趣味に全力!森の魔女は勝手気ままに生きたい 〜気になる漫画の続きが読みたいので、弟子を取りました〜

蒼烏

文字の大きさ
30 / 31

第30話 グレンのお留守番2日目11

しおりを挟む
「あーさっぱりした」
「フルーツぎゅうにゅうおいしかったです」
「……それはよかった」

 ドライヤーでふわふわな毛並みに戻った寅吉は、すでにグッタリした表情で一番後ろを歩いている。

「乾かした直後のふわふわも堪らないねー」
「ふわふわであったかくて、きもちよかったー」
「……それはよかったです」

 早速モフられたらしい。
 
「戻ってご飯作ろうー。今日は何がいいかな?」
「キノコとたまごとぎゅうにゅうがあります!」
「その食材なら……オムレツか」

 寅吉が料理に反応して復活する。

「キノコのオムレツ!いいね!!」
「オムレツってなんですか?」

 オムレツに大賛成のクレアと、オムレツが分からないグレン。
 グレンは不思議そうな顔をしている。

「オムレツはね~ふわふわで美味しいよ~」
「にゃ、卵料理だな、楽しみにしておいてくれ」
「たべたい!」

 グレンは目をキラキラさせながら期待に満ちた目で2人を見つめる。

「オムライスでもいいけど……
 時間かかるな。パンでいいか?」
「お腹すいてからすぐ食べたい!オムライスは今度で!」
「おなか、すきました!」

 お腹ペコペコの2人はすぐに食べられるものをご所望のようだ。
 寅吉はエプロンを着けて台所に立ち、早速下拵えを始める。

「そうだ、バターがもうないんだった。クレア、バター作ってくれるか?」
「オッケー♪グレン、一緒に作ろうか」
「バターはつくったことあります!」

 寅吉ご所望のバターはグレンも作ったことがあるようだ。
 クレアは棚から大きめの瓶と小さめの瓶を取り出してそれぞれに牛乳を注いでいく。

「パン用にも使いたいから無塩バターと有塩バターを作ろうか。グレンはこっちの小さいやつで混ぜてくれるかな?」
「はい!」

 クレアはグレンに牛乳の入った小さな瓶を手渡し、グレンはそれわ勢いよく振り始める。

「うおおおおぉぉぉぉぉぉ」
「あはははは、頑張れー」

 全身を使って瓶をシャカシャカとシェイクするグレン。
 それを横目にクレアは一抱えをもある大きな瓶に牛乳を入れてバターを作ろうとする。

「はぁ……クレアさん……それ……おおきすぎ……じゃ、ないですか?」

 既にちょっと疲れてきているグレンはクレアの瓶が、とても1人でシェイクできる大きさに見えなかった。

「ふふーん、まあ見ててよ。私は魔女だからね」
「?」

 クレアはそう言うと小さな杖を取り出して瓶に向かって魔法陣を展開する。
 瓶は空中に浮き上がり、更にもう一つ別の魔法陣を展開。

「わっ!ぎゅうにゅうがまわってる!」
「そっ!瓶の中にだけ別の魔法陣を展開して、中身だけを攪拌してるんだよ!」

 バシャバシャと回転した揉まれる瓶の中の牛乳。
 あっという間に半固形状態へと変化していく。
 一方グレンの手の中にある瓶の中身は、未だに牛乳である。

「……がんばる!」
「グレン、腕に魔力を集中させてやってみろ。早く力強く振れるぞ」
「――はい!」

 両腕に魔力を集中させて高速で瓶を振り出すグレン。
 先程までよりも圧倒的に早く、強く攪拌していく。
 次第にシャカシャカと鳴っていた音がペタペタと言い出した。

「大分良さそうな音がするね」
「――はぁ――はぁ――もう……いいですか……?」

 グレンは息を止めて必死に瓶を振る。
 顔を真っ赤にしながらもその手を止めない。
 既にクレアは出来上がったバターを瓶から取り出して半分に分け、無塩バターと有塩バターに分けて保存し始めていた。

「――はぁ――できた」
「お疲れ様、今日はグレンが作ったバターでオムレツを作ろうか」
「にゃ、グレン。バターを持って来てくれ」

 魔力を使いながら腕を振ることで、手早くバターを作ることができたが、より疲れて気がするグレン。

(やっぱり……まりょく……つかれる……)

 肩で息をするグレンはバターを寅吉に手渡し、椅子に座って休憩する。

「お疲れ様。魔力を使った身体強化、疲れるでしょ?」
「つかれました……」

 まだ息が整わないグレンがようやっと返事をする。
 そんなグレンを見ながらクレアは魔力の講義をしてくれる。

「魔力を知覚、操作するのって慣れないうちは凄く疲れるんだよね。魔力に動いて欲しいと考えて、思い通りに動かす。これがなかなか疲れる。でもね、グレンみたいに小さい時から訓練していれば魔力を自由自在に操れるようになるよ。身体も魔力に慣れてくるし、魔力を使った身体の使い方も習得できるからね」
「クレアさんみたいに――まほうも――つかえますか?」

 寅吉の課題はグレンの魔力操作による身体強化の訓練だったようだ。
 だがグレンはクレアのように魔法も使ってみたいのだ。

「そうだね。魔法、まぁ普段使うなら魔術だけど、やっぱり基本は魔力操作がものを言うからね。どれだけ素早く精密に動かせるかだから、身体強化のための魔力操作はやっといた方がいいよ。これからじっくり教えてあげるから、まずは魔導書を読めるようにならないとね?」
「はい!べんきょうします」

 魔法、魔術を使うには魔力操作が必要であり、その 為の技術を学ぶには文字や数字が読めないといけない。

(やることが、いっぱいだ!)

 グレンの頭の中はやりたいことだらけだ。

「グレン、オムレツを作るが。見るか?」
「――みたいです!」

 グレンは思考を止め、寅吉のオムレツ作りを見に立ち上がる。
 全て、見て、経験して、己の血肉にするために。
 
「まずは熱したフライパンにキノコと玉ねぎを入れて炒める」

 寅吉は薄切りに下拵えしておいたキノコと玉ねぎをフライパンへ投入し、炒め始める。
 ジュージューと音をたてながら具材を炒めていく。
 あたりに香ばしい香りが広がり、グレンの鼻腔を刺激する。

「もう、おいしそう……」
「はは、まだこれからだぞ」

 炒めら具材を一旦皿の上に乗せ、フライパンにグレンの作ったバターを落とす。
 バターはすぐに溶け出し、一帯はバターの風味で埋め尽くされる。

「うーん!この香り、堪んないね!」
「ここに溶き卵を入れる」

 寅吉は溶き卵をフライパン全体へ伸ばし、真ん中に先程炒めた具材を乗せていく。

「よっと」
「おぉー」
 
 寅吉がフライパンを握る手をもう片方の手でトントンと叩きながら卵をクルクルと巻いていく。
 その手捌きにグレンは見惚れながらも、しっかりと動きを観察している。

(ちゃんと魔力の流れも見てるな……)

 寅吉が繊細な魔力操作で身体を使っているののをグレンはしっかりと見ているようだ。
 寅吉も気をよくしてクルッ、クルッと卵を回転させ、具材をふわふわの卵の中に包み込んでいく。

「おっ、おっ、おおー!」
「まずは1人分完成だ」

 出来上がったオムレツを皿に盛り付け、野菜を周りに乗せていく。

「オムレツプレートの完成だ」
「「おいしそー!」」

 グレンとクレアの声がハモリ、早速食卓へと運んでいくクレア。
 グレンは寅吉のオムレツ作りに夢中で齧り付き、2皿目も目を離さずに見入っている。

「ほい、2皿目」
「すごい、すごい!」

 グレンは拍手しながら寅吉を褒め千切る。
 寅吉も得意気に笑い、嬉しそうに尻尾を揺らす。

「グレンもやってみるか?」
「え、いいんですか?」
「何事も挑戦だ。やらないことには、何もできないからな」

 グレンに場所を譲り、コンロの前を開ける寅吉。
 グレンは踏み台を設置してフライパンを握る。
 手には魔力を巡らせ、重い鉄のフライパンを持ち上げる。
 普段のグレンでは片手で扱うこともできないだろう。

「グレン、手だけに集中するな、足も身体も、全身でフライパンを振るうんだ」
「はい!」

 グレンは魔力を全身で巡らせ、全身の身体を強化する。

「まずは卵を流し込む」
「はい」

 熱したフライパンに卵液を流し込み、真ん中に具材を慎重に置いていく。

「そう、そこから手首をトントンと叩きながらフライパンを返していく」
「――はい」

 慎重に手首を叩いて卵を回そうとするグレン。
 だが、卵はなかなか回ってくれない。

「う……まわらない……」
「左手の手首は柔らかく、叩いた瞬間にフライパンの先を持ち上げる感じで」
「――はい」

 もう一度トントンと手首を叩いてみるグレン。
 左手首を固めないイメージで優しく持ち上げる。

「そうだ、その感じだ。もう少しフライパンの角度を上げて、卵の端を持ち上げる感じで――」
「あ」

 くるりと卵が裏返り、具材を包み込む。

「そう、その調子だ」
「よっ!」

 一度できれば何となくコツが見えてくる。
 クルリクルリと卵を回して具材を包み込むことに成功する。

「にゃ、初めてでここまでできれば上手いもんだ」
「グレン凄いね!それ難しいんだよ」
「えへへ、でもとらきちさんみたいにきれいにできなかったです」

 皿に盛り付けられたオムレツはちょっと歪な形に変形しており、所々具材がはみ出している。

「それでも凄いよ!初めてやったんでしょ!?」
「うむ、グレンには料理の才能があるな。これからは俺と一緒に料理をやってみないか?」
「やりたいです!」
「ちょっと寅吉!抜け駆け!」
「グレンがやりたいなら仕方ないだろ」
「うっ……」
「それより、冷める前に早く食べよう」
 
 折角の温かい食事を冷ましてしまうのは勿体無いと、3人は食卓へとつく。

「どうする?私のと交換する?」
「これがいいです!」

 クレアは自分のオムレツと交換しようかとていあんするが、グレンは自分で作ったものがいいと譲らない。

「ぼくが、じぶんでつくったものがいいです」
「にゃ、そうだよな」
「そっかそうだよねー」

 どんなに崩れてても、自分の手で作った初めてのオムレツ。
 食べないわけにはいかないだろう。

「それでは」
「「「いただきます!」」」

 食卓を囲む声が響く。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜

具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです 転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!? 肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!? その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。 そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。 前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、 「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。 「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」 己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、 結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──! 「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」 でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……! アホの子が無自覚に世界を救う、 価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...