絶対令嬢の私が浮気されたから婚約破棄を突きつけたら、イケメン王子が婿になりました

クー

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第9話

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新たな出会いに期待と不安をよぎらせながら、私は真実の塔へと歩を進めていた。
昼間、王から衝撃の言葉をもらった身としては、自分の心の高鳴りを抑える拠り所を欲している。

心を落ち着ける場所はいつもこの草原である。

真実の塔の眼前に広がる草原は、昼間は観光目的で足を運ぶ人達で賑わっている。
デジカ帝国人はもとより、他国の人々も集まる憩いの場として機能している。

もちろん私もよく遊びに来ており、最近はララとシャクの実を集めに夢中になり気がつけば夜中になってしまい急いで屋敷に戻ったことは記憶に新しい。
当然お兄様に帰りが遅いと怒られてしまったら、それもまた良い思い出である。

「ジェシカ様は、この草原がお気に入りですね。」
「ええ、そうね。なぜか分からないけど、この場所にいるととても安らぐの。」
「真実の塔の女神が、この辺りに安息の息吹を与えているせいかもしれませんね。」

そういえば聞いたことがある。
一種のおまじないかと思って気に止めていなかったのだけれど、女神の加護がこの場に影響を与えているとお師匠様がおっしゃっていたわ。

「ララは何でも知っているのね。今度、この塔にまつわる話を聞かせて欲しいわ。」
「任せてください!小さい頃から友達とこの辺りで遊んでましたから、多少の知識はありますよ。」

屈託のない笑顔で頼もしい返事をくれるララ。
物では得られないこの充足感は、今の孤独な私には何にも代えがたい安らぎを与えてくれた。

「・・・冷えてきたわね。明日も早いし、そろそろ屋敷に戻ろうかしら。」
「わかりました。ジェシカ様。日も落ちましたから、帰宅いたしましょう。
 暗いですので、足元にご注意ください。」

カボチャのランタンを手にしているララは、その白く柔らかい尻尾を左右に大きく振りながら歩き出したのだった。

・・・ガサッ・・・!
帰路につこうとした瞬間、草葉の影から聞きなれない音を私の耳が拾った。

「なに?」
「ジェシカ様!私の後ろに隠れてください。」

普段全く聞かないララの叫び声に、私は驚きのあまり状況理解に時間がかかってしまった。
そして、今おかれた状況を目の当たりにした時、私は自分が何をすれば良いのか分からなくなってしまったのだ。

そこにいたのは鋭い牙をむき出しにした、ピグモンテの子分であった。
全身が黒の毛に覆われており、血走ったギョロっとした瞳。
子分とは名ばかりで、がっしりとした2メートルはあろうかという体躯。

警戒心が強いし、普段は人里には滅多に降りてこない種族のはずなのだけれど、なぜここにいるの?
いえ、それよりも早く逃げ出さないと、ララに危害が加わえられてしまう。
でも、ピグモンテは人の何倍も早く、山間を自由自在に駆け回れる。

頭の中がパニックを起こし、咄嗟の判断ができなくなってしまった。

「ガウ!!!!」

ただ立ち尽くすしかできない無力な私を、敵は逃すはずもなかった。
その大きな体からは想像もできないほどの速さで襲いかかってくるのだった。

もうダメ。。。
やられてしまう。

その刹那、私達の目の前に、大きな黒い影が現れた。
それが人と理解できるまで、永遠とも思える長い時間を要したのだった。










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