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第11章 王都、三度目の春

第290話 リリちゃんも視える子だった 

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 わたし達が驚いている間にも光のおチビちゃんの術は発動され、明るい金色の光がリリちゃんを包み込んだ。

『うわわわ、なにこれ、きれい・・・。』

 やがてリリちゃんを包み込んだ光が消えると…。

『うそ!服が新しくなったよ!それに臭くない!
 これちっちゃな女の子がやってくれたの?ありがとう!』

 リリちゃんが歓声を上げた、いきなりテンションが上がるのね…。
 でも、服は新しくなった訳ではないよ、継ぎ接ぎはそのままでしょう。

 それはともかくとして…。

『ねえ、リリちゃん、わたしの隣に浮いてているおチビちゃんが視えるの?』

『うん、赤い服に白いエプロンをしているんだよね、初めて見たよ。
 聖女のおねえちゃんはちっちな女の子とお話しできるんだ、いいなー。』

 隣にいるおチビちゃんには姿を隠すように言ってなかったからね、波長の合う子には視えちゃう。
 ちなみに、他のおチビちゃん達には姿を消してもらっている、最近近くに寄り添うおチビちゃんが増えすぎちゃって視えていると支障をきたすくらいになったから。

 リリちゃん、精霊が視える子だったのね。近くに精霊がいないので気付かなかった。
 すると、わたしの隣の光のおチビちゃんが教えてくれた。
 リリちゃんに精霊が寄り付いてなかったのは、近くに瘴気塗れの男が二人いたためと、二人の瘴気がリリちゃんに纏わり付いていたかららしい。

『リリちゃんはわたしの隣にいるおチビちゃんと仲良くなりたいと思う?』

『リリもちっちゃな女の子と仲良くなれるの?』

 わたしの問い掛けにリリちゃんは期待を露わにして問い返してきた。

『ええ、リリちゃんが心からそう望めば仲良くなれるし、お話も出来るようになるわ。
 ちょっと待っていてね。今からおチビちゃん達に出てくるように言うから』

 わたしは周囲にいるおチビちゃん達に姿を現すように言った。

『うわわあ、ちっちゃい女の子が増えたよ、たくさんいる。』

 結構な数が見えているみたいね。

『それじゃあ、リリちゃん、この子たちに自分のお名前を言って、友達になってくださいってお願いしてみて。』

『うん、わかった!
 アタシはリリです。お友達になってください。』

 リリちゃんの言葉に誘われるように、おチビちゃんが十数体わたしの傍らを離れてリリちゃんの方へ移動した。
 最初から十数体って、精霊との親和性はミーナちゃんやフローラちゃん並だね。
 少なくてもミルトさんよりは数段上だ。

『なんか、いっぱい寄って来たよ。
 あっ、話しかけてきた!すごい、本当にお話しできるんだ!』

 無邪気にはしゃぐリリちゃんを見ながら、わたしはリリちゃんをどうしたものかと考えていた。


     **********


「孤児院に預けようかと思っていたけれど、この子が視える子なのであれば話が違ってくるわね。」

 ミルトさんが思案している、本音では王宮へ連れて行きたいのだろうけどね。
 でも、精霊の力を国で囲い込みすぎるとウンディーネおかあさんに睨まれる事は分かっている。
 それに、生粋のスラムの子をいきなり王宮に連れて行く訳にもいかないのだと思う。
 今思えば、ハンナちゃんのときはいきなり王宮へ連れて行こうとしていたけど、ハンナちゃんって貧農の子という割には最初から礼儀正しかった気がする。

 第一、リリちゃんは王国語がわからない、帝国語しか話せない幼女をいきなり連れて帰ったら好奇の目に晒されるよね。悪目立ちするのは良くない…。

「ねえ、フェイさん、リリちゃんはわたし達が預かった方が良いと思うの。
 精霊の力の正しい使い方を教えないと拙いと思うし、同じ力を持つ者同士で助けあった方が良いと思うのだけど。」

「ええ、それがよろしいのではないですか。
 ハンナちゃんの良い妹分になると思います、互いの教育にプラスでしょう。
 幸い、私達の寮の部屋は使っていませんのでそこに住んで貰えればと思います。
 本来は使用人が住むための部屋のですが、そこはミルトさんに便宜を図ってもらいましょう。」

 わたし達が住む寮の部屋は他国の王族が留学してきたときを想定して用意された部屋で、主寝室が二つに侍女部屋が二つ付いている。
 精霊であるフェイさん達が部屋を使わないものだから、現在一つをハンナちゃんが使っていて、もう一つが空いている状態なの。
 でも、規則上使用人以外が住むことは出来ないことになっており、そこをミルトさんに何とかしてもらおうと。

 わたしとフェイさんのやり取りを聞いていたミルトさんが言った。

「わかったわ、ターニャちゃんの部屋にリリちゃんが住めるように学園の寮に手配しておくわ。
 申し訳ないけどよろしくお願いするわね。」

 わたし達がリリちゃんを引き取ることに話がまとまったときのこと。
 こちらの様子をジッと窺っていたハンナちゃんが立ち上がったかと思ったら、リリちゃんの傍らまで寄って言った。

『私、ハンナ、今日からリリちゃんと一緒に住むの。よろしくね。
 今日からハンナがリリちゃんのお姉ちゃんよ、もう寂しくないよ。』

 優しい口調の帝国語で紡がれたその言葉の意味を最初は理解できなかったのだろう、次第にその意味が伝わるとリリちゃんの目から涙が零れてきて、すすり泣きを始めてしまった。

 そんなリリちゃんをハンナちゃんが優しく抱きしめている。
 リリちゃん、ずっと寂しかったんだね。

 それにしても、その歳で人の心の機微に触れることの出来るハンナちゃんは凄いと思う、脱帽だわ…。




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