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第3章 夏休み、帝国への旅
第48話 ヴィクトーリア様の疑問
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『黒の使徒』の教導団をどう扱うかは、村人に任せることにしてひとまず魔導車に戻った。
「ターニャちゃん、凄いわね。大の大人十人以上相手にして撃退しちゃうなんて。
しかも、相手に傷一つ負わせないって凄いわ。」
ヴィクトーリアさんが興奮して詰め寄ってきた。顔近いって…。
「体には傷一つつけていないけど、心は完膚なきまでにへし折っちゃいました。いいですよね?」
「いいんじゃない。だいたい、飢餓に苦しむ村から食べ物を奪おうなんて気が知れないわ。
『黒の使徒』って国教ということになっているけど、やっていることが無茶苦茶だわ。
あれじゃあ、帝室まで国民の恨みを買ってしまうわ。」
「おかあさんから教えてもらったんだけど、宗教団体って助け合いのためにあるって。
普段、お布施とか寄進とかをする代わりに、飢饉とか災害の時に炊き出しや配給をするって。
なんで、『黒の使徒』って信者が飢えに苦しんでいるときも寄進を求めるのですか?」
「今ね、帝国全体で食料が足りていないの。
教団のお偉いさんは、自分達の食べ物が不足するのが怖いので信者から少しでも食料を吸い上げようとしているのかも知れないわ。
『黒の使徒』の聖職者は、特権意識が強くて一般の信者のことなど考えていないのかもね。」
そんな宗教団体って、信仰する気にならないよね。
「ところでターニャちゃん、『黒の使徒』を一網打尽にしたあのピカッて光ったのはなに?
初めて見る魔法なんだけど。」
「あれは光属性の術ですね。主に瘴気や悪しきモノの『浄化』に使います。」
「え、瘴気って浄化できるの?」
「あれ、説明してなかったですか?
ハイジさんやケントニスさんにはちゃんと説明したはずですが。
ヴィクトーリアさんの病気って瘴気中毒だって言いましたよね。
治療のためヴィクトーリアさんに浄化の術を使って、体内から余分な瘴気を浄化したんですけど。」
そういえば、ヴィクトーリアさんを治療してすぐに帝都を追い出されるような形になったんだ。
ヴィクトーリアさんには、詳しい説明をする暇がなかったか。
「まあ、そうでしたの。光属性の術なんて初めて聞きましたわ。
じゃあ、これまで畑を作るときも瘴気を浄化してから、作物を植えていたのかしら?」
「そうですよ。
それに、お気づきでないかもしれませんが、この魔導車の車内も常に浄化しているんですよ。」
「どうりで息苦しくないと思いました。わたくしは冷房のおかげだと思い込んでいましたわ。
ところで、何で『黒の使徒』の人たちはみんな『色なし』見たいになってしまったの?」
ああ、そこから説明しないといけないか。
わたしは、今までフローラちゃんやハイジさんにしたことと同じことを説明した。
マナのこと、瘴気のこと、魔力のこと、瘴気が体に及ぼす影響のこと、マナの循環のこと、森林の役割のこと、その他諸々のことを話した。
「瘴気と魔力が同じモノだなんてにわかには信じられませんわ。
それに、人間って浄化できるのですね。完全に瘴気を抜くと『色なし』になってしまうというのは驚きですわ。
それから、このところ凶作が続いているのも、瘴気が濃くなっているのも森を切りすぎてしまったからなのね。」
ヴィクトーリアさんが、頭を抱えて呟いた。
そう、早く植樹をして森を復元しないと手遅れになっちゃうよ。
ハンナちゃんにも知って欲しかったことなんだけど、話が難しかったみたいで寝てしまった。
ハンナちゃんには、もっと噛み砕いてお話しないとダメだね。
それから、ヴィクトーリアさんには実際に荒地を開墾して畑にするところを見てもらった。
「凄い、あっという間に畑ができるのね。魔法ってこういう風に使えるモノなのね。」
「『浄化』は光属性を使えないと無理ですが、開墾して農地にするのは土属性と水属性の訓練をすれば誰でも出来るようになると思います。
『浄化』をしないと、作物の収穫量が減っちゃいますが、それでもある程度の食べ物は確保できると思います。」
「お母様、ターニャちゃんは簡単に言いますけど、ターニャちゃんやミーナちゃんみたいに巧みに魔法を使いこなすのは大変ですわよ。
わたくしも、学園で習っていますが、ターニャちゃん達ほど上手には出来ませんもの。」
出来上がった農地に村人全員で植付をしてもらい、わたしが『成長促進』を行ってある程度農作が成長した状態へもっていく。
「話には聞いていましたけど実際に見ると『植物魔法』ってすごいわね。
あっという間に発芽して成長してしまうのですもの、驚きですわ。」
「光属性と同じで、植物の成育関係の術も、特殊な素養がないと使えないので実際に見る機会はないと思います。
農作物の増産を目指す場合には『植物魔法』を当てにすることは不可能ですね。」
「そう、残念だわ。地道に開墾して農地を増やしていかないとダメなのね。
やっぱり、軍が抱えている魔法使いを総動員して開墾するしかないわね。」
一通り開墾と植え付けが終わったので、村を後にすることにした。
その前に、『黒の使徒』の処遇を確認したところ、そのまま退去してもらうとのことだ。
最初は強制労働でもさせようと思ったらしいが、彼らを養う食べ物がないので立ち去ってもらった方が良いとのことだった。
それじゃあ、瘴気の森に向けて出発しますか。
「ターニャちゃん、凄いわね。大の大人十人以上相手にして撃退しちゃうなんて。
しかも、相手に傷一つ負わせないって凄いわ。」
ヴィクトーリアさんが興奮して詰め寄ってきた。顔近いって…。
「体には傷一つつけていないけど、心は完膚なきまでにへし折っちゃいました。いいですよね?」
「いいんじゃない。だいたい、飢餓に苦しむ村から食べ物を奪おうなんて気が知れないわ。
『黒の使徒』って国教ということになっているけど、やっていることが無茶苦茶だわ。
あれじゃあ、帝室まで国民の恨みを買ってしまうわ。」
「おかあさんから教えてもらったんだけど、宗教団体って助け合いのためにあるって。
普段、お布施とか寄進とかをする代わりに、飢饉とか災害の時に炊き出しや配給をするって。
なんで、『黒の使徒』って信者が飢えに苦しんでいるときも寄進を求めるのですか?」
「今ね、帝国全体で食料が足りていないの。
教団のお偉いさんは、自分達の食べ物が不足するのが怖いので信者から少しでも食料を吸い上げようとしているのかも知れないわ。
『黒の使徒』の聖職者は、特権意識が強くて一般の信者のことなど考えていないのかもね。」
そんな宗教団体って、信仰する気にならないよね。
「ところでターニャちゃん、『黒の使徒』を一網打尽にしたあのピカッて光ったのはなに?
初めて見る魔法なんだけど。」
「あれは光属性の術ですね。主に瘴気や悪しきモノの『浄化』に使います。」
「え、瘴気って浄化できるの?」
「あれ、説明してなかったですか?
ハイジさんやケントニスさんにはちゃんと説明したはずですが。
ヴィクトーリアさんの病気って瘴気中毒だって言いましたよね。
治療のためヴィクトーリアさんに浄化の術を使って、体内から余分な瘴気を浄化したんですけど。」
そういえば、ヴィクトーリアさんを治療してすぐに帝都を追い出されるような形になったんだ。
ヴィクトーリアさんには、詳しい説明をする暇がなかったか。
「まあ、そうでしたの。光属性の術なんて初めて聞きましたわ。
じゃあ、これまで畑を作るときも瘴気を浄化してから、作物を植えていたのかしら?」
「そうですよ。
それに、お気づきでないかもしれませんが、この魔導車の車内も常に浄化しているんですよ。」
「どうりで息苦しくないと思いました。わたくしは冷房のおかげだと思い込んでいましたわ。
ところで、何で『黒の使徒』の人たちはみんな『色なし』見たいになってしまったの?」
ああ、そこから説明しないといけないか。
わたしは、今までフローラちゃんやハイジさんにしたことと同じことを説明した。
マナのこと、瘴気のこと、魔力のこと、瘴気が体に及ぼす影響のこと、マナの循環のこと、森林の役割のこと、その他諸々のことを話した。
「瘴気と魔力が同じモノだなんてにわかには信じられませんわ。
それに、人間って浄化できるのですね。完全に瘴気を抜くと『色なし』になってしまうというのは驚きですわ。
それから、このところ凶作が続いているのも、瘴気が濃くなっているのも森を切りすぎてしまったからなのね。」
ヴィクトーリアさんが、頭を抱えて呟いた。
そう、早く植樹をして森を復元しないと手遅れになっちゃうよ。
ハンナちゃんにも知って欲しかったことなんだけど、話が難しかったみたいで寝てしまった。
ハンナちゃんには、もっと噛み砕いてお話しないとダメだね。
それから、ヴィクトーリアさんには実際に荒地を開墾して畑にするところを見てもらった。
「凄い、あっという間に畑ができるのね。魔法ってこういう風に使えるモノなのね。」
「『浄化』は光属性を使えないと無理ですが、開墾して農地にするのは土属性と水属性の訓練をすれば誰でも出来るようになると思います。
『浄化』をしないと、作物の収穫量が減っちゃいますが、それでもある程度の食べ物は確保できると思います。」
「お母様、ターニャちゃんは簡単に言いますけど、ターニャちゃんやミーナちゃんみたいに巧みに魔法を使いこなすのは大変ですわよ。
わたくしも、学園で習っていますが、ターニャちゃん達ほど上手には出来ませんもの。」
出来上がった農地に村人全員で植付をしてもらい、わたしが『成長促進』を行ってある程度農作が成長した状態へもっていく。
「話には聞いていましたけど実際に見ると『植物魔法』ってすごいわね。
あっという間に発芽して成長してしまうのですもの、驚きですわ。」
「光属性と同じで、植物の成育関係の術も、特殊な素養がないと使えないので実際に見る機会はないと思います。
農作物の増産を目指す場合には『植物魔法』を当てにすることは不可能ですね。」
「そう、残念だわ。地道に開墾して農地を増やしていかないとダメなのね。
やっぱり、軍が抱えている魔法使いを総動員して開墾するしかないわね。」
一通り開墾と植え付けが終わったので、村を後にすることにした。
その前に、『黒の使徒』の処遇を確認したところ、そのまま退去してもらうとのことだ。
最初は強制労働でもさせようと思ったらしいが、彼らを養う食べ物がないので立ち去ってもらった方が良いとのことだった。
それじゃあ、瘴気の森に向けて出発しますか。
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