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第10章 王都に春はまだ遠く
第269話 粗忽者が運んできた一つのオチ
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冬休みもあと一週間を残すのみとなった二の月の初め、わたし達がすっかり馴染みとなった精霊神殿の応接室で休憩をしている時のこと。
商人風の身なりの良い中年男性が貧相な若者を伴って訪ねて来た。
「あら、レーベンフロイデンさんじゃないですか。
こんな雪の中、わざわざ精霊神殿まで来るなんて珍しい。」
どうやらミルトさんの知り合いのようだ、気安く声をかけたところを見ると王室の御用商人かな。
「皇太子妃殿下、突然精霊神殿まで押しかけて申し訳ございません。
先日、皇太子妃殿下に御下命頂いたものの一つが判明したものでご報告に参りました。
本来なら王宮へご報告に上がるべき事とは存じますが、何分王宮にこの者を連れて参る訳にもいかなかったものですので。
ここであれば何とかお目通りが叶うやと思い、参った次第です。」
ミルトさんは、レーベンフロイデンさんに何か依頼をしていたようで、その報告に来たようだ。
身なりの貧相な若者がその件に絡んでいるけど、王宮に連れて行けるような人じゃないのでここへ連れて来たみたいね。
確かにあの身なりで王宮に立ち入ることは難しいよね、きっと門前払いされる。
それに、あの身なりの人では礼儀作法も期待できないだろうしね。
「それは大儀でした。
それで、あなたにはいくつかお願いしてあるけど、その男はどの件に絡んでいるのかしら?」
「はっ、この男、昨年の春頃まで私の商会で買い付けの仕事をしていたフェアリュクトと申す物です。
どうやらこの男が、昨年の夏にアルムート男爵領に木材の買い付けに行って男爵の不興をかった者のようです。」
ああ、この人が、アカシアの森を伐らせて欲しいと言って、ルーナちゃんのお父さんに激怒されたという人か。ルーナちゃんのお父さんに屋敷から蹴り出されたって言ってたっけ。
「あら、レーベンフロイデンさん、それはお手柄ですわね。
で、その男はあなたの商会にいたということだけど、どういう人なのかしら。」
ミルトさんに質問されたレーベンフロイデンさんが話した内容はこうだった。
フェアリュクトさんは義務教育を終えてレーベンフロイデンさんの商会に見習いで入ったそうだ。
真面目な性格ではあるが、粗忽なところがあり頼りない感じの人物だというのがレーベンフロイデンさんの評価だった。
頼りない感じはあるが、真面目で人当たりが良いので買い付けの仕事をさせていたらしい。
経験を重ねていくうちにそれなりに仕事をこなせるようになると自信がついたのか独立したいと言い出したそうだ。
「いや、こいつくらいの年の奴には結構いるのですよ、うちの看板を背負っているからこそ、みなさん信用して買い付けに応じてくれているのに、それが自分の実力だと思い上がる者が。
私もこいつみたいな奴は沢山見ているので、一々引き止めたりはしないんですね。
大概の者は一年もせずに助けてくれと泣き付いて来るのです。
まあ、いい勉強になっただろうと再び雇ってやる場合が多いのです。こいつもその口でね。」
レーベンフロイデンさんはそう言って、フェアリュクトさんに事情を説明するように促した。
フェアリュクトさんは消沈した表情でポツリポツリと話し始めた、その内容は…。
**********
フェアリュクトさんは、レーベンフロイデンさんの商会を辞めたあと、自分の店を持つ資金がないため、地方へ足を運んでは商品を買い付け王都の商人に売却するブローカーの仕事を始めたらしい。いや、始めようとしたが正解みたい…。
フェアリュクトさんは最初にレーベンフロイデンさんの下で働いているときに懇意になった供給元に足を運んだそうだ。
すると、フェアリュクトさんが独立したと聞いた途端、支払いがちゃんとできるかどうかわからないところに商品は売れないと掌を返すように商談を断られたそうだ。
レーベンフロイデンさんの言う通り大店の看板を背負っていたから買い付けに応じてくれていたんだね。
今までの取引先全てに商談を断られて意気消沈していたフェアリュクトさんにある商談が持ちかけられたそうだ。
商談の内容は、『木材が不足している帝国に木材を輸出したいから、森林資源の豊富な北部地方に行って原木の買付けをしてきて欲しい。』と言うものだった。
その際につけられた条件は、木の伐採から製材まで発注者の方で行いたいので、森そのものをまとめて買い占めて欲しいとの事だったらしい。
発注者は、王国独特の間引くような伐採により得られた木から作られた木材は仕入れ単価が高くて嫌だと言っていたらしい。
端から順に全部切っていけば安上がりなのに何故そうしないのだと発注者は不満を漏らしていたそうだ。
フェアリュクトさんにとって有り難かったのは、これが仲介するだけの仕事であったことみたい。
契約だけ取ってくれば、支払いは発注者の方で行うとのことだったそうだよ。
通常フェアリュクトさんのような商売の場合、自己の資金で買い付け、それを転売することで利ざやを稼いでいる。その場合、一時的に自分で資金負担をしないといけないらしい。
独立してから殆ど稼げていないフェアリュクトさんは資金が底をついており、自己資金が要らないこの仕事はとっても魅力的だったそうだ。
しかも、契約金の半分は前金で商談がまとまらなくても返金不要で、残り半分が商談成立後成功報酬と支払われることになっていたそうだ。
フェアリュクトさんは、この仕事に飛びついたらしい、何も疑うこともせず。
「この馬鹿は、上手い話しには裏があるって気付きもしないのですよ。
まあ、詐欺ではなかったようなのですがね。」
話の途中でレーベンフロイデンさんが呆れた声を上げた、何か騙されたようだね。
さて、フェアリュクトさん、意気揚々と北部地方に買い付けに行ったのは良いが、どこへ言っても森を丸ごと伐採したいから売ってくれと言うと、けんもほろろに断られたと言う。
最初は、一番森が豊かなエルフリーデちゃんの所へ行き、そこで断られてからずっと北上を続けたらしい。最後にルーナちゃんの領地に辿り着き、ルーナちゃんのお父さんに蹴り出されたんだね。
フェアリュクトさんは、最北のルーナちゃんの領地に於ける商談が不調に終わったことで依頼の達成を諦めて、依頼が失敗したことを報告しようと王都に帰ることを決心したらしい。
帰る途中で冬になり、王都の近くまで来たところで大雪のため身動きがとれず、近くの街の安宿で街道が通れるようになるのを待っていたらしい。
数日前に街道の除雪が始まって、なんとか昨日王都へ辿り着いたとのことだった。
**********
フェアリュクトさんがそこまで話したところで、レーベンフロイデンさんが再び話を引き継いだ。
「それで、昨晩、こいつが私のところへ泣き付いてきたのですよ。
話を聞いたら本当に呆れてしまってものも言えませんでしたよ。
王都に帰ってきたら発注者がいなくなっているというのです。
まあ、それだけなら、仕事は失敗した訳だし、前金は貰っているしで私に泣き付く必要は無い訳でして。
しかし、こいつは貰った前金をこともあろうに発注者に預けていたと言うです。
そのせいで、こいつは約半年掛けて銅貨一枚の稼ぎも得られなかったのです。」
レーベンフロイデンさんが心底呆れたようにいうとフェアリュクトさんがささやかな抵抗をするように言った。
「イヤだな、大旦那、ちゃんと半年間の活動資金は手許に残しておきましたよ。
だから、銅貨一枚の稼ぎもなかったというのは言い過ぎですよ。
それに、お金を預けたのは紹介された金貸しですよ。
前金をどうするのか聞かれたから商業組合に預けて行きますと言ったら、商業組合に預けても殆ど利息は付かないから損だと言われたんです。
その金貸しに預ければ年五割の利息が付くと言うので、紹介された金貸しに預けただけですよ。」
「馬鹿野郎!
なんで二人がグルだと疑わないんだ、最初から支払うつもりがなかったかも知れないだろうが。
よしんば、本当に資金運用先を紹介しただけだとしてもだ、年五割って言うのはおかしいだろう、この国の法定上限利率は年四割だぞ。
本当に五割の利息が付いて帰ってくるのなら、そんなのもぐりの高利貸に決まっているだろう。
いつ、お上に摘発されてもおかしくないだろうが。
それにな、見習いの頃から良く聞かせているだろうが、商人が稼ぎと言ったら利益のことだ、必要経費が賄えたのは稼いだと言わないんだよ。
収支トントンは赤字と思えと見習いの頃から口を酸っぱくして言い聞かせてきただろうに…。」
レーベンフロイデンさんは、フェアリュクトさんに呆れて叱り付けたあとミルトさんに言った。
「それで、こいつに対する発注者の名はリスト、先日より皇太子妃殿下が警戒していた男です。
こいつが金を預けたのは皇太子妃殿下の命で一斉摘発されたリスト配下の高利貸の一つですね 。
先般の皇太子妃殿下のお話から察するに、こいつは北部地方の領主が森林資源をどの程度ガードしているかを調べるために使われたのだと思います。」
あっ、やっぱり…、話の流れからそうじゃないかと思っていたよ。
レーベンフロイデンさんの考えでは、駆け出しのフェアリュクトさんに商談の成功は最初から期待していなかったのではないかとのこと。
フェアリュクトさんの報告により北部領主の森林保護の感触がつかめれば良いと思っていたのではないかとレーベンフロイデンさんは考えているみたい。前金は調査費のようなものだろうって。
レーベンフロイデンさんは、リストが前金を本当に渡す気があったかどうかは分からないという。
ただ、リスト配下の高利貸は、トイチで資金を運用しているので、フェアリュクトさんが半年預けているうちに元金に五割の利息を付けた分以上を貸付利息で稼ぐだろうという。
レーベンフロイデンさんは、高利貸の稼ぐ利息の一部をフェアリュクトさんに払ってやるくらいの感覚をリストが持っていたのかもしれないと言っている。
じゃあ、とりあえずのところ、北部地方で暗躍していた『黒の使徒』の件は決着が付いたのかな?
わたしがそう思っていると、
「有り難う、よく知らせてくれたわ。何か褒賞を考えておくわね。
これで、現時点で判明している北部地方での怪しい動きについては全て明らかになったようね。
良かったわ、また、リストやプッペみたいな大物が出てきたらどうしようかと思ってたの。」
とミルトさんが言った。
ミルトさんも北部地方の件は一旦終息したと考えているみたいだね。
商人風の身なりの良い中年男性が貧相な若者を伴って訪ねて来た。
「あら、レーベンフロイデンさんじゃないですか。
こんな雪の中、わざわざ精霊神殿まで来るなんて珍しい。」
どうやらミルトさんの知り合いのようだ、気安く声をかけたところを見ると王室の御用商人かな。
「皇太子妃殿下、突然精霊神殿まで押しかけて申し訳ございません。
先日、皇太子妃殿下に御下命頂いたものの一つが判明したものでご報告に参りました。
本来なら王宮へご報告に上がるべき事とは存じますが、何分王宮にこの者を連れて参る訳にもいかなかったものですので。
ここであれば何とかお目通りが叶うやと思い、参った次第です。」
ミルトさんは、レーベンフロイデンさんに何か依頼をしていたようで、その報告に来たようだ。
身なりの貧相な若者がその件に絡んでいるけど、王宮に連れて行けるような人じゃないのでここへ連れて来たみたいね。
確かにあの身なりで王宮に立ち入ることは難しいよね、きっと門前払いされる。
それに、あの身なりの人では礼儀作法も期待できないだろうしね。
「それは大儀でした。
それで、あなたにはいくつかお願いしてあるけど、その男はどの件に絡んでいるのかしら?」
「はっ、この男、昨年の春頃まで私の商会で買い付けの仕事をしていたフェアリュクトと申す物です。
どうやらこの男が、昨年の夏にアルムート男爵領に木材の買い付けに行って男爵の不興をかった者のようです。」
ああ、この人が、アカシアの森を伐らせて欲しいと言って、ルーナちゃんのお父さんに激怒されたという人か。ルーナちゃんのお父さんに屋敷から蹴り出されたって言ってたっけ。
「あら、レーベンフロイデンさん、それはお手柄ですわね。
で、その男はあなたの商会にいたということだけど、どういう人なのかしら。」
ミルトさんに質問されたレーベンフロイデンさんが話した内容はこうだった。
フェアリュクトさんは義務教育を終えてレーベンフロイデンさんの商会に見習いで入ったそうだ。
真面目な性格ではあるが、粗忽なところがあり頼りない感じの人物だというのがレーベンフロイデンさんの評価だった。
頼りない感じはあるが、真面目で人当たりが良いので買い付けの仕事をさせていたらしい。
経験を重ねていくうちにそれなりに仕事をこなせるようになると自信がついたのか独立したいと言い出したそうだ。
「いや、こいつくらいの年の奴には結構いるのですよ、うちの看板を背負っているからこそ、みなさん信用して買い付けに応じてくれているのに、それが自分の実力だと思い上がる者が。
私もこいつみたいな奴は沢山見ているので、一々引き止めたりはしないんですね。
大概の者は一年もせずに助けてくれと泣き付いて来るのです。
まあ、いい勉強になっただろうと再び雇ってやる場合が多いのです。こいつもその口でね。」
レーベンフロイデンさんはそう言って、フェアリュクトさんに事情を説明するように促した。
フェアリュクトさんは消沈した表情でポツリポツリと話し始めた、その内容は…。
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フェアリュクトさんは、レーベンフロイデンさんの商会を辞めたあと、自分の店を持つ資金がないため、地方へ足を運んでは商品を買い付け王都の商人に売却するブローカーの仕事を始めたらしい。いや、始めようとしたが正解みたい…。
フェアリュクトさんは最初にレーベンフロイデンさんの下で働いているときに懇意になった供給元に足を運んだそうだ。
すると、フェアリュクトさんが独立したと聞いた途端、支払いがちゃんとできるかどうかわからないところに商品は売れないと掌を返すように商談を断られたそうだ。
レーベンフロイデンさんの言う通り大店の看板を背負っていたから買い付けに応じてくれていたんだね。
今までの取引先全てに商談を断られて意気消沈していたフェアリュクトさんにある商談が持ちかけられたそうだ。
商談の内容は、『木材が不足している帝国に木材を輸出したいから、森林資源の豊富な北部地方に行って原木の買付けをしてきて欲しい。』と言うものだった。
その際につけられた条件は、木の伐採から製材まで発注者の方で行いたいので、森そのものをまとめて買い占めて欲しいとの事だったらしい。
発注者は、王国独特の間引くような伐採により得られた木から作られた木材は仕入れ単価が高くて嫌だと言っていたらしい。
端から順に全部切っていけば安上がりなのに何故そうしないのだと発注者は不満を漏らしていたそうだ。
フェアリュクトさんにとって有り難かったのは、これが仲介するだけの仕事であったことみたい。
契約だけ取ってくれば、支払いは発注者の方で行うとのことだったそうだよ。
通常フェアリュクトさんのような商売の場合、自己の資金で買い付け、それを転売することで利ざやを稼いでいる。その場合、一時的に自分で資金負担をしないといけないらしい。
独立してから殆ど稼げていないフェアリュクトさんは資金が底をついており、自己資金が要らないこの仕事はとっても魅力的だったそうだ。
しかも、契約金の半分は前金で商談がまとまらなくても返金不要で、残り半分が商談成立後成功報酬と支払われることになっていたそうだ。
フェアリュクトさんは、この仕事に飛びついたらしい、何も疑うこともせず。
「この馬鹿は、上手い話しには裏があるって気付きもしないのですよ。
まあ、詐欺ではなかったようなのですがね。」
話の途中でレーベンフロイデンさんが呆れた声を上げた、何か騙されたようだね。
さて、フェアリュクトさん、意気揚々と北部地方に買い付けに行ったのは良いが、どこへ言っても森を丸ごと伐採したいから売ってくれと言うと、けんもほろろに断られたと言う。
最初は、一番森が豊かなエルフリーデちゃんの所へ行き、そこで断られてからずっと北上を続けたらしい。最後にルーナちゃんの領地に辿り着き、ルーナちゃんのお父さんに蹴り出されたんだね。
フェアリュクトさんは、最北のルーナちゃんの領地に於ける商談が不調に終わったことで依頼の達成を諦めて、依頼が失敗したことを報告しようと王都に帰ることを決心したらしい。
帰る途中で冬になり、王都の近くまで来たところで大雪のため身動きがとれず、近くの街の安宿で街道が通れるようになるのを待っていたらしい。
数日前に街道の除雪が始まって、なんとか昨日王都へ辿り着いたとのことだった。
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フェアリュクトさんがそこまで話したところで、レーベンフロイデンさんが再び話を引き継いだ。
「それで、昨晩、こいつが私のところへ泣き付いてきたのですよ。
話を聞いたら本当に呆れてしまってものも言えませんでしたよ。
王都に帰ってきたら発注者がいなくなっているというのです。
まあ、それだけなら、仕事は失敗した訳だし、前金は貰っているしで私に泣き付く必要は無い訳でして。
しかし、こいつは貰った前金をこともあろうに発注者に預けていたと言うです。
そのせいで、こいつは約半年掛けて銅貨一枚の稼ぎも得られなかったのです。」
レーベンフロイデンさんが心底呆れたようにいうとフェアリュクトさんがささやかな抵抗をするように言った。
「イヤだな、大旦那、ちゃんと半年間の活動資金は手許に残しておきましたよ。
だから、銅貨一枚の稼ぎもなかったというのは言い過ぎですよ。
それに、お金を預けたのは紹介された金貸しですよ。
前金をどうするのか聞かれたから商業組合に預けて行きますと言ったら、商業組合に預けても殆ど利息は付かないから損だと言われたんです。
その金貸しに預ければ年五割の利息が付くと言うので、紹介された金貸しに預けただけですよ。」
「馬鹿野郎!
なんで二人がグルだと疑わないんだ、最初から支払うつもりがなかったかも知れないだろうが。
よしんば、本当に資金運用先を紹介しただけだとしてもだ、年五割って言うのはおかしいだろう、この国の法定上限利率は年四割だぞ。
本当に五割の利息が付いて帰ってくるのなら、そんなのもぐりの高利貸に決まっているだろう。
いつ、お上に摘発されてもおかしくないだろうが。
それにな、見習いの頃から良く聞かせているだろうが、商人が稼ぎと言ったら利益のことだ、必要経費が賄えたのは稼いだと言わないんだよ。
収支トントンは赤字と思えと見習いの頃から口を酸っぱくして言い聞かせてきただろうに…。」
レーベンフロイデンさんは、フェアリュクトさんに呆れて叱り付けたあとミルトさんに言った。
「それで、こいつに対する発注者の名はリスト、先日より皇太子妃殿下が警戒していた男です。
こいつが金を預けたのは皇太子妃殿下の命で一斉摘発されたリスト配下の高利貸の一つですね 。
先般の皇太子妃殿下のお話から察するに、こいつは北部地方の領主が森林資源をどの程度ガードしているかを調べるために使われたのだと思います。」
あっ、やっぱり…、話の流れからそうじゃないかと思っていたよ。
レーベンフロイデンさんの考えでは、駆け出しのフェアリュクトさんに商談の成功は最初から期待していなかったのではないかとのこと。
フェアリュクトさんの報告により北部領主の森林保護の感触がつかめれば良いと思っていたのではないかとレーベンフロイデンさんは考えているみたい。前金は調査費のようなものだろうって。
レーベンフロイデンさんは、リストが前金を本当に渡す気があったかどうかは分からないという。
ただ、リスト配下の高利貸は、トイチで資金を運用しているので、フェアリュクトさんが半年預けているうちに元金に五割の利息を付けた分以上を貸付利息で稼ぐだろうという。
レーベンフロイデンさんは、高利貸の稼ぐ利息の一部をフェアリュクトさんに払ってやるくらいの感覚をリストが持っていたのかもしれないと言っている。
じゃあ、とりあえずのところ、北部地方で暗躍していた『黒の使徒』の件は決着が付いたのかな?
わたしがそう思っていると、
「有り難う、よく知らせてくれたわ。何か褒賞を考えておくわね。
これで、現時点で判明している北部地方での怪しい動きについては全て明らかになったようね。
良かったわ、また、リストやプッペみたいな大物が出てきたらどうしようかと思ってたの。」
とミルトさんが言った。
ミルトさんも北部地方の件は一旦終息したと考えているみたいだね。
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