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第7章 二度目の夏休み、再び帝国へ
第186話【閑話】困惑する侍女 ②
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緊張しつつも夢のような別荘での三日間はあっという間に過ぎました。いえ、私だってもう二度とくることがないと思えば満喫させていただきましたよ。
王都まで送ってくださるという魔導車の中、カリーナ様と私はフローラ様とご一緒させていただいております。
普段は大人しくはしゃぐ姿など滅多に見せないカリーナ様がフローラ様の魔導車に乗って大はしゃぎです。
ええ、これは素晴らしい物ですね、カリーナ様が無邪気に喜ぶのも分ります。
速いし、揺れないし、静かだし、馬車の悪いところを全部とり払った感じです。
来る時は馬車で約一月かかった道のりを二日で帰るというのですから驚きです。
しかし、この魔導車に一緒に乗っているのはなぜか平民と思われる三人組、アデル侯爵家のお嬢様は別の車に乗っています。
みなさん、和気あいあいと親しげに話をしています。しかもターニャちゃんと呼ばれる子はフローラ様に完全なタメ口です。
そして、フローラ様の決定的な一言、この魔導車はターニャちゃんのお母さんからもらったと言いました。
流石にカリーナ様も気になったらしく、三人の素性を聞いてしまいました。
そして明かされた驚愕の事実、三人が大精霊様から託された少女で、現在我が国で精霊の力を借りられる五人のうちの三人だと。
しかし、私はいまひとつ信じていませんでした。普通精霊なんていわれて手放しで信じる人いませんよね。
王祖様を育てたという精霊、建国間もない時期に様々な場面で人々を手助けしてくれたと伝えられている。
しかし、私を含めて大多数の人はその存在を信じていない、みんなお伽話だと思っている。
それだったら、どなたか王族の方の御落胤だと言われた方がすんなり信用できると思います。
それから、カリーナ様の縁談を断るための話になり、フローラ様の側にお仕えすることを前提にフローラ様のところに行儀見習いに上がるようカリーナ様に提案がございました。
これにはカリーナ様も簡単にハイとは言えず、フローラ様に疑問を投げかけました。
すると、やはりフローラ様の側仕えなることを前提に行儀見習いに上がると言うのは、縁談を断る方便だと言います。まあ、それなら納得です。
実際のところフローラ様がカリーナ様に期待するのはハンナさんの遊び相手になることのようです。
カリーナ様は精霊のことについては半信半疑のようですがハンナさんのことは気に入ったようで、ハンナさんの遊び相手になることを承諾してしまいました。
しかし、こんな大事なことをフローラ様一人でお決めになって良いのかと疑問に思っていると、既に皇太子妃様と相談済みだというではありませんか。
これは明らかにおかしいです。だって初めてフローラ様にお目にかかったのは四日前ですよ。
どう考えても不可能です。今乗せていただいてる魔導車ですら王都まで二日かかるのですから。
**********
しかし、驚いたことにフローラ様のおっしゃるとおり皇太子妃様には既に話が通っているようで、王宮に着くとすぐに皇太子妃様の私室に通されたのです。
ここでも、私は困惑することになりました。
カリーナ様の対面に座る皇太子妃様、なぜか皇太子妃様の膝の上には先日養女になさった王女様がいるのです。いくらプライベートな空間とはいえ、一応お客の前ですよ。
しかも、皇太子妃様の両脇にも王女様がべったりとくっついている。皇太子妃様に懐いているのは分りますが、本来その位置は実子であるフローラ様の座る場所ではないのでしょうか。
皇太子妃様はいつものことなので気にするなとおっしゃりますが、気になりますよ…。
更に驚くことに子爵様を既に奥の宮に呼んであると言うではないですか。
いったいどうやってと思っていたら、会話の中に通信機という言葉が出てきました。
そんな魔道具があるなんて聞いたことがございませんでした。さすが王家ですね。
控え室でお待ちになられていたようで子爵様はすぐに参られました。
そして、フローラ様とカリーナ様が魔導車の中で交わしたような会話がなされ、アロガンツ家との縁談を断ることに王家が協力してくれることとカリーナ様がフローラ様のもとに上がることがあっという間に決まってしまいました。
そして、子爵様が退席された後、皇太子妃様がターニャちゃんの後ろに控える侍女に向かって言いました。
「フェイ様、ハンナちゃんの遊び相手をカリーナさんにお任せすることについては問題ございませんか。」
今確かに皇太子妃様は侍女に向かって様付けで問い掛けました、これはいったい…?
「ええ、カリーナちゃんは優しい子で性格は良いですし、洞察力が非常に優れています。
ハンナちゃんにいい影響を与えてくれると思いますので私は異存ありません。
ところで、子供の遊び場としてはあの森が良いと思うのですが、カリーナちゃんとエラさんの立ち入りを許可してもらえますか。」
「それはかまいませんが、森が二人を受け入れてくれますか?」
「それは、私がいれば大丈夫です。私がいなくてもハンナちゃんと一緒であれば受け入れるように森のチビ達に言っておきます。」
森?受け入れる?何のことでしょう、まるで森が意思を持っているかのような会話です。
すると、フェイさんがハンナちゃんに言いました。
「ハンナちゃん、これから森に行きましょう、ここからの方が近いですから。
森のみんなにこの二人のことを紹介しておかないと森で遊べませんよ。」
「はーい、じゃあ、カリーナちゃん、一緒に行こう!」
ハンナちゃんはカリーナ様の手を取って立ち上がりました。
「さあ、エラさんも一緒に行きますよ。」
**********
フェイさんに連れられてやってきたのは王宮の最奥、王族しか立ち入ることのできない区画でした。
そこには、穢れを知らない清浄な水が滾々と湧き出している泉がありました。
「ここが精霊の泉です。ヴァイスハイトちゃんがウンディーネ様に育てられた場所ですね。
この先の森が今日の目的地ですが、この先、私の手を握り絶対に離さないでください。」
王祖様をちゃん付けで呼ぶフェイさんって、いったいなんなのでしょう?
私はフェイさんから差し出された手を取り、ギュッと握り締めます。ええ、何か嫌な予感がするので絶対離しませんよ。
見るとカリーナ様もハンナちゃんの手を固く握っています。
そしてフェイさんに手を引かれ森に足を踏み入れます。
すると空気が変わりました。さっきまでは残暑が厳しくむっとしていたのに、ここにはまるで春のような爽やかな風が吹いています。
何より空気の質が違います。なんと表現すればよいのか、詩的素養のない私には上手く言えませんが、凄く清らかな空気なんです。
そして、目の前の光景にまたもや驚かされました。私はこの人たちと知り合って一生分の驚きを使い切った感じです。
目の前に咲き誇る花達、プリムラ、アネモネ、ルピナス、ラベンダー、クリスマスローズ、咲く季節も、本来咲いている地域も違う花が同時に咲いているのです。
呆気にとられている私にフェイさんが言います。
「ここが王家の森の中です。精霊が管理する森で普通の人は立ち入れないのですよ。
今、ここの精霊達にエラさんとカリーナちゃんが来たら中に入れるように言いましたのでこれからは普通に入れますよ。
あ、もう手を離しても大丈夫です。」
一般に王家の森と言われているこの森は精霊の楽園で、生まれたての精霊を守るため人が立ち入ることができないそうです。
王家の森と言いつつもここ二千年の間この森に立ち入った王族はいなかったそうです。
現在立ち入れる王族は、フローラ様とミルト皇太子妃様の二人だけだとか、王様すら立ち入れないそうです。
そんなところに私のような使用人が立ち入ってしまってよいのでしょうか?恐れ多い…。
しかし、この光景を見ると精霊の存在を信じてしまいそうです…もとい、目の前で信じざるを得ない現象が起こりました。
ハンナちゃんが何もない空間に何か話しかけるとしばらくして果実らしきものが二つハンナちゃんの手許までふよふよと飛んで来たのです。それを手に取るとハンナちゃんは一つをカリーナ様に分けています。
馬車の中でフローラ様に伺った話では、精霊は体質があわないと見えないらしいです。
どうもこの森には精霊がたくさんいるみたいです。ハンナちゃんは精霊にお願いして果実を取ってきてもらったそうです。
さすがにこれを見せられたら精霊の存在を信じざるをえないと思いました。
ひとしきり森の小動物と戯れる幼子二人の姿を見て和んでいたら、フェイさんが言いました。
「そろそろ、いい時間なので帰りましょうか。もう、ターニャちゃん達も寮に帰っている頃でしょうし。」
え、王宮からは歩いて学園まで行くのですか、結構遠いですよ。
そう思いつつもフェイさんに続いて精霊の泉まで戻ってきました。
「じゃあ、ちょっと目がクラッとするかも知れませんが、手を離さないでくださいね。」
そこで、フェイさんはわたしの手を取って言いました。見ると反対側の手ではカリーナ様の手を握り締めています。ハンナちゃんはフェイさんの足にしがみ付いていますね。
一瞬目の前が暗転し、気がつくとそこは「バスルーム?」でした。
「私、属性が水なので水のある場所にしか転移できないのです。」
フェイさんがそう言いながらバスルームの扉を開くと、そこにはソファーで寛ぐターニャちゃんの姿がありました。
「あ、おかえりなさい。精霊の森にはちゃんと入れた?」
ターニャちゃんは別段何事もないように言います。あ、これ、いつものことなのですね。
フェイさんも精霊なんですね、そうじゃないかと思っていました。
精霊の力でここまで転移してきたそうです、この力は上位の精霊しか使えないそうです。
すごいですね、精霊の力…、なんでもありだ…。
そんな事を考えながら周りを見回し、ハタと気がつきます。
ここは学園の寮、今日から私もここに住むことになるのでした。
それも、王女のフローラ様と一緒に、衝撃的なことが多すぎて失念していました。
良く考えるとたとえ侍女としてでも王女様と一緒に住むなんて恐れ多いことです。
私はこの環境に適応できるでしょうか…。
王都まで送ってくださるという魔導車の中、カリーナ様と私はフローラ様とご一緒させていただいております。
普段は大人しくはしゃぐ姿など滅多に見せないカリーナ様がフローラ様の魔導車に乗って大はしゃぎです。
ええ、これは素晴らしい物ですね、カリーナ様が無邪気に喜ぶのも分ります。
速いし、揺れないし、静かだし、馬車の悪いところを全部とり払った感じです。
来る時は馬車で約一月かかった道のりを二日で帰るというのですから驚きです。
しかし、この魔導車に一緒に乗っているのはなぜか平民と思われる三人組、アデル侯爵家のお嬢様は別の車に乗っています。
みなさん、和気あいあいと親しげに話をしています。しかもターニャちゃんと呼ばれる子はフローラ様に完全なタメ口です。
そして、フローラ様の決定的な一言、この魔導車はターニャちゃんのお母さんからもらったと言いました。
流石にカリーナ様も気になったらしく、三人の素性を聞いてしまいました。
そして明かされた驚愕の事実、三人が大精霊様から託された少女で、現在我が国で精霊の力を借りられる五人のうちの三人だと。
しかし、私はいまひとつ信じていませんでした。普通精霊なんていわれて手放しで信じる人いませんよね。
王祖様を育てたという精霊、建国間もない時期に様々な場面で人々を手助けしてくれたと伝えられている。
しかし、私を含めて大多数の人はその存在を信じていない、みんなお伽話だと思っている。
それだったら、どなたか王族の方の御落胤だと言われた方がすんなり信用できると思います。
それから、カリーナ様の縁談を断るための話になり、フローラ様の側にお仕えすることを前提にフローラ様のところに行儀見習いに上がるようカリーナ様に提案がございました。
これにはカリーナ様も簡単にハイとは言えず、フローラ様に疑問を投げかけました。
すると、やはりフローラ様の側仕えなることを前提に行儀見習いに上がると言うのは、縁談を断る方便だと言います。まあ、それなら納得です。
実際のところフローラ様がカリーナ様に期待するのはハンナさんの遊び相手になることのようです。
カリーナ様は精霊のことについては半信半疑のようですがハンナさんのことは気に入ったようで、ハンナさんの遊び相手になることを承諾してしまいました。
しかし、こんな大事なことをフローラ様一人でお決めになって良いのかと疑問に思っていると、既に皇太子妃様と相談済みだというではありませんか。
これは明らかにおかしいです。だって初めてフローラ様にお目にかかったのは四日前ですよ。
どう考えても不可能です。今乗せていただいてる魔導車ですら王都まで二日かかるのですから。
**********
しかし、驚いたことにフローラ様のおっしゃるとおり皇太子妃様には既に話が通っているようで、王宮に着くとすぐに皇太子妃様の私室に通されたのです。
ここでも、私は困惑することになりました。
カリーナ様の対面に座る皇太子妃様、なぜか皇太子妃様の膝の上には先日養女になさった王女様がいるのです。いくらプライベートな空間とはいえ、一応お客の前ですよ。
しかも、皇太子妃様の両脇にも王女様がべったりとくっついている。皇太子妃様に懐いているのは分りますが、本来その位置は実子であるフローラ様の座る場所ではないのでしょうか。
皇太子妃様はいつものことなので気にするなとおっしゃりますが、気になりますよ…。
更に驚くことに子爵様を既に奥の宮に呼んであると言うではないですか。
いったいどうやってと思っていたら、会話の中に通信機という言葉が出てきました。
そんな魔道具があるなんて聞いたことがございませんでした。さすが王家ですね。
控え室でお待ちになられていたようで子爵様はすぐに参られました。
そして、フローラ様とカリーナ様が魔導車の中で交わしたような会話がなされ、アロガンツ家との縁談を断ることに王家が協力してくれることとカリーナ様がフローラ様のもとに上がることがあっという間に決まってしまいました。
そして、子爵様が退席された後、皇太子妃様がターニャちゃんの後ろに控える侍女に向かって言いました。
「フェイ様、ハンナちゃんの遊び相手をカリーナさんにお任せすることについては問題ございませんか。」
今確かに皇太子妃様は侍女に向かって様付けで問い掛けました、これはいったい…?
「ええ、カリーナちゃんは優しい子で性格は良いですし、洞察力が非常に優れています。
ハンナちゃんにいい影響を与えてくれると思いますので私は異存ありません。
ところで、子供の遊び場としてはあの森が良いと思うのですが、カリーナちゃんとエラさんの立ち入りを許可してもらえますか。」
「それはかまいませんが、森が二人を受け入れてくれますか?」
「それは、私がいれば大丈夫です。私がいなくてもハンナちゃんと一緒であれば受け入れるように森のチビ達に言っておきます。」
森?受け入れる?何のことでしょう、まるで森が意思を持っているかのような会話です。
すると、フェイさんがハンナちゃんに言いました。
「ハンナちゃん、これから森に行きましょう、ここからの方が近いですから。
森のみんなにこの二人のことを紹介しておかないと森で遊べませんよ。」
「はーい、じゃあ、カリーナちゃん、一緒に行こう!」
ハンナちゃんはカリーナ様の手を取って立ち上がりました。
「さあ、エラさんも一緒に行きますよ。」
**********
フェイさんに連れられてやってきたのは王宮の最奥、王族しか立ち入ることのできない区画でした。
そこには、穢れを知らない清浄な水が滾々と湧き出している泉がありました。
「ここが精霊の泉です。ヴァイスハイトちゃんがウンディーネ様に育てられた場所ですね。
この先の森が今日の目的地ですが、この先、私の手を握り絶対に離さないでください。」
王祖様をちゃん付けで呼ぶフェイさんって、いったいなんなのでしょう?
私はフェイさんから差し出された手を取り、ギュッと握り締めます。ええ、何か嫌な予感がするので絶対離しませんよ。
見るとカリーナ様もハンナちゃんの手を固く握っています。
そしてフェイさんに手を引かれ森に足を踏み入れます。
すると空気が変わりました。さっきまでは残暑が厳しくむっとしていたのに、ここにはまるで春のような爽やかな風が吹いています。
何より空気の質が違います。なんと表現すればよいのか、詩的素養のない私には上手く言えませんが、凄く清らかな空気なんです。
そして、目の前の光景にまたもや驚かされました。私はこの人たちと知り合って一生分の驚きを使い切った感じです。
目の前に咲き誇る花達、プリムラ、アネモネ、ルピナス、ラベンダー、クリスマスローズ、咲く季節も、本来咲いている地域も違う花が同時に咲いているのです。
呆気にとられている私にフェイさんが言います。
「ここが王家の森の中です。精霊が管理する森で普通の人は立ち入れないのですよ。
今、ここの精霊達にエラさんとカリーナちゃんが来たら中に入れるように言いましたのでこれからは普通に入れますよ。
あ、もう手を離しても大丈夫です。」
一般に王家の森と言われているこの森は精霊の楽園で、生まれたての精霊を守るため人が立ち入ることができないそうです。
王家の森と言いつつもここ二千年の間この森に立ち入った王族はいなかったそうです。
現在立ち入れる王族は、フローラ様とミルト皇太子妃様の二人だけだとか、王様すら立ち入れないそうです。
そんなところに私のような使用人が立ち入ってしまってよいのでしょうか?恐れ多い…。
しかし、この光景を見ると精霊の存在を信じてしまいそうです…もとい、目の前で信じざるを得ない現象が起こりました。
ハンナちゃんが何もない空間に何か話しかけるとしばらくして果実らしきものが二つハンナちゃんの手許までふよふよと飛んで来たのです。それを手に取るとハンナちゃんは一つをカリーナ様に分けています。
馬車の中でフローラ様に伺った話では、精霊は体質があわないと見えないらしいです。
どうもこの森には精霊がたくさんいるみたいです。ハンナちゃんは精霊にお願いして果実を取ってきてもらったそうです。
さすがにこれを見せられたら精霊の存在を信じざるをえないと思いました。
ひとしきり森の小動物と戯れる幼子二人の姿を見て和んでいたら、フェイさんが言いました。
「そろそろ、いい時間なので帰りましょうか。もう、ターニャちゃん達も寮に帰っている頃でしょうし。」
え、王宮からは歩いて学園まで行くのですか、結構遠いですよ。
そう思いつつもフェイさんに続いて精霊の泉まで戻ってきました。
「じゃあ、ちょっと目がクラッとするかも知れませんが、手を離さないでくださいね。」
そこで、フェイさんはわたしの手を取って言いました。見ると反対側の手ではカリーナ様の手を握り締めています。ハンナちゃんはフェイさんの足にしがみ付いていますね。
一瞬目の前が暗転し、気がつくとそこは「バスルーム?」でした。
「私、属性が水なので水のある場所にしか転移できないのです。」
フェイさんがそう言いながらバスルームの扉を開くと、そこにはソファーで寛ぐターニャちゃんの姿がありました。
「あ、おかえりなさい。精霊の森にはちゃんと入れた?」
ターニャちゃんは別段何事もないように言います。あ、これ、いつものことなのですね。
フェイさんも精霊なんですね、そうじゃないかと思っていました。
精霊の力でここまで転移してきたそうです、この力は上位の精霊しか使えないそうです。
すごいですね、精霊の力…、なんでもありだ…。
そんな事を考えながら周りを見回し、ハタと気がつきます。
ここは学園の寮、今日から私もここに住むことになるのでした。
それも、王女のフローラ様と一緒に、衝撃的なことが多すぎて失念していました。
良く考えるとたとえ侍女としてでも王女様と一緒に住むなんて恐れ多いことです。
私はこの環境に適応できるでしょうか…。
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