太陽のような君

ひろ・トマト

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6,二つの太陽

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相川さんと上原くんは前から仲が良かったらしい。

それはべつに不思議なことではなかった。どっちも交流関係が広い。それこそ男女問わず。

だから、付き合うことも不自然なことではない。



わかっているつもりだが、僕の心の穴を埋めるほどの慰めにはならない。

なんとも難儀なものだ。



その日から僕は相川さんとはなんとなく距離を置いてしまっている。

彼氏がいる人と親しくしゃべるのはよろしくないという気持ちもあるが、それ以上に僕の心が絶えられる気がしなかった。



結局僕は勘違いしていただけだった。少し仲良くだっただけで、モブがヒロインと恋ができると。



現実はそうじゃなかった。モブそのものよりも、モブより性格も、容姿も、能力も上な主人公を選ぶのが道理だ。



そんな悲しい現実に目を背けていた。



僕が現実を見つめて、足りないところを補おうとすれば、結果は違ったかもしれない。

だが僕はそれすらしなかった。ただ相川さんと少し仲良くなっただけで満足して、それ以上を求めることができなかった。

まったくもってモブにはお似合いの結末だ。







放課後。僕は教室でぼーっとしていた。



別にクラス委員の仕事があるわけじゃない。

ただ、一人になりたかった。最近はずっとそうだ。



ふと僕は教室の窓を開けてみた。生暖かい風が僕の皮膚をなぞって行く。

僕はグラウンドに目を向けて……目を向けて発見した。

相川さんと上原くんを。



二人はグラウンドの隅で談笑しているようだった。

僕はじっと二人を見つめる。



どちらも楽しそうに笑っていた。嬉しそうに会話していた。

僕と話しているときよりも。

仲良くなれた。そう思っていたが、どうやら彼女からみれば僕はそこまでの対象ではなかったらしい。



……その光景を見て僕は気づいてしまった。

僕が二人と話していた時に感じたあのすっきりとしない、心にもやがかかったような気持ちの正体を。

いつか相川さんを直視することができなかった、あの感じを。



そうだ、二人はあまりにも眩しすぎるのだ。明るすぎる光は直視できないように、僕は二人をちゃんとみることができなかった。



二人は太陽のような存在ではない。太陽そのものだ。

主役にふさわしい、どこまでも輝く陽の光。僕は無意識で避けていた。



僕は嫌だった。この光が。その光をみるたびに僕という存在のちっぽけさまで照らされるようで、それを直視したくなくて目を背け続けた。



なるほどやっとわかった。そして改めて思う。



僕は主役になんてなれない。どこまでも平凡で普通でどこにでもいるモブだ。

自分を理解したところで変えられない。変える勇気が出ない。

だから僕はモブのままだ

だからこれからも平凡な人生を送ることだろう。



別の日。僕は久しぶりにいつもの時間通りに駅に行ってみた。

駅のベンチには見知った顔の女子が座っていた。僕に気が付くと、ワイヤレスイヤホンを外し話しかけてくる。



「めっちゃひさしぶりじゃね。何してたの今まで」

「ちょっと立て込んでてね」

僕は近くに座り、相川さんの姿を見た。彼女は変わらず眩しい存在だ。



「ふーん。もう大丈夫なの」

「うん。いろいろと……解決したからさ」

僕がそういうと、彼女は笑みを浮かべた。



「ていうかさあ、ちゃんとさ、好きな人できた?」

「まあ、できたかな」

「え、まじで。誰?」



興味深そうにきいてくる。

「できたんだけど……別に、もういいかな」

「冷めるのはっや!結局誰よ」

彼女はこっちをのぞき込んで、答えを知りたがる。

だけれども今のぼくにはもうどうでもいいことだった。

「さあ、忘れたわ」

「うわ、つまんな」

そう言って彼女はまた太陽のような笑顔で笑った。



とそこに。



「あれ川口もいるじゃん」

別の声がやってきた。上原くんだ。



「そういや、お前電車通か」

「上原くんも電車乗るんだ」

「私たちこれからデートするからさ、中央駅で」



なるほど、だから上原くんがいるのか。

「じゃあ、僕離れたほうがいいか」

「いやいいよ別に」

「そうそう~健也に遠慮なんてしなくていいよ」

「なんでお前が言うんだよ」



そう言って二人は笑いあっている。やっぱり僕といる会話しているときよりも楽しそうだ。

でも……そんな二人を改めてみてみると、なんだか、嬉しいような気持ちにもなる。



二人は幸せそうだから。

二人の存在はあまりにも眩しすぎて、ちゃんと見ることができないけれど。

ぼくのようなモブなんて眼中にないのかもしれないけれど

それでいいのかもしれない。

お互いに、心から笑える幸せを手に入れたのだから。

少なくともいまはそれでいい。

そばで輝く二つの太陽を見ながら僕はそう思った。

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