21 / 38
共通ルート
学園祭の出し物
しおりを挟む
※この作品は同人ゲーム「男子校でハーレムが作れる俺マジ勝ち組」からテキストを抜き出したノベル版です。
ゲームテキスト形式なので背景やキャラ名の指定が残っています。
原作ゲームは18禁ですが、今作は18禁シーンを削除し全年齢版として公開します。
PCを持っていない方のために、同じく全年齢版の体験版プレイ動画もございます。
詳しくは「はとごろTIMES」のホームページをご覧下さい。
また、漫画も投稿しています。そちらも是非ご覧下さい。
《教室》
この学校は十月の終わりに体育祭、十一月の初めに学園祭と行事が連続する。
そうすると必然的に片方に力が入り、片方は適当になるもので……体育祭を目前に控える今の時期、どのクラスも学園祭準備に勤しんでいた。
当然うちのクラスも例外じゃない。
静香
「次の時間のホームルームで、学祭の役割分担を決めろと担任から言われた」
零時
「大変だなー委員長は」
静香
「委員長制度などないというのに……面倒だ」
桃滋楼
「学園祭ってなにすんの?」
零時
「そっか、伏嶋は転校生だから聞いてないんだな」
桃滋楼
「そもそも学校行事とか出ない前提だったからな。興味もねーし」
学園祭といっても外部に声をかけるような大きなイベントはなく、クラスによる出し物がメインだ。
それぞれのクラスで一つの出し物をして、全校でどのクラスが良かったのかを投票で決め、上位三クラスには生徒会から景品が与えられる。
体育祭が適当に終わる分、学園祭に入れられている力は大きい。当然その景品もかなり豪華になっている。
今年の一位は、駅前にある焼肉食べ放題の無料券クラス人数分だったと思う。
桃滋楼
「タダで喰い放題は……すげーな」
優勝商品を聞かせれば、伏嶋も珍しく目を輝かせた。
静香
「出し物は、極力被らないよう調整するために一学期のうちに決めてある」
静香
「一学期の時点で人気そうな出し物を勝ち取っておかなければ、優勝は難しいというわけだな」
零時
「ま、その点では心配なかったな。なんせウチには静香がいるんだ」
一学期、静香は持ち前の委員長っぽさを活かし、クラスをまとめ上げ最速で出し物の申請をした。
その結果、うちのクラスは第一希望をすんなりと受領されたのだ。
桃滋楼
「で、何をするんだ?」
零時
「喫茶店だよ。超定番だけど、その分安定してるし人気も高い」
静香
「その上、営業力次第では利益も出る。優勝すれば無料の打ち上げにプラスで小遣いまで手に入る」
ちなみに、学園祭の規定によると、出し物をする上で「入場料」に値するものは取ってはいけないことになっている。
静香は優勝を狙いつつ、逃しても得をする最善の選択をしたのだ。
静香
「学祭まであと二週間。当日までのスケジュールと役割分担を決めるのも重要な仕事になる」
静香
「面倒だが、手をつけたことには最後まで責任を持って取り組むぞ。もちろん全力でな」
桃滋楼
「うお……静香がかっけぇ……」
こういう時の静香は本当に頼りになる。人の上に立つときの姿が格好いいのは確かだ。
静香は昔からこうだから、中学の時は結構女子に人気があった。
もっとも、静香本人の女子に対する関心が薄かったため、彼女ができることはなかったが。
《教室》
静香
「というわけで、当日までのスケジュールはこうなる」
ホームルームが始まると、静香は黒板に学園祭までのスケジュールを書いて見せた。
静香がクラスのまとめ役になるのは暗黙の了解のようなもので、そのことに対しては今更誰も文句など言わない。
静香
「ここから細かい予定を組み込んでいくが、今のところで何か意見があるものはいるか?」
特に意見は上がらない。当然だ。書かれているスケジュールは、もうすでに細かく決められている。
しかも無茶な予定もない、適切な進行。さすが静香だ。
静香
「では、役割分担に入る。大きく分け、当日の調理班と接客班、前日までの準備班だ」
静香
「調理班は藤井をリーダーにして決めようと思うのだが、いいか?」
藤井
「おー、任せろ!」
藤井は親戚が喫茶店を経営している関係で、材料から調理法まで知り尽くしている。
それはクラスの人間なら誰もが知っていたことなので、全員がすんなり受け入れた。
藤井
「まさか霞さんを追っかけていた頃の経験がここで活かされようとは……」
ちなみに、喫茶店経営に詳しくなった理由は、美人の年上イトコに会いたくて通い詰めた結果らしい。
静香
「調理班希望がいたら言ってくれ。実力と希望を考慮して分担したいからな」
静香の言葉で、数人が調理班に名乗り出た。今の時代男が料理できることも珍しくない。
ま、包丁すらまともに握ったことがない俺には関係ない話ですけどね。料理? なにそれ食えるの?
ついでに言うと静香も料理の類はできない。火加減の調整が苦手らしく、過熱が必要な料理は何を作っても失敗する。
静香
「ふむ……藤井を合わせて五人か。あと一人か二人欲しいところだが……」
静香
「そういえば、桃滋楼も料理できただろう」
桃滋楼
「俺?」
どうでもよさそうに聞いていた伏嶋が、名指しされて間の抜けた返事を返す。
クラスに復帰したのはいいが、やはり学校行事への興味はないままだったらしい。明らかに自分は無関係ですって顔をしている。
静香
「寮で一度だけ作ってくれたろう。上手だったじゃないか」
桃滋楼
「あんなの、作り方の通りにやるだけじゃねーかよ」
静香はそれすらできない。俺もだけど。
藤井
「作り方通りができるなら大丈夫だって。難しいことは俺やるし」
藤井
「せっかくだから伏嶋も一緒に頑張ろうぜ」
復帰した最初こそ怖がられていた伏嶋だが、今ではクラスの人間の大半が受け入れている。
まだクラス外には伏嶋を誤解している人間が多いが、ここは殆どが味方だ。
だから、こうして手を差し伸べてやれる。
桃滋楼
「……まぁ、いーけどさ」
男
「駄目だろ!」
桃滋楼
「!?」
突然、藤井と伏嶋の間に一人が割って入った。
藤井
「中田……?」
割り込んだのは、野球部に所属する、馬鹿で有名な中田だ。
中田
「お前は馬鹿なのか? 伏嶋調理班に入れるとか、何考えてんだ」
藤井
「ちょ……そういう言い方はねーだろ」
中田
「いやあるね! 絶対認めないね!」
中田
「せっかくの女子なのに、裏方に回すとかアホじゃねーの!?」
もう一度言う。中田は、馬鹿で有名である。
中田
「女子ッ! ウェイトレス! 確かに喫茶店は人気だが、男だらけのむさ苦しさじゃ来る客も来ない!」
中田
「元々外部女子をターゲットにするとかいう話だったけどよ、お前ら鏡見ろよ! 無理だよ!」
教室のいたる所から悲痛に呻く声が上がった。
中田
「そこで俺は、静ちゃん桃ちゃんウェイトレス化計画を提案する!」
桃滋楼
「はあああああ!?」
伏嶋は否定の意を込めた叫びを上げたが、クラスの過半数がそれをかき消すように歓喜に吠えた。
桃滋楼
「いや何勝手に言ってんだよ! ざっけんなぶっ飛ばすぞ!」
中田
「ぶっ飛ばされるくらいでウェイトレスしてくれるならどうぞ! 右頬空いてますから、ほら!」
桃滋楼
「そんなこと言われたら殴るに殴れねーだろおおおおおお!」
静香
「ま、まぁまぁ桃滋楼落ち着け」
桃滋楼
「落ち着けるか! 無理だからな、俺絶対無理! ウェイトレス以前に接客とか絶対できねーし!」
それは多いに同感。あの伏嶋が接客している所は想像できない。
静香
「僕は元々接客班にいくつもりだったからいいが……確かに桃滋楼には難しいかもな」
中田
「しずかちゃんウェイトレスキターーーーーー!!」
静香
「誰がしずかちゃんだ接客やめるぞ」
中田、瞬時に土下座。
長野
「早乙女、接客班やんの……?」
ここで以前静香に告白したと噂の長野が反応した。
静香
「ああ……中田ではないが、僕が出れば確かに集客率は上がるだろう」
静香
「ここで女子は物珍しいという自覚はある。優勝を狙う以上、気が進まないという理由で接客から逃げたくない」
長野
「そっ、か……」
長野の奴、ちょっと頬染めてんじゃねーよ。フラれても諦めきれてないのが見え見えだな。いや別に静香と長野がどうなっても俺には関係ないけどさ。
長野
「じゃあ、俺も接客班やるよ」
静香
「え……」
零時
「なっ……」
中田
「おお? しずかちゃん狙いの長野クンは欲望に忠実ですか?」
長野
「うるさいな、なんとでも言っとけよ」
静香
「その、なんだ……拒否する理由はないな。長野は敬語上手いし、常識人だし」
な、なんだこの展開は……そしてこの胸にぽっかり穴が空いたような感覚は……
くそ……なんというか、長年可愛がっていた犬に逃げられた気持ちだ。
桃滋楼
「…………!」
零時
「伏嶋?」
なんか今、変なことを閃いたって顔をしたけど。
桃滋楼
「じゃあ俺、四ッ橋がやるんだったらやってもいいぜ」
零時
「うえぇっ!?」
伏嶋のその言葉に、俺だけでなくクラスの全員が間抜けな声を上げた。
伏嶋は何故かにやにやして俺を見ている。何故だろう、女子に指名されたのに嬉しくない。嫌な予感しかしない。
藤井
「レージ、まさか伏嶋とそういう……」
中田
「まじかよおおおお何でレージなんだよおおおおお」
零時
「違う違う! 伏嶋なんてこと言ってくれるんだ! あと長野、隠れてガッツポーズすんな!」
桃滋楼
「四ッ橋、嫌なら嫌って言っていいんだぜ?」
こ、コイツ……自分が嫌がっても聞き入れてもらえなさそうだからって、俺に押しつけようって魂胆か!
ふん、その手には乗ってやらないぞ。いつまでも伏嶋を怖がっている俺だと思うな。
零時
「じゃー俺接客班」
桃滋楼
「ただし接客ん時は女装な」
零時
「絶対嫌です!」
桃滋楼
「そうだろそうだろ、それでいいんだぜ!」
この野郎……この前のことがあるから冗談にならねーし! そうそう何度も女装なんてするか!
静香
「しないのか」
何で残念そうなんですかあんたは!
長野
「言われてみると、四ッ橋もウェイトレスいけそうかもな」
零時
「長野……! お前顔が邪だぞ」
長野
「俺としてはほら、お前が男でないほうが都合いいからさ。早乙女も見たそうだし」
開き直り方が清々しいですね! 死ね!
桃滋楼
「おいおい無理すんなよ四ッ橋。俺と一緒に裏方しようぜ」
藤井
「…………オレンジの制服が似合いそうだな」
零時
「やめて藤井、俺を見ながらそんなこと呟かないで!」
中田
「男の娘ってやつ流行りだからいいんじゃねー? おっとこのこ!」
零時
「馬鹿が考えなしに発言すんじゃねーよ!」
中田の馬鹿発言を気に、男の娘コールが教室中に広がった。こういう時に男子校のノリは恐ろしい。なにこのクラス怖い。
桃滋楼
「あれ……な、なんで女装する感じになってんだ? 駄目だぞ四ッ橋、絶対すんな!」
「「「おーとこのこー! おーとこのこー!」」」
零時
「う……うぅぅ…………っ!」
伏嶋とクラスメイト達の声が脳内をぐるぐると駆け回る。
う、うわああああ頭がおかしくなるうううううう!
零時
「よ……」
桃滋楼
「よ?」
零時
「よっしゃーーー! 俺の色気見やがれってんだーーーーー!!」
「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」」
俺は運命を受け入れた。
こうなったら全力で優勝を引っ掴んで、終わった後にやけ食いしてやる!
桃滋楼
「な……そんな…………」
静香
「先に言いだしたのは桃滋楼だ。こればかりはお前も受け入れるしかないだろう」
桃滋楼
「うあ……あぁぁ……」
零時
「へこむなって伏嶋! 俺も一緒に頑張るからさ!」
そう言って、うつむきそうな伏嶋の手をぎゅっと握る。
桃滋楼
「へあっ!?」
零時
「もう開き直って俺ら三人で看板娘してやろうぜ! いぇあーーー!」
桃滋楼
「四ッ橋……」
桃滋楼
「めっちゃ涙出てる」
悲しすぎて騒ぐことしかできない哀れな俺を笑ってほしい。
桃滋楼
「そうだよな、お前も嫌なのに俺のせいで女装とかになって……」
桃滋楼
「お、俺も頑張る……! 看板娘は嫌だけど!」
静香
「桃滋楼……」
零時
「ぃよっしゃああああああああああああ! 学祭は宴じゃあああああああああああ!!」
こうして、俺は再び公衆の面前で女装することが決定したのだった。
ゲームテキスト形式なので背景やキャラ名の指定が残っています。
原作ゲームは18禁ですが、今作は18禁シーンを削除し全年齢版として公開します。
PCを持っていない方のために、同じく全年齢版の体験版プレイ動画もございます。
詳しくは「はとごろTIMES」のホームページをご覧下さい。
また、漫画も投稿しています。そちらも是非ご覧下さい。
《教室》
この学校は十月の終わりに体育祭、十一月の初めに学園祭と行事が連続する。
そうすると必然的に片方に力が入り、片方は適当になるもので……体育祭を目前に控える今の時期、どのクラスも学園祭準備に勤しんでいた。
当然うちのクラスも例外じゃない。
静香
「次の時間のホームルームで、学祭の役割分担を決めろと担任から言われた」
零時
「大変だなー委員長は」
静香
「委員長制度などないというのに……面倒だ」
桃滋楼
「学園祭ってなにすんの?」
零時
「そっか、伏嶋は転校生だから聞いてないんだな」
桃滋楼
「そもそも学校行事とか出ない前提だったからな。興味もねーし」
学園祭といっても外部に声をかけるような大きなイベントはなく、クラスによる出し物がメインだ。
それぞれのクラスで一つの出し物をして、全校でどのクラスが良かったのかを投票で決め、上位三クラスには生徒会から景品が与えられる。
体育祭が適当に終わる分、学園祭に入れられている力は大きい。当然その景品もかなり豪華になっている。
今年の一位は、駅前にある焼肉食べ放題の無料券クラス人数分だったと思う。
桃滋楼
「タダで喰い放題は……すげーな」
優勝商品を聞かせれば、伏嶋も珍しく目を輝かせた。
静香
「出し物は、極力被らないよう調整するために一学期のうちに決めてある」
静香
「一学期の時点で人気そうな出し物を勝ち取っておかなければ、優勝は難しいというわけだな」
零時
「ま、その点では心配なかったな。なんせウチには静香がいるんだ」
一学期、静香は持ち前の委員長っぽさを活かし、クラスをまとめ上げ最速で出し物の申請をした。
その結果、うちのクラスは第一希望をすんなりと受領されたのだ。
桃滋楼
「で、何をするんだ?」
零時
「喫茶店だよ。超定番だけど、その分安定してるし人気も高い」
静香
「その上、営業力次第では利益も出る。優勝すれば無料の打ち上げにプラスで小遣いまで手に入る」
ちなみに、学園祭の規定によると、出し物をする上で「入場料」に値するものは取ってはいけないことになっている。
静香は優勝を狙いつつ、逃しても得をする最善の選択をしたのだ。
静香
「学祭まであと二週間。当日までのスケジュールと役割分担を決めるのも重要な仕事になる」
静香
「面倒だが、手をつけたことには最後まで責任を持って取り組むぞ。もちろん全力でな」
桃滋楼
「うお……静香がかっけぇ……」
こういう時の静香は本当に頼りになる。人の上に立つときの姿が格好いいのは確かだ。
静香は昔からこうだから、中学の時は結構女子に人気があった。
もっとも、静香本人の女子に対する関心が薄かったため、彼女ができることはなかったが。
《教室》
静香
「というわけで、当日までのスケジュールはこうなる」
ホームルームが始まると、静香は黒板に学園祭までのスケジュールを書いて見せた。
静香がクラスのまとめ役になるのは暗黙の了解のようなもので、そのことに対しては今更誰も文句など言わない。
静香
「ここから細かい予定を組み込んでいくが、今のところで何か意見があるものはいるか?」
特に意見は上がらない。当然だ。書かれているスケジュールは、もうすでに細かく決められている。
しかも無茶な予定もない、適切な進行。さすが静香だ。
静香
「では、役割分担に入る。大きく分け、当日の調理班と接客班、前日までの準備班だ」
静香
「調理班は藤井をリーダーにして決めようと思うのだが、いいか?」
藤井
「おー、任せろ!」
藤井は親戚が喫茶店を経営している関係で、材料から調理法まで知り尽くしている。
それはクラスの人間なら誰もが知っていたことなので、全員がすんなり受け入れた。
藤井
「まさか霞さんを追っかけていた頃の経験がここで活かされようとは……」
ちなみに、喫茶店経営に詳しくなった理由は、美人の年上イトコに会いたくて通い詰めた結果らしい。
静香
「調理班希望がいたら言ってくれ。実力と希望を考慮して分担したいからな」
静香の言葉で、数人が調理班に名乗り出た。今の時代男が料理できることも珍しくない。
ま、包丁すらまともに握ったことがない俺には関係ない話ですけどね。料理? なにそれ食えるの?
ついでに言うと静香も料理の類はできない。火加減の調整が苦手らしく、過熱が必要な料理は何を作っても失敗する。
静香
「ふむ……藤井を合わせて五人か。あと一人か二人欲しいところだが……」
静香
「そういえば、桃滋楼も料理できただろう」
桃滋楼
「俺?」
どうでもよさそうに聞いていた伏嶋が、名指しされて間の抜けた返事を返す。
クラスに復帰したのはいいが、やはり学校行事への興味はないままだったらしい。明らかに自分は無関係ですって顔をしている。
静香
「寮で一度だけ作ってくれたろう。上手だったじゃないか」
桃滋楼
「あんなの、作り方の通りにやるだけじゃねーかよ」
静香はそれすらできない。俺もだけど。
藤井
「作り方通りができるなら大丈夫だって。難しいことは俺やるし」
藤井
「せっかくだから伏嶋も一緒に頑張ろうぜ」
復帰した最初こそ怖がられていた伏嶋だが、今ではクラスの人間の大半が受け入れている。
まだクラス外には伏嶋を誤解している人間が多いが、ここは殆どが味方だ。
だから、こうして手を差し伸べてやれる。
桃滋楼
「……まぁ、いーけどさ」
男
「駄目だろ!」
桃滋楼
「!?」
突然、藤井と伏嶋の間に一人が割って入った。
藤井
「中田……?」
割り込んだのは、野球部に所属する、馬鹿で有名な中田だ。
中田
「お前は馬鹿なのか? 伏嶋調理班に入れるとか、何考えてんだ」
藤井
「ちょ……そういう言い方はねーだろ」
中田
「いやあるね! 絶対認めないね!」
中田
「せっかくの女子なのに、裏方に回すとかアホじゃねーの!?」
もう一度言う。中田は、馬鹿で有名である。
中田
「女子ッ! ウェイトレス! 確かに喫茶店は人気だが、男だらけのむさ苦しさじゃ来る客も来ない!」
中田
「元々外部女子をターゲットにするとかいう話だったけどよ、お前ら鏡見ろよ! 無理だよ!」
教室のいたる所から悲痛に呻く声が上がった。
中田
「そこで俺は、静ちゃん桃ちゃんウェイトレス化計画を提案する!」
桃滋楼
「はあああああ!?」
伏嶋は否定の意を込めた叫びを上げたが、クラスの過半数がそれをかき消すように歓喜に吠えた。
桃滋楼
「いや何勝手に言ってんだよ! ざっけんなぶっ飛ばすぞ!」
中田
「ぶっ飛ばされるくらいでウェイトレスしてくれるならどうぞ! 右頬空いてますから、ほら!」
桃滋楼
「そんなこと言われたら殴るに殴れねーだろおおおおおお!」
静香
「ま、まぁまぁ桃滋楼落ち着け」
桃滋楼
「落ち着けるか! 無理だからな、俺絶対無理! ウェイトレス以前に接客とか絶対できねーし!」
それは多いに同感。あの伏嶋が接客している所は想像できない。
静香
「僕は元々接客班にいくつもりだったからいいが……確かに桃滋楼には難しいかもな」
中田
「しずかちゃんウェイトレスキターーーーーー!!」
静香
「誰がしずかちゃんだ接客やめるぞ」
中田、瞬時に土下座。
長野
「早乙女、接客班やんの……?」
ここで以前静香に告白したと噂の長野が反応した。
静香
「ああ……中田ではないが、僕が出れば確かに集客率は上がるだろう」
静香
「ここで女子は物珍しいという自覚はある。優勝を狙う以上、気が進まないという理由で接客から逃げたくない」
長野
「そっ、か……」
長野の奴、ちょっと頬染めてんじゃねーよ。フラれても諦めきれてないのが見え見えだな。いや別に静香と長野がどうなっても俺には関係ないけどさ。
長野
「じゃあ、俺も接客班やるよ」
静香
「え……」
零時
「なっ……」
中田
「おお? しずかちゃん狙いの長野クンは欲望に忠実ですか?」
長野
「うるさいな、なんとでも言っとけよ」
静香
「その、なんだ……拒否する理由はないな。長野は敬語上手いし、常識人だし」
な、なんだこの展開は……そしてこの胸にぽっかり穴が空いたような感覚は……
くそ……なんというか、長年可愛がっていた犬に逃げられた気持ちだ。
桃滋楼
「…………!」
零時
「伏嶋?」
なんか今、変なことを閃いたって顔をしたけど。
桃滋楼
「じゃあ俺、四ッ橋がやるんだったらやってもいいぜ」
零時
「うえぇっ!?」
伏嶋のその言葉に、俺だけでなくクラスの全員が間抜けな声を上げた。
伏嶋は何故かにやにやして俺を見ている。何故だろう、女子に指名されたのに嬉しくない。嫌な予感しかしない。
藤井
「レージ、まさか伏嶋とそういう……」
中田
「まじかよおおおお何でレージなんだよおおおおお」
零時
「違う違う! 伏嶋なんてこと言ってくれるんだ! あと長野、隠れてガッツポーズすんな!」
桃滋楼
「四ッ橋、嫌なら嫌って言っていいんだぜ?」
こ、コイツ……自分が嫌がっても聞き入れてもらえなさそうだからって、俺に押しつけようって魂胆か!
ふん、その手には乗ってやらないぞ。いつまでも伏嶋を怖がっている俺だと思うな。
零時
「じゃー俺接客班」
桃滋楼
「ただし接客ん時は女装な」
零時
「絶対嫌です!」
桃滋楼
「そうだろそうだろ、それでいいんだぜ!」
この野郎……この前のことがあるから冗談にならねーし! そうそう何度も女装なんてするか!
静香
「しないのか」
何で残念そうなんですかあんたは!
長野
「言われてみると、四ッ橋もウェイトレスいけそうかもな」
零時
「長野……! お前顔が邪だぞ」
長野
「俺としてはほら、お前が男でないほうが都合いいからさ。早乙女も見たそうだし」
開き直り方が清々しいですね! 死ね!
桃滋楼
「おいおい無理すんなよ四ッ橋。俺と一緒に裏方しようぜ」
藤井
「…………オレンジの制服が似合いそうだな」
零時
「やめて藤井、俺を見ながらそんなこと呟かないで!」
中田
「男の娘ってやつ流行りだからいいんじゃねー? おっとこのこ!」
零時
「馬鹿が考えなしに発言すんじゃねーよ!」
中田の馬鹿発言を気に、男の娘コールが教室中に広がった。こういう時に男子校のノリは恐ろしい。なにこのクラス怖い。
桃滋楼
「あれ……な、なんで女装する感じになってんだ? 駄目だぞ四ッ橋、絶対すんな!」
「「「おーとこのこー! おーとこのこー!」」」
零時
「う……うぅぅ…………っ!」
伏嶋とクラスメイト達の声が脳内をぐるぐると駆け回る。
う、うわああああ頭がおかしくなるうううううう!
零時
「よ……」
桃滋楼
「よ?」
零時
「よっしゃーーー! 俺の色気見やがれってんだーーーーー!!」
「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」」
俺は運命を受け入れた。
こうなったら全力で優勝を引っ掴んで、終わった後にやけ食いしてやる!
桃滋楼
「な……そんな…………」
静香
「先に言いだしたのは桃滋楼だ。こればかりはお前も受け入れるしかないだろう」
桃滋楼
「うあ……あぁぁ……」
零時
「へこむなって伏嶋! 俺も一緒に頑張るからさ!」
そう言って、うつむきそうな伏嶋の手をぎゅっと握る。
桃滋楼
「へあっ!?」
零時
「もう開き直って俺ら三人で看板娘してやろうぜ! いぇあーーー!」
桃滋楼
「四ッ橋……」
桃滋楼
「めっちゃ涙出てる」
悲しすぎて騒ぐことしかできない哀れな俺を笑ってほしい。
桃滋楼
「そうだよな、お前も嫌なのに俺のせいで女装とかになって……」
桃滋楼
「お、俺も頑張る……! 看板娘は嫌だけど!」
静香
「桃滋楼……」
零時
「ぃよっしゃああああああああああああ! 学祭は宴じゃあああああああああああ!!」
こうして、俺は再び公衆の面前で女装することが決定したのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語
ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。
だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。
それで終わるはずだった――なのに。
ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。
さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。
そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。
由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。
一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。
そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。
罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。
ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。
そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。
これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。
逆ハーレムを完成させた男爵令嬢は死ぬまで皆に可愛がられる(※ただし本人が幸せかは不明である)
ラララキヲ
恋愛
平民生まれだが父が男爵だったので母親が死んでから男爵家に迎え入れられたメロディーは、男爵令嬢として貴族の通う学園へと入学した。
そこでメロディーは第一王子とその側近候補の令息三人と出会う。4人には婚約者が居たが、4人全員がメロディーを可愛がってくれて、メロディーもそれを喜んだ。
メロディーは4人の男性を同時に愛した。そしてその4人の男性からも同じ様に愛された。
しかし相手には婚約者が居る。この関係は卒業までだと悲しむメロディーに男たちは寄り添い「大丈夫だ」と言ってくれる。
そして学園の卒業式。
第一王子たちは自分の婚約者に婚約破棄を突き付ける。
そしてメロディーは愛する4人の男たちに愛されて……──
※話全体通して『ざまぁ』の話です(笑)
※乙女ゲームの様な世界観ですが転生者はいません。
※性行為を仄めかす表現があります(が、行為そのものの表現はありません)
※バイセクシャルが居るので醸(カモ)されるのも嫌な方は注意。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げてます。
元おっさんの幼馴染育成計画
みずがめ
恋愛
独身貴族のおっさんが逆行転生してしまった。結婚願望がなかったわけじゃない、むしろ強く思っていた。今度こそ人並みのささやかな夢を叶えるために彼女を作るのだ。
だけど結婚どころか彼女すらできたことのないような日陰ものの自分にそんなことができるのだろうか? 軟派なことをできる自信がない。ならば幼馴染の女の子を作ってそのままゴールインすればいい。という考えのもと始まる元おっさんの幼馴染育成計画。
※この作品は小説家になろうにも掲載しています。
※【挿絵あり】の話にはいただいたイラストを載せています。表紙はチャーコさんが依頼して、まるぶち銀河さんに描いていただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる