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伝言ゲーム1
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※この作品は同人ゲーム「男子校でハーレムが作れる俺マジ勝ち組」からテキストを抜き出したノベル版です。
ゲームテキスト形式なので背景やキャラ名の指定が残っています。
原作ゲームは18禁ですが、今作は18禁シーンを削除し全年齢版として公開します。
PCを持っていない方のために、同じく全年齢版の体験版プレイ動画もございます。
詳しくは「はとごろTIMES」のホームページをご覧下さい。
また、漫画も投稿しています。そちらも是非ご覧下さい。
《第三者視点》《教室》
騒
「あれ」
騒がいつものように零時のクラス行くと、そこに見知った顔はいなかった。
零時のいない場所に長居する理由などない。すぐに踵を返し……ふと教室から聞こえた会話に気をとられ、足を止める。
男1
「マジかよ、しずかちゃんと長野がねぇ」
男2
「ガセだろ。普通に考えて」
男3
「いやいや、この耳でちゃんと聞いたし! それに、しずかちゃんみたいなタイプは、こうやってこっそり交際するもんだって」
騒
(しずかちゃん先輩の話……?)
騒にとって、零時以外の人間はいないも同然で、普段は意識することすらなかった。
だが最近は魔法の影響で、静香をはじめ零時の周囲の人間のことも少しずつ気にしはじめていた。
だから静香の名前が聞こえたとき、無意識に聞き耳を立ててしまったのだ。
男1
「にしても、俺たちの紅一点が長野とねぇ」
男2
「伏嶋もいるから紅一点ではねーけどな」
男1
「できてんのは間違いねーんだろ? あーテンション下がるー」
騒
「なっ……」
騒
(し、しずかちゃん先輩が……? え……?)
騒
(長野ってのが誰だか知らないけど、できてるってことは、そいつと甘酸っぱい関係に!?)
騒
(ああああの堅物で恋愛なんて下らないとか言ってそうなしずかちゃん先輩が!?)
騒
「あ、あたしだってまだ先輩とどうにもなってないのに!」
羅斗
「そんな悲しいこと大声で叫んでどうしたの」
騒
「うぉあぁっ!?」
例のごとく突然現れた羅斗に声をかけられ、騒は飛びのいて距離をとる。
羅斗
「そんな警戒しなくてもいーじゃん。酷いなぁ」
騒
「くっ草田先輩! いいいいきなりタケノコみたいにヒョコヒョコ生えてこないでくださいよっ!」
羅斗
「普通に声かけただけなのに、何この言われよう」
騒
「って、そんなことより大変なんですよっ!」
羅斗
「そんなこととか言うしー。この子マジむかつくー」
騒
「しずかちゃん先輩が……しずかちゃん先輩が……っ」
羅斗
「しずかちゃん? あの子がどうかしたの?」
騒はたった今盗み聞いたことを頭の中で反復し、その中でも重要だと思った部分だけを抜き出して羅斗に伝える。
騒
「できちゃったらしいです!」
羅斗
「え」
羅斗
「え、えぇぇえぇぇえぇっ!?」
騒
「大変でしょう!?」
羅斗
「い、いや……嘘でしょ、さすがにそれは」
騒
「先輩のクラスの人が言ってたんです。相手は長野とかいう人らしいですけど」
羅斗
「あー、ゼロ君達のクラスにそんな名字の人いた気がするなー」
羅斗
「でも、しずかちゃんでしょ? さすがにないよ。あの子は学生の間にそんなことするタイプじゃないし」
騒
「あたしもそう思ったんですけど、ありえないとも言い切れないというか」
騒
「先輩みたいなビッチじゃないんだし、ちゃんとした恋愛しそうで」
羅斗
「まぁ……そうだけど」
羅斗
(確かに、しずかちゃんは好きになった相手に迫られたらナマで受け入れそうなタイプかも……)
羅斗
(たまたま一回ヤっちゃったのが偶然って感じかな? うっわー、やっぱ避妊って大事だわ)
騒
「あたし、もうしずかちゃん先輩と顔を合わせられる自信ないです。自分のクラスに戻ります」
羅斗
「あ、うん。ば、ばいばい……」
虚ろな目をしたまま、騒はふらふらと廊下を歩いていった。
羅斗
(……あのしずかちゃんに女として先を越されるのは、確かにショックだ)
羅斗は元々女性になったことに対して、誇りとまではいかないものの、少しのプライドを持っていた。
だから、騒の言ったことを信じたくないし、受け入れられない。
羅斗
(どうせ何かの聞き間違いでしょ。今度本人に聞いてみればいいや)
そう思い顔を上げたら、なんというタイミングか、静香が教室に向かって歩いてきていた。
どうやら一人だけのようだ。静香の隣に零時がいないのは、なんだか珍しい光景だった。
羅斗
「やっほーしずかちゃん。今日はゼロ君はいないの?」
静香
「誰がしずかちゃんですか。そんないつも一緒にはいません」
羅斗
「いやいるでしょ。それとも、長野君とやらが関係してるのかなー?」
遠まわしに、先ほど騒に聞かされたことを確かめようと話を振ってみる。
羅斗
(ま、しずかちゃんのことだし「意味が分からないんですけど」とか返ってくるんだろうなー)
そんな風に高を括っていたから、羅斗は静香の反応に驚かされることになる。
静香
「な、何で先輩が長野とのことを知ってるんですか……!?」
羅斗
「えっ」
静香
「だ、誰から聞いたのか知りませんけど、あまり言いふらさないでください」
静香
「他人に聞かせるようなものではないですし……」
羅斗
「え……え? ほ、ほんと、なの……あの話」
静香
「ま、まぁその……多分」
羅斗
「…………そ、そう」
羅斗
「だ、大丈夫だよ。私そういうことは言わないし。絶対。うん、大丈夫」
静香
「そうして頂けると、助かります」
羅斗
「あ、はは……じゃあ、私行くね。お大事にっ!」
静香
「あ、先輩っ!?」
静香
「……に、逃げられた?」
《廊下》
羅斗
「マジだった……そんな……嘘……」
桃滋楼
「うお……何ブツブツ呟いてんだよキメェな」
放心状態で廊下を歩いていた羅斗の近くを、偶然桃滋楼が通りかかった。
桃滋楼の性格からして、普段なら羅斗に声などかけなかっただろう。というか、今も声をかけたわけではない。
ただ、つい思ったことが口に出てしまうほど、今の羅斗の様子が酷かったのだ。
羅斗
「桃ちゃん……桃ちゃーんっ!」
桃滋楼
「げっ、こっちくんな変態がうつる!」
羅斗
「さわちゃんといいキミといい、私の扱い酷すぎでしょ!?」
羅斗
「って、そんなことどうでもいいんだよー」
桃滋楼
「あ?」
羅斗
「しずかちゃんに……しずかちゃんに女として先越されたぁー!」
桃滋楼
「静香に……? よくわかんねーけど、静香がなんかあったのか?」
羅斗
「子供」
桃滋楼
「は?」
羅斗
「子供、できたらしい」
桃滋楼
「…………は?」
羅斗
「もぅ、何度言わせる気なの。へこむからあんま言いたくないんだけどー」
桃滋楼
「いや……いやいや……いやいやいや」
羅斗
「あ、その反応なんかゼロ君っぽい」
桃滋楼
「そりゃ誰でもこんな反応するだろ!」
桃滋楼
「つーか、ありえねーこと言ってんじゃねーよ! 静香がんなことになるわけねーだろ!」
桃滋楼
「子供ってその、あ、アレじゃねーか。アレがああなっちゃうアレじゃねーか」
羅斗
「言ってることアレすぎて伝わらないよ」
羅斗
「でもホントなんだって! だって本人に確認までしたんだよ!?」
桃滋楼
「はあぁぁあぁ!?」
羅斗
「あんまり言いふらすなって言われたんだけど」
桃滋楼
「そのわりにサラッと俺に言ったな、オイ」
羅斗
「だって桃ちゃんはしずかちゃんの親友でしょ?」
桃滋楼
「!?」(驚き)
親友、という言葉の響きに、思わず頬を緩ませ染める桃滋楼。
桃滋楼
「そ、そういうこと言われると……言い返せなくなるじゃねーかよ」
羅斗
「あー、でも本人から言ってなかったってことは……」
桃滋楼
「!?」(ショック)
羅斗
(この子面白い……)
羅斗
「冗談だよ。というか、こういうことは親しい人にこそ言えないものだし」
桃滋楼
「そ、そうなら……いいけど……」
羅斗
「そうだよ。ゼロ君が魔法で悩んでたことを、私みたいな無関係な人間にしか相談できなかったのと同じ」
桃滋楼
「そう、か……」
羅斗
「しかし……あー! やっぱりショックでかいなー!」
羅斗
「私も手当たり次第に男喰ってないで、恋愛とかしたいー」
だったら手当たり次第に喰うなよ、と思った桃滋楼だったが、ピュアな心が邪魔してその言葉は表に出てこなかった。
桃滋楼
「恋愛……静香は誰だかと恋愛してそうなったのか?」
羅斗
「そりゃ、しずかちゃんの性格考えたらそうでしょ」
羅斗
「きっと一途に想い続けて結婚までいっちゃうんじゃない?」
桃滋楼
「け、結婚っ!?」
羅斗
「私もそろそろ、他の誰かを好きになる努力しよっかなぁ」
桃滋楼
「…………?」
羅斗
「っし、そうと決まったら即行動! ちょっと自分のクラス戻ってヤってくる!」
桃滋楼
「何でそうなんだ!?」
羅斗
「何事も性行為からってね!」
桃滋楼
「いや聞いたことねーよ! 何それが常識ですって顔で言ってんだ馬鹿か!」
羅斗
「じゃーねーっ」
羅斗、嵐のように去る。
独り取り残された桃滋楼は、与えられたとんでもない情報を独りで抱え、悶々とするのだった。
≪教室≫
桃滋楼
「はぁ…………」
桃滋楼
(静香が……恋人と……子供が…………結婚? 嘘だろ……俺、今あいつと顔合わせられねー)
静香
「おお、ようやく戻ってきたか」
桃滋楼
「!?」
教室に入った瞬間静香に声をかけられ、桃滋楼は後ろに飛びのいた。
静香と会うのが気まずいと思っていたが、当然教室に戻れば静香はそこにいる。
ただ、色々と理解しきれないことを考えていたせいで、そこまで頭が回らなかったのだ。
静香
「な、なんだ……何故僕を見て逃げる」
零時
「お前伏嶋になんかしたのか?」
静香
「そんなわけがないだろう」
静香の隣には、当然のように零時がいた。
桃滋楼
(あ……そういえば相手聞いてなかったけど、コイツと……なのか?)
桃滋楼
(確かに、いつもずっと一緒にいるし、もう結婚してるも同然だし、そう考えると自然なのかも……)
静香
「桃滋楼……? 本当に様子がおかしいぞ。どうした」
桃滋楼
「うぇっ!?」
桃滋楼
(ええええええっと、こ、こういう時って何言ったらいいんだ!? どうしよう、どうしようどうしよう!)
桃滋楼
「し……」
静香
「し?」
桃滋楼
「式には、呼んでくれると、嬉しいです」
静香
「すまん、意味がわからん」
桃滋楼
「お、俺はこんなでも、お前とその、と、友達のつもりだから……」
静香
「僕だってお前とは友達のつもりだが」
桃滋楼
「静香……っ!」
静香
「いやその……感動してくれるのは嬉しいが、僕としては先にさっきの言葉の意味を説明してほしい」
零時
「静香、なんか式に出んの? 表彰とか?」
桃滋楼
「え、お前とじゃねーの?」
零時
「俺も? いや、俺は何も知らないけど」
桃滋楼
「え……じ、じゃあ静香、誰と結婚すんの……」
静香
「誰とって、そんなの分かるわけ……」
静香
「………………」
零時
「………………」
静香・零時
「結婚んんんん!?」
二人がほぼ同時に叫び、桃滋楼は飛びのいて距離をあける。
だが、その程度で逃げられるはずがない。すぐに怖い顔をした静香に詰め寄られ、壁に追い詰められた。
静香
「僕が、誰と、どうなって結婚などという話になるのだ! というか、草田先輩でもないのにこんな早々と割り切って男と付き合えるか!」
桃滋楼
「ち、がうの……?」
静香
「ありえない! 断じて! どこのどいつだそんなことをお前に吹き込んだ馬鹿者はっ!!」
零時
「まー、普通に考えて静香がこんな歳で結婚はしねーだろうな」
桃滋楼
「お、俺だってそう思ったけど、でも静香本人が認めてたって聞いた……」
静香
「まともな貞操観念と常識を持っていたら、学生のうちから結婚しますなどと言うわけがないだろうが!」
静香
「そもそもお前はそんな言葉に惑わされるほど僕を信用していなかったのか!」
静香のもっともな意見に、桃滋楼は言葉を返せず黙り込む。
不良と恐れられる伏嶋桃滋楼が、委員長キャラの静香にひたすら怒鳴られているその様子は、珍しいを通り越して恐ろしかった。
零時
「せ、静香ちょっと落ち着けって。伏嶋かわいそうになってきた」
静香
「なんだその言い方は。まるで僕が弱い者いじめでもしているようではないか」
零時
「たいしてかわんねーよ、伏嶋泣きそうじゃねーか」
静香
「え……うわっ!?」
零時の言葉で、桃滋楼がぷるぷると震え涙を堪えていることに気づき、ようやく我に返る。
静香本人に怒っていたつもりはなく、ただ取り乱して責めるような口調になってしまっただけなのだが、聞いている側としては怒られているとしか思えない。
桃滋楼
「ご、ごめ……おれ、怒らせるつもりじゃなくて……」
静香
「お、怒ってないぞ。怒ってないから泣くな」
静香
「いきなり怒鳴ったのは悪かったな。ただ桃滋楼にそんなことを言われて驚いただけなんだ」
桃滋楼
「ほんとか……?」
静香
「ああ、本当だ。ほら、もう落ち着いたから大丈夫だぞ」
にっこりと笑顔で言う静香。
それを見て桃滋楼はほっと胸をなでおろすが、逆に隣にいる零時は冷汗を垂らした。
昔から静香を見てきた零時だけは分かる。この笑顔は落ち着いているときのものではない。
静香
「そうだな、桃滋楼を怒鳴るのはどう考えてもおかしかったな。お前は誰かから聞いた話をそのまま僕に伝えてくれたんだ」
静香
「僕が怒鳴るべき人間は、お前にそんなことを吹き込んでくれた馬鹿だ」
冷静になり、現状をしっかり理解したうえで誰かに制裁を加えるときの、正しすぎる怒りを含んだときの表情だ。
ゲームテキスト形式なので背景やキャラ名の指定が残っています。
原作ゲームは18禁ですが、今作は18禁シーンを削除し全年齢版として公開します。
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詳しくは「はとごろTIMES」のホームページをご覧下さい。
また、漫画も投稿しています。そちらも是非ご覧下さい。
《第三者視点》《教室》
騒
「あれ」
騒がいつものように零時のクラス行くと、そこに見知った顔はいなかった。
零時のいない場所に長居する理由などない。すぐに踵を返し……ふと教室から聞こえた会話に気をとられ、足を止める。
男1
「マジかよ、しずかちゃんと長野がねぇ」
男2
「ガセだろ。普通に考えて」
男3
「いやいや、この耳でちゃんと聞いたし! それに、しずかちゃんみたいなタイプは、こうやってこっそり交際するもんだって」
騒
(しずかちゃん先輩の話……?)
騒にとって、零時以外の人間はいないも同然で、普段は意識することすらなかった。
だが最近は魔法の影響で、静香をはじめ零時の周囲の人間のことも少しずつ気にしはじめていた。
だから静香の名前が聞こえたとき、無意識に聞き耳を立ててしまったのだ。
男1
「にしても、俺たちの紅一点が長野とねぇ」
男2
「伏嶋もいるから紅一点ではねーけどな」
男1
「できてんのは間違いねーんだろ? あーテンション下がるー」
騒
「なっ……」
騒
(し、しずかちゃん先輩が……? え……?)
騒
(長野ってのが誰だか知らないけど、できてるってことは、そいつと甘酸っぱい関係に!?)
騒
(ああああの堅物で恋愛なんて下らないとか言ってそうなしずかちゃん先輩が!?)
騒
「あ、あたしだってまだ先輩とどうにもなってないのに!」
羅斗
「そんな悲しいこと大声で叫んでどうしたの」
騒
「うぉあぁっ!?」
例のごとく突然現れた羅斗に声をかけられ、騒は飛びのいて距離をとる。
羅斗
「そんな警戒しなくてもいーじゃん。酷いなぁ」
騒
「くっ草田先輩! いいいいきなりタケノコみたいにヒョコヒョコ生えてこないでくださいよっ!」
羅斗
「普通に声かけただけなのに、何この言われよう」
騒
「って、そんなことより大変なんですよっ!」
羅斗
「そんなこととか言うしー。この子マジむかつくー」
騒
「しずかちゃん先輩が……しずかちゃん先輩が……っ」
羅斗
「しずかちゃん? あの子がどうかしたの?」
騒はたった今盗み聞いたことを頭の中で反復し、その中でも重要だと思った部分だけを抜き出して羅斗に伝える。
騒
「できちゃったらしいです!」
羅斗
「え」
羅斗
「え、えぇぇえぇぇえぇっ!?」
騒
「大変でしょう!?」
羅斗
「い、いや……嘘でしょ、さすがにそれは」
騒
「先輩のクラスの人が言ってたんです。相手は長野とかいう人らしいですけど」
羅斗
「あー、ゼロ君達のクラスにそんな名字の人いた気がするなー」
羅斗
「でも、しずかちゃんでしょ? さすがにないよ。あの子は学生の間にそんなことするタイプじゃないし」
騒
「あたしもそう思ったんですけど、ありえないとも言い切れないというか」
騒
「先輩みたいなビッチじゃないんだし、ちゃんとした恋愛しそうで」
羅斗
「まぁ……そうだけど」
羅斗
(確かに、しずかちゃんは好きになった相手に迫られたらナマで受け入れそうなタイプかも……)
羅斗
(たまたま一回ヤっちゃったのが偶然って感じかな? うっわー、やっぱ避妊って大事だわ)
騒
「あたし、もうしずかちゃん先輩と顔を合わせられる自信ないです。自分のクラスに戻ります」
羅斗
「あ、うん。ば、ばいばい……」
虚ろな目をしたまま、騒はふらふらと廊下を歩いていった。
羅斗
(……あのしずかちゃんに女として先を越されるのは、確かにショックだ)
羅斗は元々女性になったことに対して、誇りとまではいかないものの、少しのプライドを持っていた。
だから、騒の言ったことを信じたくないし、受け入れられない。
羅斗
(どうせ何かの聞き間違いでしょ。今度本人に聞いてみればいいや)
そう思い顔を上げたら、なんというタイミングか、静香が教室に向かって歩いてきていた。
どうやら一人だけのようだ。静香の隣に零時がいないのは、なんだか珍しい光景だった。
羅斗
「やっほーしずかちゃん。今日はゼロ君はいないの?」
静香
「誰がしずかちゃんですか。そんないつも一緒にはいません」
羅斗
「いやいるでしょ。それとも、長野君とやらが関係してるのかなー?」
遠まわしに、先ほど騒に聞かされたことを確かめようと話を振ってみる。
羅斗
(ま、しずかちゃんのことだし「意味が分からないんですけど」とか返ってくるんだろうなー)
そんな風に高を括っていたから、羅斗は静香の反応に驚かされることになる。
静香
「な、何で先輩が長野とのことを知ってるんですか……!?」
羅斗
「えっ」
静香
「だ、誰から聞いたのか知りませんけど、あまり言いふらさないでください」
静香
「他人に聞かせるようなものではないですし……」
羅斗
「え……え? ほ、ほんと、なの……あの話」
静香
「ま、まぁその……多分」
羅斗
「…………そ、そう」
羅斗
「だ、大丈夫だよ。私そういうことは言わないし。絶対。うん、大丈夫」
静香
「そうして頂けると、助かります」
羅斗
「あ、はは……じゃあ、私行くね。お大事にっ!」
静香
「あ、先輩っ!?」
静香
「……に、逃げられた?」
《廊下》
羅斗
「マジだった……そんな……嘘……」
桃滋楼
「うお……何ブツブツ呟いてんだよキメェな」
放心状態で廊下を歩いていた羅斗の近くを、偶然桃滋楼が通りかかった。
桃滋楼の性格からして、普段なら羅斗に声などかけなかっただろう。というか、今も声をかけたわけではない。
ただ、つい思ったことが口に出てしまうほど、今の羅斗の様子が酷かったのだ。
羅斗
「桃ちゃん……桃ちゃーんっ!」
桃滋楼
「げっ、こっちくんな変態がうつる!」
羅斗
「さわちゃんといいキミといい、私の扱い酷すぎでしょ!?」
羅斗
「って、そんなことどうでもいいんだよー」
桃滋楼
「あ?」
羅斗
「しずかちゃんに……しずかちゃんに女として先越されたぁー!」
桃滋楼
「静香に……? よくわかんねーけど、静香がなんかあったのか?」
羅斗
「子供」
桃滋楼
「は?」
羅斗
「子供、できたらしい」
桃滋楼
「…………は?」
羅斗
「もぅ、何度言わせる気なの。へこむからあんま言いたくないんだけどー」
桃滋楼
「いや……いやいや……いやいやいや」
羅斗
「あ、その反応なんかゼロ君っぽい」
桃滋楼
「そりゃ誰でもこんな反応するだろ!」
桃滋楼
「つーか、ありえねーこと言ってんじゃねーよ! 静香がんなことになるわけねーだろ!」
桃滋楼
「子供ってその、あ、アレじゃねーか。アレがああなっちゃうアレじゃねーか」
羅斗
「言ってることアレすぎて伝わらないよ」
羅斗
「でもホントなんだって! だって本人に確認までしたんだよ!?」
桃滋楼
「はあぁぁあぁ!?」
羅斗
「あんまり言いふらすなって言われたんだけど」
桃滋楼
「そのわりにサラッと俺に言ったな、オイ」
羅斗
「だって桃ちゃんはしずかちゃんの親友でしょ?」
桃滋楼
「!?」(驚き)
親友、という言葉の響きに、思わず頬を緩ませ染める桃滋楼。
桃滋楼
「そ、そういうこと言われると……言い返せなくなるじゃねーかよ」
羅斗
「あー、でも本人から言ってなかったってことは……」
桃滋楼
「!?」(ショック)
羅斗
(この子面白い……)
羅斗
「冗談だよ。というか、こういうことは親しい人にこそ言えないものだし」
桃滋楼
「そ、そうなら……いいけど……」
羅斗
「そうだよ。ゼロ君が魔法で悩んでたことを、私みたいな無関係な人間にしか相談できなかったのと同じ」
桃滋楼
「そう、か……」
羅斗
「しかし……あー! やっぱりショックでかいなー!」
羅斗
「私も手当たり次第に男喰ってないで、恋愛とかしたいー」
だったら手当たり次第に喰うなよ、と思った桃滋楼だったが、ピュアな心が邪魔してその言葉は表に出てこなかった。
桃滋楼
「恋愛……静香は誰だかと恋愛してそうなったのか?」
羅斗
「そりゃ、しずかちゃんの性格考えたらそうでしょ」
羅斗
「きっと一途に想い続けて結婚までいっちゃうんじゃない?」
桃滋楼
「け、結婚っ!?」
羅斗
「私もそろそろ、他の誰かを好きになる努力しよっかなぁ」
桃滋楼
「…………?」
羅斗
「っし、そうと決まったら即行動! ちょっと自分のクラス戻ってヤってくる!」
桃滋楼
「何でそうなんだ!?」
羅斗
「何事も性行為からってね!」
桃滋楼
「いや聞いたことねーよ! 何それが常識ですって顔で言ってんだ馬鹿か!」
羅斗
「じゃーねーっ」
羅斗、嵐のように去る。
独り取り残された桃滋楼は、与えられたとんでもない情報を独りで抱え、悶々とするのだった。
≪教室≫
桃滋楼
「はぁ…………」
桃滋楼
(静香が……恋人と……子供が…………結婚? 嘘だろ……俺、今あいつと顔合わせられねー)
静香
「おお、ようやく戻ってきたか」
桃滋楼
「!?」
教室に入った瞬間静香に声をかけられ、桃滋楼は後ろに飛びのいた。
静香と会うのが気まずいと思っていたが、当然教室に戻れば静香はそこにいる。
ただ、色々と理解しきれないことを考えていたせいで、そこまで頭が回らなかったのだ。
静香
「な、なんだ……何故僕を見て逃げる」
零時
「お前伏嶋になんかしたのか?」
静香
「そんなわけがないだろう」
静香の隣には、当然のように零時がいた。
桃滋楼
(あ……そういえば相手聞いてなかったけど、コイツと……なのか?)
桃滋楼
(確かに、いつもずっと一緒にいるし、もう結婚してるも同然だし、そう考えると自然なのかも……)
静香
「桃滋楼……? 本当に様子がおかしいぞ。どうした」
桃滋楼
「うぇっ!?」
桃滋楼
(ええええええっと、こ、こういう時って何言ったらいいんだ!? どうしよう、どうしようどうしよう!)
桃滋楼
「し……」
静香
「し?」
桃滋楼
「式には、呼んでくれると、嬉しいです」
静香
「すまん、意味がわからん」
桃滋楼
「お、俺はこんなでも、お前とその、と、友達のつもりだから……」
静香
「僕だってお前とは友達のつもりだが」
桃滋楼
「静香……っ!」
静香
「いやその……感動してくれるのは嬉しいが、僕としては先にさっきの言葉の意味を説明してほしい」
零時
「静香、なんか式に出んの? 表彰とか?」
桃滋楼
「え、お前とじゃねーの?」
零時
「俺も? いや、俺は何も知らないけど」
桃滋楼
「え……じ、じゃあ静香、誰と結婚すんの……」
静香
「誰とって、そんなの分かるわけ……」
静香
「………………」
零時
「………………」
静香・零時
「結婚んんんん!?」
二人がほぼ同時に叫び、桃滋楼は飛びのいて距離をあける。
だが、その程度で逃げられるはずがない。すぐに怖い顔をした静香に詰め寄られ、壁に追い詰められた。
静香
「僕が、誰と、どうなって結婚などという話になるのだ! というか、草田先輩でもないのにこんな早々と割り切って男と付き合えるか!」
桃滋楼
「ち、がうの……?」
静香
「ありえない! 断じて! どこのどいつだそんなことをお前に吹き込んだ馬鹿者はっ!!」
零時
「まー、普通に考えて静香がこんな歳で結婚はしねーだろうな」
桃滋楼
「お、俺だってそう思ったけど、でも静香本人が認めてたって聞いた……」
静香
「まともな貞操観念と常識を持っていたら、学生のうちから結婚しますなどと言うわけがないだろうが!」
静香
「そもそもお前はそんな言葉に惑わされるほど僕を信用していなかったのか!」
静香のもっともな意見に、桃滋楼は言葉を返せず黙り込む。
不良と恐れられる伏嶋桃滋楼が、委員長キャラの静香にひたすら怒鳴られているその様子は、珍しいを通り越して恐ろしかった。
零時
「せ、静香ちょっと落ち着けって。伏嶋かわいそうになってきた」
静香
「なんだその言い方は。まるで僕が弱い者いじめでもしているようではないか」
零時
「たいしてかわんねーよ、伏嶋泣きそうじゃねーか」
静香
「え……うわっ!?」
零時の言葉で、桃滋楼がぷるぷると震え涙を堪えていることに気づき、ようやく我に返る。
静香本人に怒っていたつもりはなく、ただ取り乱して責めるような口調になってしまっただけなのだが、聞いている側としては怒られているとしか思えない。
桃滋楼
「ご、ごめ……おれ、怒らせるつもりじゃなくて……」
静香
「お、怒ってないぞ。怒ってないから泣くな」
静香
「いきなり怒鳴ったのは悪かったな。ただ桃滋楼にそんなことを言われて驚いただけなんだ」
桃滋楼
「ほんとか……?」
静香
「ああ、本当だ。ほら、もう落ち着いたから大丈夫だぞ」
にっこりと笑顔で言う静香。
それを見て桃滋楼はほっと胸をなでおろすが、逆に隣にいる零時は冷汗を垂らした。
昔から静香を見てきた零時だけは分かる。この笑顔は落ち着いているときのものではない。
静香
「そうだな、桃滋楼を怒鳴るのはどう考えてもおかしかったな。お前は誰かから聞いた話をそのまま僕に伝えてくれたんだ」
静香
「僕が怒鳴るべき人間は、お前にそんなことを吹き込んでくれた馬鹿だ」
冷静になり、現状をしっかり理解したうえで誰かに制裁を加えるときの、正しすぎる怒りを含んだときの表情だ。
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そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。
由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。
一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。
そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。
罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。
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そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。
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