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5,現実
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今日も、クラス委員の仕事が残っている。なかなか手ごわいものでずいぶんと時間がかかっている。
今回も遅い電車で帰ることになるだろう。
いつもはクラスに残る人もそこそこいるのだが、今日に限っては僕一人だけだ。
誰もいないクラスは静かで、いつもの騒がしさが嘘のようだ。
少々寂しいが僕はこの雰囲気は結構好きだ。
仕事もはかどるというものだろう。
その時、勢いよく教室のドアが開け放たれた。
カリカリとペンを進めていた僕は急にきたものだからビクっとしてドアのほうを見る。
上原くんだ。彼も教室に誰もいないと思っていたのか僕を見つけて驚いた様子だった。
「あ、まだ残ってたのお前」
「うん。クラス委員の仕事があってね」
ぼくがそういうと彼はぼくの隣までやってきた。
ちょうど西日が重なって彼が見えづらい。
「めんどくさっ。偉いわお前」
そう言ってけらけらと笑う。いつものように彼は朗らかな笑顔でこちらに話しかけてきた。
ただ……ただ今日は少し、その眩しい笑顔を見るのが嫌だった。
なぜかは定かではないけれど。
「上原くんはどうしたの?」
「ああ。告白されたわ」
「へー……ええ!?」
上原くんがさらりと言うものだから僕は反応するのが驚いてしまった。
告白された。彼は事もなしげにそう言った。
僕にとっては大事件だというのに彼はそうでもないらしい。
平然とした顔で、いつもの通り過ごしている。
「いつ?」
「さっき。廊下で告白されたわ」
「廊下で告白って変じゃね」などと上原くんは言っている。
告白なんてされたことがないので僕はわからない。
——それはともかくとして、彼はだれに告白されたのだろうか。
「……誰に告白されたの」
「相川」
今目の前の彼が発した言葉を僕はしばらく認識できなかった。
上原くんはまたこともなしげにそう言った。
あまりのあっけなさに、そして彼の言葉に、僕は固まってしまった。
「ていうかあいつ、俺のこと好きだったんだなー。全然そんな素振りなかったのに」
上原くんは現実を呑み込めていない僕を尻目にそんなことをいった。
「えーと、OKしたの……?」
「したよ、まあ別に俺もあいつ嫌いじゃなかったし」
その言葉を聞いて僕は、ようやく現実を理解できた。
そうだ。僕は、チャンスを失ってしまったのだ。
いや、そもそもチャンスなんてなかったのかもしれない。
とにかく、僕は選ばれなかったようだ。それは確かだ。
喪失感が僕の心を侵食していく。
心にぽっかりと穴があいたような、そんな気分だった。
「……ごめん、ちょっと先生に用事あるんだった」
そういって僕は席を離れた。とにかく一人になりたい気分だった。
「え、ああ、先かえってるわ。じゃあな」
そんな言葉を無視して教室を出た。感じが悪いだろう。
だが僕には他人を気遣う余裕などなかった。
外にでた。グラウンドには部活終わりの生徒たちが片付けや帰宅をしていた。
空も暗くなり始めている。
僕はそばの水道に行き、蛇口を思いっきりひねり、出てきた水を頭からかぶった。
自分でも意味不明な行動だと自覚したが、こうでもしないと落ち着くことができなかった。
結局10分ほどその場から動くことができなかった。
その間僕の頭にはもやもやとした気持ちが渦巻いていた。
「……帰るか……」
誰に聞かれるわけでもなく一人でつぶやいた。
そしてとぼとぼと教室に向かって歩きだす。
なるべく、心を無心にして。
今回も遅い電車で帰ることになるだろう。
いつもはクラスに残る人もそこそこいるのだが、今日に限っては僕一人だけだ。
誰もいないクラスは静かで、いつもの騒がしさが嘘のようだ。
少々寂しいが僕はこの雰囲気は結構好きだ。
仕事もはかどるというものだろう。
その時、勢いよく教室のドアが開け放たれた。
カリカリとペンを進めていた僕は急にきたものだからビクっとしてドアのほうを見る。
上原くんだ。彼も教室に誰もいないと思っていたのか僕を見つけて驚いた様子だった。
「あ、まだ残ってたのお前」
「うん。クラス委員の仕事があってね」
ぼくがそういうと彼はぼくの隣までやってきた。
ちょうど西日が重なって彼が見えづらい。
「めんどくさっ。偉いわお前」
そう言ってけらけらと笑う。いつものように彼は朗らかな笑顔でこちらに話しかけてきた。
ただ……ただ今日は少し、その眩しい笑顔を見るのが嫌だった。
なぜかは定かではないけれど。
「上原くんはどうしたの?」
「ああ。告白されたわ」
「へー……ええ!?」
上原くんがさらりと言うものだから僕は反応するのが驚いてしまった。
告白された。彼は事もなしげにそう言った。
僕にとっては大事件だというのに彼はそうでもないらしい。
平然とした顔で、いつもの通り過ごしている。
「いつ?」
「さっき。廊下で告白されたわ」
「廊下で告白って変じゃね」などと上原くんは言っている。
告白なんてされたことがないので僕はわからない。
——それはともかくとして、彼はだれに告白されたのだろうか。
「……誰に告白されたの」
「相川」
今目の前の彼が発した言葉を僕はしばらく認識できなかった。
上原くんはまたこともなしげにそう言った。
あまりのあっけなさに、そして彼の言葉に、僕は固まってしまった。
「ていうかあいつ、俺のこと好きだったんだなー。全然そんな素振りなかったのに」
上原くんは現実を呑み込めていない僕を尻目にそんなことをいった。
「えーと、OKしたの……?」
「したよ、まあ別に俺もあいつ嫌いじゃなかったし」
その言葉を聞いて僕は、ようやく現実を理解できた。
そうだ。僕は、チャンスを失ってしまったのだ。
いや、そもそもチャンスなんてなかったのかもしれない。
とにかく、僕は選ばれなかったようだ。それは確かだ。
喪失感が僕の心を侵食していく。
心にぽっかりと穴があいたような、そんな気分だった。
「……ごめん、ちょっと先生に用事あるんだった」
そういって僕は席を離れた。とにかく一人になりたい気分だった。
「え、ああ、先かえってるわ。じゃあな」
そんな言葉を無視して教室を出た。感じが悪いだろう。
だが僕には他人を気遣う余裕などなかった。
外にでた。グラウンドには部活終わりの生徒たちが片付けや帰宅をしていた。
空も暗くなり始めている。
僕はそばの水道に行き、蛇口を思いっきりひねり、出てきた水を頭からかぶった。
自分でも意味不明な行動だと自覚したが、こうでもしないと落ち着くことができなかった。
結局10分ほどその場から動くことができなかった。
その間僕の頭にはもやもやとした気持ちが渦巻いていた。
「……帰るか……」
誰に聞かれるわけでもなく一人でつぶやいた。
そしてとぼとぼと教室に向かって歩きだす。
なるべく、心を無心にして。
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