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第2章 オストマルク王立学園
第24話 ウンディーネの加護
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「おかえりなさい!勉強お疲れさま!二人とも今日も可愛いわ!!」
リビングのドアを開くといきなり、ミーナちゃんと一緒に抱き寄せられた。
どうやら、ウンディーネおかあさんが、わたし達の帰りを待っていたみたいだ。
「ウンディーネおかあさん、苦しい、苦しいってば…。」
「あら、ごめんなさいね。二人が可愛いもんだからつい力が入っちゃって。」
「ただいま、ウンディーネおかあさん。」
「こんにちわ、ウンディーネ様。」
ミーナちゃんは抱擁から解放されると姿勢を正してウンディーネおかあさんにお辞儀した。
「ミーナちゃんはいつも礼儀正しいのね。
でもそんなに畏まられると壁があるみたいで悲しいわ、もっと気軽に接して欲しいと思うの。
そうだわ、様付けはやめて、ウンディーネおばさんと呼んでもらおうかしら。」
「ウンディーネおば…さま」
「結局、様付けなのね。でも、『おばさん』よりも『おばさま』の方が聞こえはよいかしら。」
**********
「それで、ウンディーネおかあさんがわざわざ寮まで来て待っていたということは何か用があるんだよね。」
「いやだわ、その言い方だと用がなければ来ちゃいけないように聞こえるわよ。
私、ターニャちゃんにそんな風に言われると悲しいわ。
まあ、実際、用があるから来たのだけど。
二人に一緒に来てもらいたいところがあるの。」
そう言うとウンディーネおかあさんは、わたしとミーナちゃんの手を取った。
するとあっという間に目の前の景色が変わった。大精霊はバスタブの水を使わないんだね。
「ここは……精霊の泉?」
ミーナちゃんが目の前の泉を見て呟いた。
そうだ、入学式の前の晩にウンディーネおかあさんを迎えに来た精霊の泉だ。
ウンディーネおかあさんが、王宮に向かって歩き出そうとしたとき、王宮の方から初老の男性が走ってくるのが見えた。
あ、王様だ、ヴァイゼさんフットワーク軽いな。
「これは、泉の精霊様、今日はいかがなご用件で、こちらにお越しいただいたのでしょうか?」
王様が息を整えながらウンディーネお母さんに問いかけた。
「おお、ヴァイゼか。入学式のときは世話になった。
おかげで娘の晴れ姿を誰にも邪魔されずに見ることができた。感謝するぞ。
今日は、ちとその礼をしようかと思い訪ねて来たのだ。」
「あれしきのことで、泉の精霊様に礼などと言っていただけるのは恐れ多いです。」
「そう畏まるでない。
礼と言っても大したものではないし、こちらにも益のあることだ。
お前の孫娘、具合を悪くしているだろう、ちと見せてみろ何とかしてやろう。」
**********
そういうとウンディーネおかあさんは、王様に王宮を案内させた。
精霊の泉に面した王宮の裏口から入ってすぐの区画が王族の居住区画となっていた。
王族の居住区画に入ってすぐの部屋、正面から見ると王宮の最奥に私たちはいる。
「泉の精霊様、本当にフローラを助けてくださるのですか?」
「この娘はどうしてこうなったのだ。」
私たちの目の前には豪華な天蓋付きのベッドで苦しそうに横たわるフローラ姫の姿があった。
「数ヶ月前、西部の街に行幸した際に倒れまして、それ以来この通りの容態なのです。
医者も原因がわからないと申すし、教会の治癒術師に施術させても効果がないのです。」
「なるほど、西部の街に行ったか。それは、この娘にはきつかっただろうな。」
「泉の精霊様、フローラはどうしてこうなったのですか?」
「西部の濃い瘴気に中てられたのだよ。
この娘、私の愛しいティターニアと同じ、『色なし』であろう。
『色なし』は清浄なマナを体に蓄積するのだ。
そのため、体が瘴気を受け付けず弾こうとするのだが、濃い瘴気に晒されると瘴気が無理やり体に滲入するのだ。
この娘は、体に滲入した瘴気に拒絶反応を起こしておるのだな。
もっとも、ここまでひどい拒絶反応を示すのは珍しいのだがな。
よっぽど瘴気に対する耐性がないらしい。
では、ティターニアよ勉強の成果を母に見せてみるのだ。」
やっぱり、私がやるのね、このために連れて来たのか。
(光のおチビちゃん達、この子の中の瘴気を全部残らず浄化してしまって。)
「浄化の光!!」
わたしの体からすうっとマナが抜かれていく、相変わらず遠慮しないな光のおチビちゃん。
目の前に横たわるフローラ姫の体がまばゆい光に包まれた。
光が収まるとそこには呼吸が安定し、穏やかな寝息を立てるフローラ姫の姿があった。
でも、かなり衰弱しているね。もう少し、手をかけようか。
「じゃあ次だ、この娘は大分衰弱しているから、体力を回復した方が良いな。
出来るな、ミーナよ。」
「はい、ウンディーネおばさま、やってみます。」
ミーナちゃんは、手なれた様子で『癒しの水』を、直接体内に流し込むイメージで行使した。
青白かったフローラ姫の顔色は頬が薄紅色となり、やつれも幾分取れたようだ。
「うむ、二人ともよくやった。私は、二人がきちんと勉強の成果が上がっていて誇らしいぞ。
ヴァイゼよ、これで後は栄養のあるものを食べさせておけば、数日で元通りになるぞ。」
ウンディーネおかあさんに声をかけられて、呆気にとられていた王様が我に返って言った。
「泉の精霊様、孫娘を治していただき有り難うございます。
そちらのお嬢さん二人もフローラを治してくれて本当に有り難う。
素晴らしい治癒術でした。これが王祖様が使ったという奇跡なのですね。」
「ときにヴァイゼよ、この娘、大分瘴気に弱い体質をしておる。
このままでは、また瘴気中りを起こすぞ。
そこで、この娘に精霊を一人つけて瘴気から守らせようと思う。
それと、チビ精霊たちにこの娘の前に姿を現し、力を貸しても良いと言っておこう。
ルナ、出てまいれ。」
ウンディーネおかあさんが呼びかけると、穏やかな笑みを浮かべる精霊さんが現れた。
「光の上位精霊のルナだ。これからはルナがこの娘の周りの瘴気を浄化するので安心せい。」
「おお、ルナ様、孫娘のことよろしくお願いします。
泉の精霊様、これは、再び王家に精霊の加護が頂戴できると言うことでしょうか?」
「誤解するなヴァイゼよ。
私達精霊は二千年前の人の行いを今尚許してはおらぬ。
お前の孫娘、フローラには特別に精霊の加護を与えた、例外だと認識しておけ。
最初にこちらにも益が有ると言ったであろう。
今、精霊の加護を持つものはこの二人しか世の中に存在せぬ。
二人だけしかおらぬというのは、あまりに目立つし、悪い輩を寄せ付ける恐れもある。
そこに王家の娘が加われば、相対的にこの二人は霞むであろう。それが狙いなのだ。
まさか王家の娘に手を出す輩もおらんだろうて。
この二人の存在をなるべく目立たなくするため、もう数名加護を与えようかとは考えておるがの。
それと、もう一つ誤解があるぞヴァイゼよ。
この国から一度として私の加護が失われたことはないぞ。
この国は、精霊の加護が失われたとされる二千年前からこっち一度も飢饉が起こってないだろう。
旱魃も冷害も一度として起こっていないはずだ。
精霊は、人の行いに嫌気がさして、人と関わるのをやめ、力の行使により直接助けるのは止めた。
しかし、古の教えを守り、私が愛する精霊の森と精霊の泉を守っているこの国の加護をどうして取り上げねばならぬ。
この大陸の西を見てみよ。毎年何処かで飢饉が起こっている。あれが精霊の加護なき姿よ。」
「知りませんでした。泉の精霊様は、いつでも私たちを守ってくださってたんですね。
国を統べる者として心から感謝いたします。」
「私の愛しき娘が作った国だ、そのくらいのことはする。
ただし、それはおぬしら子孫の行いが正しい限りにおいてだぞ、努々忘れるでないぞ。
フローラだが、精霊の力の使い方は、そこの二人に習うとよい。出来ればよき友人になってくれ。」
ウンディーネおかあさんは、フローラちゃんが元気になった頃に、もう一度来るといって王宮を辞去することにした。
今度来るときはフローラちゃんとお話ができる、楽しみだな。
リビングのドアを開くといきなり、ミーナちゃんと一緒に抱き寄せられた。
どうやら、ウンディーネおかあさんが、わたし達の帰りを待っていたみたいだ。
「ウンディーネおかあさん、苦しい、苦しいってば…。」
「あら、ごめんなさいね。二人が可愛いもんだからつい力が入っちゃって。」
「ただいま、ウンディーネおかあさん。」
「こんにちわ、ウンディーネ様。」
ミーナちゃんは抱擁から解放されると姿勢を正してウンディーネおかあさんにお辞儀した。
「ミーナちゃんはいつも礼儀正しいのね。
でもそんなに畏まられると壁があるみたいで悲しいわ、もっと気軽に接して欲しいと思うの。
そうだわ、様付けはやめて、ウンディーネおばさんと呼んでもらおうかしら。」
「ウンディーネおば…さま」
「結局、様付けなのね。でも、『おばさん』よりも『おばさま』の方が聞こえはよいかしら。」
**********
「それで、ウンディーネおかあさんがわざわざ寮まで来て待っていたということは何か用があるんだよね。」
「いやだわ、その言い方だと用がなければ来ちゃいけないように聞こえるわよ。
私、ターニャちゃんにそんな風に言われると悲しいわ。
まあ、実際、用があるから来たのだけど。
二人に一緒に来てもらいたいところがあるの。」
そう言うとウンディーネおかあさんは、わたしとミーナちゃんの手を取った。
するとあっという間に目の前の景色が変わった。大精霊はバスタブの水を使わないんだね。
「ここは……精霊の泉?」
ミーナちゃんが目の前の泉を見て呟いた。
そうだ、入学式の前の晩にウンディーネおかあさんを迎えに来た精霊の泉だ。
ウンディーネおかあさんが、王宮に向かって歩き出そうとしたとき、王宮の方から初老の男性が走ってくるのが見えた。
あ、王様だ、ヴァイゼさんフットワーク軽いな。
「これは、泉の精霊様、今日はいかがなご用件で、こちらにお越しいただいたのでしょうか?」
王様が息を整えながらウンディーネお母さんに問いかけた。
「おお、ヴァイゼか。入学式のときは世話になった。
おかげで娘の晴れ姿を誰にも邪魔されずに見ることができた。感謝するぞ。
今日は、ちとその礼をしようかと思い訪ねて来たのだ。」
「あれしきのことで、泉の精霊様に礼などと言っていただけるのは恐れ多いです。」
「そう畏まるでない。
礼と言っても大したものではないし、こちらにも益のあることだ。
お前の孫娘、具合を悪くしているだろう、ちと見せてみろ何とかしてやろう。」
**********
そういうとウンディーネおかあさんは、王様に王宮を案内させた。
精霊の泉に面した王宮の裏口から入ってすぐの区画が王族の居住区画となっていた。
王族の居住区画に入ってすぐの部屋、正面から見ると王宮の最奥に私たちはいる。
「泉の精霊様、本当にフローラを助けてくださるのですか?」
「この娘はどうしてこうなったのだ。」
私たちの目の前には豪華な天蓋付きのベッドで苦しそうに横たわるフローラ姫の姿があった。
「数ヶ月前、西部の街に行幸した際に倒れまして、それ以来この通りの容態なのです。
医者も原因がわからないと申すし、教会の治癒術師に施術させても効果がないのです。」
「なるほど、西部の街に行ったか。それは、この娘にはきつかっただろうな。」
「泉の精霊様、フローラはどうしてこうなったのですか?」
「西部の濃い瘴気に中てられたのだよ。
この娘、私の愛しいティターニアと同じ、『色なし』であろう。
『色なし』は清浄なマナを体に蓄積するのだ。
そのため、体が瘴気を受け付けず弾こうとするのだが、濃い瘴気に晒されると瘴気が無理やり体に滲入するのだ。
この娘は、体に滲入した瘴気に拒絶反応を起こしておるのだな。
もっとも、ここまでひどい拒絶反応を示すのは珍しいのだがな。
よっぽど瘴気に対する耐性がないらしい。
では、ティターニアよ勉強の成果を母に見せてみるのだ。」
やっぱり、私がやるのね、このために連れて来たのか。
(光のおチビちゃん達、この子の中の瘴気を全部残らず浄化してしまって。)
「浄化の光!!」
わたしの体からすうっとマナが抜かれていく、相変わらず遠慮しないな光のおチビちゃん。
目の前に横たわるフローラ姫の体がまばゆい光に包まれた。
光が収まるとそこには呼吸が安定し、穏やかな寝息を立てるフローラ姫の姿があった。
でも、かなり衰弱しているね。もう少し、手をかけようか。
「じゃあ次だ、この娘は大分衰弱しているから、体力を回復した方が良いな。
出来るな、ミーナよ。」
「はい、ウンディーネおばさま、やってみます。」
ミーナちゃんは、手なれた様子で『癒しの水』を、直接体内に流し込むイメージで行使した。
青白かったフローラ姫の顔色は頬が薄紅色となり、やつれも幾分取れたようだ。
「うむ、二人ともよくやった。私は、二人がきちんと勉強の成果が上がっていて誇らしいぞ。
ヴァイゼよ、これで後は栄養のあるものを食べさせておけば、数日で元通りになるぞ。」
ウンディーネおかあさんに声をかけられて、呆気にとられていた王様が我に返って言った。
「泉の精霊様、孫娘を治していただき有り難うございます。
そちらのお嬢さん二人もフローラを治してくれて本当に有り難う。
素晴らしい治癒術でした。これが王祖様が使ったという奇跡なのですね。」
「ときにヴァイゼよ、この娘、大分瘴気に弱い体質をしておる。
このままでは、また瘴気中りを起こすぞ。
そこで、この娘に精霊を一人つけて瘴気から守らせようと思う。
それと、チビ精霊たちにこの娘の前に姿を現し、力を貸しても良いと言っておこう。
ルナ、出てまいれ。」
ウンディーネおかあさんが呼びかけると、穏やかな笑みを浮かべる精霊さんが現れた。
「光の上位精霊のルナだ。これからはルナがこの娘の周りの瘴気を浄化するので安心せい。」
「おお、ルナ様、孫娘のことよろしくお願いします。
泉の精霊様、これは、再び王家に精霊の加護が頂戴できると言うことでしょうか?」
「誤解するなヴァイゼよ。
私達精霊は二千年前の人の行いを今尚許してはおらぬ。
お前の孫娘、フローラには特別に精霊の加護を与えた、例外だと認識しておけ。
最初にこちらにも益が有ると言ったであろう。
今、精霊の加護を持つものはこの二人しか世の中に存在せぬ。
二人だけしかおらぬというのは、あまりに目立つし、悪い輩を寄せ付ける恐れもある。
そこに王家の娘が加われば、相対的にこの二人は霞むであろう。それが狙いなのだ。
まさか王家の娘に手を出す輩もおらんだろうて。
この二人の存在をなるべく目立たなくするため、もう数名加護を与えようかとは考えておるがの。
それと、もう一つ誤解があるぞヴァイゼよ。
この国から一度として私の加護が失われたことはないぞ。
この国は、精霊の加護が失われたとされる二千年前からこっち一度も飢饉が起こってないだろう。
旱魃も冷害も一度として起こっていないはずだ。
精霊は、人の行いに嫌気がさして、人と関わるのをやめ、力の行使により直接助けるのは止めた。
しかし、古の教えを守り、私が愛する精霊の森と精霊の泉を守っているこの国の加護をどうして取り上げねばならぬ。
この大陸の西を見てみよ。毎年何処かで飢饉が起こっている。あれが精霊の加護なき姿よ。」
「知りませんでした。泉の精霊様は、いつでも私たちを守ってくださってたんですね。
国を統べる者として心から感謝いたします。」
「私の愛しき娘が作った国だ、そのくらいのことはする。
ただし、それはおぬしら子孫の行いが正しい限りにおいてだぞ、努々忘れるでないぞ。
フローラだが、精霊の力の使い方は、そこの二人に習うとよい。出来ればよき友人になってくれ。」
ウンディーネおかあさんは、フローラちゃんが元気になった頃に、もう一度来るといって王宮を辞去することにした。
今度来るときはフローラちゃんとお話ができる、楽しみだな。
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