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第7章 二度目の夏休み、再び帝国へ
第164話 瘴気の森の施設 ③
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病気や怪我で動けない人の手当が終ったのでひと安心だよ。
これで、施設の中をゆっくりと見ることができるね。
ミルトさんの後について作業所らしき建物の中に入るとそこを接収した騎士が迎えてくれた。
「こちらの建物は魔晶石の加工施設のようです。作業していた者は全員建物の外に退去させました。」
騎士の一人がミルトさんに報告した。
「ご苦労様です。もし、この建物の責任者を捕縛しているのなら連れてきなさい。案内させます。」
ミルトさんがそう言うと、責任者は拘留してあるようで騎士が小走りに出て行った。
しばらくして、騎士は一人の中年男性を連れてきた。
中年男性はいかにも職人という風体で、スタインと名乗った。
「俺は魔晶石の加工をしろと雇われてきただけで経営のことは何もわからないぞ。
なんか、この作業所はやばいものみたいだな、俺までグルだと思われたら困るからわかることなら何でも話すぞ。」
スタインさんは、最近までこの国の魔晶石加工所で働いていたそうだ。
この施設に依頼を受けた口入れ屋がスタインさんのもとを訪れ、破格の条件で魔晶石の加工所を任せたいと勧誘したらしい。
根っからの職人で法に疎いスタインさんは、魔晶石の加工は国の施設以外でやってはいけないと言うことを知らなかったらしい。施設を任されると聞いて親方になれると喜び勇んできたみたい。
それまで勤めていた加工所が国営だと言うことすら意識していなかったようだ。
スタインさんの案内で加工所の中を見て回る。
いくつもの機械が整然と並んでいる。大部分の機械が魔晶石をカットする機械と研磨する機械だそうだ。
魔獣から採取された大きさも形も不揃いな魔晶石を決まった大きさにカットして、研磨機で形を揃えるそうだ。
ここにある機械は帝国製の最新の機械で熟練の職人でなくても扱えるようになっているらしい。
スタインさんは、
「こんな自動化された機械があるなら俺みたいな職人を呼ぶ必要なかったじゃないか。」
とこぼしていた。
スタインさんの下で働いていたのは、やはり王国の各地から連れて来られた若い人たちで魔晶石の加工をした経験がない人ばかりだったようだ。
機械を一通り説明した後、スタインさんは加工済みの魔晶石を保管している場所に案内してくれた。
魔晶石は大きな箱三つに分けられており、一番多く入っている箱はこの加工所で機械を動かすために使用する魔晶石を入れてあるらしい。
次にたくさん入っている箱は帝国に輸出する魔晶石らしい。
最後の一番少ない箱がヴェストエンデを中心に国内に不正に流通させる魔晶石との事だ。
ちなみにスタインさん、国内に流通させる魔晶石を不正なものだと思わなかったらしい。
どこまで、法に無関心なんだろう…。
スタインさんは、一番大きな箱に手を掛けて言った。
「さっき案内した機械は高性能なんだがな、魔晶石食いで困ったもんなんだ。
それにこれから製材所を動かすらしくて、製材の魔導具向けの魔晶石も備蓄してるんだ。
大量に魔晶石を消費するんでこんなに備蓄しておかないといけない。
外に売れる分なんてこっちの二箱しかないんだぜ、これで儲かるのか?」
箱の中の大量の魔晶石は、新たな製材所の分もあるらしい。
箱の中の魔晶石を見たミルトさんは、
「こんなに魔晶石を消費するなら自分のところで魔晶石を作る必要があったでしょうね。
我が国では国が魔晶石の流通を管理しているので、いきなりこんな量の魔晶石の需要がでたら、すぐにばれますものね。
それに帝国製の大型魔導具ですか、これは魔導具の密輸の疑いも出てきましたね。」
と言った。
この国では、稼動により大量の瘴気を発する大型の魔導具は規制がかかっていて、生産及び輸入には許可が要るらしいよ。
許可を取らずに輸入すると密輸として厳しく罰せられるみたい。
ミルトさんは、早速これらの機械の輸入許可があるかどうかを調べさせないといけないねと言っていた。
次に、わたし達はスタインさんに先導されて隣の製材所に入った。
まだ使われていない真新しい各種製材の魔導具を前にスタインさんは言った。
「こっちは全く関わっていないので細かいことはわからねえ。
俺が聞いているのは、完成までもう少しかかるということと魔導具をもう少し増やすので魔晶石の備蓄を増やせと言うことだけだ。
それと、製材所が完成する前にきこりを雇うから、うろちょろする人が増えるけど気にするなと言われたくらいかな。」
まだ完成する前でよかったよ、瘴気による人の健康被害が少なくて済んでいる。
製材所が完成すればきこりやそれを護衛する魔獣狩りの人がたくさん瘴気の森へ入ることになる。
そうなれば、病気に罹る人や怪我をする人が増えたはずだもんね。
「ミルトさん、製材所の完成前に施設を接収できて良かったですね。
魔晶石の不正流通の件もわかったし、ここまで来た甲斐がありましたね。」
わたしがそういうとミルトさんは苦笑いをして言った。
「そうね、貴重な情報を持ってきてくれたターニャちゃんには凄く感謝しているわ。
でもね、さすがにここまで大事になるとは思ってもいなかったわ。
魔晶石の不正流通に加えて、瘴気の森の違法開発、大量の大型魔導具の密輸入ですって。
はっきり言って、私の手に負える範疇を大幅に超えているわ。」
ミルトさんは、国の役人を大量に動員してこの施設の調査をする必要があると言う。
そのためには、現在の状況を保存する必要があるがそれが難しいと言うの。
ここに監視の人を置かないと証拠を隠滅される恐れがあるけど、監視する人の健康を考えたらこんな瘴気の濃い場所に配置できないと言うんだ。
「ねえ、ミルトさん、この施設って専門の人が調査に入るまでこの状態を維持しなければいけないものなの?
証拠物件ということで持って帰っちゃ拙いのかな?」
「私に聞かれてもそんな細かいことまでは知らないわ。叔父様、どうなのですか?」
「普通は現況を保存して捜査員に任せるんだけど、捜査員が来るまでに証拠が隠滅される恐れがあるなら確保しても問題ないであろう。
私とミルトが証言すればそこはなんとでもなるのではないか。
しかし、証拠物件の確保と言ってもどうするのだ、こんな大量の大型機械…。」
ここは久し振りにあの方の出番かな?
これで、施設の中をゆっくりと見ることができるね。
ミルトさんの後について作業所らしき建物の中に入るとそこを接収した騎士が迎えてくれた。
「こちらの建物は魔晶石の加工施設のようです。作業していた者は全員建物の外に退去させました。」
騎士の一人がミルトさんに報告した。
「ご苦労様です。もし、この建物の責任者を捕縛しているのなら連れてきなさい。案内させます。」
ミルトさんがそう言うと、責任者は拘留してあるようで騎士が小走りに出て行った。
しばらくして、騎士は一人の中年男性を連れてきた。
中年男性はいかにも職人という風体で、スタインと名乗った。
「俺は魔晶石の加工をしろと雇われてきただけで経営のことは何もわからないぞ。
なんか、この作業所はやばいものみたいだな、俺までグルだと思われたら困るからわかることなら何でも話すぞ。」
スタインさんは、最近までこの国の魔晶石加工所で働いていたそうだ。
この施設に依頼を受けた口入れ屋がスタインさんのもとを訪れ、破格の条件で魔晶石の加工所を任せたいと勧誘したらしい。
根っからの職人で法に疎いスタインさんは、魔晶石の加工は国の施設以外でやってはいけないと言うことを知らなかったらしい。施設を任されると聞いて親方になれると喜び勇んできたみたい。
それまで勤めていた加工所が国営だと言うことすら意識していなかったようだ。
スタインさんの案内で加工所の中を見て回る。
いくつもの機械が整然と並んでいる。大部分の機械が魔晶石をカットする機械と研磨する機械だそうだ。
魔獣から採取された大きさも形も不揃いな魔晶石を決まった大きさにカットして、研磨機で形を揃えるそうだ。
ここにある機械は帝国製の最新の機械で熟練の職人でなくても扱えるようになっているらしい。
スタインさんは、
「こんな自動化された機械があるなら俺みたいな職人を呼ぶ必要なかったじゃないか。」
とこぼしていた。
スタインさんの下で働いていたのは、やはり王国の各地から連れて来られた若い人たちで魔晶石の加工をした経験がない人ばかりだったようだ。
機械を一通り説明した後、スタインさんは加工済みの魔晶石を保管している場所に案内してくれた。
魔晶石は大きな箱三つに分けられており、一番多く入っている箱はこの加工所で機械を動かすために使用する魔晶石を入れてあるらしい。
次にたくさん入っている箱は帝国に輸出する魔晶石らしい。
最後の一番少ない箱がヴェストエンデを中心に国内に不正に流通させる魔晶石との事だ。
ちなみにスタインさん、国内に流通させる魔晶石を不正なものだと思わなかったらしい。
どこまで、法に無関心なんだろう…。
スタインさんは、一番大きな箱に手を掛けて言った。
「さっき案内した機械は高性能なんだがな、魔晶石食いで困ったもんなんだ。
それにこれから製材所を動かすらしくて、製材の魔導具向けの魔晶石も備蓄してるんだ。
大量に魔晶石を消費するんでこんなに備蓄しておかないといけない。
外に売れる分なんてこっちの二箱しかないんだぜ、これで儲かるのか?」
箱の中の大量の魔晶石は、新たな製材所の分もあるらしい。
箱の中の魔晶石を見たミルトさんは、
「こんなに魔晶石を消費するなら自分のところで魔晶石を作る必要があったでしょうね。
我が国では国が魔晶石の流通を管理しているので、いきなりこんな量の魔晶石の需要がでたら、すぐにばれますものね。
それに帝国製の大型魔導具ですか、これは魔導具の密輸の疑いも出てきましたね。」
と言った。
この国では、稼動により大量の瘴気を発する大型の魔導具は規制がかかっていて、生産及び輸入には許可が要るらしいよ。
許可を取らずに輸入すると密輸として厳しく罰せられるみたい。
ミルトさんは、早速これらの機械の輸入許可があるかどうかを調べさせないといけないねと言っていた。
次に、わたし達はスタインさんに先導されて隣の製材所に入った。
まだ使われていない真新しい各種製材の魔導具を前にスタインさんは言った。
「こっちは全く関わっていないので細かいことはわからねえ。
俺が聞いているのは、完成までもう少しかかるということと魔導具をもう少し増やすので魔晶石の備蓄を増やせと言うことだけだ。
それと、製材所が完成する前にきこりを雇うから、うろちょろする人が増えるけど気にするなと言われたくらいかな。」
まだ完成する前でよかったよ、瘴気による人の健康被害が少なくて済んでいる。
製材所が完成すればきこりやそれを護衛する魔獣狩りの人がたくさん瘴気の森へ入ることになる。
そうなれば、病気に罹る人や怪我をする人が増えたはずだもんね。
「ミルトさん、製材所の完成前に施設を接収できて良かったですね。
魔晶石の不正流通の件もわかったし、ここまで来た甲斐がありましたね。」
わたしがそういうとミルトさんは苦笑いをして言った。
「そうね、貴重な情報を持ってきてくれたターニャちゃんには凄く感謝しているわ。
でもね、さすがにここまで大事になるとは思ってもいなかったわ。
魔晶石の不正流通に加えて、瘴気の森の違法開発、大量の大型魔導具の密輸入ですって。
はっきり言って、私の手に負える範疇を大幅に超えているわ。」
ミルトさんは、国の役人を大量に動員してこの施設の調査をする必要があると言う。
そのためには、現在の状況を保存する必要があるがそれが難しいと言うの。
ここに監視の人を置かないと証拠を隠滅される恐れがあるけど、監視する人の健康を考えたらこんな瘴気の濃い場所に配置できないと言うんだ。
「ねえ、ミルトさん、この施設って専門の人が調査に入るまでこの状態を維持しなければいけないものなの?
証拠物件ということで持って帰っちゃ拙いのかな?」
「私に聞かれてもそんな細かいことまでは知らないわ。叔父様、どうなのですか?」
「普通は現況を保存して捜査員に任せるんだけど、捜査員が来るまでに証拠が隠滅される恐れがあるなら確保しても問題ないであろう。
私とミルトが証言すればそこはなんとでもなるのではないか。
しかし、証拠物件の確保と言ってもどうするのだ、こんな大量の大型機械…。」
ここは久し振りにあの方の出番かな?
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