白き時を越えて

蒼(あお)

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第3章雑談:千春

柊さんと私のこと

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「千春さんって、
 すぐに私と柊さんをふたりきりに
 したがりますよね?」

「だってお似合いなんだもん」

「それは、違う私じゃないですか。
 ちょっと、ひどいです」

「いやね、実は
 適当なことを言ってるつもりも
 あまりないんだよ。

 気づいてないなら、言うけど」

「言わなくて良いです」

「よし、言おう」

なんなの、この人……。

「私は、華菜ちゃんのことは、
 よくは知らないよ?
 でも柊のことは結構知ってる」

「柊はねぇ……」

「とにかく仕事仕事仕事って、
 仕事以外、頭にないんかいっていうぐらい
 仕事しかしないやつでさ!」

「そういう奴ほど、実はアレな趣味が
 あるんじゃないの? と思って
 何回か、部屋に潜入してみたら
 あら不思議。エロ本の1冊も
 エロデータのひとつも出てきやしない。
 あいつ本当に男か!?」

「この静けさは不気味だ!! 不気味すぎる!
 実は違う方に興味が!?
 まさかまさか! とか思ったけど
 どうもそういう訳でもないらしい」

「その点空山の部屋は酷い有様だわ……
 って今は柊の話だった。
 でも本当に空山の部屋も無いわー。
 あれはあれで酷いっつーの」

「男が自分ひとりになった時点で
 自分の部屋に訪問してくるのは
 女だけっていうのを自覚しろっていうね。
 いくら居住区が隔離されてても
 用があったら行くでしょうが」

「とりあえず、部屋の壁に貼ってる
 あのエロいポスターを
 なんとかせぇっつう話!!」

「一遍落書きしてやったけど
 懲りる様子は全くなし。
 なんなのあれ。なんなのあれ。
 犯人は私一択なんだから、
 なんかリアクションあってもよくない?
 それともまさか、千秋もやりかねないとか
 思ってる? あり得ない、それはあり得ない」

「あーっと話がまた逸れた、柊だったね!
 とにかくあいつの頭の中には仕事しかない。
 なんで必要最低限の物しか
 持ってないのっていう」

「個人用のパソコンの中身も新聞ばっかり……
 っていうか後ろめたいことが無いにしても
 パスワードぐらい掛けとけや!!」

「“覗いたぞ、パスぐらい掛けろ”って
 メモ残しといたら
 律儀に“恥ずかしいからやめてくれ”とか
 メール返してきたけども、
 そもそも恥ずかしいもん
 入ってないじゃんアレ!
 どれ? どのデータが恥ずかしかったん!?」

「次見たらパスワード掛かってるし。
 ロック破ってもさらにロックされてるし。
 いや、だから
 どのデータが恥ずかしかったん!?
 全く分からん!!」

「多分あれはただの無関心だ!
 とにかく、何にも関心がない!
 そういうことだ。
 やることがないから、仕事やってるだけ」

「で、仕事にやりがいがあるから
 余計に仕事にハマって
 人生最初の趣味が仕事とかいう
 危なすぎる人間、それが柊 冬紀!」

「……そういうこと」

「あの、ほとんど聞き取れませんでした」

「いや、今のは軽い挨拶って言うか
 久しぶりに新しい人に言いたかっただけで
 本題はこれとは違うんだけどね」

「……はぁ」

心のメモにしっかりと書いておこう。
“千春さんのマシンガントークに注意”。

「とにかく、柊は
 “今の”華菜ちゃんにも
 好意を抱いてるよ、確実にね」

「そんなこと言われても……」

「その証拠に、私が
 屋上でからかったとき、無反応だった」

「……え?」

「私、一回“冬紀さん”って言ったでしょ。
 あれね、柊のNGワード」

「でも、それって
 柊さんの下のお名前ですよね?」

「そう、しかも本名。
 でもあの名前、
 本人は気に入ってないみたいで
 誰かにそう呼ばれると、
 どんな状況でも柊は……キレる」

「き、キレる……?」

「一遍、からかったことがあるんだけどね。
 “僕のこと、『冬紀』って呼ぶのは
  やめてくれないかなぁ”って
 すんごい笑顔で寄ってくるの。
 勿論オーラは氷のように冷たい。
 怖いっつーに。逆に怖いっつーに。
 殺されるかと思ったよ」

「いや、それは大袈裟なんじゃ……」

「一人称が変わるレベルだよ!?
 あの、冗談も言えない男の。
 あれはよっぽどだよ」

「それほどのNGワードに
 気づかずに話を進めるって事は
 それだけ他のことに
 気を取られてたってこと」

「そう、例えば華菜ちゃんとか!」

「……や、あの日は私も
 失踪に巻き込まれそうになった日だし……。
 ちょっと注意されてても
 不思議はないんじゃないでしょうか」

「さっきも言ったけど、
 柊は下の名前を呼ぶと
 “どんな状況でも”キレる。
 例えば時の中へ飛びこむ2秒前とかでも」

いやいや、何を試してるの、この人。
仕事中に何やってるの……っていうか
失敗したら洒落にならないんじゃないのかなぁ。

「あの時の柊は、
 “目の前の”華菜ちゃんのことしか
 考えていなかった。
 これは間違いない」

「そんなこと、無いと思いますけど……」

「私は、あんな目で人を見つめる
 柊を初めて見た。
 ああ、こんな表情持ってたんだ……って」

「本当に華菜ちゃんが迷惑してそうだったら、
 黙ってようと思ってたけど
 実際、こうやって話題にしてくるわけで。
 本当に何も言われたくなかったら
 話題にすることさえ避けるはず」

「ど、どうでしょうか……」

深く考えてなかったなぁ。

「相手に興味が無くなるとね、
 嫌うことすらできなくなる」

「有名な話ですね」

「有名なのは説得力があるから。

 まぁ、そんな訳で
 私から見たらアンタらふたりは
 お似合いカップルなのだ」

「はぁ……そうですか」

反論する気力も無くなってしまった。
ある意味すごいぞ、この人。
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