最後の魔女は目立たず、ひっそりと暮らしたい

アイイロモンペ

文字の大きさ
557 / 580
第18章 冬、繫栄する島国で遭遇したのは

第553話 日頃の行いがモノを言うようです

しおりを挟む
 『スノーフェスティバル』の開場時間が近付き、サリーとエリーを連れて会場へ行こうとすると。

「大公、ボクもご一緒してよろしいですか?」

 マーブル青年がスノーフェスティバルをまた取材したいと言います。
 お堅い新聞の新米記者が、お祭りの取材などで油を売っていて良いのかと思いますが。
 別に隠し立てする事も有りませんし、…。
 青年が、仕事をサボったとしてクビになるのは自業自得ですから断りはしませんでした。

 昨日、フェスティバルの会場は一通り案内してはいるのですが。
 ゆっくり、足を止めて見ている時間も無かったものですから…。

「大公、この見事な氷の像。
 これは、アルム地方の伝承にある女神か何かの像ですか?」

 今年の『スノーフェスティバル』のシンボルオブジェと言うべき氷像。
 その前に立ち止まって、青年が尋ねて来ました。

「何故、女神だと?
 オブジェの題目は、『ピースメーカー(平和をもたらす者)』ですが。」

 昨年は、私が創ったホテルのPRのため、ホテルを縮小した氷の造形をシンボルにしましたが。
 今年は、昨年のクラーシュバルツ王国の功労者と言うべきリーナの氷像をシンボルにしてみました。

 たった一人で、プルーシャ公国の侵攻を防いだ英雄ですものね。
 有翼の天馬に跨ったリーナの氷像をデーンと目立つ場所に据えてみました。
 細かい説明は設けずに、『ピースメーカー』という名前だけつけて。

「天馬に跨った女性など、女神くらいしか思い浮かびませんが?」

「あら、昨年のプルーシャ公国によるエルゼス侵攻のことはご存じありませんか?」

 この人、そんな事も知らないで新聞記者が務まるのかしらと思いつつ尋ねると。

「幾ら、大学の卒論で忙しくてもそのくらいの事はボクでも知っていますよ。
 昨年の夏場に、プルーシャ公国の軍勢がエルぜス地方の鉄と石炭を手中に収めようと攻め入ったのでしょう。
 国力も、軍事力も圧倒的な差があったのに、何故かプルーシャ公国は攻略に失敗して。
 それが、原因でノルドライヒ連邦の盟主の座を降りる事になったのでしょう。
 あの時は、我が国の親戚筋に当たるファノア公国が盟主になったと国内が沸きました。」

 流石にそのくらいの事は知っていたようですが、紛争の詳細までは報道されていないようです。

「なぜプルーシャ公国が侵攻に失敗したのかは、この国に伝わっていないのですか?」

「ええ、それが…。
 入社後に聞いたことがあるのですが、紛争ぼっ発の報を受けて記者を送ったそうですが…。
 記者が到着した時には、何処も戦闘が終結しており。
 いえ、何処に行っても、戦闘があったとは思えないほど平然としていたそうなんです。
 銃撃戦の痕など何処にも見られなかったそうですし…。
 唯一紛争があったと思しき痕跡は、エルゼス地方と結ぶ橋が落とされていたことくらいだそうで。」

 取材に訪れたアルビオンタイムスの記者は、エルゼス侵攻の報せ自体がガセではないかと疑ったそうです。
 地元の人々に取材しても、女神さまが軍人に虐げられた民衆を救ってくれたとか要領を得ない事ばかり聞かされたようで。
 煙に巻かれたような顔をしていたと言います。

「そう言えば、その頃…。
 一面ぶち抜きの大見出しで『天馬に跨った王女が颯爽とプルーシャの大軍を撃破』と書かれた。
 ヨタ記事がありましたね、『アルスポ』に。
 例によって大見出しが一面をはみ出していて、折り返すと『か?』と書いてあった記事が。
 何でも、酒場の酔っ払いから取材したと言う。」

 アルビオン王国きってのイエロージャーナリズムの『アルビオンスポーツ』、略して『アルスポ』。
 記事の八割までが、捏造か、憶測と言われていて…、誰もその内容を真に受けていないそうです。
 面白おかしく煽るのが受けて、一部に大変人気がある新聞だそうで…。

 そこには、酒場で紛争の目撃者から聞いた話として。
 クラーシュバルツ王国の王女が有翼の白馬に跨り飛来して、ルーネス川に架かる橋を一瞬にして落としたとか。
 王女はたった一人で、数千の舟艇により渡河しようとした大軍を全て撃退したとか。
 更には、民衆に発砲した軍勢を瞬く間に無力化したうえ、傷付いた民衆を奇跡の力で癒したとか。

 ほぼ正確に戦況を把握していたようですが、この国では誰も本当のことだとは思わなかったようです。
 当然、記事を読んだマーブル青年も、「また、アルスポは…。」と記事を目にして呆れていたと言います。

 『オオカミと少年の寓話』ですね。
 日頃いい加減な記事ばかり書いているので、たまに事実を報道しても誰も信用しない様子です。
 小アルビオン島の飢饉の時の取材記事と言い、真面目に取材した記者さんが不憫です。

 青年は、アルスポの記事の話をしている最中にハッとした表情を見せました。
 そして、もう一度のリーナの氷像を見詰めて…。

「大公、もしかして、『アルスポ』に書かれていたことって…。」

「ええ、今、マーブルさんがおっしゃられた事であれば、概ね事実ですわ。
 伝聞記事だとのことですから、若干不正確な点もある様子ですが。
 あの氷像は、天馬に跨るカロリーネ姫の像です。」

 問い掛けに私が首肯すると、マーブル青年は俄かに目を輝かせました。

「凄い!天馬が本当にいるなんて!
 それに、クラーシュバルツ王国の王女が本物の魔法使いで…。
 一国を相手どり、単騎で撃退してしまうなんて。」

 クラーシュバルツ王国の国民ならみんな知っている事なのですが。
 大陸にある小国の情報など、ここアルビオン王国には伝わっていないみたいですね。

 『天馬』や『魔法』の話は、不思議な話やオカルトが大好きだと言う青年のツボにはまったようです。

「天馬に興味がありますか?
 天馬は男性に触れられるのを嫌いますので、背に跨ることは出来ませんが。
 天馬の引く馬車に乗って空へお連れする事は出来ますよ。
 もちろん、天馬のことを秘密にしてくださればですが。」

 トリアさんやメアリーさん、それにジョージさんも乗せているのです。
 周りに言い触らさなければ、乗せてあげても良いでしょう。
 そうしないと、この子供のような青年は、リーナに乗せて欲しいと迫りそうですから。

「えっ、大公も天馬を所有しているので?
 それは、是非、お願いします!
 伝説の聖獣と言われる天馬が実在すると言うだけでも驚きなのに。
 天馬の引く馬車で空を飛べるなんて…。
 そんな経験できるのであれば、逃す手は無いです。」

 思った以上の食い付きでした、鼻息が荒くして乗せて欲しいとせがんできました。
 本当に子供のように、目をキラキラと輝かせて…。

 これで、我が家にニシ湖のニッシーがいると教えればどんな反応を見せるでしょうか。
 ちょっと、見てみたい気もします。
 
しおりを挟む
感想 137

あなたにおすすめの小説

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~

ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。 しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。 やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。 そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。 そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。 これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。

学園アルカナディストピア

石田空
ファンタジー
国民全員にアルカナカードが配られ、大アルカナには貴族階級への昇格が、小アルカナには平民としての屈辱が与えられる階級社会を形成していた。 その中で唯一除外される大アルカナが存在していた。 何故か大アルカナの内【運命の輪】を与えられた人間は処刑されることとなっていた。 【運命の輪】の大アルカナが与えられ、それを秘匿して生活するスピカだったが、大アルカナを持つ人間のみが在籍する学園アルカナに召喚が決まってしまう。 スピカは自分が【運命の輪】だと気付かれぬよう必死で潜伏しようとするものの、学園アルカナ内の抗争に否が応にも巻き込まれてしまう。 国の維持をしようとする貴族階級の生徒会。 国に革命を起こすために抗争を巻き起こす平民階級の組織。 何故か暗躍する人々。 大アルカナの中でも発生するスクールカースト。 入学したてで右も左もわからないスピカは、同時期に入学した【愚者】の少年アレスと共に抗争に身を投じることとなる。 ただの学園内抗争が、世界の命運を決める……? サイトより転載になります。

美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ 

さら
恋愛
 会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。  ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。  けれど、測定された“能力値”は最低。  「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。  そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。  優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。  彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。  人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。  やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。  不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。

スキル買います

モモん
ファンタジー
「お前との婚約を破棄する!」 ローズ聖国の国立学園第139期卒業記念パーティーの日、第3王子シュナル=ローズレアは婚約者であるレイミ・ベルナール子爵家息女に宣言した。 見習い聖女であるレイミは、実は対価と引き換えにスキルを買い取ることのできる特殊な能力を有していた。 婚約破棄を受け入れる事を対価に、王子と聖女から特殊なスキルを受け取ったレイミは、そのまま姿を消した。 レイミと王妃の一族には、数年前から続く確執があり、いずれ王子と聖女のスキル消失が判明すれば、原因がレイミとの婚約破棄にあると疑われるのは明白だ。 そして、レイミを鑑定すれば消えたスキルをレイミがもっている事は明確になってしまうからだ。 かくして、子爵令嬢の逃走劇が幕を開ける。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

処理中です...