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第5章 冬休み、南部地方への旅
第104話 帰路につく
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*お昼に1話投稿しました。
お読みでない方は1話戻ってお読みください。
お手数をおかけします。
**********
ポルト滞在三十日目、明日この街を出て帰路に着く。
今日は、お世話になった方への挨拶に回っている。
「なんだ、もう帰るのか!もっとゆっくりしていけばいいのに!
何ならずっとここにいてもいいだぞ!」
ミルトさんとフローラちゃんの肩を抱き寄せて、公爵が叫んでいる。
この人、娘と孫を溺愛しているのはわかるけど愛情表現が暑苦しいよ。
皇太子妃がそんなに王都を留守にできるわけないじゃん。
それに、わたし達の学園が始まっちゃう、帰りは途中の町に寄り道しながら帰るのだから。
公爵はミルトさんたちとひとしきり名残を惜しんだのち、今度はわたし達に向き直って言った。
「お嬢ちゃん達、今回は世話になった。
孫と同い年の子供にこんなに助けてもらって、大人としては非常に面目ない。
でも、お嬢ちゃん達がいなかったらこんなに上手くことが運ばなかったと思う。
本当に有り難う。」
心のこもった感謝の言葉だった。
コルテス王国の軍艦搭乗者の処遇だけど、仕官は強制労働刑、一般兵士は無罪放免だそうだ。
ピサロさんと生き残った士官には、強制労働としてオストマルク語とコルテス語を翻訳するための辞書とコルテス王国の地誌を編纂させるらしい。
話が通じない、どんな国かわからないでは、コルテス王国の船が再び現れたとき対処できないのでちょうど良いそうだ。
また、一般兵士の中から読み書きが得意なものを下級役人として採用し、ピサロさん達の補助につけるみたい。数人だけで辞書やら地誌やらを作るのは大変だもんね。
一般兵士は無罪放免としたが、三隻の軍艦は公爵が接収したためコルテス王国へ帰ることは難しいらしい。
一部はポルトに停泊中の交易船に下働きとして乗せてもらって帰るつもりらしいが、大部分の人はポルトに残ることを希望しているそうだ。
もう二度とあの海は渡りたくないと言っているらしい。
このまま放り出すとはぐれ者になりかねないので、半年を目途に公爵のもとで雑役をさせながら言葉を教えるそうだ。
よい人材がいれば、操船の指導者とか船乗りとして雇っても良いと考えているとのこと。
わたし達を誘拐した船乗りと『黒の使徒』の暗殺者?
知らないよ、興味ないから聞かなかったもん。
でも、誘拐に加担しなかった同じ船の船乗りさんの話は聞いたよ。
臨時診療所の開設初日に治療した船乗りさんは、誘拐に加担しなかったらしい。
恩知らずな人達じゃなくて良かった。
船長を始めベテランの船乗りが捕縛されて、長期の刑罰を受ける見通しになってしまったため、南の大陸に帰るのを断念したそうだ。
残った船乗りで帝国の港とポルトの間の荷の運送を請け負うみたいだ。
船がだいぶ傷んでいるのでそのくらいの航海が丁度良いらしいよ。
それから、テーテュスさんのところへお別れの挨拶に行った。
「ハンナ、船が気に入ったなら、わたしに付いて来てもいいんだぞ。
南の国まで連れて行ったやるぞ。」
また言っている…。
「ハンナ、まだ小さいからお船で長い旅をするのは大変だってミルトおばちゃんに言われたの。
もっと大きくなってからにしなさいって。」
ミルトさんが上手くハンナちゃんを丸め込んだみたいだ。
「そっか、残念だな。まあ、ポルトにはちょくちょく来るつもりだからまた誘うよ。」
テーテュスさんはまだしばらくポルトに留まるらしい。
半年くらいは船乗りを休ませるんだって、長い航海はストレスが溜まるのでそのくらいの休みは必要だって。
ちなみにテーテュスさんの船にはプランターと野菜の種を乗せているらしい。食料に玄米もあるらしいよ。
ちゃんと対策していたんだ、ただし何故野菜を栽培しているかの理由を船員には教えてないみたい。玄米もシレッとメニューに紛れさせているらしい。
商売敵に情報は渡さないって、なんか本当に人間みたいなこと言ってるよ。
テーテュスさんは、ポルトに滞在している間、公爵が雇った人に接収した三隻の船の操船を伝授する仕事を請け負ったらしい。本当にちゃっかりしている。
最後に長いこと前庭を貸してもらった精霊神殿にお礼も兼ねて挨拶に行った。
神官のアンネリーさんが迎えてくれた、もちろんその後ろには水の上位精霊のセノーテさんも控えている。
病人で溢れかえっていた礼拝堂も、今は一人も残っていない。
みんな、早く元気になって本当によかった。
「このたびは世話になりました。また、コルテス王国の病人を受け入れてもらったことに感謝します。」
「そんなもったいないお言葉をちょうだいし恐縮です。
私達の方こそ、精霊神殿の評判を高めていただいたことに感謝いたします。」
ミルトさんの言葉に、アンネリーさんはひどく恐縮していた。
わたし達は、心の中で後ろにいるセノーテさんにもお礼を言って、精霊神殿を後にした。
************
そして、今日わたし達はポルトを出て帰路につく。
誘拐されたり、刺されたり散々な目にもあったけど、美味しい物も食べたし、船にも乗れた。
何より寒い冬を暖かくすごせたのはラッキーだったと思う。
ポルトまで来てよかったよ!
行きは四日できたが、帰りは診療活動をしながら二十日かけて王都に帰る長旅だ。
別荘の前には公爵夫妻が見送りに来てくれた。公爵ったら、まだミルトさんたちを引き止めている。
やっと公爵の気が済んだみたいで、ミルトさんとフローラちゃんが魔導車に乗り込んできた。
さあ、ヴィーナヴァルトへ向けて出発だ!
お読みでない方は1話戻ってお読みください。
お手数をおかけします。
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ポルト滞在三十日目、明日この街を出て帰路に着く。
今日は、お世話になった方への挨拶に回っている。
「なんだ、もう帰るのか!もっとゆっくりしていけばいいのに!
何ならずっとここにいてもいいだぞ!」
ミルトさんとフローラちゃんの肩を抱き寄せて、公爵が叫んでいる。
この人、娘と孫を溺愛しているのはわかるけど愛情表現が暑苦しいよ。
皇太子妃がそんなに王都を留守にできるわけないじゃん。
それに、わたし達の学園が始まっちゃう、帰りは途中の町に寄り道しながら帰るのだから。
公爵はミルトさんたちとひとしきり名残を惜しんだのち、今度はわたし達に向き直って言った。
「お嬢ちゃん達、今回は世話になった。
孫と同い年の子供にこんなに助けてもらって、大人としては非常に面目ない。
でも、お嬢ちゃん達がいなかったらこんなに上手くことが運ばなかったと思う。
本当に有り難う。」
心のこもった感謝の言葉だった。
コルテス王国の軍艦搭乗者の処遇だけど、仕官は強制労働刑、一般兵士は無罪放免だそうだ。
ピサロさんと生き残った士官には、強制労働としてオストマルク語とコルテス語を翻訳するための辞書とコルテス王国の地誌を編纂させるらしい。
話が通じない、どんな国かわからないでは、コルテス王国の船が再び現れたとき対処できないのでちょうど良いそうだ。
また、一般兵士の中から読み書きが得意なものを下級役人として採用し、ピサロさん達の補助につけるみたい。数人だけで辞書やら地誌やらを作るのは大変だもんね。
一般兵士は無罪放免としたが、三隻の軍艦は公爵が接収したためコルテス王国へ帰ることは難しいらしい。
一部はポルトに停泊中の交易船に下働きとして乗せてもらって帰るつもりらしいが、大部分の人はポルトに残ることを希望しているそうだ。
もう二度とあの海は渡りたくないと言っているらしい。
このまま放り出すとはぐれ者になりかねないので、半年を目途に公爵のもとで雑役をさせながら言葉を教えるそうだ。
よい人材がいれば、操船の指導者とか船乗りとして雇っても良いと考えているとのこと。
わたし達を誘拐した船乗りと『黒の使徒』の暗殺者?
知らないよ、興味ないから聞かなかったもん。
でも、誘拐に加担しなかった同じ船の船乗りさんの話は聞いたよ。
臨時診療所の開設初日に治療した船乗りさんは、誘拐に加担しなかったらしい。
恩知らずな人達じゃなくて良かった。
船長を始めベテランの船乗りが捕縛されて、長期の刑罰を受ける見通しになってしまったため、南の大陸に帰るのを断念したそうだ。
残った船乗りで帝国の港とポルトの間の荷の運送を請け負うみたいだ。
船がだいぶ傷んでいるのでそのくらいの航海が丁度良いらしいよ。
それから、テーテュスさんのところへお別れの挨拶に行った。
「ハンナ、船が気に入ったなら、わたしに付いて来てもいいんだぞ。
南の国まで連れて行ったやるぞ。」
また言っている…。
「ハンナ、まだ小さいからお船で長い旅をするのは大変だってミルトおばちゃんに言われたの。
もっと大きくなってからにしなさいって。」
ミルトさんが上手くハンナちゃんを丸め込んだみたいだ。
「そっか、残念だな。まあ、ポルトにはちょくちょく来るつもりだからまた誘うよ。」
テーテュスさんはまだしばらくポルトに留まるらしい。
半年くらいは船乗りを休ませるんだって、長い航海はストレスが溜まるのでそのくらいの休みは必要だって。
ちなみにテーテュスさんの船にはプランターと野菜の種を乗せているらしい。食料に玄米もあるらしいよ。
ちゃんと対策していたんだ、ただし何故野菜を栽培しているかの理由を船員には教えてないみたい。玄米もシレッとメニューに紛れさせているらしい。
商売敵に情報は渡さないって、なんか本当に人間みたいなこと言ってるよ。
テーテュスさんは、ポルトに滞在している間、公爵が雇った人に接収した三隻の船の操船を伝授する仕事を請け負ったらしい。本当にちゃっかりしている。
最後に長いこと前庭を貸してもらった精霊神殿にお礼も兼ねて挨拶に行った。
神官のアンネリーさんが迎えてくれた、もちろんその後ろには水の上位精霊のセノーテさんも控えている。
病人で溢れかえっていた礼拝堂も、今は一人も残っていない。
みんな、早く元気になって本当によかった。
「このたびは世話になりました。また、コルテス王国の病人を受け入れてもらったことに感謝します。」
「そんなもったいないお言葉をちょうだいし恐縮です。
私達の方こそ、精霊神殿の評判を高めていただいたことに感謝いたします。」
ミルトさんの言葉に、アンネリーさんはひどく恐縮していた。
わたし達は、心の中で後ろにいるセノーテさんにもお礼を言って、精霊神殿を後にした。
************
そして、今日わたし達はポルトを出て帰路につく。
誘拐されたり、刺されたり散々な目にもあったけど、美味しい物も食べたし、船にも乗れた。
何より寒い冬を暖かくすごせたのはラッキーだったと思う。
ポルトまで来てよかったよ!
行きは四日できたが、帰りは診療活動をしながら二十日かけて王都に帰る長旅だ。
別荘の前には公爵夫妻が見送りに来てくれた。公爵ったら、まだミルトさんたちを引き止めている。
やっと公爵の気が済んだみたいで、ミルトさんとフローラちゃんが魔導車に乗り込んできた。
さあ、ヴィーナヴァルトへ向けて出発だ!
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