白き時を越えて

蒼(あお)

文字の大きさ
20 / 179
第2章:ひとつの未来

しおりを挟む
「……ここにいるのは、
 千春、千秋と茂だけだというのは
 本当なのか?」

「だーかーら、そうだって言ったじゃん」
千春さんが大きなため息をついた。

「あー、やっぱ見るまで実感無かった?」
空山さんもため息をつく。

ふたりにつられたのか、
千秋さんまでため息をついた。

「その通りです。
 ここにいるのは、綾ちゃん華菜ちゃんと
 私たち4人だけ。残りはみーんな移住完了しました。
 あちらの計画は順調に進んでいるんでしょうね」
少し皮肉っぽい口調で説明する千秋さん。

「まさか、そんなはずは……」
柊さんは、驚きが隠せない様子だ。

「いなかったお前が知らないのも
 納得行かないのも無理はないと思うぜ。
 だから、驚くのは構わないがこれが現実だ」

「ありえないだろう!?
 そんな非人道的な計画が、許されるわけが……」

「怒鳴るなら、俺じゃなくて
 大統領を怒鳴れ。ま、ここにはいないけどな」

あ、こっちの日本は大統領制なんだ。
もしかして、何かを変えようとした未来の人が
政治を大きく動かしたのかな。

「……ということは…………。
 お前達は、見捨てられたのか……?
 あれほどまでに、人に尽くしたお前達が?」

「お前もだよ。
 っていうか、一番働いてた奴に言われると、
 俺の立場が無いんスけど」
空山さんはやれやれと言いながら、
またため息をついた。

「いや、俺は……死んだことになってるはずだ。
 1年以上連絡がつかない者は
 死亡者として扱われるのだから」
なんか、大変なことをさらりと言っている
柊さん。
うん、もう慣れてきた。
この変な流れに、なんか慣れてきたぞ。

「そう。死んだことになってる。
 でも、ここにいる仲間は誰一人、
 そうは思ってない。だからお前も一緒だ」

何があったんだろう。
みんなは、何に見捨てられたんだろう?

「というか、
 お前が行方不明になったのをいいことに
 見捨られてやる交換条件として
 この基地を貰ったんだよ。
 という訳で、ここを私物化して
 好き放題やってんだ。ここ3年ほど」

「3年? ……ということは
 俺が死んだことになったのと同時期に
 あの計画は実行に移されたのか」

「おう」

ええっと、つまり……柊さんは、4年前に
ここから姿を消したのかな?

「あの……。私たち、離席した方がいいですよね?
 行こっか、華菜」
重要そうな内容の話だと悟った綾が言い出した。

確かに、そうだ。
つい興味が勝ってしまって
話を聞いてしまっていたけど
きっとこれは……
私たちは聞いちゃいけない話だろう。

綾に手を引かれ、私も退室しようとした。

「何言ってるの!
 アンタらがメインなんだって。
 話の意味は、すぐには分からないかもだけど、
 とりあえず座っといてよ」

出て行こうとする綾の両肩を
がしっと掴み、止める千春さん。
その後、私の方を見て、
“行くな”と言いたげな視線を送ってくる。

「でも……なんか、深い事情がありそうですし」
綾はかなり戸惑っている。

「お世話になってるんだから、
 とりあえず言うこと聞いておこうよ」
そんな綾を、私が引き留めた。
なにより、私も続きが気になる。

千春さんは、学校でも、ここでも
ことあるごとに
私たちのことを“メイン”と口走っている。
その理由は……
きっとこの話を聞けば分かるはずだ。

「グッジョブ、華菜ちゃん!」
千春さんが笑いかけてくれた。

いいえ、多分ただの利害一致です。
……言わないけど。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

処理中です...