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第5章 冬休み、南部地方への旅
第88話 屋台でお昼を食べてたら…
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フライスィヒ領からポルトの別荘に戻った翌日、ミルトさんは貴族組三人を伴って公爵夫人主催のお茶会に出かけてしまった。
近くの領主夫人を招待しているので、ヴィクトーリアさんを紹介するそうだ。
ポルトから東の領地はフライスィヒ領を始めとして穀倉地帯が多いから、食料の確保を円滑にしたいヴィクトーリアさんには願っても無い機会のようだった。
四人が出かけてしまい残されたわたし達平民組三人はポルトの港町巡りをすることにした。
前回はテーテュスさんに会ったために、途中で切り上げちゃったからね。
ちなみに、ミルトさんからわたし達もお茶会に連れて行きたいといわれたが、全力でお断りしたよ。
貴族のご婦人方のお茶会なんか行ったら気疲れするだけじゃん、ミーナちゃんなんか思いっきり首を横に振っていたよ。
貴族組もいないことだし今日のお昼は屋台で食べようということになり、昼前に別荘を出て港町に向かう。前回同様に精霊神殿の前庭に魔導車を置かせてもらい、そこから徒歩で港を目指す。
お昼時でもあり、どの屋台もお客さんで賑わっている。
魚介類を炭火で焼いたものにイシリのような調味料をかけたものが、香ばしい匂いを漂わせていてつい引き付けられてしまう。
イカを丸ごと一匹串に刺して炭火焼きしたものを買った。
焦げて香ばしい匂いを漂わせている調味料は何かと尋ねたら、ギョショウだと言われた。
南部地方には、たくさんの種類のギョショウがあり、それぞれ名前も風味も違うらしい。
あまりに種類が多いので、まとめてギョショウと呼んでいるらしい。
魚介類に塩を加えて発酵させたもの全体を指す呼び名みたいだ。
学園祭で北部地方の子達が焼いた大きな貝に垂らしていたイシリもギョショウの一つらしい。
他に貝、エビ、イカにたくさんの野菜を加えたスープに、米粉の麵を加えたものや海鮮と野菜を小麦粉を溶いたものと混ぜて焼いたパンケーキみたいなものも買ってみた。
屋台が集まる周辺には、テーブルと椅子が置かれており自由に座って食べることが出来るようになっていた。
わたし達もテーブルを一つ確保して、早速食事にありつくことにする。
「やっぱり、屋台で買って食べるものは気を使わなくていいですね。
珍しいものが多くて目移りしちゃいました。どれも美味しそうな香りを立てているんだもの。」
ミーナちゃんは屋台で食事をするときは、いつでも本当に嬉しそうだ。
貴族の料理はマナーとかに気を使って、食事を楽しめないといつもぼやいているからね。
「お姉ちゃん、これ凄く美味しいよ!」
海鮮を野菜と一緒に溶いた小麦粉に混ぜて焼いたものを食べたハンナちゃんが満面の笑顔で言った。
上にかけられているトロミのある甘辛いたれがミーナちゃんの気に入ったようだ。
確かに美味しい、ハンナちゃんは味のはっきりしたものが好みのようだった。
山海の幸がたっぷり入ったスープに米粉の麺を入れたモノ、あっさりとした塩味だったけど魚介と野菜の旨味がとっても効いていて凄く美味しかった。
透明な麺はプルンとする食感でスープがよく絡んでとても良い組み合わせだった。
ミーナちゃんも、細かい作法に気を使わずに美味しい物が食べられて満足そうだ。
ハンナちゃんは、ご飯の後はいつでも幸せそうだね。貴族組と一緒でも全然気にしてないし。
今度は何かデザートでも買って来ようということになり、わたしとミーナちゃんは再び屋台に向かった。
ハンナちゃん?屋台の人ごみが増えてきたのでテーブルで待ってもらっているよ。
迷子になるといけないから。
ソールさんたちは、ハンナちゃんに付いて貰っている。誘拐でもされたらいけないからね。
ミーナちゃんと手を繋いで屋台を見て回る。はぐれるといけないので絶対に手は離さないよ。
「あ、ライスシュタットで食べたナハトシッフがあります。
わたし、またあれが食べたいです。」
ミーナちゃんが珍しく自己主張をする。
あー、あれは美味しかったねあっさりとした甘味が癖になる味だよね。
ミーナちゃんの希望をかなえることにしてナハトシッフの屋台に向かう。
そのとき突然目の前が暗くなった、というより何も見えない。
焦っていたら、一瞬遅れて足が地面から離れ、横倒しになってお腹に何かが当たる。
「やったぜ!とっととずらかるぞ!」
耳の近くでそんな声が聞こえた。
どうやら、ズタ袋のようなものに押し込められ、荷物のように肩に担がれたらしい。
しまった、油断した!
どうやら誘拐に気を付けないといけなかったのは、わたし達も同じらしい。
大人から見れば、八歳児も五歳児もたいした差は無いもんね。
のんきにそんな事を考えていたら、誘拐犯はわたしを肩に担いだまま走り出した。
やめて、走られるのはマジできついです…。
お腹いっぱい食べた後だよ、肩に担がれて走られると揺れでお腹の中身がシェイクされる。
も、もどす…。
*臨時で1話投稿します。
いつも通り20時にも投稿します。
近くの領主夫人を招待しているので、ヴィクトーリアさんを紹介するそうだ。
ポルトから東の領地はフライスィヒ領を始めとして穀倉地帯が多いから、食料の確保を円滑にしたいヴィクトーリアさんには願っても無い機会のようだった。
四人が出かけてしまい残されたわたし達平民組三人はポルトの港町巡りをすることにした。
前回はテーテュスさんに会ったために、途中で切り上げちゃったからね。
ちなみに、ミルトさんからわたし達もお茶会に連れて行きたいといわれたが、全力でお断りしたよ。
貴族のご婦人方のお茶会なんか行ったら気疲れするだけじゃん、ミーナちゃんなんか思いっきり首を横に振っていたよ。
貴族組もいないことだし今日のお昼は屋台で食べようということになり、昼前に別荘を出て港町に向かう。前回同様に精霊神殿の前庭に魔導車を置かせてもらい、そこから徒歩で港を目指す。
お昼時でもあり、どの屋台もお客さんで賑わっている。
魚介類を炭火で焼いたものにイシリのような調味料をかけたものが、香ばしい匂いを漂わせていてつい引き付けられてしまう。
イカを丸ごと一匹串に刺して炭火焼きしたものを買った。
焦げて香ばしい匂いを漂わせている調味料は何かと尋ねたら、ギョショウだと言われた。
南部地方には、たくさんの種類のギョショウがあり、それぞれ名前も風味も違うらしい。
あまりに種類が多いので、まとめてギョショウと呼んでいるらしい。
魚介類に塩を加えて発酵させたもの全体を指す呼び名みたいだ。
学園祭で北部地方の子達が焼いた大きな貝に垂らしていたイシリもギョショウの一つらしい。
他に貝、エビ、イカにたくさんの野菜を加えたスープに、米粉の麵を加えたものや海鮮と野菜を小麦粉を溶いたものと混ぜて焼いたパンケーキみたいなものも買ってみた。
屋台が集まる周辺には、テーブルと椅子が置かれており自由に座って食べることが出来るようになっていた。
わたし達もテーブルを一つ確保して、早速食事にありつくことにする。
「やっぱり、屋台で買って食べるものは気を使わなくていいですね。
珍しいものが多くて目移りしちゃいました。どれも美味しそうな香りを立てているんだもの。」
ミーナちゃんは屋台で食事をするときは、いつでも本当に嬉しそうだ。
貴族の料理はマナーとかに気を使って、食事を楽しめないといつもぼやいているからね。
「お姉ちゃん、これ凄く美味しいよ!」
海鮮を野菜と一緒に溶いた小麦粉に混ぜて焼いたものを食べたハンナちゃんが満面の笑顔で言った。
上にかけられているトロミのある甘辛いたれがミーナちゃんの気に入ったようだ。
確かに美味しい、ハンナちゃんは味のはっきりしたものが好みのようだった。
山海の幸がたっぷり入ったスープに米粉の麺を入れたモノ、あっさりとした塩味だったけど魚介と野菜の旨味がとっても効いていて凄く美味しかった。
透明な麺はプルンとする食感でスープがよく絡んでとても良い組み合わせだった。
ミーナちゃんも、細かい作法に気を使わずに美味しい物が食べられて満足そうだ。
ハンナちゃんは、ご飯の後はいつでも幸せそうだね。貴族組と一緒でも全然気にしてないし。
今度は何かデザートでも買って来ようということになり、わたしとミーナちゃんは再び屋台に向かった。
ハンナちゃん?屋台の人ごみが増えてきたのでテーブルで待ってもらっているよ。
迷子になるといけないから。
ソールさんたちは、ハンナちゃんに付いて貰っている。誘拐でもされたらいけないからね。
ミーナちゃんと手を繋いで屋台を見て回る。はぐれるといけないので絶対に手は離さないよ。
「あ、ライスシュタットで食べたナハトシッフがあります。
わたし、またあれが食べたいです。」
ミーナちゃんが珍しく自己主張をする。
あー、あれは美味しかったねあっさりとした甘味が癖になる味だよね。
ミーナちゃんの希望をかなえることにしてナハトシッフの屋台に向かう。
そのとき突然目の前が暗くなった、というより何も見えない。
焦っていたら、一瞬遅れて足が地面から離れ、横倒しになってお腹に何かが当たる。
「やったぜ!とっととずらかるぞ!」
耳の近くでそんな声が聞こえた。
どうやら、ズタ袋のようなものに押し込められ、荷物のように肩に担がれたらしい。
しまった、油断した!
どうやら誘拐に気を付けないといけなかったのは、わたし達も同じらしい。
大人から見れば、八歳児も五歳児もたいした差は無いもんね。
のんきにそんな事を考えていたら、誘拐犯はわたしを肩に担いだまま走り出した。
やめて、走られるのはマジできついです…。
お腹いっぱい食べた後だよ、肩に担がれて走られると揺れでお腹の中身がシェイクされる。
も、もどす…。
*臨時で1話投稿します。
いつも通り20時にも投稿します。
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