41 / 84
1.Cape jasmine
40
しおりを挟む
その言葉に目を見開いた。
それは、幼馴染、としてでは無く?
「カナン、だから…」
「あんた達、バカじゃないの?」
不意にそう言って、かなちゃが腕を組んだ。
「中学生なんだから、好きだなんだ言って何が悪いのよ。老後の面倒見るって、言って何が悪いの?それとも、ナオが心変わりしたら、約束が違うって責めるつもりな訳?中学生の戯言なのに」
フンッとかなちゃが見た目に似合わない鼻息を立てた。
「考え過ぎなのよ2人とも。見ててイライラするわ。ナオもそう。好きならとっとと押し倒すなりすりゃいいのに」
その言葉に、反射的に身体が強張った。
「えっ、ちょっと、まさか…」
「カナン、ちょっと…」
動揺したかなちゃに母が近寄り、私をチラリと見る。
「あんたはお風呂入って寝なさい。明日も学校なんだから」
言葉も無く立ち竦む私を残し、母はかなちゃを促して境界壁の向こうへと姿を消した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「今、何て行ったの?」
父にそっくりな、綺麗な顔を顰めてその人が言った。膝の上で両手を握りしめる。
「妊娠、しない為の、薬が欲しい」
もう一度繰り返すと、目の前に座った人が、額に手を当てて大きくため息をつく。
「珍しくやって来ておねだりするのがそれなんてね…」
「ゴメン、美幸さん…」
その言葉に美幸さんは一瞬目を閉じてから開き、ローテーブルに置いたスマホを手に取った。
「とりあえず一緒に病院行きましょう。診察してからじゃないと処方出来ない薬だから。…内診は必要?」
「内診?」
「原因がレイプなら、中を痛めてないか調べる必要があるわ」
「違っ…」
思わず腰を浮かすと、美幸さんが眉を潜めた。
「付き合ってる相手なの?」
「…付き合ってないよ。でも、迷惑かけたくないの」
「同意の上だったのかしら?」
「もちろん」
それだけはしっかりと顔を上げて言うと、美幸さんが肩を竦める。
「だったら尚更避妊はしなさい。それぐらい、中学生でも出来る事よ」
「ごめんなさい」
「謝るぐらいならしない事ね。正直私はまだ早いと思うわ」
「うん、ごめん。…今日だけは許して」
目を逸らさずに言うと、美幸さんは困った様に眉を下げた。
「本当に、変な所が似てるわね」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
父の実家は総合病院をやっていて、美幸さんはそこで副院長をやっていた。70を過ぎてからは顧問だったっけ。
跡を継いで医者にならなかった父と祖父は微妙に距離があったけど、美幸さん―――母がそう呼ぶからそのまんま呼んでるその人とは仲が良かったから、あんな事を頼むのは気が引けたのだけど仕方ない。
一回で出来るとは思わないけど、可能性が無い訳じゃない。自分が気まずい思いをしても、これはナオの為だからちっとも構わなかった。むしろ、美幸さんの存在が有り難かった位。
おかげでずっと少量続いていた出血は、薬を飲んで数日後には本格的な生理の量に変わったので安心したけど、そういえばその事を美幸さんには特に口止めしなかった。
それだけ信用してたんだけど、さすがに美幸さんも母には話してたんだろう。
相手が誰かも伝えてなかったのに―――
パシャリ…と、湯船に浸かったままで頬に手を当てた。
―――バカじゃないの?
かなちゃの言葉が鮮明に蘇る。
―――好きだなんだ言って何が悪いの?
―――心変わりしたら責めるつもり?
―――中学生の戯言なのに
クスッと笑いが込み上げた。
ホントに、その通りだったから。
心変わりなんて、して当たり前だと思えばいい事だった。バカな事言ってる、そう言って笑い飛ばせば良かった。だって、ホントにまだ中学生なんだから。
それが出来なかった私は、ナオの未来を縛りつける事が怖かったんじゃない。ナオが後からそれを悔やむのが怖かった。
ナオが、心変わりする事が怖かった。
当たり前の様に側にいてくれた存在を失う未来に怯えてたのだ。父を失った時の様に。
俯いて湯の中の自分の身体を見つめた。
寄せて上げてないから谷間は無い。でも、ナオはその場所に無数の跡を付けた。
『ここ、弱いよな?』
そう言って見上げたナオの顔を思い出した途端、まるでクレイアニメのようにそこが形を持って立ち上がった。
自分で触れても何とも無い場所なのに、ナオの唇やゴツゴツとした指が触れるとそれだけで、震えが走り肌が騒めく。
ナオの舌先を求めて疼く自分の舌を噛む。
『覚えとけよ、これが俺のカタチだって』
それは、幼馴染、としてでは無く?
「カナン、だから…」
「あんた達、バカじゃないの?」
不意にそう言って、かなちゃが腕を組んだ。
「中学生なんだから、好きだなんだ言って何が悪いのよ。老後の面倒見るって、言って何が悪いの?それとも、ナオが心変わりしたら、約束が違うって責めるつもりな訳?中学生の戯言なのに」
フンッとかなちゃが見た目に似合わない鼻息を立てた。
「考え過ぎなのよ2人とも。見ててイライラするわ。ナオもそう。好きならとっとと押し倒すなりすりゃいいのに」
その言葉に、反射的に身体が強張った。
「えっ、ちょっと、まさか…」
「カナン、ちょっと…」
動揺したかなちゃに母が近寄り、私をチラリと見る。
「あんたはお風呂入って寝なさい。明日も学校なんだから」
言葉も無く立ち竦む私を残し、母はかなちゃを促して境界壁の向こうへと姿を消した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「今、何て行ったの?」
父にそっくりな、綺麗な顔を顰めてその人が言った。膝の上で両手を握りしめる。
「妊娠、しない為の、薬が欲しい」
もう一度繰り返すと、目の前に座った人が、額に手を当てて大きくため息をつく。
「珍しくやって来ておねだりするのがそれなんてね…」
「ゴメン、美幸さん…」
その言葉に美幸さんは一瞬目を閉じてから開き、ローテーブルに置いたスマホを手に取った。
「とりあえず一緒に病院行きましょう。診察してからじゃないと処方出来ない薬だから。…内診は必要?」
「内診?」
「原因がレイプなら、中を痛めてないか調べる必要があるわ」
「違っ…」
思わず腰を浮かすと、美幸さんが眉を潜めた。
「付き合ってる相手なの?」
「…付き合ってないよ。でも、迷惑かけたくないの」
「同意の上だったのかしら?」
「もちろん」
それだけはしっかりと顔を上げて言うと、美幸さんが肩を竦める。
「だったら尚更避妊はしなさい。それぐらい、中学生でも出来る事よ」
「ごめんなさい」
「謝るぐらいならしない事ね。正直私はまだ早いと思うわ」
「うん、ごめん。…今日だけは許して」
目を逸らさずに言うと、美幸さんは困った様に眉を下げた。
「本当に、変な所が似てるわね」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
父の実家は総合病院をやっていて、美幸さんはそこで副院長をやっていた。70を過ぎてからは顧問だったっけ。
跡を継いで医者にならなかった父と祖父は微妙に距離があったけど、美幸さん―――母がそう呼ぶからそのまんま呼んでるその人とは仲が良かったから、あんな事を頼むのは気が引けたのだけど仕方ない。
一回で出来るとは思わないけど、可能性が無い訳じゃない。自分が気まずい思いをしても、これはナオの為だからちっとも構わなかった。むしろ、美幸さんの存在が有り難かった位。
おかげでずっと少量続いていた出血は、薬を飲んで数日後には本格的な生理の量に変わったので安心したけど、そういえばその事を美幸さんには特に口止めしなかった。
それだけ信用してたんだけど、さすがに美幸さんも母には話してたんだろう。
相手が誰かも伝えてなかったのに―――
パシャリ…と、湯船に浸かったままで頬に手を当てた。
―――バカじゃないの?
かなちゃの言葉が鮮明に蘇る。
―――好きだなんだ言って何が悪いの?
―――心変わりしたら責めるつもり?
―――中学生の戯言なのに
クスッと笑いが込み上げた。
ホントに、その通りだったから。
心変わりなんて、して当たり前だと思えばいい事だった。バカな事言ってる、そう言って笑い飛ばせば良かった。だって、ホントにまだ中学生なんだから。
それが出来なかった私は、ナオの未来を縛りつける事が怖かったんじゃない。ナオが後からそれを悔やむのが怖かった。
ナオが、心変わりする事が怖かった。
当たり前の様に側にいてくれた存在を失う未来に怯えてたのだ。父を失った時の様に。
俯いて湯の中の自分の身体を見つめた。
寄せて上げてないから谷間は無い。でも、ナオはその場所に無数の跡を付けた。
『ここ、弱いよな?』
そう言って見上げたナオの顔を思い出した途端、まるでクレイアニメのようにそこが形を持って立ち上がった。
自分で触れても何とも無い場所なのに、ナオの唇やゴツゴツとした指が触れるとそれだけで、震えが走り肌が騒めく。
ナオの舌先を求めて疼く自分の舌を噛む。
『覚えとけよ、これが俺のカタチだって』
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
なお、スピンオフもございます。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる