぜ……」
羅斗
「面白いことするから」
顔が見えなくても、悪戯をしかける子供のように笑う姿が容易に想像できてしまう。
羅斗
「じゃ、ゲームスタートっ」
その言葉と同時に、パタパタとどこかに駆けて行く足音がした。
え……えっ? ちょっと待て、なにそれ。いやいやいや、困るんですけど! 喋るな動くなって、言われなくても無理だよ!
だってここレディース服の売り場ですよ? そこの試着室ですよ?
そんな所から男が出てきたら、確実に変態じゃん!
つーかずっと居ても変態だよ。どの道変態にしかなれねーよ。どうすればいいの俺。
ここは素直に従って、先輩が助け出してくれるのを待つしかないのか……
そんなことを考えていたら、また先輩の声が近づいてきた。
羅斗
「桃ちゃんブラしてないでしょー」
桃滋楼
「でっ、できるわけねーだろあんなもん!」
…………嫌な予感が膨れ上がった。
羅斗
「駄目だってば、そこそこおっきいんだし垂れるよ? ズボン許してもそれは許さない」
桃滋楼
「おおお大きさとかわっわかんねーし」
羅斗
「大きいです。ブラ必須です。いらないのは静香ちゃんレベルだけです」
桃滋楼
「くそ、だから俺だけ連れてきやがったのか」
羅斗
「目測でこんなもんかな、って大きさの奴見繕ってきたから、合いそうだったら買うよ」
羅斗
「つけ方も今からおしえたげる」
桃滋楼
「い、いい! いらないっ!」
羅斗
「え、自分でつけれるの?」
桃滋楼
「うぐ……そ、それは……無理」
羅斗
「でしょ? なら大人しく言うこと聞く」
桃滋楼
「わっ!? な、なにすんだ……っ」
零時
「――――ッ!!」
心の準備はしていたが、目隠しされた伏嶋と、とてもいやらしく笑う草田先輩が入ってきて、さすがに言葉を失った。
桃滋楼
「なんで目隠しすん、だよ……」
羅斗
「桃ちゃんピュアだから、自分の身体直視できないと思って」
桃滋楼
「それは……で、できねーけど……」
なんか伏嶋を気遣ってるみたいなこと言ってるけど、絶対嘘だ。
にやにやとこっちを見てくるその顔で分かる。目隠しは俺の存在を隠すためでしかない。
策士だ……そして最低のビッチだ。
羅斗
「こうでもしないと、桃ちゃん開き直れないでしょ?」
桃滋楼
「え、なに……」
羅斗
「はいセーター捲くるよ」
先輩が伏嶋の服に手をかける。
ああダメだこれ。見ちゃだめだってわかってるのに。見てみたい気持ちもある。動けない。この状況で理性なんて保てるほど聖者になれません。
と…
桃滋楼
「あ……」
あと少しで胸が露出するというタイミングで、ぱらりと伏嶋の目隠しが落ちた。
零時・羅斗
「あっ」
目が合う。
伏嶋はボフっと顔を真っ赤にして、ぶるぶる身体をふるわせる。
当然だ。自分でも直視できない身体を見られる寸前だったのだから。
なので、伏嶋がキレるのは当然で……
桃滋楼
「うがあああああああっ!!」
俺の顔面に伏嶋の拳が直撃するのも、当然のことだった。
ああ、目の前が……真っ白に…………
《デパート内》
零時
「ハッ!」
目を覚ますと、白く光る照明が視界一杯に広がった。
あれ、ここは……どこだ? 天国か? 走馬灯が見えた気がしたんだけど……
羅斗
「あ、よかった起きてくれた」
零時
「せんぱい……」
羅斗
「桃ちゃんすごいねー、ゼロ君十分くらい気絶してたよ。どんだけ本気で殴ったの」
桃滋楼
「十分で済んで良かったと思え!」
そうだ、俺は伏嶋のあられもない姿を見た罪でぶん殴られるの刑になったんだっけ。
身体を起こす。殴られたのは右頬らしく、触ってみるとまだ少し熱を持っていた。
腫れてはいないっぽいけど、気絶するってマジどんだけだよ。不良もどき怖すぎる。
羅斗
「最初は鼻血も出てけど、寝てる間に止まったみたい」
零時
「マジすか」
でも、あれは言いなりになった俺にも責任はあるからなぁ。
零時
「伏嶋、ごめん。俺……」
ちゃんと謝罪をしようと、伏嶋のほうを向く。
桃滋楼
「全部金髪に聞いた。こいつもぶん殴ったからもういい」
伏嶋は私服になっていた。俺が倒れている間に本来の目的は達成されたらしい。
びっくりした。制服でもそうだったけど、何処からどう見ても普通の女子だ。男子校で不良だと恐れられていたとは思えない。
あんな姿をみたのも相まってか、とても可愛く思えた。口から出る言葉さえなければ完璧だっただろう。
羅斗
「私は頭はたかれたー。痛かったー」
桃滋楼
「グーで腹パンされなかっただけいいだろ」
羅斗
「うおぉ、今わりと本気で背筋が凍った……」
やっぱり女になっても物騒な奴だった。
零時
「でも本当に悪かったよ。もうあんなことにならないように注意するし」
桃滋楼
「んなこと当然……」
桃滋楼
「ぶっ」
え?
今までこっちを見ていなかった伏嶋が、俺と目が合った瞬間に笑い出した。
え、なにそれ。何で人のこと見て笑うの。あんなことがあった後なのに。
零時
「俺の顔になんかついてる?」
桃滋楼
「そ、そうじゃねー……ぷふっ」
なんかむっちゃ笑い堪えてますけど!?
怖い。怒られるよりマシだったのかもしれないけど、でも怖い。
零時
「せ、先輩……まさか俺の顔に落書きしたとか?」
羅斗
「そんな小学生みたいなことしないよ。私のことどういう目で見てるの」
零時
「あ、ごめんなさい」
そうですね、小学生とビッチは似ても似つかないですもんね。世界中の小学生ごめんなさい。
羅斗
「桃ちゃんが笑ってる理由は、これかな」
零時
「え?」
ずい、と紙袋を差し出される。さっきのショップのマーク入りだ。
零時
「これは……?」
羅斗
「怒ってる桃ちゃんをなだめようと思ってね、さっきのお店で適当に買って気絶中に着替えさせたの。で、これゼロ君が元々着てた服」
俺が倒れるまでいた店は、伏嶋と静香の私服選びのために来ていた場所である。
分かりきっていることだが、当然女性用の服しか売っていない。
零時
「…………」
立ち上がり、鏡のついた柱の目の前に立つ。
零時
「…………」
せめて、フリル系はやめてほしかった。
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