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第5章 冬休み、南部地方への旅
第87話 リーンハルト君の家に行く
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*お昼に1話投稿しています。
お手数ですが、お読みでない方は1話戻ってお読みください。
**********
ポルトの町に滞在して九日目、わたし達はポルトの東隣にあるフライスィヒ領に来ている。
ポルトの東に広がる広大なイネの畑-水田-はほとんどがフライスィヒ領らしい、クラスメートのリーンハルト君の家の領地だね。
先日、公爵邸で新年のパーティがあり、出席していた先代フライスィヒ伯-リーンハルト君のお祖父ちゃん-からミルトさんにぜひフライスィヒ領に来て欲しいと言われたそうだ。
黄金色の穂を垂らしたイネが続く中を一直線に貫く道を行くこと約一時間、小高い丘の上に広がる領都ライスシュタットが見えてきた。
領都の正門から一番奥にあるフライスィヒ伯爵邸に着くと、先代フライスィヒ伯と共にリーンハルト君が出迎えてくれた。
今日はリーンハルト君の家に泊まり、明日この町の中央広場に臨時診療所を開く予定になっている。
リーンハルト君がわたし達を案内してくれることになった。
リーンハルト君は昨日王都から帰ったばかりで疲れたと言っていた。
王都の屋敷にある魔導車で帰って来たらしいが、普通の魔導車だと十日以上かかるらしい。
わたし達が四日でポルトまで着いたと言ったらとっても驚いていたよ。
最初に連れて行ってくれたのは、伯爵邸の裏庭の先にある小高い場所、この丘で一番高い場所だそうだ。
リーンハルト君とフローラちゃんの後に続いて丘を登っていくとそこには瀟洒な東屋があり、ライスシュタットの街と低地に広がる水田が一望に見渡せた。
「ここから見渡せる水田の景色は永年にわたる領民の努力の結晶だということを忘れてはいけないとお爺様からいつも言われるのです。」
水田を指差しながらリーンハルト君が言った。
水田はきれいな長方形で規則正しく並んでいる。そして、水田一枚一枚に沿って水路が張り巡らされている。水路はかなり東に離れて見える大河から引き込んでいるそうだ。
永年に及ぶ圃場整理によって生産性の高い農地を作り上げてきたんだって。
自然に真四角な農地ができるわけないから、相当労力をかけて整備したんだろうね。
この辺りは、イネを年二回作っていて今が夏に植えたイネの刈り入れ時だそうだ。
今風にそよいでいる黄金色の穂はもうじき刈り取られるらしい。
この黄金色の絨毯を見るには丁度いい時期で、ラッキーだったんだ。
刈り入れが終わったらゲンゲという草の種を蒔くんだって。それが春に一斉に咲いて見渡す限りの水田が紅紫色に染まるんだって。それも一度見てみたいな、綺麗だろうね。
ゲンゲの花は蜂蜜がたくさん取れるらしいよ。それに、ゲンゲは畑を肥やすそうだ。
ゲンゲが咲き終ったらそのまま鋤き込んで、春のイネを植えるんだってリーンハルト君が言ってた。
**********
「これ、甘くておいしい!」
ハンナちゃんが屋台で買ったお菓子を食べて喜んでいる。
わたし達は丘を降りて明日診療所を開く中央広場の下見に来ている。
他の町と一緒で中央広場は賑やかで屋台がたくさん出ているよ。
ハンナちゃんが食べているのは、潰して丸めたライスを甘く煮た豆のペーストで包んだお菓子だ。『ナハトシッフ』という名前らしい、由来?、わたしも聞いてみたけどリーンハルト君も知らないみたいだった。
みんな一つずつ買って食べたけど本当に美味しかった。王都では見ないお菓子だね。
リーンハルト君の話では、ライスシュタットは南部地方ではポルトと並んで物資の集積地らしい。
ポルトは海運のために物資が集まるが、ここはライスを必要とする領地の特産品がここで換金されライスが買われていくために物資が集まったそうだ。
南部地方でもポルトから西の地区は低いながら起伏の大きい地形が多く平野が少ないためイネの栽培に向かないそうだ。そのため、土地にあった作物を作って、ここでライスに換えているらしい。
だから、食べ物でも色々な物が集まるので、多様な料理があるんだって。
ライスを丸めた中に具材を入れたライスボールとかも美味しかったよ。
**********
翌日、わたし達は朝から中央広場で臨時診療所を開いた。
農村地帯にある街だけあって、港町のような見た目で柄の悪い人は少なく素朴な感じの人が多かった。
わたし達のような小さな子供が治癒術を使うことにみんな驚き、凄く喜ばれた。
たくさんの患者さんが集まってきて大変だったけど凄く感謝され、評判は上々だったと思う。
気さくに接していたミルトさんが皇太子妃だと知って、恐縮するご婦人方が結構多かったよ。
それと、今回はリーンハルト君が、お祖父ちゃんから「おまえもあの子達を見習え。」と言われて、細々とした事を手伝ってくれた。
リーンハルト君は大貴族の子息ながら日頃から領民に近しく接しているようで、かいがいしく働く姿を見た領民から、
「若様、どちらのお嬢さんが若様のお嫁さん候補なんですか?」
とからかわれていた。
顔を真っ赤にして恥ずかしがるリーンハルト君がとても可愛いかったよ。
*ナハトシッフ:夜船(翻訳ソフトで直訳です)
おはぎ、ぼたもちの夏の呼び名です。
お手数ですが、お読みでない方は1話戻ってお読みください。
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ポルトの町に滞在して九日目、わたし達はポルトの東隣にあるフライスィヒ領に来ている。
ポルトの東に広がる広大なイネの畑-水田-はほとんどがフライスィヒ領らしい、クラスメートのリーンハルト君の家の領地だね。
先日、公爵邸で新年のパーティがあり、出席していた先代フライスィヒ伯-リーンハルト君のお祖父ちゃん-からミルトさんにぜひフライスィヒ領に来て欲しいと言われたそうだ。
黄金色の穂を垂らしたイネが続く中を一直線に貫く道を行くこと約一時間、小高い丘の上に広がる領都ライスシュタットが見えてきた。
領都の正門から一番奥にあるフライスィヒ伯爵邸に着くと、先代フライスィヒ伯と共にリーンハルト君が出迎えてくれた。
今日はリーンハルト君の家に泊まり、明日この町の中央広場に臨時診療所を開く予定になっている。
リーンハルト君がわたし達を案内してくれることになった。
リーンハルト君は昨日王都から帰ったばかりで疲れたと言っていた。
王都の屋敷にある魔導車で帰って来たらしいが、普通の魔導車だと十日以上かかるらしい。
わたし達が四日でポルトまで着いたと言ったらとっても驚いていたよ。
最初に連れて行ってくれたのは、伯爵邸の裏庭の先にある小高い場所、この丘で一番高い場所だそうだ。
リーンハルト君とフローラちゃんの後に続いて丘を登っていくとそこには瀟洒な東屋があり、ライスシュタットの街と低地に広がる水田が一望に見渡せた。
「ここから見渡せる水田の景色は永年にわたる領民の努力の結晶だということを忘れてはいけないとお爺様からいつも言われるのです。」
水田を指差しながらリーンハルト君が言った。
水田はきれいな長方形で規則正しく並んでいる。そして、水田一枚一枚に沿って水路が張り巡らされている。水路はかなり東に離れて見える大河から引き込んでいるそうだ。
永年に及ぶ圃場整理によって生産性の高い農地を作り上げてきたんだって。
自然に真四角な農地ができるわけないから、相当労力をかけて整備したんだろうね。
この辺りは、イネを年二回作っていて今が夏に植えたイネの刈り入れ時だそうだ。
今風にそよいでいる黄金色の穂はもうじき刈り取られるらしい。
この黄金色の絨毯を見るには丁度いい時期で、ラッキーだったんだ。
刈り入れが終わったらゲンゲという草の種を蒔くんだって。それが春に一斉に咲いて見渡す限りの水田が紅紫色に染まるんだって。それも一度見てみたいな、綺麗だろうね。
ゲンゲの花は蜂蜜がたくさん取れるらしいよ。それに、ゲンゲは畑を肥やすそうだ。
ゲンゲが咲き終ったらそのまま鋤き込んで、春のイネを植えるんだってリーンハルト君が言ってた。
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「これ、甘くておいしい!」
ハンナちゃんが屋台で買ったお菓子を食べて喜んでいる。
わたし達は丘を降りて明日診療所を開く中央広場の下見に来ている。
他の町と一緒で中央広場は賑やかで屋台がたくさん出ているよ。
ハンナちゃんが食べているのは、潰して丸めたライスを甘く煮た豆のペーストで包んだお菓子だ。『ナハトシッフ』という名前らしい、由来?、わたしも聞いてみたけどリーンハルト君も知らないみたいだった。
みんな一つずつ買って食べたけど本当に美味しかった。王都では見ないお菓子だね。
リーンハルト君の話では、ライスシュタットは南部地方ではポルトと並んで物資の集積地らしい。
ポルトは海運のために物資が集まるが、ここはライスを必要とする領地の特産品がここで換金されライスが買われていくために物資が集まったそうだ。
南部地方でもポルトから西の地区は低いながら起伏の大きい地形が多く平野が少ないためイネの栽培に向かないそうだ。そのため、土地にあった作物を作って、ここでライスに換えているらしい。
だから、食べ物でも色々な物が集まるので、多様な料理があるんだって。
ライスを丸めた中に具材を入れたライスボールとかも美味しかったよ。
**********
翌日、わたし達は朝から中央広場で臨時診療所を開いた。
農村地帯にある街だけあって、港町のような見た目で柄の悪い人は少なく素朴な感じの人が多かった。
わたし達のような小さな子供が治癒術を使うことにみんな驚き、凄く喜ばれた。
たくさんの患者さんが集まってきて大変だったけど凄く感謝され、評判は上々だったと思う。
気さくに接していたミルトさんが皇太子妃だと知って、恐縮するご婦人方が結構多かったよ。
それと、今回はリーンハルト君が、お祖父ちゃんから「おまえもあの子達を見習え。」と言われて、細々とした事を手伝ってくれた。
リーンハルト君は大貴族の子息ながら日頃から領民に近しく接しているようで、かいがいしく働く姿を見た領民から、
「若様、どちらのお嬢さんが若様のお嫁さん候補なんですか?」
とからかわれていた。
顔を真っ赤にして恥ずかしがるリーンハルト君がとても可愛いかったよ。
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おはぎ、ぼたもちの夏の呼び名です。
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