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第29話 グレンのお留守番2日目10
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「取り合えず、姉御ってなに?」
「にゃ、まずそれだな」
「このうしさんが、あねごです!」
クレアと寅吉の疑問に何の答えにもなっていない回答をするグレン。
「あ、えっと……そうなの?」
「はい!」
「んにゃ、で、なんでこの牛が姉御なんだ?」
寅吉が改めて聞き直し、背中にミルク缶を背負って着いてきてくれている牛を見る。
「えっと、さいしょはたすけてもらって、かっこよくて、”あにき”ってよんだらおこられたので……あねごです!」
牛も「そうだ」と言わんばかりに一鳴きする。
「あ~それは怒られるね、女の子だもんね」
「はい……しっぽがいたかったです……」
「あはは、私も寅吉の尻尾が痛かったわ……」
「何のことだか」
何やらクレアが何かやって寅吉に叩かれたらしい。
「んな~それで、“落ちた”って何があったんだ?」
「えっと……いわやまにのぼって、てっぺんにたって、おちました……」
「「はいっ!?」」
グレンの言葉に目を丸くして思わず立ち止まってしまう。
「グレン……あの岩山に登ったか?それも頂上まで……」
「それより、頂上から落ちたって!?体は大丈夫なの!?」
「あねごがたすけてくれました!」
グレンは嬉しそうに牛の姉御に抱きつく。
牛は誇らしげに胸を逸らし、嬉しそうにしている。
そしてグレンの首根っこを咥えてグレンを持ち上げて見せる。
「こんなふうに!」
「「ははははは!」」
牛に咥えられて宙吊り状態のグレンを見て爆笑する2人。
牛に咥えられて揺れるグレン。
「あはははははは」
グレンも楽しそうに笑う。
「あはは、グレンを助けてくれありがとう」
「にゃ、他のみんなもグレンを守ってくれてありがとうな」
クレアと寅吉は周りを一緒に歩いている動物たちにお礼を言う。
ちなみに、村から連れてきた家畜たちは迎えにきた動物たちが連れて行ってくれた。
今現在一緒に歩いているのは、グレンと一緒に歩いてきてくれた動物たちだけだ。
「それにしても、あのアスレチックを登ったのか。よく登れたな。結構大変だったと思うんだが」
「アスレチック……?」
「あれはね、私と寅吉で遊びのために作った"アスレチック"って言うんだよ」
「すごいですね!たのしかったです!」
岩山のアスレチックはクレアと寅吉の遊び場だったようだ。
寅吉が横で得意気な顔をしている。
「こだわりのアスレチックだからな」
「たいへんだったけど、がんばりました!とくにさいごは、てとあしにまりょくをしゅうちゅうさせてのぼりました」
「魔力を使ったんだね、よく頑張った」
「むずかしかったけど、たのしかったです!」
グレンはアスレチックを思い出したのか、嬉しそうにはにかんでいる。
「あねごたちがちょうじょうでまってってくれたんです」
「あー、この子たちなら、そうだよね……できるもんね。何でだか」
「牛が口でロープ咥えてターザンしてる姿は驚くからな……」
牛はターザンもできるらしい。
「と言うか、アスレチックやらないで一周してくれれば十分運動になると思ってたんだけどな。できるなら明日から運動に組み込むか」
「え、良いんですか!やりたいです!」
「楽しそうだな。じゃあ明日からはアスレチックも課題に入れよう」
「やったー」
寅吉的には課題の中には入っていなかったようだが、グレンがやる気ならやらせてみることにする。
「毎日あの運動をしていれば、自然と体力もついて体の使い方も覚えるだろうしな。魔力は……にゃ、今もちゃんと意識しているみたいだな」
「はい、すぐつかれちゃうんですけど……つかうとのぼれます!」
「魔力の知覚もよくできてるみたいだね。そのまま続けていけば慣れてくるよ」
グレンの体内の魔力を観察しながら、クレアと寅吉がグレンの今日一日の練習の成果を読み取る。
「べんきょうも、まほうも、うんどうも、みんながんばります!」
「いいね~強欲だね~」
「にゃ、興味があればなんでもやってみろ。ここはそう言うところだ」
「はい!」
グレンのやる気に目を見張りながら、一行はおしゃべりしながら歩き出す。
「それからもりのなかでキノコをみつけて、こやがいっぱいあって――」
「それは寅吉の趣味小屋だね、色々あるから今度見てみるといいよ」
「案内しよう。興味があれば教えるしな」
「キノコおいしそうでした。とりさんがとるのてつだってくれました」
「今日はキノコ料理だな」
「いいねキノコ、美味しいよねー」
「うまさんがおこられて――」
「あはは、馬っぽーい」
「馬はすぐ調子に乗るからな」
「とりのひながたまごからかえって、とりさんとおどって――」
「「キタキタ踊り!?」」
「あねごのミルクしぼって――」
「む、リーダーのミルク搾れたのか……やるな」
「この子は認めた人にしか搾らせないからね」
◇◇◇
「すまないな運んでもらって」
「ありがとうございました」
寅吉は牛の背中からミルク缶を受け取り、グレンはお礼を言う。
「みんなもありがとうね。連れて来た子たちのこと、よろしくね」
動物たちはみんなで一鳴きして放牧場へと帰っていく。
「おーい、家に入るぞ」
「さ、私たちも家に入ろうか」
「はい」
動物たちに手を振って見送っていたグレンに寅吉とクレアが声をかける。
家に戻ってきた3人は台所に荷物を置き、一息つくためにダイニングテーブルに集まる。
「今日も一日お疲れ様でした」
「おつかれさまでした!」
「にゃ、お疲れ様」
寅吉がお茶を用意し、みんなで一息つく。
「さて、話したいこともあるし、ご飯も作りたいところだけど。まずは汗と汚れを落としにお風呂に行こうか」
「そうだな、このまま料理する訳にはいかないな。汚れを落としに行こう」
「ぼくもよごれました……」
各々汚れてしまっているため、まずは体の汚れを落とすために温泉に行くことにする。
「温泉♪温泉♪」
「ふるーつぎゅうにゅうはのめますか?」
「にゃ、飲んでいいぞ」
「やったー」
グレンお気に入りのフルーツ牛乳が飲めると分かり、グレンはご機嫌だ。
各自着替えを持ち寄り、温泉へとやってくる。
「グレン、脱いだ服はこの魔道具の中に入れておいてくれ」
「はい。これはどんなまどうぐですか?」
暖簾をくぐり、脱衣所で汚れた服を脱いでいたグレンに寅吉が声をかける。
「これは自動で洗濯してくれる魔道具だ。汚れが酷い時に使うと楽なんだ」
「すごいまどうぐですね!いつもつかわないんですか?」
洗濯が自動でできる魔道具はいつも使っているわけではないようだ。
こんなすごい魔道具があって使わない理由でもあるのだろうか。
「にゃ、軽い汚れなら魔法で済ませてるからな。今日は汚れたから使うんだ。グレンは汚れただろ?」
「なるほどー」
「寅吉ー、私の服も洗ってー」
隣の脱衣所からクレアの声が聞こえると共に、クレアの脱ぎ捨てられた服が壁の上を舞って飛んでくる。
「おい!服を投げるな!そっちにも洗濯機あるだろ!」
「えー、一編に洗っちゃった方が効率いいじゃん。よろしくー」
「……ったく」
クレアはそのまま洗い場の方へを扉を開けて出て行ってしまったようだ。
「すまないが服拾って洗濯機に入れてくれるか?」
「はい」
脱衣所の床にはクレアの服や下着が散らばっていた。
「グレン、あれは真似しなくていいいからな……」
「はい!」
元気な返事を聞いて寅吉は若干安心したのか、さっさと散らばった服を洗濯機に放り込み、魔道具を起動させる。
「俺達も体を洗って温泉に入ろう」
「おんせん♪おんせん♪」
「気に入ってもらえて何よりだ」
すっかりお風呂好きになったグレンを見て、寅吉も満足気だ。
2人は洗い場でお湯をかぶりながら石鹸を使って体を洗う。
「今日は汗もかいただろ、よく洗ってから湯船に入るんだ。じゃないと湯船のお湯が汚れるからな」
「はい」
ゴシゴシとタオルを使って体を洗うグレン。
隣ではお湯を被ってほっそりとした寅吉は石鹸を使って全身を泡立てていた。
「とらきちさんあわだらけです」
「――だが汚れが絡んでるな……これでも泡立ちが悪い方だな……」
全身泡だらけの寅吉はこれでも泡立ちが悪いと言う。
自身の体を洗い終えたグレンは立ち上がり寅吉の背中を洗い始める。
「ぼくがてつだいます!」
「む、すまんな。頼む」
「私も手伝ってあげるよ」
後ろからクレアが声がする。
グレンが後ろを振り向くとタオルを巻いたクレアがこちらに向かって歩いて来ていた。
「クレアはもう洗ったのか。頼んでいいか?毛が……絡まって……」
「オッケー!グレンそこのブラシ取ってくれる?やるよー」
「はい!」
クレアが寅吉の背中を洗い、グレンがブラシを通していく。
初めは引っ掛かっていたブラシが段々と通るようになっていく。
「大分絡みが取れて来たね」
「はいっ!たのしいです!」
「すまんな――」
寅吉は気持ちいいのか喉をゴロゴロと鳴らして尻尾を振っている。
「ちょっと、寅吉!尻尾、尻尾が当たる!」
「――!……すまん」
尻尾をくるりと体に巻き付けて反省する寅吉。
だが尻尾の先はまだピコピコと動いている。
余程気持ちがいいのだろう。
「よしっ!お湯流すよー」
「よし、こい」
寅吉の耳が畳まれ、クレアとグレンは桶に溜めたお湯を一気に寅吉に掛けていく。
何度かお湯を掛け、汚れと抜け毛が流されていく。
「完成!」
「かんせい!」
体を洗い終わった寅吉は立ち上がる。
「ふうー」
「あ、ヤバい――」
クレアは何かを察知して退避しようとグレンの手を取るが一歩遅く、寅吉は体をブルブルと振るわせてしまう。
「ちょ、寅吉!」
「わー!」
飛び散る水と抜け毛。
「…………あっ」
寅吉は無意識に体を振って水を切ってしまったらしく“やっちまった”という顔をしている。
目の前には水飛沫と抜け毛に塗れたクレアとグレン。
「…………すまん」
「もうー、もう1回洗わないといけないじゃん!」
「ぼくもー」
「……ごめん」
「もう洗ってあげないよ」
「ブラシしないですよ」
「にゃ!それは、その……勘弁して欲しいです、はい……」
「後でモフらせて」
「ぼくもー」
「存分にどうぞ……」
「「やったー」」
今夜のモフモフが確定した瞬間だった。
「にゃ、まずそれだな」
「このうしさんが、あねごです!」
クレアと寅吉の疑問に何の答えにもなっていない回答をするグレン。
「あ、えっと……そうなの?」
「はい!」
「んにゃ、で、なんでこの牛が姉御なんだ?」
寅吉が改めて聞き直し、背中にミルク缶を背負って着いてきてくれている牛を見る。
「えっと、さいしょはたすけてもらって、かっこよくて、”あにき”ってよんだらおこられたので……あねごです!」
牛も「そうだ」と言わんばかりに一鳴きする。
「あ~それは怒られるね、女の子だもんね」
「はい……しっぽがいたかったです……」
「あはは、私も寅吉の尻尾が痛かったわ……」
「何のことだか」
何やらクレアが何かやって寅吉に叩かれたらしい。
「んな~それで、“落ちた”って何があったんだ?」
「えっと……いわやまにのぼって、てっぺんにたって、おちました……」
「「はいっ!?」」
グレンの言葉に目を丸くして思わず立ち止まってしまう。
「グレン……あの岩山に登ったか?それも頂上まで……」
「それより、頂上から落ちたって!?体は大丈夫なの!?」
「あねごがたすけてくれました!」
グレンは嬉しそうに牛の姉御に抱きつく。
牛は誇らしげに胸を逸らし、嬉しそうにしている。
そしてグレンの首根っこを咥えてグレンを持ち上げて見せる。
「こんなふうに!」
「「ははははは!」」
牛に咥えられて宙吊り状態のグレンを見て爆笑する2人。
牛に咥えられて揺れるグレン。
「あはははははは」
グレンも楽しそうに笑う。
「あはは、グレンを助けてくれありがとう」
「にゃ、他のみんなもグレンを守ってくれてありがとうな」
クレアと寅吉は周りを一緒に歩いている動物たちにお礼を言う。
ちなみに、村から連れてきた家畜たちは迎えにきた動物たちが連れて行ってくれた。
今現在一緒に歩いているのは、グレンと一緒に歩いてきてくれた動物たちだけだ。
「それにしても、あのアスレチックを登ったのか。よく登れたな。結構大変だったと思うんだが」
「アスレチック……?」
「あれはね、私と寅吉で遊びのために作った"アスレチック"って言うんだよ」
「すごいですね!たのしかったです!」
岩山のアスレチックはクレアと寅吉の遊び場だったようだ。
寅吉が横で得意気な顔をしている。
「こだわりのアスレチックだからな」
「たいへんだったけど、がんばりました!とくにさいごは、てとあしにまりょくをしゅうちゅうさせてのぼりました」
「魔力を使ったんだね、よく頑張った」
「むずかしかったけど、たのしかったです!」
グレンはアスレチックを思い出したのか、嬉しそうにはにかんでいる。
「あねごたちがちょうじょうでまってってくれたんです」
「あー、この子たちなら、そうだよね……できるもんね。何でだか」
「牛が口でロープ咥えてターザンしてる姿は驚くからな……」
牛はターザンもできるらしい。
「と言うか、アスレチックやらないで一周してくれれば十分運動になると思ってたんだけどな。できるなら明日から運動に組み込むか」
「え、良いんですか!やりたいです!」
「楽しそうだな。じゃあ明日からはアスレチックも課題に入れよう」
「やったー」
寅吉的には課題の中には入っていなかったようだが、グレンがやる気ならやらせてみることにする。
「毎日あの運動をしていれば、自然と体力もついて体の使い方も覚えるだろうしな。魔力は……にゃ、今もちゃんと意識しているみたいだな」
「はい、すぐつかれちゃうんですけど……つかうとのぼれます!」
「魔力の知覚もよくできてるみたいだね。そのまま続けていけば慣れてくるよ」
グレンの体内の魔力を観察しながら、クレアと寅吉がグレンの今日一日の練習の成果を読み取る。
「べんきょうも、まほうも、うんどうも、みんながんばります!」
「いいね~強欲だね~」
「にゃ、興味があればなんでもやってみろ。ここはそう言うところだ」
「はい!」
グレンのやる気に目を見張りながら、一行はおしゃべりしながら歩き出す。
「それからもりのなかでキノコをみつけて、こやがいっぱいあって――」
「それは寅吉の趣味小屋だね、色々あるから今度見てみるといいよ」
「案内しよう。興味があれば教えるしな」
「キノコおいしそうでした。とりさんがとるのてつだってくれました」
「今日はキノコ料理だな」
「いいねキノコ、美味しいよねー」
「うまさんがおこられて――」
「あはは、馬っぽーい」
「馬はすぐ調子に乗るからな」
「とりのひながたまごからかえって、とりさんとおどって――」
「「キタキタ踊り!?」」
「あねごのミルクしぼって――」
「む、リーダーのミルク搾れたのか……やるな」
「この子は認めた人にしか搾らせないからね」
◇◇◇
「すまないな運んでもらって」
「ありがとうございました」
寅吉は牛の背中からミルク缶を受け取り、グレンはお礼を言う。
「みんなもありがとうね。連れて来た子たちのこと、よろしくね」
動物たちはみんなで一鳴きして放牧場へと帰っていく。
「おーい、家に入るぞ」
「さ、私たちも家に入ろうか」
「はい」
動物たちに手を振って見送っていたグレンに寅吉とクレアが声をかける。
家に戻ってきた3人は台所に荷物を置き、一息つくためにダイニングテーブルに集まる。
「今日も一日お疲れ様でした」
「おつかれさまでした!」
「にゃ、お疲れ様」
寅吉がお茶を用意し、みんなで一息つく。
「さて、話したいこともあるし、ご飯も作りたいところだけど。まずは汗と汚れを落としにお風呂に行こうか」
「そうだな、このまま料理する訳にはいかないな。汚れを落としに行こう」
「ぼくもよごれました……」
各々汚れてしまっているため、まずは体の汚れを落とすために温泉に行くことにする。
「温泉♪温泉♪」
「ふるーつぎゅうにゅうはのめますか?」
「にゃ、飲んでいいぞ」
「やったー」
グレンお気に入りのフルーツ牛乳が飲めると分かり、グレンはご機嫌だ。
各自着替えを持ち寄り、温泉へとやってくる。
「グレン、脱いだ服はこの魔道具の中に入れておいてくれ」
「はい。これはどんなまどうぐですか?」
暖簾をくぐり、脱衣所で汚れた服を脱いでいたグレンに寅吉が声をかける。
「これは自動で洗濯してくれる魔道具だ。汚れが酷い時に使うと楽なんだ」
「すごいまどうぐですね!いつもつかわないんですか?」
洗濯が自動でできる魔道具はいつも使っているわけではないようだ。
こんなすごい魔道具があって使わない理由でもあるのだろうか。
「にゃ、軽い汚れなら魔法で済ませてるからな。今日は汚れたから使うんだ。グレンは汚れただろ?」
「なるほどー」
「寅吉ー、私の服も洗ってー」
隣の脱衣所からクレアの声が聞こえると共に、クレアの脱ぎ捨てられた服が壁の上を舞って飛んでくる。
「おい!服を投げるな!そっちにも洗濯機あるだろ!」
「えー、一編に洗っちゃった方が効率いいじゃん。よろしくー」
「……ったく」
クレアはそのまま洗い場の方へを扉を開けて出て行ってしまったようだ。
「すまないが服拾って洗濯機に入れてくれるか?」
「はい」
脱衣所の床にはクレアの服や下着が散らばっていた。
「グレン、あれは真似しなくていいいからな……」
「はい!」
元気な返事を聞いて寅吉は若干安心したのか、さっさと散らばった服を洗濯機に放り込み、魔道具を起動させる。
「俺達も体を洗って温泉に入ろう」
「おんせん♪おんせん♪」
「気に入ってもらえて何よりだ」
すっかりお風呂好きになったグレンを見て、寅吉も満足気だ。
2人は洗い場でお湯をかぶりながら石鹸を使って体を洗う。
「今日は汗もかいただろ、よく洗ってから湯船に入るんだ。じゃないと湯船のお湯が汚れるからな」
「はい」
ゴシゴシとタオルを使って体を洗うグレン。
隣ではお湯を被ってほっそりとした寅吉は石鹸を使って全身を泡立てていた。
「とらきちさんあわだらけです」
「――だが汚れが絡んでるな……これでも泡立ちが悪い方だな……」
全身泡だらけの寅吉はこれでも泡立ちが悪いと言う。
自身の体を洗い終えたグレンは立ち上がり寅吉の背中を洗い始める。
「ぼくがてつだいます!」
「む、すまんな。頼む」
「私も手伝ってあげるよ」
後ろからクレアが声がする。
グレンが後ろを振り向くとタオルを巻いたクレアがこちらに向かって歩いて来ていた。
「クレアはもう洗ったのか。頼んでいいか?毛が……絡まって……」
「オッケー!グレンそこのブラシ取ってくれる?やるよー」
「はい!」
クレアが寅吉の背中を洗い、グレンがブラシを通していく。
初めは引っ掛かっていたブラシが段々と通るようになっていく。
「大分絡みが取れて来たね」
「はいっ!たのしいです!」
「すまんな――」
寅吉は気持ちいいのか喉をゴロゴロと鳴らして尻尾を振っている。
「ちょっと、寅吉!尻尾、尻尾が当たる!」
「――!……すまん」
尻尾をくるりと体に巻き付けて反省する寅吉。
だが尻尾の先はまだピコピコと動いている。
余程気持ちがいいのだろう。
「よしっ!お湯流すよー」
「よし、こい」
寅吉の耳が畳まれ、クレアとグレンは桶に溜めたお湯を一気に寅吉に掛けていく。
何度かお湯を掛け、汚れと抜け毛が流されていく。
「完成!」
「かんせい!」
体を洗い終わった寅吉は立ち上がる。
「ふうー」
「あ、ヤバい――」
クレアは何かを察知して退避しようとグレンの手を取るが一歩遅く、寅吉は体をブルブルと振るわせてしまう。
「ちょ、寅吉!」
「わー!」
飛び散る水と抜け毛。
「…………あっ」
寅吉は無意識に体を振って水を切ってしまったらしく“やっちまった”という顔をしている。
目の前には水飛沫と抜け毛に塗れたクレアとグレン。
「…………すまん」
「もうー、もう1回洗わないといけないじゃん!」
「ぼくもー」
「……ごめん」
「もう洗ってあげないよ」
「ブラシしないですよ」
「にゃ!それは、その……勘弁して欲しいです、はい……」
「後でモフらせて」
「ぼくもー」
「存分にどうぞ……」
「「やったー」」
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