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1.Cape jasmine
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ホントに、たまたまだったと2人の母親はいつも言っていた。
たまたま、中古のマンションが二部屋並んで売りに出されていて、それを購入、リノベーションして入居した二組の夫婦は、同じ年代で、どちらも妻の出産が間近だった…という。
見上げる程の長身で、良く鍛えた体育会系ボディの“たっくん”と、華奢で小柄でふんわりとした笑顔が癒し系な“かなちゃ”。
眼鏡とスーツが似合うクールインテリな見た目の割におっとりした“かずさん”と、スラリと背が高く中性的な見た目に違わず姉御肌な“トーコさん”。
全く正反対の二組は、何故か意気投合して、生まれた子供達共々、何かにつけてはお互いの家を行き来していた。
ベランダの境界壁を取り外してしまう程に。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「お帰り~、スミちゃん。」
家に帰り着いて、台所で買ってきた物を片付けていると、いつものごとく、ベランダからかなちゃが顔を覗かせた。
「ただいま、かなちゃ。今日早いんだね?」
「水曜日だからね、昼までなんだよ。」
「あ、そっか。」
かなちゃはこの春から、近くの内科クリニックでパートタイマーの看護士をしている。
結婚前は救急もある総合病院で看護士をしていたかなちゃ曰く、「ここは入院も無いし、楽で良いわ~」らしい。
因みにたっくんとはその病院に救急搬送されてきて知り合った(?)そうで、退院時に猛烈アタックして結婚に取り付けただけあって、かなちゃは見た目の割に押しが強かった。
前は、そういうとこが頼もしくて好きだったけど、当たり前のようにキッチンのカウンターへ腰掛ける姿に、何とも居心地の悪い思いが湧いてくる。
「肉じゃが作り過ぎちゃってさ~、食べない?」
「かなちゃ、また?」
「なかなか慣れないのよ~、ほぼ四人前作ってたから、いきなり二人分ってのがねぇ」
「…あー、」
辛うじて出した相槌は、小さくてかなちゃには聞こえなかったかもしれない。
ラップした器をカウンターに置きながら、かなちゃは肩を竦めて大袈裟なため息をついて続けた。
「ナオもね~、試験期間位、帰ってきたらって言ったんだけど、めんどくさいって。ホント、可愛くないわ~。」
カタン―――
カウンターに置いた麦茶のグラスの音が、ヤケに大きく響いた気がした―――けど。
かなちゃが「ありがと」と、麦茶を飲んだのを見て、内心で息をついた。大丈夫、と、自分に言いきかせる。
「スミちゃんとこも二学期制?」
「えっ?」
「や、ナオの学校、二学期制だから、こないだ前期の中間試験だったんだって。なんか次は9月まで無いとかって、学校の陰謀を感じない?」
「陰謀…?」
「そー、あそこスポーツ全般力入れてるじゃない?でもさすがに試験期間は部活休まないといけないから、試験回数減らすために二学期制なんじゃないかしら」
「えぇ…まさか…」
「わかんないわよ~、だって敷地内にすんごい大きい室内練習場だかジムだかあるのよ~!!だから雨の日も練習休みじゃ無いんだって!!」
そうなんだ―――…
じゃあ、たとえ寮に入らなかったとしても、前のようには会えなかったって事だ。
そこまで考えて苦笑した。
―――前のように、なんて。
そんな私の前で、かなちゃは机に両肘をついて、両手で頬を挟みながら続ける。
「おかげで授業料も部費も高くてやんなっちゃう。頑張って働かなきゃなぁ…」
その、一言に。
コンッ―――と、音を立ててグラスが転がる。
一口も飲んでいなかった麦茶がカウンターに広がるのを見て、かなちゃが慌ててグラスを起こした。
「わっ、大丈夫?!」
「…うん、ゴメン…」
それが、何に対しての“ゴメン”なのか…
動けない私の代わりにカウンターを拭いて、かなちゃが立ち上がった。
「ご馳走様。」
それだけ言うと、かなちゃはリビングを横切り、ベランダの掃き出し窓を開けてサンダルを履いてから振り返って、言った。
「スミちゃん、元気?」
そう言った、かなちゃの顔。
「…うん、元気だよ?」
たぶん、きっと。
私も笑えてなかったと思う。
たまたま、中古のマンションが二部屋並んで売りに出されていて、それを購入、リノベーションして入居した二組の夫婦は、同じ年代で、どちらも妻の出産が間近だった…という。
見上げる程の長身で、良く鍛えた体育会系ボディの“たっくん”と、華奢で小柄でふんわりとした笑顔が癒し系な“かなちゃ”。
眼鏡とスーツが似合うクールインテリな見た目の割におっとりした“かずさん”と、スラリと背が高く中性的な見た目に違わず姉御肌な“トーコさん”。
全く正反対の二組は、何故か意気投合して、生まれた子供達共々、何かにつけてはお互いの家を行き来していた。
ベランダの境界壁を取り外してしまう程に。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「お帰り~、スミちゃん。」
家に帰り着いて、台所で買ってきた物を片付けていると、いつものごとく、ベランダからかなちゃが顔を覗かせた。
「ただいま、かなちゃ。今日早いんだね?」
「水曜日だからね、昼までなんだよ。」
「あ、そっか。」
かなちゃはこの春から、近くの内科クリニックでパートタイマーの看護士をしている。
結婚前は救急もある総合病院で看護士をしていたかなちゃ曰く、「ここは入院も無いし、楽で良いわ~」らしい。
因みにたっくんとはその病院に救急搬送されてきて知り合った(?)そうで、退院時に猛烈アタックして結婚に取り付けただけあって、かなちゃは見た目の割に押しが強かった。
前は、そういうとこが頼もしくて好きだったけど、当たり前のようにキッチンのカウンターへ腰掛ける姿に、何とも居心地の悪い思いが湧いてくる。
「肉じゃが作り過ぎちゃってさ~、食べない?」
「かなちゃ、また?」
「なかなか慣れないのよ~、ほぼ四人前作ってたから、いきなり二人分ってのがねぇ」
「…あー、」
辛うじて出した相槌は、小さくてかなちゃには聞こえなかったかもしれない。
ラップした器をカウンターに置きながら、かなちゃは肩を竦めて大袈裟なため息をついて続けた。
「ナオもね~、試験期間位、帰ってきたらって言ったんだけど、めんどくさいって。ホント、可愛くないわ~。」
カタン―――
カウンターに置いた麦茶のグラスの音が、ヤケに大きく響いた気がした―――けど。
かなちゃが「ありがと」と、麦茶を飲んだのを見て、内心で息をついた。大丈夫、と、自分に言いきかせる。
「スミちゃんとこも二学期制?」
「えっ?」
「や、ナオの学校、二学期制だから、こないだ前期の中間試験だったんだって。なんか次は9月まで無いとかって、学校の陰謀を感じない?」
「陰謀…?」
「そー、あそこスポーツ全般力入れてるじゃない?でもさすがに試験期間は部活休まないといけないから、試験回数減らすために二学期制なんじゃないかしら」
「えぇ…まさか…」
「わかんないわよ~、だって敷地内にすんごい大きい室内練習場だかジムだかあるのよ~!!だから雨の日も練習休みじゃ無いんだって!!」
そうなんだ―――…
じゃあ、たとえ寮に入らなかったとしても、前のようには会えなかったって事だ。
そこまで考えて苦笑した。
―――前のように、なんて。
そんな私の前で、かなちゃは机に両肘をついて、両手で頬を挟みながら続ける。
「おかげで授業料も部費も高くてやんなっちゃう。頑張って働かなきゃなぁ…」
その、一言に。
コンッ―――と、音を立ててグラスが転がる。
一口も飲んでいなかった麦茶がカウンターに広がるのを見て、かなちゃが慌ててグラスを起こした。
「わっ、大丈夫?!」
「…うん、ゴメン…」
それが、何に対しての“ゴメン”なのか…
動けない私の代わりにカウンターを拭いて、かなちゃが立ち上がった。
「ご馳走様。」
それだけ言うと、かなちゃはリビングを横切り、ベランダの掃き出し窓を開けてサンダルを履いてから振り返って、言った。
「スミちゃん、元気?」
そう言った、かなちゃの顔。
「…うん、元気だよ?」
たぶん、きっと。
私も笑えてなかったと思う。
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