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第11章 王都、三度目の春
第281話 王家の指輪の認証方法
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さて、エフォールさんにはミルトさんの護衛の近衛騎士と共に王宮へ行ってもらった。
残りのみんなはわたしの部屋で今日入手した情報の検討をすることにしたの。
珍しくリタさんが最初に口を開いた。
「西の大陸にターニャちゃんの情報が渡ってしまい、拙い事になりましたね。」
ミルトさんがリタさんの発言に相槌を打った。
「そうね、西大陸の三ヶ国で指輪の継承ができていないとは思わなかったわ。
これから先、あの王子みたいにターニャちゃんを求めてやってくる西の王族が増えるかも知れないわね。
まったく、あの校長の奴、やらかしてくれたわね。」
「えええ、それは困るよ。
だいたい、指輪を光らせているのはイカサマなんだから。
わたしには魔導王国の王家の血なんて一滴も流れていないよ。
あんなキモチ悪い王子みたいなのが次々来ると思ったらルーナちゃんじゃなくても逃げ出したくなるよ。」
「三ヶ国の指輪が正しく継承されていないことはある程度予想していたのですが、あのように指輪を求める野心家がすぐさま現れるとは思いませんでした。」
「「えええっ!」」
リタさんは指輪の継承が出来ていないと予想していたの?
「リタさん、あなたは何で三ヶ国に指輪が正しく継承されていないと思っていたの?」
ミルトさんの問い掛けにリタさんは然も当たり前のように言った。
「だって、認証の魔導具がなければ名義の書き換えができないでしょう。」
「「魔導具?」」
「当時は人が魔法を使うこと出来なかったのですよ、魔導具を使って所有者の認証を行っていたと考えるのが自然ではないですか。
私は認証の魔導具を持ち出せたかどうかを八割方持ち出せなかったのではないかと考えていたのですが、やはり持ち出せなかったのですね。」
**********
リタさんが指輪の継承に魔道具が使われていたのではないかと思い至ったのは、わたしが指輪を見せたときのことらしい。
私は指輪は一種の魔導具で魔術式が施されており、それをおかあさんが術で書き換えたとリタさんに説明した。
ちなみに魔術式って魔晶石が蓄えている力を魔法に変換するための命令文らしいのだけど、この指輪の魔術式は微細で目視することはできない。
小さな魔道具に微細な魔術式を刻む魔導具が存在するらしいよ。
ある程度大きな魔道具になると魔術式がみえるらしいけど、専門家でないと読み解けないそうだ。
それ以上の事は、わたしには分からないよ。
さて、リタさんが考えたのは、精霊が使う術は、人が使う魔法と本質は同じものだろうということ。
精霊は清浄なマナを、人は魔力と呼んでいる汚染されたマナを用いて術を行使するが、それは薪を燃やすか落ち葉を燃やすかの違いに過ぎないだろうとリタさんは言う。
だとするとおかあさんが術で書き換えた魔術式は当時の人はどうやって書き換えたのか。
当時はまだ人が魔法を使えなかったので、魔導具を使わなければ魔術式を書き換えられるはずがないとリタさんは言う。
「ターニャちゃんの屋敷にある本を調べていたら面白い記述に行き当たったのです。
魔導王国の王族の手記の中にあった、『指輪認証の儀』についての記述です。
五歳の誕生日に薄暗い礼拝堂に連れて行かれて親から指輪を渡されたそうです。
すると、狭い礼拝堂の中が光に包まれ、やがてその光が消えると手の中にある指輪が光っていたとのことでした。
ちなみに、その記述では礼拝堂の中には何も置いてなかったとあります。
私は礼拝堂自体が大掛かりな魔導具であったのではないかと思うのです。
なんといっても、王家の指輪は王位継承権があることを示す大切な物です。
魔導具が盗難されて偽造されたら困ります。
なので、あえて持ち運びできない部屋そのものにしたのではないかと。
そのことを当主しか知らなければ、傍目には儀式で書き換えられたと思われるでしょうから。」
だとしたら、三ヶ国の王族はそんなものを持ち出せる訳がないので、『指輪認証の儀』ができていないのではないかとリタさんは考えていたそうだ。
もしかしたら礼拝堂の中に持ち運びできる大きさの魔導具が設置されていた可能性もあるとリタさんは考えていたみたい。
だから、二割くらいは持ち出せた可能性もあると期待していたとのことだった。
「今後考えられるのは、今日みたいにターニャちゃんを一族に引き入れて正統性を高めようとする者が出てくる可能性があります。
次に、指輪の所有者認証の仕方を問い合わせてくる可能性があります。」
リタさんが今後の可能性に言及するとミルトさんが言う。
「基本はターニャちゃんへの接触を禁止しましょう。
私の保護下にいる子です、禁を破ると外交問題にすると言っておきましょう。
あの三ヶ国の国力ではこちらに異を唱えるのは難しいと思います。
ただ、我が国へ正式にターニャちゃんへの接触を打診してきた場合の対応ですが…。」
悩ましげなミルトさんにリタさんは言った。
「縁談であれば、ミルト様臨席のもとでターニャちゃんの口からはっきり断って貰えば良いのではないですか。
ミルト様が立会人ですので断られた場合に無理強いはできないでしょう。
それと、指輪の所有者認証方法を問われたら、正論で突っぱねたらどうですか。
その指輪、不正に手にする者を防ぐため、継承の仕方は口外してはならないのですよね。
口外を禁止されているので言えませんで通したら良いのではないかと思います。
これも、ミルト様、立会いのもとで行えば誰も文句を言えないでしょう。
一番重要なのはミルト様がいないところでターニャちゃんに接触しようとするものを確実に排除することです。」
なんか大事になってしまったよ…。
わたしはペンダントトップにしている指輪を手にしてため息をついた。
残りのみんなはわたしの部屋で今日入手した情報の検討をすることにしたの。
珍しくリタさんが最初に口を開いた。
「西の大陸にターニャちゃんの情報が渡ってしまい、拙い事になりましたね。」
ミルトさんがリタさんの発言に相槌を打った。
「そうね、西大陸の三ヶ国で指輪の継承ができていないとは思わなかったわ。
これから先、あの王子みたいにターニャちゃんを求めてやってくる西の王族が増えるかも知れないわね。
まったく、あの校長の奴、やらかしてくれたわね。」
「えええ、それは困るよ。
だいたい、指輪を光らせているのはイカサマなんだから。
わたしには魔導王国の王家の血なんて一滴も流れていないよ。
あんなキモチ悪い王子みたいなのが次々来ると思ったらルーナちゃんじゃなくても逃げ出したくなるよ。」
「三ヶ国の指輪が正しく継承されていないことはある程度予想していたのですが、あのように指輪を求める野心家がすぐさま現れるとは思いませんでした。」
「「えええっ!」」
リタさんは指輪の継承が出来ていないと予想していたの?
「リタさん、あなたは何で三ヶ国に指輪が正しく継承されていないと思っていたの?」
ミルトさんの問い掛けにリタさんは然も当たり前のように言った。
「だって、認証の魔導具がなければ名義の書き換えができないでしょう。」
「「魔導具?」」
「当時は人が魔法を使うこと出来なかったのですよ、魔導具を使って所有者の認証を行っていたと考えるのが自然ではないですか。
私は認証の魔導具を持ち出せたかどうかを八割方持ち出せなかったのではないかと考えていたのですが、やはり持ち出せなかったのですね。」
**********
リタさんが指輪の継承に魔道具が使われていたのではないかと思い至ったのは、わたしが指輪を見せたときのことらしい。
私は指輪は一種の魔導具で魔術式が施されており、それをおかあさんが術で書き換えたとリタさんに説明した。
ちなみに魔術式って魔晶石が蓄えている力を魔法に変換するための命令文らしいのだけど、この指輪の魔術式は微細で目視することはできない。
小さな魔道具に微細な魔術式を刻む魔導具が存在するらしいよ。
ある程度大きな魔道具になると魔術式がみえるらしいけど、専門家でないと読み解けないそうだ。
それ以上の事は、わたしには分からないよ。
さて、リタさんが考えたのは、精霊が使う術は、人が使う魔法と本質は同じものだろうということ。
精霊は清浄なマナを、人は魔力と呼んでいる汚染されたマナを用いて術を行使するが、それは薪を燃やすか落ち葉を燃やすかの違いに過ぎないだろうとリタさんは言う。
だとするとおかあさんが術で書き換えた魔術式は当時の人はどうやって書き換えたのか。
当時はまだ人が魔法を使えなかったので、魔導具を使わなければ魔術式を書き換えられるはずがないとリタさんは言う。
「ターニャちゃんの屋敷にある本を調べていたら面白い記述に行き当たったのです。
魔導王国の王族の手記の中にあった、『指輪認証の儀』についての記述です。
五歳の誕生日に薄暗い礼拝堂に連れて行かれて親から指輪を渡されたそうです。
すると、狭い礼拝堂の中が光に包まれ、やがてその光が消えると手の中にある指輪が光っていたとのことでした。
ちなみに、その記述では礼拝堂の中には何も置いてなかったとあります。
私は礼拝堂自体が大掛かりな魔導具であったのではないかと思うのです。
なんといっても、王家の指輪は王位継承権があることを示す大切な物です。
魔導具が盗難されて偽造されたら困ります。
なので、あえて持ち運びできない部屋そのものにしたのではないかと。
そのことを当主しか知らなければ、傍目には儀式で書き換えられたと思われるでしょうから。」
だとしたら、三ヶ国の王族はそんなものを持ち出せる訳がないので、『指輪認証の儀』ができていないのではないかとリタさんは考えていたそうだ。
もしかしたら礼拝堂の中に持ち運びできる大きさの魔導具が設置されていた可能性もあるとリタさんは考えていたみたい。
だから、二割くらいは持ち出せた可能性もあると期待していたとのことだった。
「今後考えられるのは、今日みたいにターニャちゃんを一族に引き入れて正統性を高めようとする者が出てくる可能性があります。
次に、指輪の所有者認証の仕方を問い合わせてくる可能性があります。」
リタさんが今後の可能性に言及するとミルトさんが言う。
「基本はターニャちゃんへの接触を禁止しましょう。
私の保護下にいる子です、禁を破ると外交問題にすると言っておきましょう。
あの三ヶ国の国力ではこちらに異を唱えるのは難しいと思います。
ただ、我が国へ正式にターニャちゃんへの接触を打診してきた場合の対応ですが…。」
悩ましげなミルトさんにリタさんは言った。
「縁談であれば、ミルト様臨席のもとでターニャちゃんの口からはっきり断って貰えば良いのではないですか。
ミルト様が立会人ですので断られた場合に無理強いはできないでしょう。
それと、指輪の所有者認証方法を問われたら、正論で突っぱねたらどうですか。
その指輪、不正に手にする者を防ぐため、継承の仕方は口外してはならないのですよね。
口外を禁止されているので言えませんで通したら良いのではないかと思います。
これも、ミルト様、立会いのもとで行えば誰も文句を言えないでしょう。
一番重要なのはミルト様がいないところでターニャちゃんに接触しようとするものを確実に排除することです。」
なんか大事になってしまったよ…。
わたしはペンダントトップにしている指輪を手にしてため息をついた。
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